運命の出会い(脚本)
〇体育館の裏
ある日の放課後
鳥川明「くっ」
鳥川明「うううっ」
熊井「おいおい、サンドバッグのくせに 逃げるんじゃねーよ」
2年に上がって不良グループに
目をつけられ
ストレス解消にいたぶられる日々
熊井「動くなっつったら マジでピクともしねーじゃん 奴隷かよw」
鳥川明(奴隷・・・・・・ 確かにそうかもな)
熊井「お前んちのかーちゃん 病気なんだって? 息子がこんな弱虫って知ったら 泣くだろーなー」
熊井「お、なんだよ その目 歯向かう気か?」
鳥川明「いや・・・」
鷲尾レイ「君たち何やってんの?!」
美人で賢そうで綺麗な声
転校生の鷲尾レイさんだ
鷲尾レイ「運動したいなら 相手するわよ」
鳥川明「だ、だめだよ 女の子なのに 今すぐ逃げて」
鷲尾レイ「引っ越し作業が忙しくて 体がなまってたんだ」
鷲尾レイ「卑怯者くん達 かかってきなさい」
熊井「クソ生意気な女め やっちまえ!」
唖然としている僕の目の前で
鷲尾さんはファイティングポーズをとった
そして、あっという間に不良グループたちを蹴散らした
熊井「なんだこの女 つえーぞ!」
熊井「逃げろー」
鷲尾レイ「ふん 口ほどにもない奴らね」
鳥川明「す、す、す、」
鳥川明「すげーーーーーーーっ!」
不良たちをのしていく彼女の姿は
舞をまっているように美しく
輝いて見えた
鷲尾レイ「大丈夫?」
鳥川明「う、うん っていうか こっちのセリフ・・・・・・!」
鷲尾レイ「私は平気 いい運動になったわ」
鳥川明「すごいね! 鷲尾さん! かっこよかった!」
鷲尾レイ「目には目を 歯には歯を やられたら、やり返さなきゃ」
鷲尾レイ「でなきゃ、とことん舐められるわよ ゴミにゴミ扱いされるの、嫌じゃない?」
鳥川明「でも、攻撃したら、やり返される」
鳥川明「情けないだろ 僕、負の連鎖が怖いんだ」
鷲尾レイ「君は勇敢だわ 気がついてないのね」
鷲尾レイ「私に逃げるよう言ってくれた 私が戦ってる間中 逃げずにずっと見ていてくれた」
鳥川明「そんなの、当たり前じゃないか!」
鷲尾レイ「心が完全に凍ったら 当たり前のことができなくなるのよ」
鷲尾レイ「君の心は負けてない だから爪をとぎなさい」
鷲尾レイ「目には目を 歯には歯を、よ」
目には目を 歯には歯を
鳥川明(無理だよ)
でも・・・・・・
自信に満ちた凛とした態度
そして
不良達を圧倒する揺るぎない実力
鳥川明「君みたいになれたらなあ・・・・・・」
鷲尾レイ「じやあ、うち、来る?」
鳥川明「え?」
鷲尾レイ「決まり! 行きましょ!」
鳥川明「ちょ・・・・・・待っ・・・・・・」
その時僕は聞き逃した
運命のゴングが鳴り出す音を
〇住宅地の坂道
3年前
僕の父はトラックにはねられて死んだ
道路に飛び出した子供をかばったんだ
〇救急車の中
「明、母さんとサナは男のお前が守るんだぞ」
父さんに言われた最期の言葉だ。
その声がこびりついて離れない
〇屋敷の門
鳥川明「もしかして ここが鷲尾さんの家?!」
鳥川明「でかい!」
鷲尾レイ「君が初めてのお客様よ どうぞ」
〇木造の一人部屋
女子にしてはシンプルな鷲尾さんの部屋
鷲尾レイ「早速だけど、脱いでくれる?」
鳥川明「脱ぐ? なんで?」
鷲尾レイ「いいから急いで」
鳥川明「ちょ、待っ・・・・・・」
〇道場
鷲尾レイ「パパ 門下生候補をスカウトしてきたわ」
レイの父「おう でかした!」
鳥川明「あの どう言うこと??」
