テレビな女

栗スナ

戦争で成り立って暮らす町(脚本)

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〇荒廃した街
メトジェフ「さっきすごい空爆がありました。でも我々は冷静に行動をしました」
メトジェフ「我々は最後まで戦うでしょう。勝利は目前です」
メトジェフ「我々は決してあきらめない。勝利の日を迎えるまでは。 以上。現場からのリポートでした!」
テレビ局カメラマン「いい映りだったよ。メトジェフ」
テレビ局カメラマン「今日はもう上がろうか」
メトジェフ「そうだね。じゃあここで解散するか」
テレビ局カメラマン「ああ、編集は明日までに間に合わせておくよ」
メトジェフ(さて、私は駅前のバーにでも行くか)
  私の祖国は戦場である。
  それが日常化している。
  国営放送でリポートをして現場の様子を伝え国民には忍耐を、
  世界には誇りを失わず窮状を訴えなければならない
  私は最初は一兵士として戦っていたが、ある日「ボス」の配慮で宣伝局に回され、もう3年になる
  この仕事は女が訴えた方が反響があるらしい

〇荒れた小屋
市民A「調子はどうだい」
メトジェフ「悪くない。そっちはどうだ」
市民A「今は送られてきた支援物資を一部外国に流しているよ。いい金になるんだ」
市民A「生活もずいぶん楽になった」
メトジェフ「それはいいね」
市民B「よう。久しぶり」
メトジェフ「久しぶりだな」
市民B「何だか最近は厭戦気分が広がって武器が売れなくなってきたな」
メトジェフ「そうか」
市民B「だが別にいい。その分海外から金が入るようになった」
市民B「すでに使いきれないほどの金がな」
メトジェフ「だろうな。その服は新調したのか?」
市民B「昨日な。ブランド品だぞ」
市民A「今後どうだろう もっと激しく窮状を訴えてみては?」
市民B「うん。まだまだ武器を買う金が足りてないって言ってくれると助かるぜ」
メトジェフ「任せろ。その代わり代金は払えよ」
市民B「分かっている」
市民A「君のおかげで以前より俺の生活もよくなったよ」
メトジェフ「ああ。このビジネスのおかげでこの街もよくなった」
  このバーでのつながりが私に富をもたらした。「ボス」と知り合ったのもここだった
  私はボスに運よく気に入られた

〇基地の広場(瓦礫あり)
メトジェフ「首都砲撃が行われています。ここももう危険です」
メトジェフ「私たちは最後まで戦います。ですがお金も武器も足りていません」
メトジェフ「戦う力があるのに何ということでしょう。外国は一刻も早く援助をする必要があります」
メトジェフ「そうしないと世界が終わるでしょう」
テレビ局カメラマン「はい、カッート!」
テレビ局カメラマン「鬼気迫るいいリポートだったぞ!」
メトジェフ「ボスからだ」

〇宮殿の部屋
大統領「私だ」
大統領「今月いっぱいで戦争は終わりだ」
大統領「次は今まで外国から送られた金で戦災者に家を貸す政策を始める」
大統領「長期的な視点に立てばかなりの利益になるはずだ。その宣伝をテレビでしてくれ」
大統領「報酬は十分に出す」
大統領「ここまで戦争ビジネスは計画通りに来た。最後まで頼むよ」
  一兵士のときは知らなかった世界
  この世界は出来レースでできていたのだ。報道もビジネスも、そして戦争すらも・・・
  ボスの上にもボスがいるらしい。ある巨大な組織の幹部をしている外国人だそうだ
  この世界は相当闇が深い
  だが私は仕事があればそれでいい・・・

コメント

  • 少し前の流行り病から、少しづつマスメディアというものを白い目でみるようになりました。小さい頃から、何かしらテレビの影響を受けているんだと自覚できたのは自得にはなりましたけど。背に腹は代えられないという人が多いとというわけですね・・・。

  • テレビやネットが諸刃の剣であることがよく分かるお話でした。どんな世界にも裏があり私腹を肥やす輩がいるということですね。兵士であるメトジェフが最初の使命とは正反対の戦争ビジネス宣伝マン=テレビの女になったことは皮肉の極みですね。

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