エピソード1(脚本)
〇コンビニ
鈍渡 鯉(どんと こい)「~というわけでぇ、」
鈍渡 鯉(どんと こい)「『鈍渡 鯉(どんと こい)のどんとこいニュース』でしたァ」
婆ちゃん「いいね!よろしくぅ」
「はい、カット!」
〇コンビニ
パパ「兄、ちゃんと撮れた?」
兄「・・・(頷く)」
鈍渡 鯉(どんと こい)「今回こそは、バスりたいね♪」
〇大きな一軒家
〇古風な和室(小物無し)
パパ「編集頼むぞ、兄ぃ」
兄「・・・うん(ボソッと)」
家の電話が鳴る
鈍渡 鯉(どんと こい)「はい、もしもし」
パパ「さ、メシにするか」
鈍渡 鯉(どんと こい)「・・・」
パパ「どした?鯉」
パパ「電話どちらさん?」
鈍渡 鯉(どんと こい)「・・・パパ」
パパ「ん?」
鈍渡 鯉(どんと こい)「動画内容に、クレームが入りましたァ!!」
パパ「な、何ぃ!?」
クレーマー「前回の動画の『モテる男の条件ランキング』、」
クレーマー「ワルい男がモテるだあ!?」
クレーマー「ワルぶっても全然モテねぇじゃねぇか!」
クレーマー「謝罪しろ!!」
〇黒
クレーム1
ワルい男がモテるて嘘じゃねぇか
〇古風な和室(小物無し)
パパ「アンケート結果にキレるなんて、」
パパ「なんて理不尽な・・・」
パパ「てか、何でうちの電話番号バレたんだ・・・」
兄「前回の『モテる男の条件ベスト10』」
兄「10位 ワルっぽさがある」
パパ「10位!?」
パパ「よりによって、10位を真に受けるかねぇ」
鈍渡 鯉(どんと こい)「そもそも街頭アンケートで、」
鈍渡 鯉(どんと こい)「そんな意見ありましたかァ?」
兄「・・・付け足した」
パパ「えっ!まさか捏造したの!?」
兄「・・・9位までしか集まらなかったから」
パパ「駄目だよぉ、それは駄目だよぉ」
パパ「足りないなら足りないで、ちゃんと言ってくんなきゃ」
兄「・・・ワルっぽいのが好きな女子、多いと思って」
パパ「そうかもしんないけどさぁ」
兄「・・・ごめん」
パパ「いや、」
パパ「やらせてしまった俺が悪い」
鈍渡 鯉(どんと こい)「パパ、どうしますかァ?」
パパ「よし!」
パパ「切れ」
鈍渡 鯉(どんと こい)「いいんですか?」
パパ「構わん、切っちゃえ」
鈍渡 鯉(どんと こい)「ほ、ほいっ」
鯉、電話を切ろうとする
パパ「ちょ、ちょっと待った!」
パパ「やっぱ切っちゃ駄目だ」
鈍渡 鯉(どんと こい)「?」
パパ「前回の動画、企業案件だった!」
パパ「商店街のカレー屋の宣伝入ってる」
パパ「クレームはマズイな・・・」
パパ「よし、代われ」
鈍渡 鯉(どんと こい)「う、うん」
と、受話器をとるパパ
クレーマー「次の動画で、謝罪文入れろやぁ!!」
パパ「ひっ!!」
パパ「あわわ・・・めっちゃ怒ってんじゃん・・・」
パパ「この内容でキレることができるなんて、」
パパ「理解不能だよ」
グルキュキュキュキュ
パパ「あ」
パパのお腹がくだる音が鳴り響く
婆ちゃん「いくつになっても、」
婆ちゃん「勝負所でお腹くだす男だねぇ」
パパ「ちょ、ちょっとトイレ」
婆ちゃん「頼りない」
受話器を兄にわたすパパ
兄「え・・・」
パパ「上司に代われって」
そそくさとトイレへ駆け込むパパ
兄「・・・あ、あの・・・もし、もし」
兄「・・・」
鈍渡 鯉(どんと こい)「・・・大丈夫?」
兄「・・・あ、う・・・あい」
鈍渡 鯉(どんと こい)「怖くない、ドントコイドントコイ、怖くない・・・」
鯉、兄のもつ受話器をぶんどる
兄「!」
鯉、鼻をつまみ、
鈍渡 鯉(どんと こい)「(オッサンの声で)かわりました、ジョーシです」
クレーマー「あ?あんたホントに上司?」
クレーマー「えらい鼻声だけど」
鈍渡 鯉(どんと こい)「万年鼻づまりでして、失敬失敬」
クレーマー「まぁいいや」
クレーマー「お宅の動画のヘビーユーザーです」
鈍渡 鯉(どんと こい)「毎度おおきにです」
クレーマー「前回の内容にはガッカリですよ」
クレーマー「いつも見てやってんのに」
クレーマー「ワルがモテる?」
クレーマー「虚偽の内容を世界にバラまいてんじゃねぇよ」
鈍渡 鯉(どんと こい)「あれはアンケート結果でございます」
鈍渡 鯉(どんと こい)「あくまで一般女性の声であって、」
鈍渡 鯉(どんと こい)「我々、作り手側の意見ではございません」
クレーマー「仮に一般市民の声であっても、」
クレーマー「あんたらが内容確認して、動画アップしてんだろ?」
クレーマー「じゃ、何か?」
クレーマー「足のクサい男がランキング一位て結果がでたら、」
クレーマー「そのまま動画アップするか? しねぇだろ?」
鈍渡 鯉(どんと こい)「・・・はい、します」
クレーマー「します!?嘘つけ!」
