その執事は、物語る。

槻島 漱

ねこ局長は、今日も「頑張る」が言えない 後編(脚本)

その執事は、物語る。

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〇廃墟の倉庫
謎の男「さあ、そろそろ時間だ」
謎の男「やつは来るかな?」
鼠田さん「やつ・・・?」
???「じゃじゃーん、なのです!」
謎の男「来たか・・・!!」
鼠田さん「この声は・・・!!」
鼠田さん「ねこ局長!?」
鼠田さん(・・・あら?)
鼠田さん(あれ、ねこ局長かしら・・・)
謎の男「遅かったな、ねこ局長殿」
謎の男「待ちくたびれたぜ」
ねこ局長?1「おなのこには、いっぱい準備が必要なのです」
謎の男「そうかよ」
謎の男「だが、そんなこと言っていられるのも今のうちだ」
ねこ局長?1「鼠田さんになにするつもりです!?」
謎の男「決まってるだろ?」
謎の男「お前がちゃんと言うことを聞かなければ・・・」
鼠田さん「ひっ・・・!」
謎の男「こいつの命はないってことだ」
ねこ局長?1「やめるです!!」
謎の男「だったら、」
謎の男「大人しく言うことを聞くんだな」
ねこ局長?1「ぐう・・・」

〇廃墟の倉庫
ねこ局長?1「それで?」
ねこ局長?1「ねこにどうしてほしいです?」
謎の男「まあ、そう焦るな」
謎の男「まずは、昔話を聞いてもらおうか」
鼠田さん「昔話・・・?」
謎の男「ああ」
謎の男「ねこ局長殿と俺の、な」
謎の男「この姿に見覚えはないか?」
蜘蛛妖怪ゲダル「ふはははは・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「どうだ、ねこ局長殿?」
ねこ局長?1「んーーーー・・・」
ねこ局長?1「思い出せないのです!」
蜘蛛妖怪ゲダル「いや、キリッとすんな!」
蜘蛛妖怪ゲダル「まあいい・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「とにかく思い出してもらおうか」
蜘蛛妖怪ゲダル「なにがなんでもな!」

〇森の中
  ウン百年前・・・
蜘蛛妖怪ゲダル(ようやくここまで征服できた・・・)
蜘蛛妖怪ゲダル(あとは、東側半分だけ・・・)
蜘蛛妖怪ゲダル「さて、どうするか・・・」
妖怪1「この西側の人間どもに催眠をかけて侵略させるのはどうだ?」
妖怪2「それは難しいだろう」
妖怪2「我々にはまだそこまでの力はない」
妖怪2「この猫の毛町全体を侵略してからでないと、能力の活性化はされんからな」
妖怪2「しかし、だ」
蜘蛛妖怪ゲダル「うむ・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「この町の東側には、何かとてつもなく強力な力を感じる・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「その力の招待を突き止めねば、侵略は難しいだろう・・・」
妖怪2「お前はたしか、東側の偵察に行っていた・・・!」
蜘蛛妖怪ゲダル「一体、何があったんだ!!」
妖怪3「う・・・うう・・・」
妖怪3「みんな、やられた・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「なんだと!?」
妖怪3「俺は、どうにか持ちこたえたが・・・」
妖怪3「もう、げん、か・・・」
妖怪2「お、おい!」
蜘蛛妖怪ゲダル「東側で一体何が・・・」
妖怪1「どうやら、行ってみるしかなさそうだな」
蜘蛛妖怪ゲダル「・・・ああ」
  この選択を、俺はのちに後悔することになる──

〇廃墟の倉庫
ねこ局長?1「すぴー・・・」
鼠田さん「ね、ねこ局長・・・」
鼠田さん「ちゃんと人の話は聞かなきゃダメですよ」
ねこ局長?1「ふみゃ・・・?」
ねこ局長?1「んんん〜・・・」
ねこ局長?1「だって、話長すぎるのです」
蜘蛛妖怪ゲダル「長いって言うな!!」
ねこ局長?1「さっさと終わらせてほしいなのです」
ねこ局長?1「ねこ、そんなに暇じゃないのです!」
蜘蛛妖怪ゲダル「ぐぬぬぬぬ・・・!」
鼠田さん「ま、まあまあ・・・」
鼠田さん「続き、お願いします」
蜘蛛妖怪ゲダル「ふん、まあいい」

