読切(脚本)
〇殺風景な部屋
ある日、仕事を終えた僕は、いつものように、最寄駅から家に向かって歩いていた。
そして、人通りも無く、街灯も少ない夜道を通りかかった時、ふいに、後頭部に激しい痛みを感じた。
僕「痛っ !」
僕は、痛みと共に目を覚ました。
そして、後頭部を押さえながら辺りを見回す。
そこは、コンクリートに囲まれた、四畳半程度の何も無い小さな部屋だった。
壁にはドアが一つあるだけで窓もない。
天井には、二本のうちの一本が切れている蛍光灯。
そして、床へと視線を移すと・・・。
何かあった。
最初は何もないと思っていた部屋の中央に、それはあった。
・・・爆弾 ?!
僕は後頭部の痛みも忘れ、それに向かって急いで這って近付いた。
デジタル表示に赤と青のコード。
ドラマなどでよく見る、典型的な爆弾のようだった。
デジタルの表示は10分を切っていた。
僕は、今度は、急いでドアに駆け寄った。
ガチャガチャガチャ・・・。
何度もノブを回してみたが、ドアには鍵が掛かっていた。
そうと分かると、僕は、ドアに向かって体当たりを始めた。
なんでこんな事になったんだ !
誰が俺をこんな目に ! !
そんな思いを、何度も何度も、思いっきりドアにぶつけてみたが、鉄製のドアはびくともしなかった。
途方に暮れた僕は、再び、爆弾の元へと戻った。
僕「どうすりゃいいんだよ・・・」
残り時間は五分を切っていた。
僕に残された道はただ一つ。
赤と青、どちらかのコードを引き抜く事しかなかった。
でも、どっちを・・・。
赤、青、赤、青・・・。
迷っている間にも、刻一刻と残り時間は少なくなっていく。
しょうがない・・・赤にしよう。
そう心に決めて赤のコードに手を伸ばした時、ふと頭によぎるものがあった。
それは、朝に見たテレビ番組の占いだった。
僕は占いが好きで、毎日、その番組をチェックしていた。
そして、その番組の占いはよく当たった。
確か、その番組で放送されていた今日のラッキーカラーは・・・青 !
残り時間は一分を切っていた。
僕は、迷うことなく青のコードを引き抜いた。
・・・ドッカーン ! ! !
・・・えー ! ・・・なんで ? ・・・
薄れゆく意識の中で腕時計を見ると、時刻は夜中の十二時を回っていた。
〇テレビスタジオ
アナウンサー「続いては、今日の占いです。まずは12位・・・残念、おひつじ座のあなたです。ラッキーカラーは赤」
アナウンサー「もし、閉じ込められた部屋に爆弾が仕掛けられていたら、迷わずに、赤のコードを引き抜いてください」
アナウンサー「いいですか、赤ですよ! 絶対に青を引き抜いちゃ駄目ですからね!」
ラッキーカラーとか、ラッキーアイテムとか、一時期凄く信じていたことがあります。
今でも星座占いでも低い順位だとテンション下がりますし、順位が上だとちょっぴり嬉しい気持ちになります。
でもこの爆弾の線となると…時間に猶予があれば私も考えて日付変わってしまいそうです笑
若い時やたら今日の占いのラッキーカラーにこだわっていたのを思い出しました。でもきっと、身に着けて洋服などの色の事だったような。でも主人公がそんなピンチにテレビの占いのことを思い出したのがとてもおもしろかったです。
まさかの展開ですよね、自分が閉じ込められたらと想像すると怖いです、日常の生活の中で目にするものが何かのヒントと言いますがまさにそれですよね。