勝手橋の女

福山 詩(フクヤマ ウタ)

写る女と橋(脚本)

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〇田舎町の通り
警察官「待って」
警察官「その橋 渡らないで下さい」
通行人「なぜ バスの時間に遅れそうなのよ」
警察官「いくら近道といっても これは 勝手橋 ですから」
通行人「勝手橋?」
警察官「誰がいつ作ったか不明 管理されていない橋」
警察官「それが勝手橋です ほら ここ 老朽化して今にも落ちそうだ」
警察官「あちこちに ヒビも 特に弱い真ん中あたりから亀裂が入っている」
通行人「そう 危ないのね」
通行人「でもね ここ みんな使ってるんだから」
警察官「そうなんだよな 立入禁止にしに来たのに さっきから」
通行人「あとあなた 何か踏んでるわよ」
警察官「あ また」
警察官「この橋 もう渡れませんからね」
女「・・・」
警察官「全く あっちの橋を使ってくれよ」
警察官「橋が出来た当時の写真・・・」
警察官「いつからあるんだよ この勝手橋は」
警察官「ん」
警察官「あれ この写真に写っている女」
警察官「さっき いた人じゃないか」
警察官「・・・」
警察官「まさか ありえない 随分と年月が経っているんだ」
警察官「年をとっていないなんて変だ」
警察官「でも ネットの書き込みに」
  あの橋には 霊が出る
  当時 新しい橋が出来た時
  
  いざこざが起きた
  その時死んだ地縛霊が
  
  橋を渡ろうとする人を落とすらしい
警察官「霊だと ばかな」
警察官「橋の全体像を撮っておこう ここも ここも 酷いな」
警察官「ひ」
警察官「まさか」
警察官「やめろ」
警察官「うわ」
女「あの」
女「大丈夫ですか」
警察官「え」
女「大きい声だして 霊でも見たような顔して 大丈夫ですか」
警察官「アハハ すみません 地縛霊の噂を耳にしたもので」
女「いませんよ 私 霊感強いけど見たことないです」
女「この橋 渡れなくなるんですか」
警察官「ああ そうなんですよ」
警察官(なんだよ そりゃそうだよ人間だよ)
女「そうなんですね 残念」
女「この橋はあそこのお家の人が世代を超えて守ってきた橋なんですよ」
警察官「え じゃあ この橋 あの家の人が作ったんですか」
女「ええ と言っても 今は孫が住んでるから 作った本人ではありませんが」
女「執念深くこの橋を守り続けて」
警察官「あの どうしてそこまでご存知なんですか」
女「私の家族も永年ここに住んでいるので」
警察官「へぇそうなんですね ハハ」
警察官(だってここに地縛霊として居座ってましたから とか言われたらどうしようかと)
女「では 私はこれで」
警察官(びっくりさせるなよ)
男「おい」
男「聞いたぞ」
警察官「あなたは」
男「儂はその家のもんだが この橋を立入禁止にするだと?」
警察官「はい そうですよ」
男「冗談じゃない うちの爺さんが周りの住人と喧嘩してまで作ったんだ」
男「それにこの橋はこの辺の人が皆使ってんだ 勝手に封鎖するな」
警察官「危ないですから下がって」
警察官「どけ 儂が渡って頑丈だと 証明してやる」
警察官「勝手なのはアンタだ わ よせ」
女「わ」
女「やはり真ん中から叩き続けると 脆い」
女「母さん お婆ちゃん ケイちゃん」
女「落ちたよ やっと」
地縛霊「キミモ オイデ」
女「あ」

コメント

  • 勝手橋ですか
    あったんです。実家から少しはなれたところに。

    ちゃんとしたコンクリートの橋から10メートルくらいしか
    はなれていないんですけど便利なんでみんな使ってました。
    (もちろん手すりもないしグラグラゆれるのです)
    何人か落ちていたのかもしれませんねえ。
    怖い怖い。


  • 勝手橋、たまに聞く言葉ですが、ここからホラーを作り出す着眼点が素晴らしいです。身勝手さと不安定さ、それに生活の切実を兼ねる橋の存在をしっかり活用して、なかなかの不気味さが味わえました。

  • 何とも言えない恐さ…この字数でホラーを表現するとは、すごいです…

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