そんとく!(脚本)
〇霧の立ち込める森
若者「父さん・・・大丈夫か?」
老人「はあ・・・はあ・・・」
若者「父さん!!」
老人「もう・・・無理だ・・・」
若者「あとちょっとで街に着くはずだからさ!!」
若者「きっと病気も治せる!!」
老人「・・・・・・」
若者「・・・・・・」
老人「・・・ここは魔女が出る森だ。早くでなければ」
老人「お前だけでも・・・」
「ヘイヘイヘイ!! お困りのようですなあ!?」
「!?」
アルメリア「我らにお任せあれ!!」
アルメリア「このオレ、アルメリアと・・・」
アルメリア「ミリャイーズの手にかかれば・・・」
アルメリア「・・・・・・」
魔女 ミリャイーズ「・・・・・・」
アルメリア「母ちゃん・・・ちょっと演出が過剰かな?」
魔女 ミリャイーズ「わかりました」
アルメリア「まあ・・・こんくらいでいいや」
「・・・魔女!?」
アルメリア「まあまあまあまあまあまあ」
アルメリア「そう怯えなさんな」
老人「な、何を言ってる!? 魔女が!!」
若者「ひ、人を食うんだろ!?」
アルメリア「それは誤解なんでさあ、旦那方。 ね?」
魔女 ミリャイーズ「そうですね。 ここ周辺に人食好きはいなかったはずです」
アルメリア「ストおおおおオップ!!」
魔女 ミリャイーズ「はい」
アルメリア「そっちじゃねえ!?」
魔女 ミリャイーズ「?」
アルメリア「いいから母ちゃんは黙っとけ!!」
魔女 ミリャイーズ「・・・・・・」
「・・・・・・」
アルメリア「おほん!」
アルメリア「そこのご老公さんや。 もしかして体調でも悪いのかい?」
老人「・・・そうじゃ」
魔女 ミリャイーズ「態度が変化しましたね。 脈拍の上昇、脳内にも変化がみられます。 一体どうして────」
アルメリア「あいいいいいぃぃっ!!」
アルメリア「なんとその重い病気!! 今ならすぐ治せます!!」
アルメリア「そう・・・魔女ならね?」
アルメリア「じゃ、母ちゃんやっちゃって」
魔女 ミリャイーズ「・・・意義を感じません」
アルメリア「いや、急に何言ってんの!?」
魔女 ミリャイーズ「あの人間は老いています。 例えあの異常を直したとしても、 もって2年でしょう」
魔女 ミリャイーズ「別に今死んだところで──」
アルメリア「だああああああああっ!!」
アルメリア「そうじゃねえっていつも言ってるだろ!?」
アルメリア「こう考えてみろ? オレの寿命が明日までだとしてだ。 今オレが死んじまうんだぞ」
魔女 ミリャイーズ「────」
魔女 ミリャイーズ「それは・・・確かに勿体ないですね」
アルメリア「・・・もうそれでいいから、やっちゃって」
老人「体が・・・ッ」
老人「なんともないぞ!!」
若者「・・・・・・ッ!!」
老人「苦労をかけたな・・・」
若者「そんなこと言うなって!!」
魔女 ミリャイーズ「・・・・・・」
アルメリア「感動や~」
魔女 ミリャイーズ「血と同じ物質を眼から排出する理由はなんです?」
アルメリア「心の血だよ。人間はああやって、傷以外でも泣くんだよ」
魔女 ミリャイーズ「相変わらず不可解ですね・・・」
アルメリア「まだまだじゃのぅ~」
アルメリア「ま、こうやって魔女の汚名を晴らしていこうや」
魔女 ミリャイーズ「こんなことで何が変わるのですか」
アルメリア「変わるんだなあコレが」
若者「ありがとうございます魔女様!」
老人「女神様の言ってたこととは違って、 良い方なのですね。失礼しました」
魔女 ミリャイーズ「────」
アルメリア「言ったろ~?」
魔女 ミリャイーズ「この姿勢、態度・・・。 つまり、自分達よりも上位の存在に対する防衛行動。敵対するよりも・・・」
アルメリア「おーい・・・」
