週末、どうお過ごしですか?(脚本)
〇黒
・・・サマ、セツナサマ!!
〇男の子の一人部屋
Oちゃん「おはよーございます、セツナサマ!! さぁ、明日は週末デスヨ! どこかお出かけしまセンカ?」
セツナ「もう・・・まだ11時だよ? もう学校行かなくていいんだから、起こさないでくれる?」
セツナ「あたしは週末くらいゆっくりしてたいのよ。 悪いけど、O(オー)ちゃんはトワの遊び相手してくれる?」
Oちゃん「それが、トワサマは、どうしてもお外にお出かけしたいト・・・」
トワ「おねーちゃん! 週末だよ!お出かけしーましょっ!!」
セツナ「えぇ〜、嫌だよ。絶対人多いもん。 お姉ちゃん、家でのんびりしたいなあ。 駄目?」
トワ「いーや! 今日こそお出かけして、いっぱい写真撮るのー!」
セツナ(ああ、そうだ。 トワに古いスマホをあげたら、写真撮影に どハマりしてしまったんだった・・・)
セツナ「ちなみに、お出かけしたら トワはどんな写真を撮りたいの?」
トワ「あのね、お空とか! お花とか! 世界一きれいな写真を撮るのが、 トワの夢なの!」
トワ「でね! Oちゃんがね、夜遅くから明日にかけて、 流れ星がいっぱい見えるよって教えてくれたの!」
Oちゃん「ハイ、大規模の流星群が各地で観測できるデショウ!」
セツナ「Oちゃん、トワに余計な事を・・・」
Oちゃん「これを見逃すト、次に見られるのハ およそ六千万年後になるとのことデェス!!」
トワ「トワ、そんなに生きられないから 絶対に流れ星を見たいの。 それで、世界一きれいな写真を撮るの! お願い、おねーちゃん!」
セツナ(・・・できれば ずっと家にいたかったけど、仕方ない)
セツナ(辺りは人でごった返してるはずだけど、 昔秘密基地にしてた古い展望台なら、 もしかしたら・・・)
セツナ「わかったよ、じゃあ皆でお出かけしよっか。 少し歩くけど、裏山でいい? きっと夜はすごい星が見えるからさ」
トワ「うん! ありがとう、おねーちゃん!」
セツナ「トワ、あたし一番可愛い服来てきたいから、 一緒に選んでくれる?」
トワ「うん! じゃあ、おねーちゃんもトワの服を 一緒に選んでね!!」
トワ「あ、Oちゃんは見ちゃダメ! ・・・・・・恥ずかしいから」
〇黒
そして、喧騒を避けながら歩くこと数時間。
〇山の展望台
セツナ(よかった、やっぱりここは誰もいない。 歩いてるうちに日が暮れちゃったけど・・・)
トワ「ねえ、もうお星様がいっぱい見えるよ! いつもよりずっとおっきくてキレイだね!」
トワ「明日になったら もっとキラキラするのかなぁ?」
セツナ「うん、きっとね・・・」
トワ「そういえばね、ここに来るまでに、 いっぱい写真撮ったの! 見てくれる?」
Oちゃん「ハイ、是非!」
トワ「あのね、これが木に止まってた小鳥さん。 これがさっき咲いてたお花! で、これが────」
Oちゃん「スゴイ! トワ様は天才写真家デスネ〜!」
セツナ(風景の写真が多いな。 今までの写真を見てもOちゃんが写ってるのは何枚かあるけど、人が一人もいない・・・)
セツナ「どうしてトワは、人の写真は撮らないの?」
トワ「・・・だって、トワがカメラ向けたら おねーちゃん嫌がったじゃない」
トワ「お父さんお母さんがいた時は スマホ持ってなかったし、 スマホ貰った時は、もうお外に行かせてもらえなかったし・・・」
トワ「だから、窓の向こうのお空とか、 Oちゃん撮るしかなかったの」
セツナ(しまった。こんなとこで写真嫌いが仇になっていたとは・・・)
セツナ「自撮りはしないの?」
トワ「画面見えないからヘンな顔になっちゃう!」
セツナ(もしかして、内カメを知らない・・・?)
その時、良い事を思いついた。
セツナ「トワ、スマホ貸して」
トワ「いいけど、どうするの?」
セツナ「トワもOちゃんもこっちにおいで。 世界で一番きれいな写真を撮ろう!」
トワ「おねーちゃん、もしかして・・・」
セツナ「あたしにとって、トワの笑顔は世界一なんだよ。 だから、最強に可愛い自撮りのやり方、 元JKが教えてあげる!」
セツナ(友達のを見てただけで、 あたしはやったことないけどね!)
トワ「・・・うん!」
〇黒
そして・・・
〇山の展望台
Oちゃん「サテ、そろそろ今日も終わりますが、 楽しく過ごせましたカ?」
トワ「うん! 皆で写真も撮れたし。 でも、あと少しで流れ星が見えるんだよね。それが一番楽しみ!」
トワ「でも、少し眠くなってきちゃった・・・」
セツナ「うふふ、ちょっと疲れたのかもね。 ずっとぎゅーってしててあげるから、 少し休みましょ?」
トワ「流れ星が来たら・・・起こしてね。写真を・・・」
セツナ「・・・おやすみ、トワ」
Oちゃん「セツナサマ?」
セツナ「Oちゃん、知ってるんでしょ? 明日、隕石の破片が大量に降ってきて、世界が終わるって」
セツナ「なんでトワにこの話をしたの? 折角、怖がらせたくなくて何も伝えてなかったのに!」
セツナ「幸いトワはよくわかってなかったみたいだけど、でも・・・」
Oちゃん「・・・終末の前日くらい、好きにお出かけさせたかったのデスヨ。 あっちこっちで暴動が起こってることも承知でしたケド・・・」
Oちゃん「でも、おかげで素敵な週末を過ごせたでショウ?」
セツナ「・・・うん、ありがとう。 トワの楽しそうな顔を見れてよかった」
セツナ「ね、Oちゃん・・・心細いから夜明けまで、一緒に起きててくれる?」
Oちゃん「ハイ、ずっと一緒デスヨ!」
〇落下する隕石
今夜、隕石が流星群となって地表に降り注ぐ。夜が明ける頃、この世界には誰もいないだろう。
────でも、写真の中に閉じ込めたあの時間は、永遠だ。
〇荒地
終末、どうお過ごしですか? -おわり-
「トワ」ちゃんって名前が永遠を感じて素敵です。
みんなで写真を撮って、それは世界が終わっても思い出が残り続けるのではないでしょうか。
タイトルいいですね、なんか妙に引き寄せられました。登場人物の会話のテンポもよくて楽しく一気にタップしながら読ませて頂きました。
世界が終わると事前に分かっていたら僕は冷静でいられないと思います。
でも子供がいたら案外こんな終わり方を選ぶのかなと思いました。
隕石が衝突した後も、写真がずっと残るといいですね。