読切(脚本)
〇簡素な部屋
高畑 小鞠「んぉ・・・・・・? んんん~・・・・・・? あれ?」
高畑 小鞠「ここどこやーー!?」
高畑 小鞠「ぜんぜんしらん、おうち・・・これってあれや・・・! おとうちゃんいうてたやつ・・・!」
〇住宅地の坂道
高畑 初丸「こまり、ええか? 外で知らんおっさんについて行ったら、 絶対開かんからな? 気いつけんと、ホンマ大変なことになるで」
高畑 小鞠「おばちゃんならええの?」
高畑 初丸「いや、おばちゃんもあかんて。 お姉ちゃんでもお兄ちゃんでも、外で知らん人にはついてったらあかんから」
高畑 小鞠「中ならええの? いえの中とか」
高畑 初丸「知らんおっさんが、家の中に入ってきてる時点でめちゃくちゃヤバイやん!? まあ、とにかくやな・・・」
〇簡素な部屋
高畑 小鞠「うん、ぜったいそうや! これがおとうちゃんのいうてた・・・ゆう・・・ゆうか・・・ゆうかり?」
高畑 小鞠「そーそー、ゆうかりや!! こまり、ゆうかりされた!」
高畑 小鞠「ということは、ここがワルモノのアジトなんか~」
高畑 小鞠「・・・・・・・・・・・・」
高畑 小鞠「なんか、そぼくやね!!」
高畑 小鞠「あ! それよりゆうかりされたら、にげなあかんのやった!」
高畑 小鞠「おとうちゃん! おきて!」
高畑 初丸「んん・・・ちょ、ちょっと、小鞠・・・。 ホンマ勘弁して・・・お父ちゃん5時まで仕事やったんやって・・・」
高畑 小鞠「そんなばあいちゃう!! ゆうかりや! うち、ゆうかりされた!!」
高畑 初丸「ゆうかり・・・? パンダ? いや、パンダは笹か・・・えーっと・・・」
高畑 小鞠「ゆうかり! ゆうかり! しらんおっさんに、ゆうかりされた!!」
高畑 初丸「ゆうか・・・誘拐!? もしかして誘拐されたってことか!?」
高畑 小鞠「そう、それや! ゆうかいや、ゆうかい!」
高畑 初丸「そそ、それ一大事やんけ・・・!って、誘拐されてないやん、どう見ても!? ばっちり目の前いるやん!!」
高畑 小鞠「あれ・・・? そういえばそうやね? ってことは、おとうちゃんもゆうかいされたってことやん!!!!!」
高畑 初丸「ええー!? そ、そんなことある!?」
高畑 小鞠「あるんだなぁこれが」
高畑 小鞠「とりあえず、はやくワルモノのアジトからにげな! おとうちゃん、はやくはやく!!」
高畑 初丸「待て待て、いったん落ち着こう。そもそも手鞠はなんで誘拐されたって騒いでんの?」
高畑 小鞠「だって、ここぜんぜんしらん! こまりのおうちちゃう! ゆうかいや!」
高畑 初丸「いやいや、ここお前の家やって! ・・・あ! お前もしかして寝ぼけとるな!?」
高畑 初丸「俺ら昨日、ここに引っ越して来たやん! 車でこっち来たん覚えてるやろ!」
高畑 小鞠「・・・・・・・・・・・・」
高畑 小鞠「そうやった!!!!」
高畑 初丸「うお~い・・・小鞠さん、困りますよホンマ・・・おとうちゃんの睡眠時間が、3時間ですよ・・・」
高畑 小鞠「めし! おとうちゃん、あさめしくおー!」
高畑 初丸「フ・・・さすがやな。全く聞いてへんわ」
高畑 初丸「ふ~・・・まあ、目も醒めてしもたし、朝飯食うか・・・よっこいしょ」
〇綺麗なリビング
高畑 初丸「小鞠ー、朝なにがええー?」
高畑 小鞠「パン!」
高畑 初丸「OKー、あ・・・あかん。 食いもん何もないわ・・・そもそも冷蔵庫すらないやん。引っ越したばっかりやん」
高畑 小鞠「じゃあ、なんできいたの? こまり、もうパンの口になってるんだけど。どういうこと?」
高畑 初丸「急に真顔でガン詰めするやん・・・」
高畑 小鞠「このまえテレビでみた!!! 『よめしゅうとめ、こつにくのいびりあい8じかんすぺしゃる』」
高畑 初丸「8時間もいびり合い見てたん!? 嘘やろ、頭おかしなるで!?」
高畑 小鞠「とちゅうであきてみるのやめた! 8じかんもほーそーしてるほうが、へんやとうちはおもう!」
高畑 初丸「確かにその通りやな・・・おかしいのはテレビ局やんな・・・いや、まあとにかくなんの話やっけ?」
高畑 小鞠「パン!!!」
高畑 初丸「そうそう、朝飯な。 そんじゃあ、ちょっと外に買いに行こや」
高畑 初丸「この辺のこと全然知らんし、ちょっと冒険や」
高畑 小鞠「ぼうけん!? やったーーー!」
高畑 初丸「ちょいちょい!! 一人で行ったらあかーん! それにパジャマ着替え!!」
〇住宅街の道
高畑 小鞠「ねーねー。こまりは、パジャマのままはあかんのに、なんでおとうちゃんはパジャマのまま?」
高畑 初丸「お父ちゃんのはジャージやからな。これは俺の正装みたいなもんやからセーフ」
高畑 小鞠「ふーん。おかあちゃんにいうてもええ?」
高畑 初丸「やめて・・・千代さんにお尻ぺんぺんされるやん・・・」