アルメリア「いいか、母ちゃん?」
アルメリア「人間ってのはな・・・、心、魂で動くんだ。損得なんかじゃねえんだ」
魔女 ミリャイーズ「なるほど。脳内で分泌される快楽物質を求め、行動すると」
アルメリア「・・・よくわからんがそういうことだ」
若者「あの・・・これ、街で医者に払おうと思ってたものです。受け取ってください」
アルメリア「いやいやそんな悪いって・・・」
老人「ワシらの村の周辺でしか取れない魔結晶です。命の対価としては安いかもしれませんが・・・」
アルメリア「まあ確かに釣り合わないものかもしれませんが大切なのは気持ちですよありがとう受け取りますありがとう」
魔女 ミリャイーズ「???」
アルメリア「ところで~? その村にはじいさんと同じ病気の人いたりする~?」
老人「はい・・・実はワシはまだ動けるだけましな方で・・・」
アルメリア「マジか!? よかっ・・・、いやたいへんっすねぇ~?」
アルメリア「もしよければなんだけど~? アルメリアちゃんが助けちゃおっかな~?」
老人「本当ですか!?」
アルメリア「それでそれでー、ほんのちょぉーっとでいいんだけどぉ・・・。 これまたくれない?」
老人「はい! そんなものでよければ喜んで!」
アルメリア「おっほほほほほほほほほ~」
アルメリア「村の人たちが困ってる!! やるぞ母ちゃん!!」
魔女 ミリャイーズ「・・・それは損得勘定では?」
〇児童養護施設
女性「ありがとう魔女様!」
女の子「アルメリアちゃん! おばあちゃん元気になったよ!!」
男性「いやあ動けるって素晴らしいよ」
アルメリア「・・・・・・」
魔女 ミリャイーズ「どうして不満そうなのです」
アルメリア「村人全員完治してしまった・・・」
魔女 ミリャイーズ「それが目的だったのでしょう?」
アルメリア「オレの石が・・・」
アルメリア「将来絶対一般普及するはず。 高騰したときに独占する状態を作れていれば・・・くそう」
魔女 ミリャイーズ「・・・・・・」
「魔力反応の爆発だ! 誰か手を貸してくれ!」
アルメリア「余裕じゃんそんなの。な、母ちゃん」
魔女 ミリャイーズ「取り敢えず助けてくればいいのでしょう?」
アルメリア「おう・・・」
アルメリア「・・・いや待てよ?」
魔女 ミリャイーズ「アルメリア・・・」
アルメリア「母ちゃんオレにいい考えがあるわ」
「へいへいへい! 魔女の助けはいらんかねえ~ッ!!」
魔女 ミリャイーズ「まったく・・・」
〇洞窟の入口(看板無し)
村長「採掘場を建てる・・・?」
アルメリア「そうやで」
村長「・・・それは、構いませんが」
アルメリア「あいよ。ちゃんと給料は出るからさ!」
村長「給料? いや、お待ちください! 私達が働くのですか!?」
アルメリア「はあぁぁぁ・・・」
アルメリア「あんな? 村長はん? さっきの事故でどんな被害があったか言うてみい?」
村長「それはッ! 確かに感謝しておりますが・・・」
アルメリア「重軽傷6名。壊れた工具が28点。飛んできた瓦礫による農作物への被害」
アルメリア「ぜぇんぶぅ・・・解決したのは誰や?」
村長「魔女様です・・・」
アルメリア「せやな?」
アルメリア「洞窟が塞がったままじゃこれから出来んことも増えとったはずやろ? どんくらいの損害だったんやろなア・・・」
村長「・・・・・・」
アルメリア「なにもな? そっちになんも得が無いわけでもないねん。 魔結晶はたかあぁく売れるんよ」
村長「そうなのですか!?」
アルメリア「300年後くらいにはな?」
村長「ふっ・・・ふざけるな!」
アルメリア「あん?」
若者「アルメリアさん! アンタらには感謝してるけど、これは違うだろう!?」
