7月6日のスタンド・バイ・ミー

YO-SUKE

エピソード3(脚本)

7月6日のスタンド・バイ・ミー

YO-SUKE

今すぐ読む

7月6日のスタンド・バイ・ミー
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇街の全景
  函館市は、古くから北海道と本州をつなぐ、交通の要として機能してきた。
  そして毎年500万人以上が訪れる観光都市でもある。

〇赤レンガ倉庫
  地元民の俺たちにとっちゃいつもと変わらない街並み。
  それが、観光客には新鮮に映るらしい。

〇路面電車
  今、俺たちの横を通り過ぎた市電にも、外国人の観光客が乗ってたけど、物珍しそうにこっちを見ていた。
  きっと、この炎天下を歩く俺たちをクレイジーだと思ったんだろう。
秋山裕介「誰だよ、歩こうって言ったやつ」
井戸端学「お前だ! 冒険するとか、しないとか!」
伊藤伸生「極めて非効率的だな」
秋山裕介「い、いきなりヨーイドンで目的地に着いてもつまんねえじゃん」
井戸端学「だからって、この暑さで死んでもいいのかよっ!」
秋山裕介「んだよ! お前は体脂肪がいっばい燃やせるんだからいいじゃん!」
井戸端学「なんですと!」
井戸端学「俺についてるこの肉は脂肪じゃない! 筋肉だ!」
伊藤伸生「ああっ! お前らうるさい! 余計に汗かくからやめてくれ!」
秋山裕介「いいか、俺は絶対市電になんか乗らないぞ! あんなのに乗るのは貧弱者だ!」
秋山裕介「勇者たるもの歩く! 何万歩でも歩く! 歩いてこその——」

〇路面電車の車内
秋山裕介「うおおおおっ!」
秋山裕介「クーラーまじ神! 文明の利器サイコー!」
井戸端学「何が何万歩でも歩くだよ」
秋山裕介「あくまで市内だけだからな」

〇路面電車
「もちろん、後半はちゃんと歩く」
「だから、今だけ——」
「ちょっと!」

〇路面電車の車内
美砂「あんたたち、うるさい!」
秋山裕介「ゲッ!! またお前か! なんでここに!?」
美砂「私はただのおつかい」
美砂「ていうか、本気で和美先生のとこに行こうとしてるわけ?」
秋山裕介「男に二言なし」
美砂「・・・バカ」
秋山裕介「・・・っ」
  向かいの席に腰掛ける美砂。
伊藤伸生「・・・・・・」
伊藤伸生「なあ、裕介」
秋山裕介「なんだよ?」
伊藤伸生「美砂さ、お前のこと好きなんじゃね?」
秋山裕介「ぶっ!」
秋山裕介「ア、アホか!」
伊藤伸生「いや、だってどう見てもあれは嫉妬ってやつだぞ」
秋山裕介「な、な、なんであいつが!」
秋山裕介「ていうか、あんな学級委員でもないのに学級委員風のやつなんて、俺は・・・」
  美砂の方をチラリと見る、裕介と伸生。

〇路面電車の車内
美砂「?」
美砂「・・・・・・」
美砂「あっかんべー」

〇路面電車の車内
秋山裕介「見ろ! あんなかわいくない顔だ!」
伊藤伸生「そうかな?」
伊藤伸生「ボクはちょっとキュンとしたけどな」
秋山裕介「お前、女の趣味どうかしてるぞ!」
秋山裕介「俺はあんなカズミーのミニチュア版みたいな奴は、絶対嫌だ!」
伊藤伸生「・・・お前、たぶん色々損するタイプだな」
秋山裕介「ほっとけ!」

〇路面電車
井戸端学「うおおおっ。 やっぱり暑い・・・」
秋山裕介「電車はここまでだ。 こっから歩く!」
井戸端学「マジか!」
伊藤伸生「あれ、学・・・」
伊藤伸生「あの、お前が背負ってた、でっかいリュックは?」
井戸端学「ああ、あれ重たいから電車に・・・」
井戸端学「・・・って、ああっ! わ、わ、忘れた!」
秋山裕介「はあ? リュック忘れるやついるか!」
伊藤伸生「おい、電車はまだあそこの信号んとこにいるぞ!」
井戸端学「よし、走って追いかけよう!」
秋山裕介「ふざけんな! 俺は歩くと言ったけど、走るとは言ってねえ!」
秋山裕介「それに間に合うわけねえだろ!」
伊藤伸生「50M走のタイムは学が13秒台で、僕が11秒台、裕介が8秒台だ」
秋山裕介「何が言いたいんだよ」
伊藤伸生「この先に信号があることを考えると、ボクの計算では、裕介だけが4分半後に追いつくことができる」
井戸端学「裕介!」
秋山裕介「・・・お、お前ら、この炎天下に全力ダッシュさせる気か・・・」
井戸端学「頼むよ! 裕介!」
伊藤伸生「早くしないと、間に合わなくなるぞ」
秋山裕介「ああ! もう! 分かったよ! うっせえな!」

〇路面電車
井戸端学「・・・・・・」
  学にアイスを差し出す伸生。
井戸端学「?」
伊藤伸生「そこのコンビニで買ってきた」
井戸端学「・・・ありがとう」
伊藤伸生「まあ、気長に待とうぜ」
井戸端学「裕介、大丈夫かな」
伊藤伸生「ボクの脳内コンピューターは完璧だ」
井戸端学「・・・言うと思った」
  アイスをかじる伸夫と学。
伊藤伸生「・・・夏、って感じだな」
  ミーン・・・ミーン・・・
井戸端学「でも、昔はもっと、蝉多かったよね?」
伊藤伸生「そうだったかな」
井戸端学「この街は、蝉も人も、どんどんいなくなってるんだって、お母さんが前に言ってた」
伊藤伸生「・・・過疎化が深刻だもんな」
井戸端学「伸生も、いなくなるんでしょ?」
伊藤伸生「・・・・・・」
井戸端学「中学は東京の進学校に行くって」
伊藤伸生「・・・誰から聞いた、それ」
井戸端学「前に、伸生のお父さんとカズミーが面談してるの、たまたま聞いちゃって」
伊藤伸生「裕介には?」
井戸端学「言えるわけないじゃん」
伊藤伸生「そっか・・・ボクから言いたいから、まだ内緒にしといてくれな」
井戸端学「・・・寂しくなるね」
伊藤伸生「・・・・・・」
井戸端学「裕介知ったら、なんて思うだろう」
伊藤伸生「・・・学」
伊藤伸生「小一のとき、初めてボクたちが話したときのこと、覚えてる?」
井戸端学「?」
伊藤伸生「ボクが1年の終わりに転校してきて、1人で学校から帰ってる時に、裕介と学が話かけてくれたんだ」
井戸端学「そうだっけ?」
伊藤伸生「ああ、ボクは東京の友達と離れ離れになって拗ねてたからさ・・・」
伊藤伸生「誰とも会話なんかしたくなくて、2人のことがうざくって」
井戸端学「・・・・・・」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:エピソード4

成分キーワード

ページTOPへ