第4話『珍しい組み合わせ』(脚本)
〇合宿所の稽古場
蒼村優「・・・・・・」
蒼村優「結局みなさんがやって来たのは 終わりかけの時間でした」
蒼村優「最初に欠席を伝えてきてくれたのは 上杉先輩と双葉だけでした」
蒼村優「みなさんを待っている間に アニメ動画4本見終えちゃいました」
三好優弥「満喫してんじゃん」
蒼村優「そこは黙れ!」
蒼村優「どなたか、そむらに言うことありません?」
蒼村優「私は久しぶりに怒ってます」
三好優弥「可愛い後輩」
蒼村優「ちげえだろ!」
蒼村優「時と場合を考えて、褒めろや!」
蒼村優「・・・・・・」
三好水葉「でも、少しだけ嬉しそう ちょろいぞ、この子」
宇喜多羽彩「ごめんね、そむらちゃん 昨日は遅くなっちゃって」
蒼村優「宇喜多先輩は忙しいから 仕方ないですよ」
蒼村優「最初に来てくれたのは 宇喜多先輩だったし!」
三好水葉「ごめんね、私も料理部の活動で 遅くなっちゃって」
蒼村優「水葉はちゃんと 後で連絡来てたからいいよ」
三好優弥「まあ、二人もこんなに謝ってるんだから 許してやってくれよ」
蒼村優「違うわ! あんたが一番謝るべきしょ!」
蒼村優「連絡もなしに宇喜多先輩を 引っ張りまわして!」
蒼村優「罪悪感ないとかサイコパスか!」
蒼村優「さっき言ってた『どなたか』ってのは あんたのことだ!」
蒼村優「私もついに堪忍袋の緒が切れました!」
蒼村優「今後、部活には活動開始5分前に来てやります!」
蒼村優「自分の分のスリッパしか出してあげません!」
宇喜多羽彩「うわぁ、可愛い反抗 人畜無害すぎる」
三好水葉「反抗期とか絶対無縁な子ですよ」
蒼村優「三好先輩 人畜無害とか、反抗期とか どこまで私を馬鹿にするんですか!」
三好優弥「俺、何も言ってないんだけど」
蒼村優「じゃあ、三好先輩とは半日絶交です!」
宇喜多羽彩「若干保険かけてる」
蒼村優「明日の部活まで話してあげません!」
宇喜多羽彩「そむらちゃん 良いもの見せてあげるから 機嫌直してよ」
蒼村優「なんですか?」
宇喜多羽彩「これ、見て!」
蒼村優「スマホですか?」
蒼村優「・・・・・・」
蒼村優「何ですか、これは!」
三好水葉「なになに?」
蒼村優「だ、だめ!」
宇喜多羽彩「この前の肝試しで 気絶したそむらちゃんを」
宇喜多羽彩「優弥がお姫様抱っこしてるところ!」
蒼村優「見せないでくださーい!」
三好水葉「あ、ホントだ! お兄ちゃん、力持ちだからね!」
蒼村優「分かりましたよ!」
蒼村優「だから、もう許して! 恥ずかしいです!」
三好水葉「やっぱり、ちょろいぞ 将来がちょっと心配だ」
宇喜多羽彩「じゃあ、写真は送っておくね」
蒼村優「はい!」
三好優弥「これで一件落着だな」
蒼村優「黙れサイコパス!」
蒼村優「今回のお話をこれで一度 終わりにしといてあげます」
蒼村優「それでは第2ラウンドにいこうと思います」
三好水葉「さっき、聞き逃しそうになったんですが 宇喜多先輩」
三好水葉「さっきお兄ちゃんのことを 『優弥』って呼んでませんでした?」
宇喜多羽彩「呼んだよ」
蒼村優「この前まで三好君だったのに」
宇喜多羽彩「そうそう 私が頼んだの」
宇喜多羽彩「私のことを『羽彩』って呼んでって」
宇喜多羽彩「その代わり私も 『優弥』って呼ぶっていう交換条件!」
蒼村優「どうしてですか!?」
宇喜多羽彩「何となく? その方が親近感湧くし」
宇喜多羽彩「私、親しくなった人には 下の名前で呼んでほしいんだよね」
三好水葉「それ、分かります」
三好水葉「『さん』付けより 呼び捨てとか『ちゃん』付けの方が 親近感あって嬉しかったりします」
