第3話『交換条件』(脚本)
〇明るいリビング
三好家では毎朝
熾烈な競争が繰り広げられていた。
三好水葉「お兄ちゃん、それ私の唐揚げ!」
三好優弥「1人分の数は決まってないだろ!」
三好水葉「30個あるんだから 1人10個ずつは暗黙の了解でしょ!」
三好水葉「じゃあ、この生姜焼きは貰うね!」
三好優弥「仕方ないな5切れぐらい」
三好双葉「二人とも、朝ごはんなんだから落ち着いてよ」
三好双葉「おかずはたっぷりあるんだから」
三好水葉「双葉もお兄ちゃんに取られないように 気を付けてよ」
三好水葉「からあげ10個 生姜焼き10切れ ドンブリご飯だけじゃ痩せちゃうよ!」
三好優弥「俺は双葉の分まで奪うほど そこまでがめつくない」
三好双葉「まったく 毎朝騒々しい」
三好家の一日に消費される食糧は
一般家庭の5倍とされている
〇学校の廊下
──放課後
三好優弥「喉が渇いたし例の場所でも行くか」
〇シックなバー
三好優弥「マスターいつものやつ」
三好水葉「はーい 麵つゆの蕎麦湯割りですね」
三好優弥「マスター聞いてくれよ」
三好水葉「なんでも聞きますよ」
三好水葉「どうぞ 麵つゆの蕎麦湯割りです」
三好優弥「すまないな」
三好水葉「それで何ですか?」
三好優弥「今日も朝から 妹とおかずを奪い合ったんだ」
三好水葉「はいはい」
三好優弥「つい空腹に負けて 唐揚げを譲ることが出来なかったんだ」
三好優弥「俺ってダメなアニキだよな」
三好水葉「何言ってるんですかお客さん」
三好水葉「きっとその妹も同じこと思ってますよ 生姜焼き2切れだけにしておけばよかったって」
三好優弥「ホントか?」
三好水葉「はい!私にはわかります」
三好水葉「きっと明日の朝は山盛りの唐揚げが 食卓に並ぶはずですよ」
三好優弥「マスター、あんた良い奴だな」
三好水葉「何言ってるんですか お客さんだって、妹想いじゃないですか」
三好優弥「って、双葉じゃん!」
三好水葉「水葉だよ!」
宇喜多羽彩「二人で何やってるの?」
三好水葉「流れで遊んでます」
三好水葉「いつもこんな感じです」
宇喜多羽彩「そうなんだ。楽しそうね」
三好優弥「秋田さん」
宇喜多羽彩「沖田さんだよ!」
三好水葉「宇喜多先輩は何か飲みます?」
三好水葉「今日のおすすめは ・麵つゆの蕎麦湯割り ・しじみの味噌汁 ・タピオカ入りおでん汁」
宇喜多羽彩「普通のオレンジジュースお願い」
三好水葉「はーい」
宇喜多羽彩「学園名物バー風カフェ『裏番』 使ってたんだ」
三好優弥「水葉がいるときな」
三好優弥「宇喜多さんも遊びに?」
宇喜多羽彩「違うよ 部活があるから二人を呼びに来たの」
宇喜多羽彩「そむらちゃん 一人で泣きそうになってたよ」
三好優弥「あ、忘れてたわ」
宇喜多羽彩「そむらちゃんの扱い雑すぎる」
三好水葉「どうぞ、オレンジジュースです」
宇喜多羽彩「ありがとう」
三好水葉「でも、よくここが分かりましたね」
宇喜多羽彩「双葉が多分ここじゃないかって 教えてくれた」
三好優弥「さすが我が妹」
三好水葉「優が拗ねないうちに行ってあげて」
三好水葉「私はあと少しだけここにいるから」
三好優弥「じゃあ、宇喜多さん それ飲んだら部室に行くか」
宇喜多羽彩「うん!」
〇グラウンドの水飲み場
三好優弥「今日は学園祭の出し物を ピックアップするか」
宇喜多羽彩「楽しそう」
三好優弥「ちなみに料理部は何かやるのか?」
宇喜多羽彩「他の部と合同で屋台村 毎年恒例だよ」
宇喜多羽彩「あとは部員のやる気次第で変わるかな」
宇喜多羽彩「ミス研は去年何やったの?」
三好優弥「心霊写真展示と 心霊スポット探索動画上映会」
宇喜多羽彩「高校生がやるには本格的すぎない?」
三好優弥「せっかく活動してるんだから それを活かさないとな」
宇喜多羽彩「うわ、初めてまともなこと言ってる」
三好優弥「失礼な いつも真面目だぞ」
宇喜多羽彩「ふざけた人生を歩んでると思って 私は心配してたよ 真面目に生きてたんだね」
宇喜多羽彩「それ聞いてさらに心配になった! この子、将来どうなるんだろ」
三好優弥「意外と宇喜多さんは失礼な奴だな」
宇喜多羽彩「こう見えて図々しいよ」
「スキャンダルっす」
九鬼美月「あの優弥先輩が 妹ちゃんとそむらっち以外と 一緒にいるっす!」
三好優弥「美月じゃん」
宇喜多羽彩(美月?)