アルメリア「いやだから、こっちもちゃんとサポートするって!」
アルメリア「食糧なんかいらない体にしてやるから、農作業なんて要らないし。 例え事故が起こって死んでも生き返らせるから問題ないって」
村長「アンタらがやればいいじゃないかッ! 私達を救ったように!」
アルメリア「オレらも暇じゃないんだよねぇ・・・」
アルメリア「世間の魔女の悪評を無くしていこうって活動しててさぁ・・・」
「???」
アルメリア「それにオレ魔法使えねえし!!」
若者「は?」
アルメリア「だから、オレは母ちゃんに改造されただけの人間なわけ」
アルメリア「お前らもオレみたいになればいいんだよ! 気楽やぞ~」
アルメリア「あっ、でもオレは『魔女の子供』だから。 そこは一緒にしないでね? やっぱ序列はあるんよな」
「・・・・・・」
若者「・・・出てけ」
アルメリア「そんな態度とっていいんか?」
アルメリア「おるんやぞ? おるんやぞ? 魔・女・様がよぉ~」
「そちらもいいのですね?」
アルメリア「ああん?」
若者「女神様!?」
アルメリア「うげっ!?」
ルッカ「騒動の匂いを感じて来てみれば、またあなたなの? アルメリア」
アルメリア「・・・ッ!!」
ルッカ「人間を困らせたら駄目って言ってるわよね?」
アルメリア「オ、オレは提案しただけだよ! そうだ! 幸福を提供してやるっつってんだよ!!」
アルメリア「WINWINなんよねぇええええ!?」
ルッカ「そもそも魔結晶はね? 人体に悪影響が出るから規制してるの」
ルッカ「だからこれを基にした文明は発展させない方向なのよ」
アルメリア「ゴミじゃねえかッ!?」
アルメリア「んだよ・・・じゃあこんな村用はねえよ。 ボケがカスがよ・・・」
アルメリア「あーあ・・・貴重な時間を返して欲しいよね・・・」
アルメリア「はっ・・・」
「ぐえええええええええええええええっ!?」
ルッカ「皆さま悪い魔女は去りました」
魔女 ミリャイーズ「・・・やはり人間はよくわかりません」
〇暖炉のある小屋
ルッカ「はあ・・・まったく」
魔女 ミリャイーズ「こんばんは」
ルッカ「まーた、なにやってんのよもう・・・」
ルッカ「・・・アルメリアは?」
魔女 ミリャイーズ「奥でふてくされてますよ」
ルッカ「最初は良かったのに・・・。 どうしてああ調子に乗るのよ」
魔女 ミリャイーズ「それがあの子の面白さですよ」
ルッカ「ちゃんと注意なさいよアンタも!」
魔女 ミリャイーズ「おや? 私に意見するなんて、偉くなったものですねルッカ?」
魔女 ミリャイーズ「すみません。冗談ですよ?」
ルッカ「・・・・・・」
魔女 ミリャイーズ「あの子に出会うまで、私は人間というものに興味を持たなかった」
魔女 ミリャイーズ「『こちらを見ながら逃げていく生きモノ』。 その認識を変えたのがあの子」
魔女 ミリャイーズ「私はあの子を通して人間を知る。興味を抱く。 あの子の先に世界はあるのです」
ルッカ「・・・そういうの人間同士でなんて言ってるか知ってる?」
魔女 ミリャイーズ「拝聴しましょう?」
ルッカ「親馬鹿」
魔女 ミリャイーズ「うふふふ・・・ははははははっ!」
1発で人の病気を治せるなんてすごいなあ、その感じで私の花粉と黄砂のアレルギーも治してくれないかなあ?なんて妄想しながら読んじゃいました🤣アルメリアの、金儲け主義な感じが見え隠れしていたところがちょっとおもしろかったです😂
悪人じゃないけど儲け話に目がなくてすぐ調子に乗っちゃうアルメリア。がらっぱち関西弁で捲し立てるアルメリア。とにかく彼女のキャラクターがものすごく魅力的で釘付けでした。最後のほうで明かされるミリャイーズの本心も良かった。「親バカ」とは言い得て妙です。