事務所にいた人の正体とは(脚本)
〇校長室
今村「こんにちは」
今村「ええ、電話で連絡をしていた今村です」
今村「今日はよろしくお願いします」
今村「まずはどうすれば・・・」
今村「恥ずかしながら、こういったことは初めてでして」
今村「みなさんそうおっしゃる?」
今村「そうなんですね・・・」
今村「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
今村「はい、借金の返済のためにここまで来たんですから・・・」
今村「どうして借金漬けになったのか?」
今村「気づいたら、としかいいようがありません」
今村「まだ行けるまだ余裕があるとおもっていたら・・・」
今村「・・・・・・・・・・・・」
今村「いえ、薄情するとおだてに弱くてですね・・・」
今村「お似合いですよ、とか。センスありますとか」
今村「しかも、断るのが苦手で、もしお金を準備できたらでいいんで、なんて言われてしまい・・・」
今村「ローン組んだら準備できちゃったりして・・・」
今村「・・・それでこうなってしまってるんですから、笑い話にもなりません」
今村「・・・・・・・・・・・・」
今村「やさしいんですね。ありがとうございます」
今村「はい、では・・・・・・」
今村「・・・・・・・・・」
今村「・・・・・・このこと、誰にもバレないって本当ですか?」
今村「いえ、職場にバレたらそこには居られないな、と」
今村「心情的な部分で、自分がそういう人間だと思われたくなくて・・・」
今村「分かっています。それでどうにもならなくてここに来たんですから・・・」
今村「覚悟はしてきたつもりです──」
今村「それでは・・・」
今村「・・・・・・・・・」
今村「任意整理のほう、よろしくおねがいします」
任意整理とは
弁護士、司法書士等の専門家に債権者との交渉を頼み、債務の額を確定させ、支払可能な額を合意して支払う方法です
色々なシチュエーションを想像して、一体何が……とドキドキしていたら、まさかの任意整理!最も適切な展開であるはずなのに、肩透かしを食らった気分ですww
借金まみれになるなんて、どんな派手な生活をしてきたんだと偏見を持ってよみはじめてしまいましたが、なるほど借金とはそういう風にいつの間にかできてしまうのかと少し怖くなりました。最終的に、任意整理という方法を読者に教えてくれる優しいお話だったんですね。
今村の一人語りで物語が進行するので、場所や話し相手が気になって否応なしに緊張感が高まりました。その緊張感が最後に緩んで「ほ〜、なるほど」となる瞬間が気持ちよかったです。兎にも角にも、任意整理とは無縁な生涯を送りたいものです。