v-ファミリー

奈村

誰にでも秘密はある(脚本)

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〇総合病院
「オギャー!」
  カナが生まれたとき僕は誓った

〇病院の廊下
安堂ハルト「あ、笑った」
安堂ハルト「アンさん」
安堂ハルト「僕を見て笑ってくれたよ」
  何があってもカナを守るって
  だから

〇広い公園
安堂カナ「大きくなったらパパのお嫁さんになる!」
  と言ってくれていたカナが

〇一軒家
「私に話しかけないで!」

〇おしゃれなリビングダイニング
安堂カナ「パパなんて大嫌い!」
  となっても僕の気持ちは少しも揺らぐことはない
  それどころか愛しさは増すばかりなのだ

〇黒
  V-ファミリー
  「誰にでも秘密はある」

〇おしゃれなリビングダイニング
安堂アン「パパに何てこと言うの!」
安堂アン「謝りなさい!」
安堂カナ「だって・・・」
安堂カナ「大嫌いなんだもん!」
安堂アン「待ちなさい!」
安堂アン「パパも言い返さないと駄目よ」
安堂アン「って、どうして笑ってるのよ」
安堂ハルト「僕はカナが外に出て元気でいてくれているだけで満足だから」
安堂アン「そうね・・・」
安堂アン「半年前までなら考えられなかったものね」
  そう──
  半年前までカナは部屋に引きこもり

〇部屋の扉
安堂アン「一目でいいから顔を見せて」
安堂ハルト「何があってもカナはパパが守るから」
安堂ハルト「だから・・・」
安堂ハルト「だから外に出てきて欲しい」
  どれだけ僕とママが説得しても
  一歩も出て来ようとはしなかった
  だけどある日、突然──
  カナは出てきた
  それは引きこもり中に好きになった
  バーチャルアイドルの皇レンが

〇幻想2
皇レン「バーチャルライブを開催するよ」
皇レン「僕のことが好きなら会いに来て」
  と言ったからだ

〇コンサート会場
皇レン「今日は楽しんでいってね」
安堂カナ「キャー!」
安堂カナ「レーンッ!」
  こうしてカナは引きこもりから脱することができた
  だけど
  それは新たなる問題の始まりでもあったんだ・・・

〇おしゃれなリビングダイニング
安堂ハルト「それにしても最近、家を出て行くのが早くない?」
安堂ハルト「朝のホームルームまで結構な時間があるのに何してんだろ?」
安堂アン「知らないの?」
安堂ハルト「・・・」
安堂アン「あ、ごめん」
安堂ハルト「いいのいいの」
安堂ハルト「いつかまた昔のように話してくれる日が絶対に来るって信じているから」
安堂ハルト「それで何してるの?」
安堂アン「バイトよ」
安堂ハルト「バイト?」
安堂ハルト「確かアルバイトは学校が終わってからだよね?」
安堂アン「それだけじゃ皇レンさんに遣うお金が足らないんだって」
安堂アン「だからほんの僅かな時間でもバイトしてるのよあの子」
安堂ハルト「・・・そうだったんだ」
安堂アン「皇レンさんには感謝してるのよ、ほんと」
安堂アン「あの子を部屋の外に出してくれたんだから」
安堂アン「だけど今となっては心配のタネなの」
安堂ハルト「・・・わかった」
安堂ハルト「何とかするよ」
安堂アン「え?」
安堂アン「パパに何とか出来るわけないじゃない」
安堂ハルト「あ、ああ、そうだね」
安堂ハルト「アハハ・・・」
  実はできるんだよ、ママ
  だって皇レンの中の人は──

〇黒

〇幻想2
  僕なんだから

〇寂れた雑居ビル
  僕も気がついていた
  最近カナからのスパチャの額が大きくなっていることに
  でも「スパチャはお気持ちだけでいいから無理なくね」
  と言っても
  「謙虚なレンタソが大好き」と額は増えていくばかりだった
剛力トト子「リスナーからスパチャ取るのをやめたい?」

〇事務所
剛力トト子「朝早くに来て何を言うかと思えば」
安堂ハルト「・・・」
剛力トト子「本気なの?」
安堂ハルト「はい」
剛力トト子「それは娘さんのため?」
安堂ハルト「どうしても僕へのスパチャが止まらなくて」
剛力トト子「・・・答えはノーよ」
安堂ハルト「ど、どうしてですか?」
剛力トト子「あなたはバーチャルアイドルグループ「V-IX」のリーダーなのよ」
安堂ハルト「それがスパチャを切れないのとどう関係があるんですか?」
剛力トト子「分からない?」
剛力トト子「リーダーのあなたがスパチャを切ったら少なからずメンバーにも影響がでるの」
剛力トト子「あなたはアイドル以外にも仕事があるから」
剛力トト子「スパチャからの収入が減ってもどうってことないけど」
剛力トト子「他のメンバーはアイドル一本でやってる子ばかりなの」
剛力トト子「スパチャが貴重な収入源なのよ」
安堂ハルト「・・・」

