トランスブレイン

作本カナト

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〇教室
  タッタッタ──
草壁由香(草壁和人)「おっはよう!」
「おはよう由香!」
ハル「遅刻なんて珍しいじゃん どうしたの?」
  !!
草壁由香(草壁和人)「えっと・・・」
草壁由香(草壁和人)「それは・・・・・・」
  ──
草壁由香(草壁和人)「なんかお腹下しちゃってさ」
草壁由香(草壁和人)「いやーホント危なかったわー」
  ──
  ──
草壁由香(草壁和人)「(だったらどれほど良かったものか・・・)」
草壁由香(草壁和人)「(本当の理由を言っても信じてもらえないだろうし ここは乗り切るしかない)」
草壁由香(草壁和人)「(元の身体に戻るまでは!)」

〇女性の部屋
  ──2時間前
草壁由香(草壁和人)「ふぁーよく寝た」
草壁由香(草壁和人)「ってあれ?  姉貴の部屋?」
草壁由香(草壁和人)「おっかしいなー なんで姉貴のベッドで寝てんだ?」
草壁由香(草壁和人)「それになんだか、妙に身体が重っ苦しいような・・・」
  !!
  モフッモフッ
  ──
  ──
  ──
草壁由香(草壁和人)「ハアァァァァッ!!?」

〇おしゃれなリビングダイニング
  ダダダダダダッ!
草壁由香(草壁和人)「大変だ〜!!」
草壁由香(草壁和人)「あっ親父!」
草壁由香(草壁和人)「親父大変なんだー」
草壁由香(草壁和人)「起きたと思ったら姉貴の部屋で・・・ なんか胸の辺りがどうも重くて・・・ 触ってみたらやけに膨らんでて・・・」
草壁由香(草壁和人)「それでそれで・・・・・・」
草壁春男(草壁由香)「分かった! 分かったから一旦落ち着きなさい!」
草壁春男(草壁由香)「そもそも私はお父さんじゃないから」
草壁由香(草壁和人)「へ?」
草壁春男(草壁由香)「あんた、1回鏡見なさい」
草壁由香(草壁和人)「鏡?」
草壁由香(草壁和人)「ってへ!?」
草壁由香(草壁和人)「なんで鏡に姉貴が・・・」
  ペタッ・・・ペタペタパタ・・・・・・
草壁由香(草壁和人)「もしやこれ・・・」
草壁由香(草壁和人)「俺?」
草壁和人(草壁柚子)「おはよ〜う!」
草壁由香(草壁和人)「うわぁぁぁぁ!!」
草壁由香(草壁和人)「俺だあぁぁぁぁ!!」
草壁由香(草壁和人)「親父親父!? 俺が・・・俺が目の前に!!」
草壁春男(草壁由香)「だから私もお父さんじゃないって!」
「へっ!?」
草壁美智子(草壁春男)「私がお父さんだ」
草壁由香(草壁和人)「へ? おふくろ?」
草壁柚子(草壁美智子)「お母さんは私よ」
草壁和人(草壁柚子)「えっ!? なんでゆずがそこにいるの?」
草壁由香(草壁和人)「もしかしてお前柚子なのか?」
草壁和人(草壁柚子)「そうだよ」
草壁由香(草壁和人)「俺が姉貴で・・・ 柚子が俺で・・・ おふくろが柚子で・・・・・・」
草壁由香(草壁和人)「もう訳がわかんねー」