鷲尾レイ「うちはね 格闘技の道場をやってるの」
鷲尾レイ「私みたいになりたいって言ってたでしょ ここで鍛錬すれば強くなれるわ 保証する」
レイの父「まずは見本を見せてあげなさい」
鷲尾レイ「まかせて!」
鷲尾さんはファイティングポーズをとり
鷲尾レイ「とりゃーっ!!!!!」
華麗なる柔道技を繰り出した
レイの父「次は組み手だ 少年 見てなさい」
すさまじい光景が目の前に広がる
鳥川明「す、す、すげーっ!!!!」
鳥川明「かっこいい・・・・・・!」
鷲尾レイ「あなたもきっと強くなれるわ」
鷲尾レイ「一緒にやらない?!」
鳥川明(強くなれる? この僕が)
鷲尾レイ「あの不良達にも勝てるようになるわ」
鷲尾レイ「目には目を 歯には歯を 身を守ることは大事でしょ?」
鳥川明「僕が勝つ? あいつらに・・・・・・?」
その瞬間、僕は現実に引き戻された
鳥川明(人が戦う姿は美しい)
でも
鳥川明(誰かに攻撃を仕掛けることは 僕には無理だ)
鳥川明「ありがとうございます でも・・・ やめときます」
鷲尾レイ「どうして?」
鳥川明「家庭の事情で」
レイの父「そうか」
鷲尾レイ「残念だわ」
〇アパートのダイニング
今日の夕食は肉じゃがだ
鳥川サナ「今度の日曜日 お母さんに会えるんだよね」
鳥川サナ「楽しみだなー」
鳥川明「何か美味しいもの作っていこうか 病院食、飽きてるだろうしな」
母さんは心臓病で入院してる
サナの面倒も見なきゃだし
体を鍛えてる時間がない
鳥川明(だから、格闘技なんて 習ってる暇、僕にはないんだ)
でも、本当はわかってる
攻撃したらやり返される
鳥川明(僕は、それが怖いんだ・・・・・・)
〇教室
そして翌日
鳥川明(熊井からだ・・・・・・!)
鳥川明「・・・・・・何?」
「今、お姫様と一緒に屋上にいる
壊されたくなかったら
今すぐ来いよ」
熊井はそう言うと通話を切った
鳥川明「お姫様って・・・・・・」
鳥川明「鷲尾さん?!」
〇学校の屋上
黒頭巾被せて運ぶなんて
卑怯者のやり口ね
熊井「うるせー」
熊井「昨日は油断してたんだ 今日は倍の助っ人を用意した」
熊井「鳥井が来なきゃ お前を代わりにボコってやる!」
鷲尾レイ「絵に描いたような卑怯者のセリフ」
鷲尾レイ「あんた達、マジでゴミクズね!」
熊井「なんだと この野郎!」
〇教室
鷲尾さんがさらわれた
僕のせいだ!
鳥川明「助けなきゃ!」
鳥川明「待ってて! 鷲尾さん!」
僕は教室を飛び出した
拳をかたく握りしめて
〇学校の屋上
鳥川明「鷲尾さんっ!」
鷲尾レイ「あら、来てくれたの?」
鷲尾レイ「嬉しいけど、もう片付けちゃった」
鷲尾レイ「ありがとうね」
鳥川明「えっと、熊井たちは?」
鷲尾レイ「逃げたわ」
鳥川明「体、大丈夫?! 怪我してない?????」
鷲尾レイ「ええ」
鳥川明「はあああああああああ 君が無事で良かったぁぁぁぁ」
鷲尾レイ「もしかして心配してくれてるの?」
鷲尾レイ「私の強さ、知ってるでしょ」
鳥川明「何言ってんだよ 君は女の子なんだよ?」
鳥川明「女の子は力が弱いんだから あんな奴ら相手にしちゃダメだ」
鷲尾レイ「へええ」
鷲尾レイ「ふーん」
鷲尾レイ「君っていい男ね」
鳥川明「え? 何? 聞こえなかった」
鷲尾レイ「なんでもない 帰ろっか」
鳥川明「うん」
起きてしまったことは仕方ない
熊井には明日、土下座して謝ろう
ストレス解消はそう何人もいらないだろ?