九鬼美月「はーい! あなたの後輩九鬼美月っす!」
宇喜多羽彩「どちら様?」
三好優弥「見ての通り、美月だ」
九鬼美月「コミュ障みたいな説明省いた 紹介やめてくださいっす」
九鬼美月「はじめまして! 宇喜多先輩!」
九鬼美月「記録映像部部長の高等部1年生 九鬼美月です!」
宇喜多羽彩「高等部2年生料理部副部長 宇喜多です!」
三好優弥「宇喜多さん、副部長だったのか!?」
宇喜多羽彩「そうだよ~ 知らなかった?」
宇喜多羽彩「少しだけ偉いんだぞ~ 敬えよ~」
三好優弥「俺の方が部長だから偉いな もっと敬え」
九鬼美月「うわぁ、凄い低レベルな争いをしていることだけは分かるっす」
九鬼美月「じゃなくて、どうして 優弥先輩が学園十天使の 宇喜多先輩と一緒にいるっすか!」
宇喜多羽彩「十天使?」
九鬼美月「学園内の『二つ名評議会』で 公認された呼び方ですよ」
三好優弥「天使というよりは 堕天使だよな」
宇喜多羽彩「誰が第六天魔王だって?」
三好優弥「す、すまん」
三好優弥「あと魔王なんて言ってない」
九鬼美月「あの優弥先輩を手玉に取ってるっす さすが宇喜多先輩 只者じゃないっす」
宇喜多羽彩「ただの女子生徒だから この変人さんと一緒にしないでね!」
九鬼美月「は、はいっす!」
九鬼美月「ちなみに優弥先輩は 『恋翔学園三大変人』の一人として 公認されてるっす」
九鬼美月「おめでとうございます!」
宇喜多羽彩「おめでとう!」
宇喜多羽彩「まともな活動してるのね その評議会」
三好優弥「あとで評議会でクーデター起こしてやる」
九鬼美月「ちなみに残り二人は 斎条理事長とひそう研の京極先輩っす!」
九鬼美月「今度、公認されたお気持ちを インタビューにいくっす!」
三好優弥「首を洗って待ってろよ」
三好優弥「ジュースとお茶請けを そむらに用意させて待っててやる」
宇喜多羽彩「もてなすんかい あとそむらちゃんにやらせるんかい」
九鬼美月「わー楽しみー」
九鬼美月「じゃなくて、どうして優弥先輩と 宇喜多先輩が一緒にいるっすか!?」
宇喜多羽彩「私がミス研に入部したからだよ! 一緒に部室向かってるの」
九鬼美月「宇喜多先輩 弱みでも握られたっすか?」
宇喜多羽彩「そむらちゃんと同じこと言ってるw 残念ながら自分の意志だよ」
三好優弥「お前ら失礼だな」
九鬼美月「じゃあ、一緒に部室に 向かってるだけですか?」
三好優弥「そうだぞ」
九鬼美月「つまんないっす」
三好優弥「なんで、勝手に がっかりされないといけないんだ」
九鬼美月「せっかくの学園スキャンダルだと思ったのに」
三好優弥「何だと思ったんだよ」
九鬼美月「二人がお付き合いしてるかと思ったっす」
三好優弥「そんなわけないだろ」
宇喜多羽彩「そうだよ そんな誤解されたら 恥ずかしくて生きていけないよ」
三好優弥「失礼すぎんだろ」
九鬼美月「そうっすよね 優弥先輩が恋愛なんてするわけないっすよね」
九鬼美月「見た目良くても、中身あれっすもんね」
三好優弥「お前らな」
宇喜多羽彩「本当に部室に向かってるだけだから 安心していいよ」
九鬼美月「そうだったんすね」
九鬼美月「部室に向かってる途中 お邪魔してすみませんっす」
宇喜多羽彩「全然いいよ! 楽しかったし」
三好優弥「楽しませてもらった」
九鬼美月「じゃあ、せっかくだから お二人を撮影させてください」
三好優弥「いいぞ」
宇喜多羽彩「いいね!」
九鬼美月「じゃあ、撮りますよ!」
九鬼美月「写真印刷したらお渡しするっす」
宇喜多羽彩「ありがとう!」
九鬼美月「今度、ミス研と料理部にも 撮影に行きますからよろしくっす」
宇喜多羽彩「いつでもおいで 待ってるよ!」
