奇々怪々家族

結城 直人

エピソード1(脚本)

奇々怪々家族

結城 直人

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〇名門の学校

〇教室の教壇
教師①「昼からも続いて道徳の授業をやるからな」
伊佐田拳「ゆっくん、あきねん、モンハンやろうぜ」
行松明丸「OK~狩り狩り~」
田岡明音「私、優実の相談聞かなきゃだからごめん」
伊佐田拳「あと一人欲しいなぁ」
行松明丸「こまっちゃん休んでるもんね」
織星遊馬「俺、Switch持ってきてるけど」
伊佐田拳「仕方ない今日は3人でやるか」
行松明丸「そうだね、いないものはしかたないし」
織星遊馬「・・・いない」

〇一階の廊下
織星遊馬「ただいま」
「なんで上がっとんねん! 損切りしたっちゅーねん!」
織星遊馬「・・・」
織星美凛「お帰り遊馬~! ご飯できてるからお姉ちゃん呼んできてくれる?」
織星遊馬「やだよ、あんな引きこもりほっとけよ」
織星美凛「あん?」
織星遊馬「どうせ食わなきゃ死ぬんだから、てかもう死んでるも同じじゃん」
織星美凛「こらクソガキ! 今なん言うた!」
織星遊馬「う・・・」
織星美凛「お姉ちゃん死んだら悲しないんか! そんな情なしに育てた覚えはないぞ! はよ呼んでこんかい!」
織星遊馬「わかったよ」

〇部屋の前
織星遊馬「ご飯できてるってさ」
「・・・」
織星遊馬「いい加減にしろよ、毎日毎日めんどくさいんだよ」
「・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
織星美凛「学校はどう? 楽しくやってる?」
織星遊馬「うん・・・」
織星美凛「そろそろ参観日の時期じゃない? お知らせもらってない?」
織星遊馬「ないよ・・・お母さん忙しいんだから無理してこなくてもいいよ」
織星美凛「行くに決まってるでしょ? お洋服選んどかないと」
織星遊馬「・・・」
「あんたどういうこっちゃ!」
織星遊馬「やべ」
織星美凛「参観日のお知らせもろうとるやないの! なんで隠すねん! あれか?  美人の母ちゃん見られんの恥ずいんか!?」
織星遊馬「いや」
織星美凛「せやろがい!」
織星遊馬「もう! うるさい!」
織星美凛「今逃げたらこれから三食タマゴボーロでいくからな! 弁当もやからな!」

〇部屋の前
織星遊馬「はぁ・・・」
  僕のママは不安定だ
  感情が高まるとああやって関西弁でまくしたてる
  それは人前でも変わらない

〇教室の教壇
  去年の参観日
教師①「じゃあこの問題分かる人」
「はーい!」
織星遊馬「・・・」
教師①「じゃあ小松」
織星美凛「先生! うちの子が一番早かったですわ!」
教師①「え? 織星君は手上がってないー」
織星美凛「いいや! 上がってます! ほら遊馬ははよ答えな!」
「くすくす」
織星遊馬(最悪)

〇部屋の前
織星遊馬「なんでああなんだろう 父ちゃんが生きてた頃もそうだったのかな」
織星夏彦「ちょっと通るで遊馬」
織星遊馬「うん」
織星遊馬「ええ!?」
織星夏彦「お?」
織星遊馬「誰?」
織星夏彦「遊馬、父ちゃんの事見えとるんか?」
織星遊馬「と、父ちゃん!?」

〇男の子の一人部屋
織星遊馬「どこの子か知らないけど帰ってよ」
織星夏彦「ここの子や! 父ちゃんやいうとるやろ」
織星遊馬「父ちゃんは僕が生まれてすぐ死んじゃってるから! それに子供じゃん!」
織星夏彦「そう言われても幽霊なってからはこの姿なんや 多分年齢とか関係ないねんで」
織星遊馬「なんで今更出てきたんだよ!」
織星夏彦「今お盆ちゃうの? じゃあなんでやろ?」
織星遊馬「いいから帰れって、お母さん心配するよ」
織星夏彦「美凛にはずっと心配させてきたなぁ」
織星遊馬「そうじゃなくて」
織星夏彦「もう認めてや、さっき遊馬の身体通ったやん」
織星遊馬「う・・・それは」
織星夏彦「お父ちゃんやで~」
織星遊馬「うわあああああ!」
織星美凛「遊馬! どないした!」
織星遊馬「大丈夫・・・ゴキブリがちょっと」
織星夏彦「誰がゴキブリやねん」
織星美凛「ゴキブリやとぉぉぉ!」
「ひっ!」
織星美凛「ここはうちが築き上げた大事な家族の城や! 不法侵入者はゴキブリであろうが叩き出すで!」
織星夏彦「俺は違うよね美凛」
織星美凛「おらああああ!」