〇階段の踊り場
鷲尾レイ「ねえ、やっぱり パパに弟子入りしない?」
鷲尾レイ「パパ、君のこと気に入ったみたい」
鳥川明「んー・・・」
熊井「おいこら てめーら 何いちゃついてんだ」
鳥川明「熊井!」
熊井「一度ならず二度までも・・・・・・ てめえ、許せん!」
鳥川明「でもさ、元々は君が」
熊井「知るか!」
熊井「くたばれっ!!」
僕は咄嗟に彼女を庇ったけど
階段から突き落とされるダメージは
さほど軽くなることもなく
二人とも気絶してしまったんだ
〇階段の踊り場
鷲尾レイ「ん んんん・・・・・・」
鷲尾レイ「はっ」
鷲尾レイ「起きて! 大丈夫?!」
鳥川明「あ・・・・・・」
鳥川明「頭いたっ!」
鷲尾レイ「大丈夫・・・・・・じゃないみたいだね」
鷲尾レイ「・・・・・・って言うか あれ????」
僕はこの時初めて気がついた
とんでもない事実に
目の前にある瞳を覗き込む
そこに映っているのは・・・・・・
鷲尾レイ(やっぱり そうか・・・・・・)
鷲尾レイ「あのね 深呼吸して 落ち着いて聞いて」
鷲尾レイ「僕たちの体・・・・・・ 入れ替わってる!!!!!」
鳥川明「あははは 何言ってんの」
鷲尾レイ「冗談じゃないんだよ 鷲尾さん」
鳥川明「あれ? あなたの顔・・・・・・」
鳥川明「私の顔だわ!」
鷲尾さんが僕の顔に触れる
鷲尾レイ「うん、僕が君に、君が僕になってるよね」
階段から落ちた衝撃で
男女の体が入れ替わる
ドラマでよく見るパターンだ
そんなお決まりのパターンが
僕たちの身に降りかかっていた
〇道場
僕たちは鷲尾さんのお父さんに
全てを打ち明けた
レイの父「なるほど しばらくの間は家族を取りかえる以外なかろうのう」
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)「信じてくれるんですね!」
レイの父「体のキレを見りゃ一目瞭然じゃからのう」
鷲尾レイ(ガワは鳥川明)「ありがとう ただ、この体、圧倒的に筋肉不足なの 喧嘩したら勝てないかも」
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)「ごめんね なまっちょろくて」
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)「問題は不良グループです」
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)「僕は無抵抗なサンドバッグだったから あいつら味をしめて またやってくる」
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)「僕がちゃんと対策をしていれば・・・・・・」
鷲尾レイ(ガワは鳥川明)「心配しないで なんとかするから 私、逃げ足も早いのよ」
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)「転校したてなのに 逃げてばかりなんてさせられないよ!」
目には目を 歯には歯を
誰かに攻撃するなんて
考えただけでも胸が苦しい
でも
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)(誰かを守るためなら僕は)
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)(ちっぽけな爪を研げるかもしれない)
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)「あの 僕に武術を教えてください」
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)「あいつらを倒したいんです!」
「明、母さんとサナは男のお前が守るんだぞ」
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)(僕は男だ)
鳥川明(ガワは鷲尾レイ)(家族もそして鷲尾さんも 僕が守れるようにならなくちゃ)
戦いのゴングがなる音が
今度ははっきり僕の耳に届いた
明は喧嘩は弱いけど心は勇気のある素敵な男の子ですよね。そのことをすぐに見抜いたレイもさすがです。体が入れ替わっても戻ってもこの二人なら良いコンビになれそう。
熊井、本当に性格悪くてムカつきますね!😡
現実にもこういう陰湿な奴が存在するかもしれないと思うと残念ですよね。
それに引き換えレイちゃんは強くて逞しいし、主人公は優しくて根は強いし、素敵です。
熊井にもっと厳しい鉄槌がくだりますように!😂