三好優弥「いつでも来い」
九鬼美月「はーい! じゃあ、失礼するっす」
宇喜多羽彩「面白い子だったね」
三好優弥「変わった奴だよな」
宇喜多羽彩「あんたに言われたくないわ」
三好優弥「じゃあ、行くか」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
三好優弥「俺を睨んでない?」
宇喜多羽彩「別に」
〇中庭
三好優弥「さっきからなぜ喋らないんだ」
宇喜多羽彩「・・・・・・何でもない」
三好優弥「言えよ」
宇喜多羽彩「なんで、美月ちゃんのことは 呼び捨てなの?」
三好優弥「あいつに下の名前で 呼び捨てにしてくれって言われたから」
宇喜多羽彩「それだけ?」
三好優弥「そうだぞ」
宇喜多羽彩「なーんだ、良かった」
三好優弥「どうした、急に 気持ち悪い」
三好優弥「それで何が良かったんだ?」
宇喜多羽彩「何でもないよ」
宇喜多羽彩「ねえ、私のことも 下の名前で呼んでいいよ」
三好優弥「宇喜多さん 今日は病院に行った方がいいぞ テンションがおかしい」
宇喜多羽彩「なんで、ドン引きしてるの!」
宇喜多羽彩「ほーらほーら 宇喜多さんの下の名前を」
宇喜多羽彩「呼びたくなーる 呼びたくなーる」
三好優弥「誰かああああ 救急車ああああ」
宇喜多羽彩「おいおい そりゃあないぜ」
三好優弥「どうしたのさ、宇喜多さん いつにも増して変だぜ、宇喜多さん」
宇喜多羽彩「あからさまに 宇喜多さんって呼ぶの嫌がらせ?」
宇喜多羽彩「あと宇喜多さんは変じゃないよ~」
宇喜多羽彩「ていうか、どうして頑なに 呼んでくれないのかな?」
三好優弥「だって、俺 宇喜多さんの下の名前知らないし」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
宇喜多羽彩「なんですと」
宇喜多羽彩「言ってなかったっけ」
三好優弥「聞いたことないな」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
宇喜多羽彩「早く言えよ!バカ!」
三好優弥「俺が悪いのか!?」
宇喜多羽彩「乙女に恥をかかせるな!」
三好優弥「誰が乙女? 戦乙女だろ?」
三好優弥「なんで、的確にみぞおち、喉、すね 急所だけ狙ってくるんだよ」
宇喜多羽彩「乙女を愚弄したんだから当然よ」
三好優弥「じゃあ、下の名前何ていうんだよ」
宇喜多羽彩「羽彩」
三好優弥「何て読むの?」
宇喜多羽彩「こいつ、そのまま受け取りやがった」
宇喜多羽彩「はあや」
三好優弥「はあやか わかった」
宇喜多羽彩「今度から呼び捨てで呼んでね そうすると、羽彩は喜びます」
三好優弥「分かった羽彩」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
宇喜多羽彩「・・・・・・えっと」
三好優弥「どうした?」
宇喜多羽彩「呼び捨て」
宇喜多羽彩「やばい!」
三好優弥「やめるか?」
宇喜多羽彩「ダメ絶対! 今度から下の名前で呼び捨て!」
宇喜多羽彩「やらなかったから罰ゲーム!」
三好優弥「俺可哀そうすぎだろ」
宇喜多羽彩「じゃあ、私も優弥って 呼んであげる!」
宇喜多羽彩「交換条件!」
三好優弥「俺は別にいいよ いつも通り苗字で」
宇喜多羽彩「じゃあ、よろしくね 優弥!」
三好優弥「なんでだよ!」
〇合宿所の稽古場
蒼村優「・・・・・・誰も来ない」
あら!!あらあら!!優弥がモテモテになっていく感じが・・・✨こういうの好きです✨😊
今後、部活やらなんやら色々ありつつも、人間関係もどうなっていくか気になりますね✨(o^^o)