〇男の子の一人部屋
織星夏彦「なんで無視されとんねんな」
織星遊馬「こまっちゃんのお父さんが仕事なくなったのを馬鹿にしちゃったんだ」
織星遊馬「僕も父ちゃんと同じ、学校では幽霊さ」
織星夏彦「うまいこと言わんでええねん それよりなんでそんな事したんや」
織星遊馬「うらやましかったんだよ」
織星夏彦「え?」
織星遊馬「普通の家族が羨ましかったんだ」
織星夏彦「・・・すまんな」
織星遊馬「うぅ」
織星夏彦「楽しい話しよか? せっかく会えたんや、何が聞きたい?」
織星遊馬「そうだね・・・じゃあさ」
  その夜、僕は子供の父ちゃんと沢山話した
  関西の大学で出会った父ちゃんと母ちゃんはお互いすぐに惹かれ合ったようで
  美人でおしとやかな母ちゃんにべた惚れした父ちゃんは卒業後すぐに求婚したらしい
  母ちゃんは昔はあんな突如豹変する性格じゃなかったようで
  ただ若くして僕らを生んだのに、頼れる父ちゃんがいなくなった事でそこから不安定になったんだとか
  感情が高ぶるとああなる気性は元は父ちゃんの性格だったらしい
  自分の真似をする事で、俺を傍に感じていたいんだと父ちゃんはそう話した
  母ちゃんは沢山勉強して働いて、僕らをいい学校にまで行かせてくれた
  母ちゃんは僕らのために頑張ってくれてる
  僕らのために強くあろうとしてくれてる
  だから僕たち家族は幸せにならなくてはいけない
  けど、僕も姉ちゃんも・・・

〇マンションのオートロック
織星美凛「今日はカレー♪ 明日もカレー♪ カレーは万能♪ カレーは神♪」
織星美凛「あ、すいません」
不審者「・・・」
織星美凛「あっちから当たったのにな」
織星美凛「ん? ナニコレ」
織星美凛「やだ、あの人ケチャップつけて・・・いやペンキかな?」

〇教室の教壇
伊佐田拳「知ってるか、こまっちゃんが休んでる理由」
行松明丸「病気じゃないの?」
伊佐田拳「先生が話しているの聞いたんだけどさ、こまっちゃんの母ちゃん、家で不審者に襲われたらしいんだよ」
行松明丸「まじ? こまっちゃん家ってBマンションだよね?」
織星遊馬「待ってよ、Bマンションってうちなんだけど、詳しく教えてよ」
伊佐田拳「おい行こーぜ」
行松明丸「いやでも」
織星遊馬「頼むよ、うちにも母ちゃんと姉ちゃんがいるんだよ」
伊佐田拳「・・・」
織星遊馬「うち父ちゃんいないしさ、襲われたら怖いんだよ」
行松明丸「拳ちゃん」
織星遊馬「こまっちゃんにはちゃんと謝りに行くよ だから教えてくれよ」
伊佐田拳「最近、ここらで殺人鬼が出てるらしいんだ ニュース見てない?」
織星遊馬「殺人鬼? うそでしょ」
伊佐田拳「どうやってか部屋に入って襲うんだって、おまえも気を付けろよな」
織星遊馬「か、帰らないと」
行松明丸「大丈夫だよ、警察だって動いてるんだ 今は逆に遊馬のマンションは安全さ」
織星遊馬「・・・」
織星夏彦「こら!  父ちゃんはおるやろが」
織星遊馬「父ちゃん、だめだよ母ちゃん見といてよ」
織星夏彦「アホ! この体じゃどうしようもないからきとんねん、なんかいやな予感がする 俺が帰ってきたんも意味がある気するねん」

