父・正幸、47歳

水野 七緒

父・正幸、47歳(脚本)

父・正幸、47歳

水野 七緒

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〇ショッピングモールのフードコート
幸央「はーマジで怠ぃ・・・」
女友達1「ほんとそれ!」
女友達2「早くテスト終わらないかなー」
???「・・・幸央?」
幸央「へっ?」
正幸「やっぱり幸央じゃないか!」
幸央「げっ・・・親・・・」
女友達1「何この子、かわいい!」
女友達2「誰!?」
幸央「しっ・・・知らねぇ・・・」
女友達1「うそうそ! 幸央とちょっと顔似てるじゃん!」
幸央「似てねぇし!」
女友達2「あー、もしかして弟・・・」
正幸「君たちは幸央の友人か?」
女友達1「えっ?」
女友達2「「君たち」?」
正幸「息子が世話になっている」
幸央「おいっ!」
女友達1「アハハー、ウケる」
女友達2「なにこれ お父さんごっこ的なー?」
正幸「ところで幸央、学校はどうした?」
幸央「うっせぇ、テスト期間だっての!」
幸央「つーか気安く俺に話しかけんな!」
正幸「そうはいくか」
正幸「お前、昨日の夕飯 またピーマン残しただろう」
幸央「なっ・・・!」
正幸「母さんが困ってたぞ」
女友達1「え、幸央、ピーマン嫌いなの?」
女友達2「ヤバい、ウケる・・・」
幸央「う、ううううるせぇ!」
幸央「とっととあっち行け!」
女友達2「ちょっ・・・ 弟くんに何すんの!?」
女友達1「そうだよ、可哀想じゃん!」
幸央「うっせー! そんなの知ったこっちゃ・・・」
幸央「うげっ!?」
幸央「痛ぇぇっ!!!」
正幸「親に手をあげるとは何事だ!」
女友達1「え、強・・・」
女友達2「弟くん何者?」
???「あーーー! いたーーー、課長!」
部下「もー 何度も言ってるじゃないですか!」
部下「未成年のなかに 紛れこまないでくださいって!」
部下「課長は 奇跡の童顔なんですから!」
正幸「うむ、すまない」
女友達1「え・・・マジで?」
女友達2「あの子、マジで 幸央のお父さん?」
幸央「・・・」
女友達1「・・・幸央?」
女友達1「って、どこ行くの!?」
幸央「うっせぇ、トイレだっての!」

〇個室のトイレ
幸央(くそ・・・親父のやつ)
幸央(恥ずかしいから 外で話しかけんなって 何度も言ってんのに!)
幸央(しかも、ピーマン嫌いなこと バラしやがって・・・)
幸央「へっ!?」

〇ショッピングモールのフードコート
幸央「えっ・・・お、親父!?」
誘拐犯「てめぇら、大人しくしろ!」
誘拐犯「騒いだら このガキの命はないぞ!」
女友達1「ちょ・・・弟・・・」
女友達1「じゃなくて 幸央のお父さんじゃん!」
女友達2「やば、幸央に連絡・・・」
誘拐犯「そこ、動くんじゃねえ!」
女友達2「きゃああっ!」
誘拐犯「見てるか、店長! いつも俺のこと バカにしやがって!」
誘拐犯「でも、これでお前も終わりだな! こんな騒動起きたら左遷だろ!」
正幸「君、少し落ち着きなさい」
誘拐犯「うるせぇ、ガキは黙ってろ!」
正幸「あいにくガキではない」
正幸「こう見えて君の倍以上 人生経験を積んで──」
???「そ・・・その子を離せ!」
誘拐犯「は!?」
誘拐犯「誰だ、てめぇは!」
幸央「か、かかか家族だ!」
幸央「つーか、ちっちゃいやつを 人質にするなんて」
幸央「ひ、ひひひ卑怯だろ!」
誘拐犯「なんだ、このガキの兄貴か」
誘拐犯「そのわりに こいつよりビビってんな」
幸央「ううう、うるせぇ!」
幸央「ととと、とにかく そいつを離・・・」
幸央「ひっ!」
誘拐犯「お前こそ、さっきから うるせぇんだよ!」
誘拐犯「黙らねーと まずはお前から黙らせて・・・」
誘拐犯「って、おわ・・・っ!?」
女友達1「えっ、今の・・・」
女友達2「一本背負い!?」
正幸「・・・ふむ」
正幸「・・・13:27、現行犯逮捕」
???「えっ・・・課長!?」
部下「ちょ・・・なんすか、この状況!? 俺が席を外してる隙に・・・」
正幸「ふむ・・・久しぶりに 人質にされてしまってな」
部下「またですか!?」
部下「これだから奇跡の童顔は・・・」
部下「ていうか、めずらしいですね。 課長が犯人の説得を試みないなんて」
正幸「いや、当初は そのつもりだったんだが・・・」
正幸「犯人が、息子に危害を くわえようとするものだから」
女友達2「幸央、大丈夫?」
女友達1「むちゃしすぎでしょ!」
幸央「うっせぇ・・・俺だって そんなつもりじゃなかったよ」
幸央「けど・・・ 身体が、勝手に 動いちまっまったっつーか・・・」
正幸「大丈夫か、幸央」
幸央「う、うるせぇ! あっちに・・・」
正幸「ありがとう、幸央」
正幸「父さんは嬉しかったぞ」
正幸「お前が、父さんを 助けようとしてくれて」
幸央「だ、だから いちいちうるせぇって・・・」
部下「あ、この子が 噂の息子さんですか?」
部下「めちゃくちゃ泣き虫の!」
幸央「へっ?」
部下「ええと、たしか・・・」
部下「泣き虫でオバケが苦手で 夜中になると課長の布団に 潜り込んできて・・・」
正幸「それは昔の話だな」
部下「あと、あれだ!」
部下「ピーマンが嫌い!」
正幸「それは今もだな」
女友達1「泣き虫・・・」
女友達2「オバケが苦手・・・」
女友達1「布団・・・」
幸央「う・・・ううう、うるせぇ!」
幸央「親父のバカヤロー!」
女友達1「ちょっとー幸央」
女友達2「待ってよ、幸央ー」
部下「・・・息子さん、反抗期なんですかね」
正幸「そうか?」
正幸「昔から素直で可愛い 自慢の息子だよ」

コメント

  • けっこう前のドラマですが、鈴木福くんが特殊捜査課のボスになる「コドモ警察」を思い出しました。子供に見えると相手が油断することを逆手にとって、いろんな場面で得をすることもあるかも。童顔を活用してお父さんは出世したのかもしれないなあ。

  • お父さんとってもかっこいいです!人は見た目じゃないですね。ゆきおくんも本当はお父さん大切だということがわかりました。いい親子関係だなぁと思います。

  • 小さいけど最高に大きな心を持ったお父さんですね! 最近知り合った方で、かなり小柄だけど、仕事の姿勢やきっぱりとした物言いで、背の高さなんか忘れさせられるような人がいて、お話にとても共感できました。

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