蒼村優「じゃ、じゃあ、私も 羽彩先輩って呼んでいいですか?」
三好水葉「私も私も!」
宇喜多羽彩「もちろん!」
蒼村優「やったー」
三好水葉「ねえ、お兄ちゃん! あれ、いない?」
〇中庭
三好優弥「暇になってしまった」
三好双葉「・・・・・・」
三好優弥「こらこら」
三好優弥「ナンパに絡まれたような めんどくさそうな顔はやめなさい」
三好双葉「ナンパよりタチ悪いんですけど」
三好双葉「何ですか?」
三好優弥「暇なんだ」
三好双葉「私は暇じゃないんで 話しかけないでもらえます?」
三好優弥「こらこら」
三好双葉「何ですか?」
三好優弥「一応、部活の先輩だぞ 暇だから相手してくれ」
三好双葉「こんなときに権力を利用しないでください」
三好優弥「ミス研でそむらたちが 女子トーク始めて居づらいんだ」
三好双葉「私もミス研に行こうと思ってるんですけど」
三好優弥「じゃあ、一緒に行こうぜ」
三好双葉「断る」
三好優弥「ナンパされても そうやってちゃんと断るんだぞ」
三好双葉「だから、断ってるんでしょ」
三好双葉「知り合いって思われると 恥ずかしいので一緒に行きたくないです」
三好優弥「それでさ、そむらが昨日から ずっと怒っててさ」
三好双葉「全く聞いてない」
三好双葉「仕方ないですね」
〇グラウンドの水飲み場
三好優弥「こうして、双葉と二人で 学内を歩くのはいつぶりだ?」
三好双葉「いや、そんな記憶ないですけど 水葉と勘違いしてません?」
三好優弥「そうだっけ」
三好双葉「そうやっていつも適当」
三好双葉「そういうところが嫌いなんです」
謎の女子生徒「わぁ、三好先輩と双葉さんが 一緒に歩いてるぅ」
謎の女子生徒「兄妹で美男美女だから羨ましいなぁ」
三好双葉「今の人、エキストラとして 三好先輩が用意しました?」
三好優弥「そこまで落ちぶれてないぞ」
三好双葉「そこまで人望ないですよね」
三好優弥「兄に対してきついな」
三好優弥「でも良かったな。美女って呼ばれてたぞ」
三好双葉「嬉しくないですよ」
三好双葉「三好先輩も美男って呼ばれてますよ」
三好双葉「まだ入学したてで三好先輩の本性を知らない純真無垢な一年生の言葉ですけど」
三好優弥「美男って言われても 別に嬉しくなくね?」
三好優弥「美女って使うけど 美男ってだけで使わないだろ?」
三好双葉「確かに」
三好優弥「結局美男美女って言葉は 美女がいて成立するんだぞ」
三好双葉「そうなのかな」
三好優弥「だから、もうちょっと喜べよ」
三好双葉「・・・・・・私はブスです」
三好優弥「ていうか、知り合いどころか 俺たち兄妹ってばれてるじゃん」
三好双葉「三好先輩が目立ちすぎなんですよ」
三好双葉「苗字が一緒だから みんなから兄妹なのか聞かれました」
三好優弥「何て答えてるんだ?」
三好双葉「一応兄って答えてます」
三好優弥「一応って何だ 一応って」
三好双葉「じゃあ、今度から『仮』にしときます」
三好優弥「仮ってなんだ マジで血が繋がってるのに」
三好双葉「変な人とと兄妹なんて 認めたくないじゃないですか」
三好優弥「戸籍掲示板に貼りだしてやろうか」
三好双葉「そんなことしなくても分かってますよ」
三好双葉「・・・・・・あの」
三好優弥「なんだよ」
三好双葉「私がミス研に入った理由は 聞かないんですか?」
三好優弥「別に」
三好優弥「話したくないんだろ?」
三好双葉「はい、三好先輩には 絶対話したくありません」
三好優弥「だろ? 嫌なもんわざわざ聞かないさ」
三好優弥「でも、大方の推測はつく」