〇城下町
  猫の毛町 東側
蜘蛛妖怪ゲダル「な、な、な・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「なんじゃこりゃああああああ!!」
  俺は目を疑った。
妖怪4「う・・・ぐぐ・・・」
妖怪7「うう・・・」
  そこかしこに倒れ、溶けかける仲間たち。
妖怪2「おい!」
妖怪2「一体何があったんだ!」
妖怪6「あ、あれ・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「ん・・・?」
蜘蛛妖怪ゲダル「ね、こ・・・?」
  仲間が指を指した方向にいたのは、でかい猫だった。
  その猫が一声鳴いた。
  すると・・・
妖怪2「ぐっ・・・!なんだこれは・・・!」
妖怪1「か、体が勝手に・・・!」
蜘蛛妖怪ゲダル「お、おい!お前たち!」
  俺以外の妖怪たちの体が、勝手に猫に吸い寄せられるように動き出した。
  そして猫までたどり着き猫がまた一声鳴いた、その時・・・
妖怪2「か・・・」
妖怪1「か・・・」
「可愛い〜〜〜〜〜〜〜!!」
  仲間たちはそう叫んで、でかい猫の体に抱きついた。
蜘蛛妖怪ゲダル「お前たち〜〜〜〜〜!!」
  そしてみるみるうちに溶けていった。
ねこ局長「うみゃ」
妖怪2「ぐあっ!」
ねこ局長「みゃっ」
妖怪1「うぐはっ!」
  猫はまるでハエをたたき落とすかのように、仲間たちの溶けかけた体をはらい落とした。
蜘蛛妖怪ゲダル「な、あ、あ・・・」
  恐怖を感じた俺は、それをただ見ていることしかできなかった。
蜘蛛妖怪ゲダル「ひぃぃぃぃぃ!!」
  まだまだ弱かった俺は、その場から逃げることが精一杯だった。

〇廃墟の倉庫
蜘蛛妖怪ゲダル「あれから俺は、お前を倒すために必死になって修行した・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「あの時やられた仲間たちの雪辱を果たすためにな!!」
蜘蛛妖怪ゲダル「なのに、お前ときたら・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「本物はどこだ!!」
鼠田さん(やっぱり・・・)
鼠田さん(本物のねこ局長でないことはバレていたんだ・・・)
ねこ局長?1「はあ・・・」
ねこ局長?1「バレていたのならしかたありませんね」
鼠田さん(普通の敬語を使ってるねこ局長の違和感すごいな・・・)
ねこ局長?1「たしかに、私は本物のねこ局長ではありません」
ねこ局長?1「今、ねこ局長はあの場を離れることができませんので」
蜘蛛妖怪ゲダル「離れることができない・・・?」
ねこ局長?1「とぼけても無駄です」
ねこ局長?1「現在、猫の毛町東側には千以上の妖怪が侵攻中です」
鼠田さん「え!?」
ねこ局長?1「大方、ねこ局長がこちらへ来たところを狙って侵略するつもりだったのでしょう」
ねこ局長?1「それを阻止すべく、ねこ局長は結界を張ることに専念しています」
ねこ局長?1「そこでねこ局長の友人である我々がこちらへ来た、というわけです」
鼠田さん「我々?」
鼠田さん「い、いつのまに横に・・・!」
鼠田さん(後ろで縛られてた縄も解けてる...!)
蜘蛛妖怪ゲダル「ふん、やはり気づいていたか」
蜘蛛妖怪ゲダル「ああ、そうだ」
蜘蛛妖怪ゲダル「ねこ局長がいなくなったがら空きの東側に侵攻し、全てこの手中に収める計画だった」
蜘蛛妖怪ゲダル「だが、千以上の妖怪相手にはたしてねこ局長一人で太刀打ちできるかな?」
???「そこまでなのです!!」
鼠田さん「こ、この声は・・・!!」

