ネコと祐介

Cobachi

読切(脚本)

ネコと祐介

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〇明るいリビング
パパ「おーい、祐介」
パパ「子供部屋に引きこもってないで ちょっとこっちに来なさい」
パパ「殻に閉じこもる人間は大成しないぞー」

〇男の子の一人部屋
祐介「いま、宿題やってるから もう少し待って」
パパ「宿題だと?嘘をつくんじゃない」
パパ「夏休みでもないのに 小学生で宿題なんて出るはずないだろ」
祐介「いや、夏休みじゃなくても 普通に学校から毎日宿題出てるよ」
パパ「な、なんだって!? 大変だよママ!!」
ママ「なになに、どうしたの?」
パパ「裕介の学校は毎日宿題を出すらしいぞ!」
ママ「まあ、なんてこと!そんなことしたら 祐ちゃん頭が良くなりすぎて」
ママ「将来、ハゲになるかもしれないわ!」
祐介「なんで宿題やるとハゲるんだよ」
パパ「祐介はまだ子供だから知らないかも しれないけど、経営者とか政治家とか 頭のいい人にはハゲが多いんだ」
パパ「パパの会社の役員も9割はハゲで 1割はたぶんカツラだ」
祐介「じゃあ全員ハゲじゃん」
ママ「小学生のうちから毎日宿題なんてしたら 身体に毒よ」
ママ「担任の先生に相談した方がいいかしら」
祐介「そんなことしたら、先生がハゲるから やめてあげて」
ママ「そういえば、最近お風呂で抜け毛が 目立つなあと思ってたけど」
ママ「もしかして、裕ちゃん・・・ もう頭皮が後退し始めてるとかないわよね」
パパ「あ、それ多分パパが風呂場で すね毛を処理したからかも」
祐介「剃った毛はちゃんと片付けてよ」
パパ「よーし。パパが祐介の頭皮の健康状態を チェックしてやろう!」
パパ「祐介! 今すぐ宿題をやめて、こっちへ来なさい」
祐介(もう、めんどくさいなあ・・・)
ママ「お願い、裕ちゃん。 今すぐ裕ちゃんの頭皮を確認させて」
ママ「でないとママ、上手く呼吸ができないわ」
祐介「わかったよ、今すぐ行くから。 ちゃんと呼吸だけは続けてね」

〇明るいリビング
パパ「ふう、どうやら今のところ 頭皮は大丈夫そうだね」
祐介「それはよかった。 (知ってたけど)」
ママ「ママ、安心したらおなか空いちゃった」
ママ「晩ごはんは、祐ちゃんの髪の毛に良さそうなものを用意するわね」
ママ「海藻サラダとか、ひじきとか ミノキシジルとか」
祐介「母さん、ミノキシジルは食べ物じゃないよ」
パパ「そうだ、祐介に見せたいものがあるんだ」
祐介「別に興味ないから、 ボクはごはんができるまで部屋に戻るよ」
パパ「まあ、待て! きっと、びっくりするぞー」
祐介「なに? (どうせろくでもないものでしょ)」
パパ「じゃーん!こいつを見ろ!」
ネコ「にゃあ」
祐介「え?」
パパ「にゃあ」
祐介「にゃあ・・・じゃないよ! なんなのこれ?」
パパ「おっ!いい反応だね~」
パパ「見ての通り、彼はネコです」
祐介「いや、ネコじゃないでしょ!」
ネコ「ワガハイは猫です。にゃあ」
祐介「うわ、しゃべった」
パパ「ほら、本人もネコだって言ってるじゃないか」
祐介「いやいや、ネコってしゃべらないし そもそもこんなにデカくないし」
パパ「ネコがしゃべらないなんて、そんなこと どこで学んだんだい?」
パパ「しゃべるネコが居たっていいじゃないか デカいネコが居たっていいじゃないか」
パパ「先入観は人生をつまらなくさせるぞ」
ネコ「ワガハイは普通のネコです。にゃあ」
祐介(えっ?なにこれ? ボクがおかしいの?)
ネコ「これ、つまらないものですけど ワガハイの気持ちです。にゃあ」
祐介「えっ!?どういう気持ちなの?」
パパ「わからないか? 愛だよ、愛」
パパ「そんな気をつかわないでいいさ、 今日から同じ屋根の下で暮らすわけだし」
祐介「え?この猫うちで飼うつもりなの?」
パパ「こら、飼うだなんて失礼じゃないか これから僕らは一緒に暮らす家族になるんだぞ」
ネコ「かたじけない。にゃあ」
祐介「なんで、こんなネコと一緒に暮らさなきゃならないのさ」
パパ「取引先の友人の親戚の従妹の息子から預かってきたんだ」
祐介「パパの人脈どうなってんの?」
パパ「まあ、いいじゃないか。 祐介も前にネコ欲しいって言ってただろ?」
祐介「ボクが欲しかったのはイヌだよ」
パパ「同じ生きもの同士、みんな兄弟みたいな ものじゃないか。仲良くしてやってくれ」
ネコ「祐介おにいちゃん、よろしくおねがいします。にゃあ」
祐介「おにいちゃん・・・」
祐介「まっ、まあ・・・ 弟としてなら仲良くしてやってもいいかな」
パパ「よし、じゃあ決まりだな」
ネコ「祐介おにいちゃん、ありがとう。にゃあー」
祐介「なっ!?なんでおしっこかけるの!?」
ネコ「マーキングです。にゃあ」
パパ「よかったな、祐介。 マーキングはネコにとって親愛の証 らしいぞー」
祐介「全然よくないよー!!くさいって!!!」
ネコ「祐介おにいちゃん、大好き。にゃあ」
祐介「たすけてーーーーー!!」

〇綺麗な一戸建て
  このあと祐介は猫と暮らすストレスで
  頭がハゲてしまうなんて
  今はまだ誰も知らないのであった。

コメント

  • 「9割はハゲで1割はたぶんカツラ」何という強烈なワードww ハゲ話題がラストに効いてきて、笑いながら納得してしまいました!

  • 頭がいい人はハゲるんですね!初耳で驚きなのと同時に私はこの先もハゲることは無いんだと安心しました😂
    あんなに大きな猫ちゃんだったらマーキングの規模もすごそうですね😂

  • 人生の唯一の関心事が「ハゲ」といっても過言ではないパパとママが気になりすぎて、人間よりでかい喋るネコもマーキングも衝撃度がほぼゼロに。宿題にハゲむ祐介くんをハゲましてあげたいと思ったら最後に結果報告が・・涙。

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