読切(脚本)
〇豪華な部屋
ここはある変わった街にある探偵事務所
そこには少年少女達が今日も暇を持て余していた
チェルシー「はぁ〜暇だなぁ〜」
チェルシー「こう暇だと商売上がったりだよ〜」
バート「フフッ平和でいいじゃないですか」
チェルシー「あのねぇそう言ってられるのも今のうちなんだから」
チェルシー「そろそろ借金取りが取り立てに・・・」
バート「借金取りじゃなくて大家さんでしょう?」
ズズズズッ
チェルシー「ん?」
ズズズズッ
バート「おや?」
ズズズズッ
チェルシー「う、噂をしてたら本当に来た・・・?」
ズズズズッ
チェルシー「ぎゃーーー!!!」
チェルシー「ってなーんだ ハギノさんじゃんおっひさ〜」
ハギノさん「やっほ〜 相変わらず閑古鳥が鳴いてんね〜」
チェルシー「そうなの超絶暇なの」
バート「おや」
チェルシー「ねぇハギノさんなんかいい感じの依頼ない〜?」
ハギノさん「そうね〜最近部屋がまた散らかってきてさぁ〜」
チェルシー「げぇーっ! やだよハギノさん家ゴミ屋敷じゃん!」
チェルシー「ってかこの間キレイにしたばっかなのに! もう汚したの?!」
ハギノさん「だって〜キレイになるとつい油断しちゃうじゃない?」
ハギノさん「また報酬弾むからさ〜掃除してよ〜」
チェルシー「うぅ、報酬が出るなら仕方ない」
チェルシー「バート、掃除道具持ってカチコミに行くぞ!!」
バート「そちらの依頼も楽しそうではありますが」
バート「こちらの方の依頼もお聞きした方がよろしいかと」
ゆい「あ、あの・・・」
ハギノさん「あっそうだった この子迷子になってたみたいだからここに連れてきたんだったわ〜」
チェルシー「ちょっとなにサラッと重要なこと忘れてんのさ!」
チェルシー「これは久しぶりにまともそうな依頼が来そう!」
チェルシー「ほら、兄ちゃんも起きて!」
アルベール「んあ?なぁに〜?」
チェルシー「ほらお客さん!一応上なんだからちゃんと接客してよ〜!」
ハギノさん「あら、お兄さんいたの〜 相変わらず存在感ないわね〜」
アルベール「うぅ、朝からひどい言われよう・・・」
アルベール「兄ちゃん、昨日徹夜で調べ物してたから眠いんだよ」
アルベール「あとは2人でやっといて〜ふぁあ〜」
チェルシー「えっ!兄ちゃん?!」
チェルシー「だめだ、全然起きそうにないや」
バート「そんなところじゃなんですし、どうぞ中に入ってください」
チェルシー「こっちこっち!どうぞ座って!」
ゆい「はっはい」
ハギノさん「んじゃ迷子も送り届けたし私はお暇するわ〜掃除の件もよろしくね〜」
チェルシー「掃除はまた今度ねー!」
〇おしゃれな居間
バート「ふむふむなるほど、気がついたら知らない街に辿り着いたと」
ゆい「はい ・・・あの、ここはどこなんですか?」
ゆい「それにさっきの人?はなんだったんですか?」
チェルシー「んーまぁ君みたいな「普通」の人間にはなじみがないから分かるかビミョーだけど」
チェルシー「簡単に言うとここは狭間の世界って感じかな?」
ゆい「はざ、ま?」
バート「あの世と現世の間、みたいな境界線が定まってない世界のことです」
バート「全てが曖昧に作られた世界なので変わったものが多いんですよ」
バート「夢で見てる世界が具現化した感じ、とも近しいでしょうか」
チェルシー「そんな曖昧な世界に君はなぜか迷い込んじゃったってところだね」
チェルシー「ちなみにさっきの人は近所に住んでるハギノさん! 見た目怖いけどとってもいい人だよ」
チェルシー「部屋は汚いけど」
バート「不安なことは多いと思いますが私達に任せて頂ければ無事元の世界へ戻れますよ」
チェルシー「そうそう!そんじゃあさっそく帰り道を探しますか!」
ゆい「あっあの!」
チェルシー「ん?どうしたの?」
ゆい「私この世界のお金とか持ってないですし」
バート「あぁ、それでしたら大丈夫ですよ」
ゆい「えっ?」
バート「特に「あなた」から頂くことはないので」
ゆい「そ、そうなんですか?」
チェルシー「そういえば名乗ってなかったね ぼくはチェルシー・トワイライト!探偵見習いです!」
バート「バート・トワイライトと申します ここでは助手を務めてます」
チェルシー「で、そこで寝てるのが私の兄 アルベール・トワイライト!これでも一応探偵!」
ゆい「私は春日ゆいです、高校生です よ、よろしくお願いします・・・」
チェルシー「それじゃあ自己紹介も出来たしさっそく探索にしゅっぱーつ!」
ゆい(だ、大丈夫かな?)