〇名門の学校
  確かにそうだ

〇おしゃれな教室
安堂ハルト「竹本──」
  僕には教師としての収入があるから大丈夫だけど
安堂ハルト「竹本アイはいないのか?」
  メンバーにはアイドルの収入しかないんだ
安堂ハルト「何も連絡が来ていないんだが」
  だったら、どうすれば──
安堂ハルト「矢野、なにか知らないか?」
矢野マキコ「・・・知りません」
安堂ハルト「風邪でも引いたのかな?」
矢野マキコ「・・・」

〇散らかった職員室
安堂ハルト「え?」
安堂ハルト「アイさんは学校へ行くって家を出たんですか?」
安堂ハルト「分かりました」
安堂ハルト「これからアイさんの行きそうなところを友人から聞いて僕の方でも探してみます」

〇ゲームセンター
安堂ハルト(いないか・・・)

〇ショッピングモールのフードコート
安堂ハルト(ここにもいないな・・・)

〇雑居ビル
安堂ハルト(矢野から聞いたところは一通り回ったし)
安堂ハルト(竹本は一体どこへ行ったんだ・・・?)
安堂ハルト(ん?)
安堂ハルト(あれは・・・)
安堂ハルト「た、竹本!」

〇黒
安堂ハルト「竹本!」
竹本アイ「あ・・・」
安堂ハルト「学校をさぼって何を──」
安堂ハルト「ん?」
安堂ハルト「誰だそいつは」
竹本アイ「・・・」
エロ親父「お前こそ誰だ!」
エロ親父「私はもうお金を払ってあるんだぞ!」
安堂ハルト「お金?」

〇ラブホテル
安堂ハルト「まさか・・・」
竹本アイ「せ、先生、ごめんなさい・・・」
エロ親父「先生?」
エロ親父「学校の先生なのか?」
安堂ハルト「この人から貰ったお金を返すんだ」
竹本アイ「・・・」
安堂ハルト「早く!」
安堂ハルト「どこかへ行って下さい」
安堂ハルト「もし次にこの様なことがあったら躊躇せず通報しますから」
安堂ハルト「そのつもりで」
エロ親父「は、はい」

〇公園のベンチ
竹本アイ「もうしないから家族には言わないで下さい」
安堂ハルト「今まで何度もこんなことを?」
竹本アイ「初めてです」
安堂ハルト「・・・そうか」
安堂ハルト「だけど、どうしてこんなことを──」
竹本アイ「大好きなVTuberの気を引きたくて」
安堂ハルト「・・・スパチャ・・・しているか?」
竹本アイ「・・・うん」
竹本アイ「バイトのお金だけじゃ足りないんです」

〇おしゃれな教室
  よかった・・・
  カナはちゃんと学校に来ていた

〇散らかった職員室
  だけど、このままだといずれカナも竹本と同じように身体を売ろうとするかもしれない
  だ、駄目だそんなこと
  絶対に駄目だ!
安堂ハルト(よし!)
安堂ハルト(決めた!)
  僕はもう──

〇寂れた雑居ビル
剛力トト子「アイドルを辞める!?」

〇事務所
安堂ハルト「僕がバーチャルアイドルを続けたらカナが身体を売ってしまうんです・・・」
剛力トト子「そんなの分からないでしょ」
安堂ハルト「いいえ、分かります」
剛力トト子「どうして分かるのよ」
安堂ハルト「僕がカナの親だからです!」
安堂ハルト「カナは僕の娘だからです!」
安堂ハルト「だから分かるんです!」
剛力トト子「・・・」
安堂ハルト「うう・・・僕はもう生きていけない」
安堂ハルト「今すぐここから飛降りていいですか?」
剛力トト子「な、なに言ってるの」
剛力トト子「娘さんはまだ身体を売ってないでしょ?」
安堂ハルト「そ、そうでした・・・」
剛力トト子「・・・ねえ」
剛力トト子「朝はメンバーのことを考えて上げてって言ったけど」
剛力トト子「今は私のことを考えてくれない?」
安堂ハルト「社長のこと?」
剛力トト子「人気ナンバーワンのあなたが辞めれば売上はがた落ち」
剛力トト子「そうなればこの事務所はおしまいよ」
安堂ハルト「・・・」
剛力トト子「娘のためにバーチャルアルドルになりたいって言うあなたを・・・」
剛力トト子「どの事務所からも門前払いされていたあなたを・・・」
剛力トト子「私は雇ってボイストレーニングをさせた」
剛力トト子「そしてそのダイヤモンドボイスをあなたに手に入れさせたのよ」
安堂ハルト「ありがとうございます」
安堂ハルト「受けた恩はいずれ必ず返します」
剛力トト子「私はいま返して欲しいの」
安堂ハルト「それは駄目です」
安堂ハルト「だって最愛の娘を守れるのは父である僕しかいないんですから!」
剛力トト子「・・・」

