出会いの前日(脚本)
〇魔界
黒羽涼(・・・これが噂の物だろうか)
黒羽涼「・・・すみません」
店主「なんだ?」
黒羽涼「この石は・・・ _魔女石でしょうか? あの、魔狩りの魔女を封印しているという」
店主「・・・ああ、そうだが・・・ 欲しいのか? なぜ、お前のような子供が探している」
黒羽涼「僕の・・・“妹”を助けたいから」
店主「・・・気に入った 自分のためじゃない、妹のためにその魔女石を探してるたぁ、面白い いいぜ、持っていきな」
店主「そいつは、あの魔狩りの魔女が本当に入ってる。 取り扱いには気をつけるんだな」
そう言われ、少年は石を受け取って、去っていった。
_石が、淡く光ったのは“魔女”と関係があるのだろうか
???(ふん・・・ 妹を助ける、ねぇ・・・ 本当かな)
〇地下室
黒羽涼「・・・さて、 この封印を解かなければ、話は進まないよね」
少年がつぶやくと、石が光る
先ほどと違い、点滅するように光っている
_まるで、動揺するように
???(こ、こいつ・・・ 本気で妹を助けるために、妾を探してたのか!? 恐れられていた魔女の封印を解くなんて、馬鹿な・・・)
???(第一、妾だってこの封印は解けていないと言うのに・・・ こいつ・・・何者だ・・・?)
黒羽涼「________!」
少年が何か呟くと、彼と石の周りに魔法陣が現れ、黒い光が彼の掌から溢れる
それと同時に、石から眩い白い光が溢れた
黒羽涼「ぅ・・・」
???「な・・・これは・・・」
二つの声が響いた時、部屋を二色の光が覆った____。
〇地下室
黒羽涼「ぅ、ん」
???「おい、小僧!!」
黒羽涼「わっ!!」
???「お前が妾の封印を解いたというのに、気を失うとは何事だ!!」
黒羽涼「あ、貴方が・・・ 魔狩りの魔女 “深雪”様・・・」
深雪「ふむ・・・ 流石に、封印を解いておいて 妾の名前を知らない、とは言わなかったか」
深雪「そんなことをぬかせば、嬲り殺すつもりでいたが・・・。 さて、お前 何の用で、あの石を探し、妾の封印を解いた?」
黒羽涼「・・・その様子では、店主との会話も来ていたのでしょう?」
深雪「あの魔狩りの魔女の力を借りたい、その理由が他者とは・・・とんだ愚か者だ」
黒羽涼「僕の、妹は・・・」
黒羽涼「_貴方と同じです、深雪様」
〇地下室
深雪「・・・同じ? どう言う意味だ?」
黒羽涼「妹・・・“従姉妹”の姫は、 貴方と同じく、『黒魔女』なのです」
深雪「・・・・・・なるほど、黒羽 それが今の妾の“子孫”の血か」
黒羽涼「はい。 ・・・貴方と同じく、強い力と不老不死の体を持ち、 魔界にすら、名を轟かせ・・・」
黒羽涼「そして・・・」
深雪「“人間から、その力を恐れられ、虐げられていた” ・・・か なるほどな」
黒羽涼「!!!!」
黒羽涼「・・・ふふ、噂通り 読心の魔眼をお持ちなんですね 説明は必要なさそうだ」
深雪「・・・世界を覆うほどの、膨大な魔力量・・・ こりゃ、魔物・・・いや、それ以外の怪異からも命を狙われるだろう」
深雪「で?そのガキは、今どこだ?」
黒羽涼「この家です 彼女の両親は、仕事で共に暮らせず、彼女は孤独と戦っていた」
深雪「・・・そこにお前がやってきて、共に暮らしている・・・というわけか」
黒羽涼「はい、そういうことです 彼女は、もう孤独ではない では・・・まだ5歳の少女を苦しめているのはなんでしょうか?」
深雪「・・・・・・」
深雪「力の暴走への恐れ ・・・お前の思考を読んだところ、一度暴走しかけて、人に怪我・・・当たりどころが悪けりゃ、殺しかけてるな」
黒羽涼「ご名答 ・・・となれば、僕のお願いもわかってくれていますよね?」
深雪「・・・何が悲しくて、子供に魔力操作を教えなければならん お前が教えればいいだろう」
深雪「見たところ、10年と少ししか生きていない。その年で妾にかけられた封印を解いた その技量があれば、十分だろう」
黒羽涼「おや・・・あの伝説の魔女様に褒めていただけるとは・・・光栄です ・・・僕と、あの子では魔力の量が違いすぎる」
黒羽涼「魔法は教えられても、大きすぎる魔力の操作はなんとも。 ・・・ですから、深雪様」
黒羽涼「_貴方の力が必要なのです」
深雪「・・・はぁ」
深雪「仕方ねぇなぁ・・・ 封印を解いてもらった、礼な 特別」
黒羽涼「ありがとうございます!」
深雪「・・・その、姫とやらにはいつ会えばいい」
黒羽涼「明日です ・・・僕が、この石をペンダントにし、それを渡します なので、貴方はその時に」
深雪「・・・もう一度、中に入れと?」
黒羽涼「僕が出入り可能にしておきますので、ご安心を」
深雪「・・・へいへい、わかったよ」
〇貴族の部屋
そして・・・現在
彼女・・・
黒羽姫は、窓辺に座り回想していた。
_10年前のことを
黒羽姫(16)「・・・・・・」
黒羽深雪「・・・なんだ、姫 眠れないのか?」
黒羽姫(16)「・・・ 少し、昔を思い出していました」
黒羽深雪(まさか・・・)
黒羽姫(16)「──貴方が思っているようなことじゃない 貴方と・・・出会う、前日のことを」
黒羽深雪「ああ・・・ “あいつ”が、妾の封印された石を買った日か」
黒羽姫(16)「ええ ・・・今思えば、あの人は私のためにあの石をこのペンダントに加工していたんですね 通りで、帰りが遅いと思った」
黒羽深雪「ああ・・・だと思うぞ」
理由はわからないが、この場にあの少年・・・
涼の姿はない
黒羽深雪(・・・どっちにしろ、あいつのことを思い出してたんじゃないか)
黒羽姫(16)(・・・今夜は、月が紅く煌めいている 明日は深雪様の誕生日だと言うのに)
彼女達は、理由の違いはあれど、あの少年に想いを馳せた
8月4日、姫と深雪の出会った日・・・深雪の誕生日の前日
_そして、紅い満月の夜のこと
情景描写すごいですね!
会話を読んでいるだけで、彼らの持つ雰囲気とか伝わってきます。
人ならぬ力を持つと、あれこれと大変ですよね。
魔力…中々現実的には感じることのないことなのでピンとはきませんが、やはり他の人や周りの人より優れている人は嫌われやすいのですかね…。
美しい情景が浮かんでくるような言葉の数々でした。タイトルもどこか余韻を残し姿を消した少年の不思議な力があとを引く素敵なストーリーでした!