高畑 小鞠「あははははははは! ぜったいにいうとく!」
高畑 初丸「え~」
高畑 小鞠「なあ、きょうおかあちゃんはー?」
高畑 初丸「千代さんは今日も仕事~。引っ越したばっかやのに、大変よなぁ」
高畑 小鞠「おとうちゃんはしごとせーへんね」
高畑 小鞠「あれやろ、ヒモ?」
高畑 初丸「ブフォ!? どこでそんな言葉覚えてくんの!?!? 嫁姑いびり合い8時間SPに出てきたんか!?」
高畑 小鞠「わすれたけど、なんかしってる~」
高畑 初丸「今すぐ忘れなさい」
高畑 初丸「というか、何回も言うけどお父ちゃんは働いてるからね!? 在宅ワークやねん! ヒモではないんや!!」
高畑 小鞠「ふーん。そっか!」
高畑 初丸「ホンマにわかってる? 余所で言うたらあかんで?」
高畑 小鞠「うんちって?」
高畑 初丸「なんで急にうんち!?!? そりゃうんちも、あんまり余所で言ったらあかんけども!」
高畑 小鞠「あ、においする!」
高畑 初丸「え、うんちの?」
高畑 小鞠「ち・が・う! パン!!! おとうちゃん~、よそであんまりうんちいったらダメやで・・・」
高畑 初丸「あ、すんません・・・って、なんでや! 今の文脈から見たら、うんちの匂いがしたんかなって思うやん普通!?」
高畑 小鞠「たぶん、パンやさんあっち! いこ!」
高畑 初丸「あ、はい」
高畑 小鞠「おかあちゃんにも、おみやげかっとこうな! クリームパンとクリームパンと、あとカスタードクリームパン!」
高畑 初丸「クリームパンオンリーやん」
高畑 小鞠「だっておかあちゃんいっつも、こまりにわけてくれるから こまりのすきなのほうがおとくやん」
高畑 初丸「うん、まあ確かに・・・合理的というか・・・間違っては、ないんかな・・・?」
高畑 小鞠「あ、おとうちゃんみて!」
〇広い公園
高畑 小鞠「こうえんやーーー! でっかい!」
高畑 初丸「ホンマや。こんなところに公園あったんやな。ここ通ったらパン屋に近道できるんちゃうか」
高畑 小鞠「そんなこと、いまどうでもいい!!!」
高畑 初丸「ええ!?」
高畑 小鞠「いまはこうえんやろ!! こどもがこうえんにきたらあそばな!! ほうりつできまってる!」
高畑 初丸「マジか・・・法律で・・・そんなん絶対遊ばなあかんやん!」
高畑 小鞠「いくで!!」
高畑 初丸「おう!」
〇広い公園
高畑 小鞠「あはははははははははは!!! ほら、ブランコすごいほら!」
高畑 初丸「・・・・・・・・・・・・子ども元気すぎやろ」
高畑 小鞠「おとうちゃんーー!! みてーー! すなばもめっちゃひろいーー!!」
高畑 初丸「おお、最高やな・・・」
高畑 小鞠「おとうちゃんみてー!」
高畑 初丸「今度は何みつけたんや?」
高畑 小鞠「はるきげにあ~」
高畑 初丸「なんで!?!?!!? なんで、ハルキゲニア!??!?!!?」
高畑 小鞠「わからんけど、すなばに落ちてた」
高畑 初丸「おもちゃか・・・? いや、おもちゃにしてもなんでハルキゲニア!? 普通ウル●ラマンとかやろ!? 渋すぎやんこの持ち主!」
高畑 小鞠「こまりもほしい! はるきげにあ!」
高畑 初丸「嘘やろ!? 流行ってんの!?」
高畑 小鞠「はやりとかじゃなくて、こまりがほしいのがいちばんちゃうの?」
高畑 初丸「確かに・・・」
高畑 初丸「まあハルキゲニアはどこ売ってんのか調べてみるから、それは元のところ返しとき。 持ち主が探しにくるかもやからな」
高畑 小鞠「はーい!」
高畑 小鞠「おとうちゃん、おなかすいた!!」
高畑 初丸「はは、忙しいやっちゃなぁ小鞠は。 早く、ハルキゲニア置いてき。 パン屋さん行くで」
高畑 小鞠「うん! こまりね、クリームパンとクリームパンとあと、カスタードクリームパンかう!」
高畑 初丸「おかあちゃんのお土産も、全部クリームパンやろ? ヤバない?」
高畑 小鞠「だっていちばんすきなんやから、いっぱいあったほうがええやん!」
高畑 初丸「ほえ~。俺パンとか、違う味を無理にでも買ってまうわ」
高畑 初丸「言われてみたら、別々の味買わなあかん決まりもないもんなぁ。お父ちゃんも、好きなヤツだけ買ってみることにしよ」
高畑 小鞠「あー、それはあかん!」
高畑 初丸「え、なんで?」
高畑 小鞠「だって、おとうちゃんのわけてもらうんやから、ちがうあじがええ」
高畑 初丸「やっぱり、それ見越してたんかい!!」
お父さんすっかり小鞠ちゃんのペースに引きずりこまれてて微笑ましい。子供だと思ってるとちょくちょく正論で大人を追い詰めるところなんか、リアリティありますね。お母さんはどんな人なんだろ。
父の娘の他愛もない会話に癒やされました。子供ってたまに大人がびっくりするような言葉をどこからか仕入れてきますよね。こんなに可愛いこまりちゃん、誘拐されないように気をつけてほしいです!