鈍渡 鯉(どんと こい)「(思わず)ですからァ~、さきほどから言ってる通りぃ」
兄、スマホの画面を鯉に見せる
『クレーム対応マニュアル』
兄「(3D言葉は禁句)」
鈍渡 鯉(どんと こい)「・・・」
『ですから(上から目線)』
『だって(逃げ腰)』
『でも(反抗的な態度)』
鈍渡 鯉(どんと こい)「・・・」
クレーマー「あ~?ですから、何?」
鈍渡 鯉(どんと こい)「・・・ごめんなさい」
『安易な謝罪はもっとダメ』
鈍渡 鯉(どんと こい)「!」
クレーマー「謝るてことは、自分たちが悪いて認めるんだな?」
鈍渡 鯉(どんと こい)「い、いまの謝罪は、」
鈍渡 鯉(どんと こい)「お時間いただいてることに対して、です」
『相手の意見を吐き出させる』
『愚痴、不満、涙、汗、唾、便、本音・・・』
『人は“出す”ことにより、ストレスが発散される』
鈍渡 鯉(どんと こい)「ちなみに・・・何かあったんですか?」
鈍渡 鯉(どんと こい)「例えば、女性とのデートで何かあったとか、」
クレーマー「何でそっちに、こっちの個人情報言わなきゃいけねぇんだよ」
鈍渡 鯉(どんと こい)「ワルっぽいの認識を共有できるかと思いまして」
クレーマー「じゃ、そっちが言ってみ」
クレーマー「ワルっぽいの定義」
鈍渡 鯉(どんと こい)「・・・」
クレーマー「おいおい、」
クレーマー「そっちから言ってきたんでしょ?」
鈍渡 鯉(どんと こい)「・・・」
婆ちゃん「いつの時代も、モテる男てのはねぇ、」
婆ちゃん「悪者になれるオトコさ」
鈍渡 鯉(どんと こい)「・・・っ!」
鈍渡 鯉(どんと こい)「ワルっぽいの定義は、悪者になれる人のことです」
クレーマー「・・・あ?」
素の声で話す鯉
鈍渡 鯉(どんと こい)「うちの死んだママが言ってました」
鈍渡 鯉(どんと こい)「パパは肝心なところで、」
鈍渡 鯉(どんと こい)「腸が崩壊しちゃって、頼りないところあるけど・・・」
鈍渡 鯉(どんと こい)「言い訳しない!」
鈍渡 鯉(どんと こい)「失敗しても他人のせいにしない!」
鈍渡 鯉(どんと こい)「むしろ、他人の失敗も自分の失敗と受け止めるって」
クレーマー「・・・」
鈍渡 鯉(どんと こい)「パパのそういうところを好きになった、て」
鈍渡 鯉(どんと こい)「そういう悪者になれる人がモテるんだと思います」
クレーマー「何語ってんの?話ズレてない?」
クレーマー「ちなみに、俺もあえて悪者になってだな」
クレーマー「そちらに苦言を呈してるわけで――――」
鈍渡 鯉(どんと こい)「自分の為にじゃなく、」
鈍渡 鯉(どんと こい)「他人の為に悪者になれるか!です」
クレーマー「・・・ッ!」
パパ「鯉・・・」
いつの間にか、トイレから戻ってきていたパパ
パパ「あとはパパに任せろ」
鈍渡 鯉(どんと こい)「・・・」
〇大きな一軒家
〇古風な和室(小物無し)
クレーマー「もういいよ」
クレーマー「こっちも暇じゃないから」
パパ「そうですか」
クレーマー「最後に一言」
クレーマー「視聴者は客」
クレーマー「お客様は神様、ということは忘れないように」
パパ「お客様は神様・・・」
パパ「たしかにそうかもしれませんね」
パパ「ただ、神様は人に対して、」
パパ「指図したり強要してきたりしませんよね」
クレーマー「・・・チッ」
――――ガチャリ
電話が切れる
鈍渡 鯉(どんと こい)「やっと終わったァ~~」
パパ「さ、メシにするか」
鈍渡 鯉(どんと こい)「パパ、お腹大丈夫?」
グルキュキュキュキュ
パパ「あ」
トイレに走り出すパパ
婆ちゃん「やれやれ」
〇実家の居間
鈍渡 鯉(どんと こい)「いっただきま~す!」
パパ「しっかし、どうやってうちの電話番号調べたんだろな」
兄「・・・」
スマホの画面をさしだす兄
パパ「ん?」
動画の最後のページ
『お問い合わせ・ご意見はこちらまで ×××‐×××‐×××』
鈍渡 鯉(どんと こい)「あ」
パパ「間違えて、電話番号載せちゃった・・・?」
兄「・・・(いやぁ)」
〇大きな一軒家
「兄のせいか!!」
〇黒
後日、女性の幽霊が映っているということで、
鈍渡家の動画はバズることとなる
しかし、同時にクレームも増えることとなる
完
物凄く執拗なクレーム、これは常日頃クレームをする側か、もしくは受けている側かと思ってしまいましたが、後者でしたか(当然ですよね)
現代社会は地震・雷・火事・クレーマーみたいになりつつありますね。クレーマーとのやりとりがやけにリアルだと思ったら作者さんの実体験に基づいたお話なんですね。3Dは「なるほど〜」でした。神様に関するお父さんの切り返しがカッコ良かったです。