研究室(脚本)
〇地下実験室
荒川「よし、装備の確認完了だ。 これ以外に何かあったっけ?」
大沼「大丈夫だ。あとはこいつに乗って、時刻が明日になった瞬間、未来へレッツゴーだ」
荒川「ううーっ遂にこの日だ・・・!」
大沼「油断は禁物だぜ?」
荒川「分かってる。 出来る限りシュミレーションはしたからな」
大沼「じゃあ問題。未来人に出会ったら?」
荒川「写真撮らしてもらって取材!録音も忘れず!」
大沼「オーケー。未来の世界はどうなっているか分からない。戦時中かもだし、とっくに滅びてるかもしれない。臨機応変に、だ」
荒川「そうだな。よし、そろそろかな。装置の準備を頼む」
大沼「了解、最終確認だ。 君が飛んでくのは現段階で行ける最も遠くの未来、583年後の世界だ」
荒川「うん・・・!」
大沼「今日は2057年6月22日。つまり2640年の6月23日へ向かい、約15分したら今日この場に未来から自動で戻って来る」
荒川「改めてみると凄い計画だよなぁ」
大沼「あぁそうだ。 これに志願したおめーも凄いよ」
荒川「だって未来の世界だぜ!?誰もが夢見るって」
大沼「その通り、君は人類の夢を背負っている。くれぐれも頼んだぞ」
荒川「任せとけっ」
部屋の時計はもうすぐ0時を示す
大沼「行くぞ。スイッチまでー、 5,4,3,2,1,」
カチッ
荒川「ハァ、ハァ、ハァ、」
大沼「おい、無事か?感覚におかしい所は?」
荒川「あぁ、体に問題は、ない。うー、これ割と酔うな・・・」
大沼「ん?、装備はどうした?カメラも録音機も、何も見当たらないが・・・」
荒川「・・・良く考えれば分かるはずだったんだ・・・クソ・・・」
大沼「何だ、どういうことだ? 何があったか話してくれ!記憶は忘れてないだろ?」
荒川「そうだ、そうなんだよ」
大沼「ん?」
荒川「今日この実験が行われる記憶や記録が俺が飛んだ先の未来でも忘れられてなかったんだ」
大沼「まさか、待ち伏せか?」
荒川「そんなとこだ。今日から583年間の間のどこかで未来の情報を過去に持ち帰られたくない何かがあったっぽいな」
大沼「記憶操作は?されなかったのか?」
荒川「あぁ、されなかった。 よし、未来の話を詳しくしようか」
大沼「あぁ、頼む」
荒川「飛んだ先には各国の首脳と名乗る人物が大勢いた」
大沼「凄い景色だな」
荒川「温厚な雰囲気ではあったがその段階で持って行った装備は全て回収された。隠し持ってた小型カメラもだ」
大沼「俺のアイディアが屈したか・・・」
荒川「583年後のここは、2057年6月23日から俺が来ることを知っているからか、外が全く見えないよう四方を壁で囲まれていた」
大沼「それは・・・明らかに警戒されてるな」
荒川「しかも未来人たちも今の俺たちと同じような服を着て、部屋の内装もちょうどこんな雰囲気を再現していた」
大沼「警戒どころか一つも情報を持ち帰られたくないようだな」
荒川「そして俺は椅子に座らされ時空を超えた世間話に付き合わされた」
大沼「つまんねー!マジかよ」
荒川「しかも何度も未来の事を聞いたがここに戻る瞬間まで何も言わなかった。40年ぐらい前のAIみたいな一辺倒な会話だけだったよ」
大沼「プログラミングされてるみたいだな」
荒川「でもおかしいよな。未来で何か問題が起こっているなら、一番最初に未来へ行った俺に伝えて回避するよう頼む気がするが」
大沼「確かに。未来の状況を知られちゃまずいってどんな状況だろうか」
荒川「うーん?」
部屋の時計は0時2分と表示されている
荒川「あれ?」
大沼「何だ?」
荒川「そういえば時計が無かったなぁ。あの部屋」
大沼「時計が無い?珍しいが不自然って程でもないのでは?」
荒川「あ、もしかして「AIみたいな一辺倒な会話」・・・?」
大沼「どうした?何かおかしいのか?」
荒川「もしも、もしもだぜ?未来の情報を知られたくない状況って、人間じゃない別の何かの都合なんじゃないか?」
大沼「おいおいどういうことだ?」
荒川「だってよ、例えば、例えば、583年後、地球が何かに侵略されていたとしたら、この事実、侵略者側は知られたくないよな・・・」
大沼「まさか・・・。君が会った首脳とやらは侵略者がプログラミングした人間だとでも?」
荒川「研究者は勘が鋭いな」
大沼「え?」
荒木、装置の操作盤を破壊する
大沼「おい荒木!?何して・・・」
「ん?」
「地球の侵略成功の確認が終わったからね」
すごく未来的な話で、面白かったです。こんな未来が来るのかな。数十年後の未来って、予想もできるかもしれないけど、数百年後の未来は全く予想ができないですね。
なるほど…読めば読む程謎が解けていく感じがとても面白かったです!
AIの侵略…現実的には危惧されているようですが、実際は起きないと言う意見も多いですよね。バイアスなのかもしれませんが…。
面白くて大満足です。短編の中に、良質のSF作品ならではの細やかな設定や充実した内容が込められていて、読み応え抜群でした。