〇明るいリビング
夫「離婚しよう」
妻「えっ・・・急にどうしたの？」
夫「急じゃない。ずっと考えてたんだ」
夫「君とはもう一緒にはいられない」
妻「どうして？ 私、何か悪いことした？ 理由があるならハッキリ言ってよ！」
夫「・・・じゃあ言うけど」
夫「君、掃除洗濯炊事が何もできないよね」
妻「それは最初から分かっていたことじゃない。私は水が苦手だし・・・」
妻「それに、食事は あなたが作らなくていいって──」
夫「毎回あんなものを出されたら嫌にもなる」
夫「それに、君は食べ方も汚い」
妻「付き合ってた頃は そんなこと言わなかったじゃない」
妻「豪快な咀嚼音がいいねって言ってたのに」
夫「囓る音はまだ我慢できる。 だけど、液体をすする音が耐えられない」
夫「正直言って、怖いんだ──」
妻「・・・ッ」
夫「君は見た目も変わってしまった。そんなに大きくなるなんて、思いもしなかったよ」
妻「うちの家系は女子の方が大きいのよ。 その話もしたでしょう？」
夫「目が赤いのは？」
妻「これは・・・」
妻「・・・仕方ないじゃない。 そういう種族なんだもの」
夫「手だってそんな────」
夫「そんなところに 生えてくるなんて聞いてない！」
妻「言ったわよ！」
妻「場所は言わなかったかもしれないけど、 腕が何本か増えることは伝えていたわ！」
妻「全部分かっていて 私と結婚したんじゃないの!?」
夫「分かっていた」
夫「分かっていたつもりだった・・・」
夫「だけど、ごめん」
夫「やっぱり俺には耐えられない！」
妻「どこに行くのよ！」
妻「・・・絶対逃がさない」
妻「・・・あ、パパ？」
妻「ちょっと旦那とケンカしちゃって」
妻「ごめんなんだけど、みんなを集めて 彼を捕まえてくれないかな？」
妻「えっ？ うふふ・・・ やだぁ、食べちゃだーめ」
妻「──彼は、私の獲物なんだから♡」