オフィスの片隅から二つの瞳(脚本)
〇研究施設のオフィス
社員A「慶子さん、仕事終わりにバーに行きませんか」
慶子「仕事中に無駄話しないで!」
部長「この間頼んだ資料まだ?」
慶子「はい。もうしばらく」
部長「何やってるのよ!」
慶子「すみません」
慶子「ふう」
女性「・・・」
慶子「何ですか」
慶子「じっと見てましたよね?」
女性「ちょっといい?」
女性「何でつんけんしてるの?」
慶子「周りの部下が使えない人ばかりで遊んでるからです」
慶子「あなたサボり?違う部署の人ならすぐに出て行って」
女性「その態度やれやれね」
慶子「あなたに言われたくない」
慶子「な、何?」
女性「私をよく見てて」
慶子「え」
慶子「何?急に服が変わって・・・眼鏡も?」
女性「驚いた?」
女性「服を一瞬で変える。これは未来の技術よ」
女性「私は数週間あなたを観察していた」
慶子「か、観察してどうしようって言うの?」
女性「その態度改めないと一生独身よ」
女性「この仕事も20年もやることになるわ」
慶子「な、何であんたがそんなことわかるのよ」
女性「世界を旅して料理研究家になるのが夢でしょ。しっかりしなさい」
慶子「それは子供の頃の話でしょ。でも何であなた知ってるのよ!?」
女性「人生の本質とはかけ離れている」
慶子「どうしろって言うのよ」
女性「・・・部長は汚職してるわよ。関心があるのは自分だけ」
慶子「あなた誰?」
女性「未来のあなたよ」
慶子「バカ言わないで。私は語尾に~よなんてつけてしゃべらないし、顔も違うじゃない」
女性「これは生体ロボットよ。私の本体は未来にいるの」
女性「100年後は女性らしさも見直されてるからね。語尾によをつけているわ」
慶子「・・・」
女性「どう?信じたようね」
慶子「私出世してないの?」
女性「もうすぐ閑職行き」
女性「婚期も逃した」
慶子「ええ!?」
慶子「だってあなたモテそうじゃ・・・」
女性「だからロボットなのよ」
女性「100年も生きると若い男性が子供に見えて結婚する気もなくなるの」
慶子「100年も生きてるの?」
女性「ええ。このままじゃあなたは幸せにはなれないわ」
慶子「でもあたしはあの部長に気に入られないと!」
女性「そういうふうに思わせているのよ。部長はマインドコントロールにたけている」
女性「言うことは聞かない方がいいわ」
慶子「そんなことできない!」
女性「私は後悔のどん底なのよ」
女性「未来では仕事優先の価値観で生きている人はいないわ」
女性「平和な心を持つ人が尊敬されているの」
女性「難しい仕事はAIがやるからね」
部長「いつまで無駄話してるのよ」
慶子「あ、すみませんすみません。部長」
女性「やはりここが原因なようね」
部長「な、何?離して!」
女性「じゃ、私を変えてね。頼むわ」
ビルの下には二人の女性の遺体があった
未来の私はなんて無茶をやるんだろう・・・
必死だったのだろうか・・・
2か月後
慶子「おはよー」
社員A「あ。いつものスーツはどうしたんですか」
慶子「それよりこの前誘ってくれたバーまた行きたいな~」
社員A「え。じゃあまた行きますか」
慶子「お願いね」
最近料理の勉強を始めた
来年は会社を辞めて船で旅に出ようと思う
未来の自分のために
未来の自分からポンポンと肩を叩かれ目覚めさせてもらえるなんて、すごい理想的展開ですね。人生はやはり自分流に楽しまなければ損ですよね!
100年後どころか近い将来、結局ほとんどの仕事はAIに取って代わられるでしょうから、私たちも慶子のように「本当はあれがしたかった」と思うことがあれば今始めた方がいいのかもしれませんね。