三好双葉「何ですか?」
三好優弥「羽彩だろ?」
三好双葉「・・・・・・」
三好優弥「図星か」
三好双葉「なんで普段、あれなのに こういうときは勘が鋭いんだろ」
三好双葉「あっ!」
三好優弥「相変わらず嘘が下手だな」
三好優弥「勘も何もタイミングを見れば 理由なんて誰でも分かるだろ」
三好双葉「詰めが甘かった」
三好優弥「双葉が三好家で一番の天然だからな」
三好双葉「三好先輩にこんなことを言われたら 恥ずかしくて生きていけない」
三好優弥「頼むからアニキよりは 長生きしてくれよ」
三好優弥「着いたな」
三好双葉「今回だけですからね」
三好優弥「付き合ってくれてありがとな 暇つぶしになったわ」
三好双葉「・・・・・・」
〇合宿所の稽古場
三好水葉「あ、帰ってきた!」
三好水葉「しかも、双葉も一緒だ! 珍しい組み合わせ」
三好双葉「入り口で出会っただけだよ」
三好優弥「あれからずっと話してたのか?」
宇喜多羽彩「話が盛り上がっちゃて! ぼっちにしてごめんね!」
宇喜多羽彩「でも、慣れてるから大丈夫だよね!」
三好優弥「失礼だな 否定できないけど」
三好優弥「じゃあ、久しぶりに ちゃんと部活を始めるか」
〇女の子の二人部屋
三好水葉「ねえ、双葉」
三好双葉「何?」
三好水葉「今日、部室に来るまで 本当はお兄ちゃんと一緒だったんでしょ?」
三好双葉「そうだよ」
三好双葉「何かしつこいから 仕方なく一緒に部室まで歩いたよ」
三好水葉「どんなこと喋ったの?」
三好双葉「特に大したことは喋ってないよ」
三好水葉「そうなんだ」
三好双葉「私がミス研に入った理由は バレバレだったけど」
三好水葉「お兄ちゃん、勘は鋭いし 頭の回転も速いからね そりゃあ、バレバレだよ」
三好双葉「今度から気を付けよう」
三好双葉「そういえば優弥さんがね」
三好双葉「初めてのはずなのに、前にも一緒に 校内を一緒に歩いたとか言い出してさ」
三好双葉「そんなことはないって言ってあげた」
三好水葉「それ、双葉の方の間違いだよ」
三好双葉「えっ!?」
三好水葉「双葉とお兄ちゃんは 一緒に学園内を歩いてるはずだよ」
三好双葉「そうだっけ!?」
三好水葉「去年の学校見学の時 私と双葉はぐれちゃったじゃん」
三好水葉「うちの学園凄い広いし 建物も多いから何も知らないと 教室に行くのも大変に決まってるじゃん」
三好水葉「私、心配してお兄ちゃんに連絡したの 部活で学校にいるって知ってたから」
三好水葉「そのとき、お兄ちゃんが すぐに双葉を見つけてくれて 私のところまで連れてきてくれたんだよ」
三好双葉「そういえば、そんなことあった」
三好双葉「じゃあ、間違ってたの私じゃん」
三好双葉「なんで、そんなことを 忘れてたんだろ」
三好水葉「あのとき、双葉慌てて半泣きだったから お兄ちゃんのこと覚えてなかったかもね」
三好水葉「それにあのあと、お兄ちゃん 双葉のこと気にして 何もそのこと言ってこなかったし」
三好双葉「私、酷いこと言っちゃったかも」
三好双葉「いや、言っちゃったよ」
三好水葉「双葉、何言ってるの!」
三好双葉「えっ?」
三好水葉「私たちのお兄ちゃんなんだから そんなこと全然気にしてないよ!」
〇中庭
三好双葉「ここ、どこだろ」
三好双葉「水葉、どこ? 連絡してもここがどこだか分からないし」
三好双葉「早くしないと 見学会始まっちゃう」
三好優弥「はあはあ」
三好優弥「よかった、見つかった 見学会、余裕で間に合うな!」
三好双葉「・・・・・・・・・おn、優弥さん?」
三好優弥「水葉が待ってるぞ」
三好優弥「こっちだ」