〇綺麗なキッチン
織星美凛「うーん、このつまみ食いの瞬間がたまらないんですねぇ」
織星美凛「あら近い・・・何かあったのかな?」
織星美凛「ん?」

〇玄関内
織星美凛「はいはい~」
警察「すいません警察ですが」
織星美凛「警察の方? どうされたんですか? 子供に何かあったとか!?」
警察「いえいえ、実は今この辺りに殺人鬼がうろついている恐れがありまして」
織星美凛「殺人鬼!? どういう事ですか?」
警察「実は数時間ほど前、204号室の方が襲われたんです」
織星美凛「本当ですか?」
警察「この前も503号室の小松さんという方が襲われてますが、お話聞いてませんか?」
織星美凛「私働きづめなものでご近所付き合いとかあまりなくて・・・」
警察「お伺いしたいのが、今日この辺りで不審な人物とか見ていませんでしょうか?」
織星美凛「不審な人物ですか・・・」
織星美凛「うーん」

〇マンションのオートロック

〇玄関内
織星美凛「見ました! 見ました!」
警察「本当ですか!? 顔とか覚えてませんかね」
織星美凛「フード被ってたんですけど、覚えてますよ! そうですねぇ・・・ん?」
警察「・・・」
織星美凛「あの・・・警察手帳ってお持ちですか?」
警察「記憶力の良い方だ」
織星美凛「あ・・・あ・・・」
牧落雄二「ご家族へ最後の言葉があればどうぞ」

〇開けた交差点
織星遊馬「はぁはぁ、父ちゃんワープとかできないの? めっちゃ走ってるけど!」
織星夏彦「すり抜け以外はなんもできへんねん 幽霊なったらなんもでけへんのやで」
織星遊馬「・・・」
織星夏彦「何かできるのは生きてる人間だけや」

〇玄関内
織星遊馬「母ちゃん!」
織星夏彦「ああ・・・」
「助けてぇぇぇ!」
織星美凛「黙れ! おまえはそうやって命乞いした人間を何人殺したんじゃ!」
牧落雄二「痛っ! 熱っ!!!」
織星美凛「命軽ぅ見る奴は許さんからな! 三途の手前まで引っ越しじゃこらぁ!」
織星夏彦「カレーで殴っとんで」
織星遊馬「・・・」
牧落雄二「そこの人! 助けてぇぇぇ!!」

〇玄関内
警邏官「ご協力ありがとうございました」
織星遊馬「母ちゃん大丈夫?」
織星美凛「怖かったよ~遊馬!」
織星遊馬「本当?」
織星夏彦「母ちゃん学生空手でチャンピオンやった事あるからな」
織星遊馬「空手ってカレー使うの?」
織星美凛「え?」
織星遊馬「いや、そういえば姉ちゃんは?」
織星美凛「最近ね、家を出てお父さんのお墓参りに行ってるのよ だから良かったわ」
織星遊馬「家出てるの?」
織星美凛「きっと天国からお父さんが説得してくれてるのよ」
織星遊馬「と言っておりますが」
織星夏彦「無駄や思うてたけど話してみるもんやな! あいつ霊感あるで」

〇墓石
織星姫華「南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!」
織星姫華「お父さんもう勘弁して~~!」

〇玄関内
織星夏彦「暫くは暇つぶせそうやな」
織星遊馬「あっそ・・・」
  僕の非日常はさらに非日常になって
  そしてまたゴタゴタは続いていく
  けれどここから何かが変わる気がする
  僕が欲しかった家族がきっと・・・
  おわり

コメント

  • お父さんの幽霊の姿が子供というところがユニーク。お母さんの関西弁の理由は切ない。父親の幽霊の存在を通して、母姉弟それぞれが抱える問題が少しずつ解けていく家族再生の側面もある物語だと思いました。

  • 最初は、お母さんの捲し立てる感じとかが、たしかに息子にとっては恥ずかしいだろうしストレス溜まるだろなあと思っていたけれど、それにも理由があったんですね😢
    そして、殺人犯が家にやって来たシーンは、とってもヒヤヒヤしました🫢
    警察の格好しているからと言って信用してはいけないですね😱

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