ある1日(脚本)
〇広い玄関(絵画無し)
ある日の朝。
猿飛幸矢「さて、今日も仕事に励むでござるよ・・・」
猿飛松太郎「待て!幸矢!」
猿飛幸矢「はっ!父上・・・」
猿飛松太郎「今日という今日こそはアルバイトに現を抜かしている場合ではない!この甲賀の血を引く猿飛家の将来のために良き嫁を探すのだ!」
猿飛冬幸「そうよ、幸矢ちゃん」
猿飛幸矢「母上まで・・・」
猿飛松太郎「お前はこの由緒ある忍者の一族、猿飛家の後継なのだ。このワシの妻である冬幸と同じくらい素敵な嫁を探してこい!」
猿飛冬幸「まあ、素敵だなんて・・・あなたったら♥」
猿飛松太郎「だって本当にいつまでも可愛いんだもの♥」
猿飛幸矢「じゃあ拙者はこれで・・・」
猿飛松太郎「はっ!ゴホン、待て幸矢!話は終わっていないぞ!」
猿飛幸矢「拙者はまだまだ忍者の技を極めたいでござるよ。そのために今の仕事も立派な修行だと思っているでござる。それでは御免!」
猿飛松太郎「ああっ!」
猿飛冬幸「幸矢・・・」
〇ファストフード店の席
昼時のファーストフード店。店内は昼食のために来た様々な客たちでごった返している。
その中で私、服部果南はアルバイト店員として慌ただしく働いていた。
服部果南「ふーっ!今日も忙しいわね・・・」
服部果南「でも働いた後のご飯がまた格別に美味しいのよね!もうひと頑張り!」
猿飛幸矢「・・・御免」
服部果南「わっ!びっくりした!あ、フード配達サービスの人ですね!いつも来てくれているので顔覚えちゃいました!」
とは言ってもこの人、神出鬼没っていうかいつの間にか現れていつの間にかいなくなっているのよね。
まるで幽霊か忍者みたい、なんてね。
猿飛幸矢「・・・・・・」
あれ?なんか照れてる?
「おーい、店員さん!」
服部果南「あ、はい!何でしょうか?」
「何でしょうか?じゃないよ。このセット頼んだのにドリンクがついてないよ!」
服部果南「あ、本当だ・・・ごめんなさい!すぐに持っていきます!」
私は意識を切り替えて、トレーにドリンクのカップを乗せて運ぼうとした。
その時、店内を急ぎ足で移動しようとした私は慌て過ぎて床のタイルに足を引っかけてしまった。
服部果南「あっ!」
つまづいて転びかける私・・・宙を舞うドリンクカップ・・・
と、その時、力強い腕が私の体をしっかりと受け止めた。
配達サービスの人だ。
右腕で私の体を、左手でドリンクカップの乗ったトレーをしっかり受け止めている。
え・・・何だか意識したことなかったけど・・・こんなに近くに来られるとドキドキするかも・・・
猿飛幸矢「・・・はっ!御免!」
体勢を立て直した私に押し付けるようにトレーを渡して、配達サービスの人は慌てて去って行こうとする。
服部果南「待って!」
私はとっさにそう叫んでいた。
服部果南「あの、良かったらお名前教えてくれませんか・・・?」
何言ってるの私!
猿飛幸矢「・・・ゆきや。幸せの弓矢と書くでござるよ。それでは拙者はこれにて」
そう言うと幸矢さんは用意されていた配達用の紙袋を抱え込むとあっという間に消えるように出ていった。
服部果南「幸矢さん・・・素敵な名前」
〇住宅街
猿飛幸矢「・・・ビックリしたでござる!」
猿飛幸矢「つい名前を教えてしまったでござるが・・・大丈夫であろうか・・・」
猿飛幸矢「しかしあの方が拙者の顔を覚えていたとは・・・いつも溌剌と働く姿、眩しく思っていたが・・・」
猿飛幸矢「・・・もしかして拙者のことが好き!?」
猿飛幸矢「いや、自惚れは厳禁でござる。今は仕事、そして修行に励むでござるよ・・・」
〇教室
その昔。
「お前自分のことを忍者とか言ってるんだって?なら忍術使ってみろよ!」
「使えねーのかよ!今時忍者なんて言ってるやついねーぞ!」
〇住宅街
猿飛幸矢(己が未熟なうちは迂闊に自分の正体を明かすことはできぬ・・・それが忍者の道!)
〇屋敷の門
その日の夜。
服部果南「ふーっ、今日もよく働いたなあ・・・」
ばあや「果南お嬢様!」
服部果南「あっ!ばあや・・・!」
ばあや「今日という今日こそは逃しませんぞ!このばあや、お嬢様にガツンと一言言わせてもらいます!」
ばあや「いつまで下々のアルバイトなぞに明け暮れているつもりですか!あなたはこの服部家の婿を迎えなくてはいけないのですぞ!」
服部果南「わかってるって、ばあや。私たち服部家は代々続く伊賀の血を引く忍者の一族・・・」
服部果南「でも私、慌てると転んじゃうんだもん!忍者なんて向いてないよ〜!」
服部果南「だから今のアルバイトで慌てても転ばなくなるように自分を鍛えてるの!」
服部果南「それに・・・気になる人がいないわけじゃないし・・・」
ばあや「なんと!お嬢様にそのような方が?」
服部果南「まあ・・・まだ私が気になるだけだし・・・?」
今何をしてるのかな、幸矢さん・・・
〇広い玄関(絵画無し)
今何をしているのでござろうか、あの方は・・・
敵対する両家の息子と娘の恋愛って見ている方も盛り上がりますよね。果南は店内でつまずくくらいだから忍者修行してないんだろうか。この二人の忍者対決も見てみたいでござる。
忍者が現代に居て配達のバイトしている感じが斬新でおもしろいです!😂
語尾にござるが付いてしまう感じも可愛らしかったです😁
まさか、伊賀と甲賀の恋になるんでしょうか…気になります!