昭和な女

栗スナ

どちら様ですか(脚本)

昭和な女

栗スナ

今すぐ読む

昭和な女
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇ホテルのエントランス
  俺の名はレイ。今日は見合いをすることになっていた。
  相手は俺と同い年の女性だ。見合いしろと叔父に言われたのは半年前の話。
レイ「あれ。まだ来てないのか」
レイ「何か落ちてるな」
  古いペンダントだ
レイ「あれ?何だ白い霧みたいなのが」
昭子「初めまして。レイさんですか」
レイ「あ。昭子さんですか」
昭子「そうです」
レイ(顔は忘れちゃってるけど何か写真の時と印象がだいぶ違う気が)
レイ「ではさっそく・・・」
レイ「座ってください。何か飲み物を頼みましょう」
レイ「コーヒーを」
昭子「ソーダ水を」
店員「はい」
レイ「良いお天気ですね」
昭子「ほんと。お日柄もよく晴天に恵まれて」
レイ「ええとお仕事は何をされているんでしたっけ?」
昭子「電話交換手ですの」
レイ(ケータイを新しいのと交換してるってことか?ケータイの契約業務かな)
レイ「ご趣味は何ですか。私はサッカーです」
昭子「フラフープです」
レイ「え?あの腰で回すあれですか」
昭子「そうですわ。ご存じないんですの?」
レイ「いや、知ってはいますが!珍しいですね」
昭子「みんなやっていたでしょう?」
レイ「やってませんよ!」
昭子「んまあ。面白い方!」
レイ「昭子さんは面白すぎです!」
店員「お待たせしました」
レイ「昔のお姿が想像できないな。どんなお子さんだったんですか」
昭子「普通の子ですわよ」
レイ「昭子さんは大人びていますよ」
レイ「子供の頃があったんですか」
昭子「あったに決まってるじゃないですか。当時はわたくしも子供らしくおはじきを集めたものです」
レイ「あれを集めてたんですか!」
昭子「練り消しも集めましたわ。苺やミカンとかの匂いがする物を」
レイ「へぇ・・・」
昭子「あなたの地元では何が流行っていたんですの?」
レイ「ケータイゲームですね」
昭子「ケータイ?持ち歩くことですか?」
レイ「電話のことですが・・・」
昭子「・・・あの黒い物体を?」
レイ「昭子さんの電話は黒なんですか。渋いですね」
昭子「え?電話はどこの家もだいたい黒ではないですか」
レイ「持ち歩かないんですか?」
昭子「あれを?第一、コードがついてて無理じゃないですか?」
レイ「変わってますね。仕事に困らないですか!?だってケータイ会社に勤めてるんですよね?」
昭子「ケータイ会社?何ですのそれ」
レイ「携帯電話の・・・持ち運びができる小型電話の・・・会社ですよね?」
昭子「電話が?いつ小型になったんですか?」
レイ「え。まさか昭子さんが言う電話って」
昭子「あのジリリリンと鳴る黒電話が小さくなったんですか」
レイ「マジ?」
店員「あ。お客様。このネックレス私のなんです。落としてしまって」
レイ「え。そうなんだ。じゃあ持って行って」
店員「ありがとうございます」
レイ「あれ?いない。昭子さん?」
女性「あなたレイさん?」
レイ「そうですが」
女性「初めまして。昭子です」
レイ「え・・・」
  その後俺はこの女性と見合いをした。さっきと違い普通の女性だった
  だが今でもたまに思い出すのだ。あの女性はいったい何者だったのだろうか、と。

コメント

  • 古いペンダントに閉じ込められた昭和の妖精といった趣で、なんとも言えない味わいがありました。心なしか二人の会話の時間もゆったりと流れているようで心地良かったです。最後のセミの鳴き声のような効果音が懐かしくも切ない余韻を残していい感じです。

  • 同じ名前の二人の女性の関係や、突然不思議な体験をしてしまった理由がとても気になります。これから長いストーリーが始まる序章といった印象でした。

  • シチュエーションと余韻を残す終わり方が好きでした😊
    ワンシーンという短い尺のなかで、ちょっと不思議でどこか懐かしく感じるエモい空気感が表現されてて、凄く上手だなぁと勉強になります🤔
    凄く良かったです…!

コメントをもっと見る(4件)

成分キーワード

ページTOPへ