〇廃墟の倉庫
「ねこ局長!!」
ねこ局長「鼠田さん!」
ねこ局長「無事でよかったなのです!」
ねこ局長「結界張ってる間もずっと心配だったなのです」
鼠田さん「ねこ局長・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「なぜ、ねこ局長が・・・!?」
蜘蛛妖怪ゲダル「あれだけの数の妖怪を退けたとでも言うのか!?」
ねこ局長「あの程度の数、ねこにはどうってことないのです」
ねこ局長「結界も早く張れたのでよかったなのです」
ねこ局長「ねこ、すごいのです!」
蜘蛛妖怪ゲダル「くうっ・・・!!」
ねこ局長?1「ねこ局長、いかがいたしますか?」
ねこ局長「そんなの決まってるのです!」
ねこ局長「今後一切、悪さできないようにしてやるのです!」
ねこ局長「あと、鼠田さんを危険な目に合わせた罰を受けてもらうのです!」
ねこ局長?1「わかりました」
ねこ局長?1「二人とも、準備はよろしいですね?」
  コクッ
ねこ局長「それじゃあ、みんな・・・」
ねこ局長「『頑張る』なのです!!」
「『頑張る』なのです!」
蜘蛛妖怪ゲダル「いや、一匹犬!!」
鼠田さん「みんな大きな動物に・・・!?」
鼠田さん(あら?今ねこ局長、『頑張る』って・・・)

〇廃墟の倉庫
ねこ局長「さあ、観念するのです!」
ねこ局長「逃げ道はもうないのです!」
蜘蛛妖怪ゲダル「誰が観念なんかしてやるものか!!」
蜘蛛妖怪ゲダル「お前たちよりも大きくなってやればいいだけのこと!!」
蜘蛛妖怪ゲダル「はあああああ!!」
鼠田さん「きゃあああっ!」
ねこ局長「鼠田さん!」
ねこ局長?1「す、すごい風・・・!」
ねこ局長?1「みなさん、気をつけてください!!」
鼠田さん(一体、どんな姿に・・・!?)

〇廃墟の倉庫
鼠田さん「・・・え?」
蜘蛛妖怪ゲダル「な、な、な・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「なんじゃこりゃあああああああ!!」
ねこ局長「残念だったな、なのです」
ねこ局長「ねこは、妖怪の妖力を吸ってそれを使ってこの姿になるなのです」
ねこ局長「友だちとはそれができないように、契約を結んでるから影響されないけど、」
ねこ局長「お前とは友だちじゃないから、妖力をたっぷり吸って友だちも変身できるようにしてるなのです」
蜘蛛妖怪ゲダル「な、なんだと!?」
ねこ局長「本当にもう逃げ場はないなのです」
ねこ局長「お前には、」
ねこ局長「おっきなもふもふに挟まれるの刑を受けてもらうのです!!」
ねこ局長「さあみんな、じりじりと追い詰めてやるのです!」
蜘蛛妖怪ゲダル「ぐ、くそっ・・・!!」
蜘蛛妖怪ゲダル「なぜ飛べない!?」
ねこ局長「にゃはは!」
ねこ局長「どうやら、翼に妖力を流さないと飛べないようなのです」
ねこ局長「もう終わりなのです!」
ねこ局長「一斉にかかれ、なのです!!」
蜘蛛妖怪ゲダル「あ、ああ・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「や、やめ・・・」
蜘蛛妖怪ゲダル「ぎゃああああああああ!!」

〇廃墟の倉庫
蜘蛛妖怪ゲダル「も、もふもふ、万、歳・・・」
ねこ局長「これでもう悪さしないのです!」
ねこ局長「もふもふは正義なのです!」
鼠田さん「ふふふ、そうですね」
ねこ局長「鼠田さん!一緒に帰ろうなのです!」
鼠田さん「はい!」
ねこ局長「みんなも助けてくれてありがとうなのです!」
鼠田さん「ねこ局長も皆さんも、本当にありがとうございました!」
鼠田さん「おかげで大きな怪我もせず無事にお家に帰れます」
鼠田さん「なので、今日はみなさんでパーティーにしましょう!」
ねこ局長「やったーなのです!!」
鼠田さん「それじゃあ帰りましょうか」
鼠田さん「猫の毛町郵便局に!」
ねこ局長「帰るなのです!!」

〇役所のオフィス
  翌日
ねこ局長「おはようなのです、鼠田さん!」
鼠田さん「はい、おはようございます」
鼠田さん「今日もお仕事頑張りましょう!」
ねこ局長「ねこ、がんばうのです!!」
  おわり

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