〇おしゃれなリビングダイニング
草壁由香(草壁和人)「要するに・・・」
草壁由香(草壁和人)「全員、目が覚めると家族の誰かの身体に入れ替わっていたと」
  コクリ
  コクリ
草壁由香(草壁和人)「はあ〜 誰か心当たりとか・・・」
草壁由香(草壁和人)「あるわけねーか」
草壁柚子(草壁美智子)「そもそも誰が誰の身体にいるのか把握しておくべきじゃない?」
草壁由香(草壁和人)「それもそうだな」
草壁由香(草壁和人)「じゃあまず俺な」
草壁由香(草壁和人)「俺は和人だ」
草壁柚子(草壁美智子)「私は母の美智子よ」
草壁和人(草壁柚子)「おかあさん・・・なの?」
草壁柚子(草壁美智子)「ええそうよ あなたは柚子でしょ?」
草壁和人(草壁柚子)「うん! ゆずだよ!」
草壁春男(草壁由香)「和人の姿で言われると、調子狂うわね」
草壁春男(草壁由香)「私は由香」
草壁春男(草壁由香)「最悪!」
草壁春男(草壁由香)「よりにもよってお父さんの身体に入るなんて・・・」
草壁美智子(草壁春男)「そう言われるとお父さん傷つくな〜」
草壁春男(草壁由香)「どうせ入れ替わるなら柚子が良かったな〜」
草壁由香(草壁和人)「それを言うなら 俺も父さんとかが良かったな〜」
草壁春男(草壁由香)「何? 私の身体じゃ不満な訳?」
草壁由香(草壁和人)「不満も何も、1番の外れだろ!」
草壁春男(草壁由香)「何ですって〜!」
草壁由香(草壁和人)「逆にどこに良い所があるんだよ!」
草壁春男(草壁由香)「ハル達は優しいもん」
草壁由香(草壁和人)「ハッ 全然興味ねー」
草壁春男(草壁由香)「なんですって〜!?」
「ぐぐぐぐぐぐぐぐ」
草壁柚子(草壁美智子)「はいはいそこまで」
草壁柚子(草壁美智子)「今は喧嘩してる場合じゃないでしょう」

〇教室
草壁由香(草壁和人)「(結果、対処法が見つかるまでは、身体の主と同じ生活を送る事になった)」
草壁由香(草壁和人)「(とは言っても、女子らしい会話とか分かんないんだよなー)」
草壁由香(草壁和人)「(ボロが出ない気がしない)」
ハル「どうしたの? ぼーっとして」
カナ「授業中ずっと上の空でしたよ」
草壁由香(草壁和人)「へっ!?」
カナ「悩み事なら聞きますよ」
ハル「そうそう、悩み事検定3級のウチに任せな!」
草壁由香(草壁和人)「3級か・・・ あんまり凄くなさそうね」
草壁由香(草壁和人)「そうね・・・」
草壁由香(草壁和人)「普段の私ってどういう感じ?」
「どうって?」
草壁由香(草壁和人)「あははは・・・なんてね」
草壁由香(草壁和人)「冗談よ冗談 悩み事なんてないから安心して」
草壁由香(草壁和人)「それよりも次体育でしょ 早く行こ!」
ハル「そうか・・・ならいいけど」
カナ「何かあったら相談して下さいね」
  ──
草壁由香(草壁和人)「(危なかった・・・)」
草壁由香(草壁和人)「にしても何であんな事聞いちまうかな」
草壁由香(草壁和人)「困らせる事なんて目に見えてたのに」

〇オフィスのフロア
  一方。由香は──
山田「課長!? それも忘れてしまったんですか!?」
草壁春男(草壁由香)「ごめんなさい。ど忘れしちゃって」
山田「しっかりして下さいよ〜 今日何度目ですか〜」
草壁春男(草壁由香)「あははは〜」
草壁春男(草壁由香)「(仕方ないでしょ。ただの女子高生なんだから!)」
草壁春男(草壁由香)「(ホント、よりにもよって何でお父さんなんかに・・・)」
草壁春男(草壁由香)「(はあ・・・。ハル達と早く話したい・・・)」

〇幼稚園の教室
みら「柚子ちゃんみてみて〜!」
みら「これ、柚子ちゃん!」
草壁柚子(草壁美智子)「うわ〜、アキちゃんすご〜い!」
みら「でしょ〜 もっと描いてあげる!」
  ──
  ──
草壁柚子(草壁美智子)「(小さい子のフリをするのも楽じゃないわね)」

〇教室
しゅん「和人〜!」
しゅん「さっきの小テストどうだったよ?」
草壁和人(草壁柚子)「お魚さん描いたよ〜!」
しゅん「マジか! あの魚辺の漢字書けたのかよ!」
草壁和人(草壁柚子)「うん! サメさん描いた〜!」
しゅん「スゲーな! 俺1問も解けなかったわー!」
「アハハ・・・ アハハハ・・・・・・」

