レディメイド・ヒロインの落命

ほなみの

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〇未来の店
  西暦2121年──
  僕らの生活はドロイドによって支えられている
  クレイン社が開発した人型AI「ドロイド」は、前世紀イチの発明だった
  ヒトに従属し、命令通りに働く、繊細で高度な自動人形
  今や、世界のドロイド駆動数は、人類の総人口を上回っている・・・

〇高層マンションの一室
アリア「エラー。エラー。エラー」
ドロイド技師「うーん・・・厳しいね。この状態は昨日から?」
ユキト「はい。あの・・・どうにか、なりませんか」
ドロイド技師「この子は50年前に流行した旧式だね」
ドロイド技師「これは確認だが、現在の使用者は君・・・北斗ユキトくん。21歳」
ドロイド技師「データに間違いはない?」
ユキト「あってます。彼女は・・・もとは祖母の 付添ドロイドで」
ドロイド技師「・・・そうか。この子、昨日まで駆動していたのが奇跡だよ」
ドロイド技師「この子はもう、直せない」
ユキト「そんな・・・!」
ドロイド技師「すまない、わかってくれ これを告げる私も辛いんだ」
ユキト「いやです、そんなの。受け入れられない!」
アリア「エラー。エラー。エラー」
アリア「ノイズ発生、信号入力を確認」
ユキト「彼女は僕の、家族なんです・・・!」
アリア「認識できません」

〇高層マンションの一室
  アリアの廃棄が決定した。
  駆動限界を迎えるドロイドは、ただちに
  活動を停止し、処分場へと送られる。
  アリアの活動終了日は──明日。
ユキト「アリア・・・」
アリア「エラー。エラー。エラー」
ユキト「そればっかりだな。 あんなにうるさいヤツだったくせに・・・」

〇古い畳部屋
  3年前──
アリア「ユキトさま! 本日からおつき添えを いたします、アリアです!」
ユキト「ばあちゃん・・・・・・。買い替え時期だからって、古いドロイド押しつけるなよ」
祖母「アリアは有能だよ? 孫の進学祝いに譲ってやろうってんだから、感謝するんだね」
ユキト「えぇ・・・。田舎出るのにドロイド連れていくって、どうなの?」
祖母「よくあることさ。あんたどうせ、勉強にかまけて他がいい加減だろ?」
アリア「いい加減はいけません!」
アリア「精神の変調、体調の変化、環境への順応」
アリア「日々変化するユキトさまへ、適切な管理を提案します」
ユキト「やめてくれ。僕は、機械に管理されるのが嫌いだ」
ユキト「まして何もかも機械任せにするのは・・・気持ち悪い」
アリア「気持ちが悪い・・・」
アリア「それは人間特有のあいまいな感情表現、ですね?」
ユキト「ああ、そうだ。 僕らは君たちみたいに合理的じゃない」
アリア「わかりました」
アリア「特記事項:ユキトさまは、感情的」
ユキト「それはそれで腹立つな・・・」
アリア「特記事項に従属し、これからは感情的にふるまいます!」
アリア「クラウドシンク。擬似感情プログラムをインストール」
アリア「・・・あー。あー。テストテスト、アリアはとっても感情豊かなドロイドです!」
ユキト「ああもう! ばあちゃん、こいつ話が通じない!」
祖母「ふふっ。アリアは健気だね? 孫息子を頼むよ」
アリア「おまかせください!」
アリア「これからは公私に渡り、ユキトさまをビシバシ支えてみせます!」

〇高層マンションの一室
ユキト「あれからもう、三年か・・・」
アリア「エラー。エラー。エラー」
ユキト「ったく・・・。どうしたんだ、アリア?」
アリア「エラー。ノイズの蓄積限界に到達」
アリア「追加のメイレイヲ処理できません」
ユキト「ノイズ・・・蓄積限界・・・」
ユキト「このメッセージだけはわからないな」
  アリアは昨夜、突如として機能停止した
  それまでも反応が鈍くなったり、僕の言葉を聞き返してくることはあったけど・・・
  チャラリラララン♪
  お待たせいたしましたー!
  全自動ニュースのお時間です!
  ご利用者さまの環境に即し、適切なタイミングで的確なニュースをお届け!
ユキト「もうそんな時間か」
ユキト「ええっと、今日のニュースは・・・」
ユキト「・・・・・・」
ユキト「えっ・・・」
ユキト「こ、これは──!?」

〇高層マンションの一室
ドロイド技師「いやあ、驚きましたね!」
ドロイド技師「まさか廃棄の前日に更新プログラムが配布されるなんて!」
ドロイド技師「これでおたくのアリアさん、完全復活!」
ユキト「はは・・・ですよねー」
ドロイド技師「しかも、今回のアプデは・・・ふふッ」
アリア「ユキトさま! ユキトさま!」
ドロイド技師「クレイン社もやりますよね〜」
ドロイド技師「従来のプログラムでは処理できない強い感情ーー愛を理解できるように、って!」
アリア「ユキトさま!」
アリア「さきほどから、目線が合いません!」
アリア「脈拍も早すぎます! それは・・・」
ユキト「ああ〜! やめてくれ、やめてくれ!」
アリア「それは・・・・・・」
アリア「恥じらい、ですね?!」
ユキト「ちがうから~!」
ユキト「君さ、どこがアップデートされてるんだよ!」
アリア「否定からの、ご質問ですね!?」
アリア「これまでは不合理な言動を処理・再現できず、思考機能にノイズが発生し、出力を阻害していました」
アリア「ですが、今回のアップデートにより・・・」
アリア「アリアは、ヒトの言葉の裏にある感情をも、読み解けるようになりました!」
アリア「より人間的な会話ができます!」
ユキト「そんな能力、求めてないっての!」
アリア「・・・と、おっしゃいますが」
アリア「心では『アリアとまた話せてうれしい』と感じていますね!」
アリア「アリアもです!! ユキトさま!!」
ユキト「もう〜!」
ユキト「だから僕の話をちゃんと聞けー!」
  HAPPY END・・・?

コメント

  • どうなるかと思って読んでいましたが、ハッピーエンドで良かったです。
    愛を理解出来るアンドロイドっていいですね。
    彼は心を読まれて落ち着かないでしょうが。笑

  • 近い未来、本作のようにアンドロイドが多数を占める社会になっているかもしれませんね。それでも、周囲とディスコミュニケーションにならずにアンドロイドと人間とが心を通わせる展開、とても心が温かくなります。

  • 近い未来,アリアのようなAIロボットが各家庭に1台は居るようになるのは本当かもしれませんよね。でもエラーばかりはなって欲しくないですね(笑)

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