〇ヨーロッパの街並み
チェルシー「この辺歩いた記憶ある?」
ゆい「いえ、通ってないような気がします」
チェルシー「よしっじゃあ次!」
〇西洋の街並み
バート「この辺はいかがでしょう」
ゆい「うーん多分来てない気はしますが・・・ なんかだいぶ雰囲気が変わったような?」
バート「では次に行きましょう」
〇魔界
チェルシー「この辺はー?」
ゆい「ないない!絶っ対にないです!! というかここどこですか!?」
チェルシー「なら良かった〜じゃあ次へレッツゴー!」
〇ヨーロッパの街並み
チェルシー「うーんこの辺でもないとなると、あとはどこかなぁ〜」
バート「まぁ地道に探してたらきっと見つかりますよ頑張りましょう」
ゆい「・・・」
ゆい「あの、おふたりは兄弟なんですか?」
チェルシー「ん?ぼくとバートが?」
チェルシー「急にそんなこと聞いてどうしたの?」
バート「なにか不可解なことでもありましたか?」
ゆい「いえ、その兄妹にしてはあんまり似てないかなぁって」
チェルシー「あぁ、まぁ別に血の繋がった姉弟ってわけじゃないからね〜」
バート「私はいわゆる居候みたいなものですからね」
ゆい「でもさっき「兄ちゃん」って」
チェルシー「兄ちゃんは兄ちゃんだからね〜ぼくの」
バート「アルは私の主人って感じですかね 対して飼われてる感覚はありませんが」
ゆい「???」
バート「・・・まぁ何言ってるか分からないとは思いますが」
ゆい「えっと、でもおふたりは仲良いですよね」
チェルシー「まぁ仲悪くはないよね 喧嘩とかもしたことないと思うし」
バート「チェルが1人で騒いでいるのは日常茶飯事ですがね」
チェルシー「一言余計なんじゃい」
ゆい「いいなぁ私も兄弟欲しかったなぁ」
バート「その様子だとなにか悩みを抱えてそうですね」
ゆい「えっ?!」
チェルシー「だよね〜さっきいきなり姉弟なのかって聞いてきたし、これはなにかあるよね」
ゆい「えっと」
バート「ここに迷い込んでくる人達は悩み事を抱えている方が多いんですよ」
ゆい「そうなんですか?」
バート「ある意味悩みがあるからこそ迷い込んだと言いますか」
バート「良ければそのお悩み聞かせてはもらえませんか?」
ゆい「えっ、えっと別に大したことじゃないと言いますか」
チェルシー「悩みに大きさもなにも関係ないよ!」
チェルシー「それにその悩みが解決したら自然と帰れると思うしね」
ゆい「え、えっと」
ゆい「・・・」
ゆい「私、今受験生で塾とか色々やってるんですけど」
ゆい「最近成績が悪くて、それで母と喧嘩しちゃって」
ゆい「私だってサボってるわけじゃないのに!って色んな嫌なこと思っちゃって、 それで家から飛び出してきちゃって」
ゆい「もうなにもかも嫌になっちゃって無我夢中で走ってたら・・・ ここにたどり着いたって感じです」
バート「なるほどそれで迷い込んでしまったわけですか」
チェルシー「向こうの世界も大変だね〜」
ゆい「こういう時兄弟とかがいたら相談もできたのかなぁ〜って思って、私一人っ子だから」
チェルシー「そっかそっか」
ゆい「だ、だからその、今ちょっと家に帰りづらくて、」
ゆい「・・・もう帰れなくてもいいかな」
バート「!」
チェルシー「・・・ダメだよ」
ゆい「えっ?」
チェルシー「冗談でもそんなこと言っちゃダメ 今は僕達がいるから安全だけど、この世界は簡単に君を閉じ込めるんだから」
チェルシー「もう二度とお母さんに会えなくなるのは嫌でしょ?」
ゆい「は、はい」
ゆい「でもひどいこと言っちゃったからなぁ」
バート「大丈夫ですよ、それが思春期ってものです」
バート「反省して、謝ればお母様も理解してくださいますよ」
ゆい「そう、かなぁ、だといいな」
ゆい「親は大切にしろっていうのに私は親不孝者だな」
チェルシー「あははっ大丈夫だよ そんなに焦らなくてもさ」
チェルシー「大切にされてたら自然と大切にできるから ゆっくりでいいんだよ」
バート「そうですよ、万年反抗期のチェルが言うんですから大丈夫です」
チェルシー「だから一言余計なんだって!」
ゆい「あははっそうですね ありがとうございます、なんだかスッキリしました」
バート「・・・もう大丈夫そうですね」
ゆい「はいっ」
チェルシー「じゃあそのまま真っ直ぐ歩いてみてごらん」
ゆい「えっ?あ、はい」
ゆい「あっそうだおふたりは・・・」
〇裏通りの階段
ゆい「あれ?いない?」
〇豪華な部屋
チェルシー「はぁ〜ひと仕事終わった終わった!」
バート「お疲れ様です」
チェルシー「ほら、兄ちゃんも! ひと仕事終えた妹に労いの言葉をかけてよ」
アルベール「ふぁあ〜あ、終わった?お疲れー」
チェルシー「軽っ!」
チェルシー「もう〜こっちは真面目に仕事したんだから 今日はごちそう用意してもいいんじゃない!」
アルベール「んーじゃあ今日はパーッと打ち上げでもしますかね」
チェルシー「打ち上げ!」
アルベール「ほらっそうと決まればさっさと準備するよー」
チェルシー「はーい!バート打ち上げだって! 準備準備〜!」
バート「はい、分かりました」
ここはある変わった街にある探偵事務所
夕暮れに包まれる部屋に夕日が差し込んでゆく
影がふたつ、今日も忙しなく動く
人の悩みとか負の気持ちがある時に、階段を降りたり、川辺にいたりすると、境界線があやふやになってあの世へ...っていう日本らしさあふれる設定大好物でした!お兄ちゃん探偵が活躍するところも読んでみたいと思いました!
探偵事務所の名前がトワイライトなのは「逢魔が時」と関係しているのかな?黄昏時(逢魔時)は魔物に遭遇する時間帯ですから、異世界(狭間)への入り口が開いていてもおかしくないですもんね。ハギノさんに普通に道案内されているゆいちゃんの方が怖かったけど。