〇一戸建て
冬美「それでね〜 その旦那さんなんて言ったと思う?」
草壁美智子(草壁春男)「な、なんと言ったんでしょうか?」
冬美「「誰のお陰で飯が食えてると思ってるんだー!」ですって」
冬美「最低よね」
草壁美智子(草壁春男)「はは・・・そうですね・・・・・・」
草壁美智子(草壁春男)「(かれこれもう5時間か・・・)」
草壁美智子(草壁春男)「(なんでそんなに話して疲れないんだ?)」
草壁美智子(草壁春男)「(私には到底理解出来ない世界だ)」
冬美「それでね──」
草壁美智子(草壁春男)「あのー、そろそろ夕飯の準備が・・・」
冬美「この話だけ! それでね・・・」
草壁美智子(草壁春男)「(まだ終わりそうにないな・・・)」

〇学校の廊下
草壁由香(草壁和人)「(つ、疲れた・・・)」
草壁由香(草壁和人)「(女子として生きるのがこれ程大変だとは・・・)」
草壁由香(草壁和人)「(姉貴の友達の話には着いていけねーし、女子校だからか女子達はやけにガサツだし)」
草壁由香(草壁和人)「(おまけに更衣室は姉貴に釘刺されたせいで入れねーし)」
草壁由香(草壁和人)「(女子校って花園みたいなイメージだったんだけどなー。現実は非常だ・・・)」
草壁由香(草壁和人)「は〜、早くしゅん達とバカしてーなー」
「ゆ〜か〜!」
草壁由香(草壁和人)「・・・・・・」
ハル「コレ! プレゼントだ!」
草壁由香(草壁和人)「へっ?」
ハル「朝から元気が無かったからな〜 好物のコーンコーンでも食べれば元気出るかな〜と」
カナ「何があったかは聞きません 話したくないようですし」
ハル「でもウチらがいる事を忘れんな 困った事があったらいつでも頼れよ」
ハル「相談事検定1級のウチがドーンと聞いてやるよ!」
カナ「前は3級と言ってませんでした?」
ハル「あれ? そうだっけか?」
カナ「全くあなたは〜」
カナ「それでは、私達はここらでお暇させて頂きます また明日」
ハル「明日は一緒に帰ろうぜ!」
  ──
  ──
  ガサガサガサ──
  パクッ
草壁由香(草壁和人)「うまい・・・・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
草壁春男(草壁由香)「ただいま〜」
草壁和人(草壁柚子)「おかえり おと・・・じゃなくてお姉ちゃん!」
草壁和人(草壁柚子)「みてみて〜! 今日学校でおっきなまるもらったんだ〜!」
草壁由香(草壁和人)「バカ それは丸じゃなくて0点だ」
草壁由香(草壁和人)「ったく〜 なんで漢字テストで魚の絵を描いちまうか」
草壁春男(草壁由香)「柚子は子供なんだし仕方ないでしょ〜」
草壁美智子(草壁春男)「お〜い 父さんの用意した夕飯が出来たぞ〜」
草壁柚子(草壁美智子)「ダメダメだったからお母さんも手伝ったけどね」
草壁和人(草壁柚子)「わ〜い! ご飯だ〜!」
草壁由香(草壁和人)「ちょっと待ってくれ」
草壁春男(草壁由香)「何? やっぱり最悪だって言いたいの?」
草壁由香(草壁和人)「まあ・・・」
草壁由香(草壁和人)「確かに今日は散々だった マジ大変だったし、時間の進みは滅茶苦茶遅かったし、ビックリするぐらい疲れた」
草壁由香(草壁和人)「でも・・・」
草壁由香(草壁和人)「なんだ・・・」
草壁由香(草壁和人)「その・・・・・・」
草壁由香(草壁和人)「良い友達を持ったな」
  ──
草壁春男(草壁由香)「でしょ?」
草壁柚子(草壁美智子)「ほらほらご飯よ〜」
草壁美智子(草壁春男)「そうだぞ〜」
草壁和人(草壁柚子)「早く食べよ〜!」
「は〜い!」

コメント

  • 続編あったらいいな。

  • 結局、理由も解決法も不明なままなのになんだかんだ楽しそうな草壁家、いいですね。自分以外の家族になってそれぞれの苦労や有り難みを再確認するのも悪くはないかも。ただし、あくまでも1日だけならば・・・ですよね。

  • 家族みんなの体が入れ替わってしまって混乱が生じたけど、その身に成り代わることで日頃知り得なかった家族のことを改めて分かりあえてよかったですね!

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