〇一軒家

〇おしゃれなリビングダイニング
安堂アン「キャー!」
安堂アン「もうビックリさせないでよ」
安堂ハルト「え?」
安堂アン「帰って来たなら「ただいま」くらい言ってよ」
安堂ハルト「言わなかった?」
安堂アン「・・・どうかした?」
安堂アン「何か様子がおかしいけど」
安堂ハルト「ぜ、ぜんぜん、ぜんぜん何もないよ」
安堂ハルト「アハハハ・・・」
安堂アン「・・・分かりやすく何かありそうじゃない」
安堂ハルト「い、いや・・・」
安堂リク「パパ、お帰りー」
安堂ハルト「リク、いいところに来た」
安堂リク「どうしたの?」
安堂ハルト「話があるんだけどいいかな?」
安堂リク「うん、いいけど?」
安堂ハルト「じゃあ、リクの部屋へ行こう」
安堂アン「何の話なの?」
安堂ハルト「男同士の話だよ」
安堂アン「・・・」

〇男の子の一人部屋
安堂リク「そっか」
安堂リク「バーチャルアイドル辞めるんだ」
  唯一リクだけが僕がバーチャルアイドルの皇レンであることを知っていた
  何故なら僕にバーチャルアイドルになるように薦めてくれたのはリクなのだから
安堂ハルト「いままでゲームのこととか」
安堂ハルト「僕の分からないことを色々教えてくれてありがとうなリク・・・いや、師匠」
安堂リク「パパから師匠って呼ばれるのも今日で最後になるんだね」
安堂ハルト「・・・そう言うことになるかな」
安堂リク「寂しいけど仕方ないね」
安堂カナの声「ただいまー」
安堂リク「あ、お姉ちゃんが帰ってきた」

〇おしゃれなリビングダイニング
安堂リク「お帰り」
安堂カナ「ただいま」
安堂ハルト「お帰り」
安堂カナ「・・・」
安堂ハルト「・・・」
安堂リク「お姉ちゃん」
安堂カナ「なに?」
安堂リク「もしさ、皇レンが引退したらどうする?」
安堂カナ「え?」
安堂カナ「い、引退するの!?」
安堂リク「もしだよ、もし」
安堂カナ「ほっ・・・」
安堂カナ「よかったぁ」
安堂カナ「もう驚かせないでよ」
安堂リク「ごめんなさい」
安堂リク「それでどうするの?」
安堂カナ「勿論、死ぬよ」
安堂ハルト「・・・」
  僕はいったい・・・

〇一軒家
  どうすればいいんだぁぁぁぁ!

〇幻想2
皇レン「あ、カナカナちゃん今日もスパチャありがとう」

〇綺麗な部屋
  物価が上がり
  住宅ローン金利も上がった
  だからパパは学校に黙って夜に副業を始めた
  パパのいない夜は最初寂しかったけど
  いまは好都合だ
  だってこの時間を自由に使えるから
  そう・・・私がバーチャルアイドルとなって皇レンからその地位を奪い
安堂リク「ママ、準備できたよ」
  新たなVTuber界のカリスマとなって
安堂アン「じゃあ始めようか」

〇魔法陣2
月瀬カノン「初めまして」
  カナを正しい道に導いてみせる
月瀬カノン「今日デビューした月瀬カノンです」
月瀬カノン「よろしくお願いします」

コメント

  • わー!!✨新しくて面白いお話ですね!!✨

    これからどうなっていくのか続きが気になりました✨😊

  • 考えられた面白い設定ですね。
    リアルじゃないので正体がわからない、というのがいいですね。
    続けるのも辞めるのもダメとなると、お父さんはどうすればいいのか…解決方法はあるのでしょうか!?
    お母さんも娘のために…まさかの転身!?
    愛情溢れる楽しいお話になりそうですね。

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