はじめましての妹は、わがままなお嬢様!?(脚本)
〇幼稚園
「りっくん、さっちゃん お迎えですよ〜」
「ダイチー」
ダイチ「お待たせ さ、帰ろっか!」
〇空
りく「夕飯何かなー」
さち「ハンバーグがいい!」
ダイチ「俺、昼にハンバーグ 食っちまったよ・・・」
「えー ダイチずるーい」
もしも願いが叶うなら──
──家族を、ください。
ダイチ(──なんて、ガキの頃の夢 本当にかなっちまうんだもんなぁ)
〇シックな玄関
「ただいまー」
マナミ「ただいまー」
さち「あ、ママ! おかえり〜」
りく「もうちょっと早ければ一緒だったね!」
マナミ「ごめんね 追いつけなかったの」
マナミ「ダイチくんもごめんね わざわざお迎え行ってもらっちゃって」
ダイチ「いいよ、全然」
ダイチ「ってか遠慮はナシ 俺たち、家族なんだから」
マナミ「うん・・・ありがと」
さち「ママー 今日の夕飯なにー?」
りく「キッチン偵察隊しよーぜ☆」
マナミ「よし、突撃だ!」
〇おしゃれなキッチン
シンジ「じゃがいもの皮はこうやって・・・」
ユリ「え? こう?」
シンジ「違う違う、それだと手切る──」
ユリ「あーもう! 料理って意味わかんない!」
ユリ「こ、子供!?」
さち「おねーちゃん だれ〜?」
ユリ「子供がいるなんて 私聞いてないっ!」
マナミ「ごめんね 私の子供なの・・・」
ギロリ
シンジ「・・・悪い、言い忘れてた」
ユリ「あっ!」
ユリ「あー、もうイヤっ!」
〇綺麗なダイニング
「いっただっきまー・・・」
ガチャリ
ミドリ「ただいま・・・あら?」
シンジ「ああ、おかえり こちらは今日から入居の──」
ユリ「いい 自己紹介くらい自分でできる!」
ユリ「私はユリ 今、高校2年で──」
りく「なあ、もう食べていい?」
ユリ「はぁ?」
さち「さっちゃんお腹空いた〜」
マナミ「はいはい じゃあ静かに食べようね」
「いっただっきまーす!」
ダイチ「あ、えっと・・・俺はダイチ! 今大学2年!」
ダイチ「歳も一番近いし よろしくな、ユリ!」
ユリ「いきなり呼び捨て!? キモっ!」
シンジ「俺はこのシェアハウスの オーナーの・・・」
ユリ「シンジさんでしょ、知ってるからっ!」
マナミ「わ、私はマナミ 会社員でこの子たちは私の子供の──」
さち「さっちゃんだよー もぐもぐ」
りく「りっくんだよー もぐもぐ」
ユリ「食べながら喋るなんて最低! キモチワルっ!」
さち「なんで?」
りく「今ごはんの時間だよ」
マナミ「ごめんなさい 私のしつけがなってないから・・・」
ユリ「アンタさあ 離婚歴あるんでしょ?」
ユリ「結婚して子どもまで産んで 離婚したくせに また家族欲しいとか何なの!?」
ミドリ「私はミドリ この家に入居したからには家族」
ミドリ「自分の価値観でしか物事を計らないで 一方的にズケズケ言って・・・」
ミドリ「嫌なら出ていきなさい!」
ユリ「・・・分かった」
ユリ「出てってやるよ こんな家!」
シンジ「ユリっ!」
マナミ「ああ、なんか・・・ごめんなさい」
ミドリ「マナミさんのせいじゃないわ あの子はあのままじゃ 私たちの家族にはなれないと思っただけ」
ダイチ「ん、俺もそう思う けどこれで戻ってきてくれたら──」
ダイチ「受け入れてあげよーぜ きっとユリだって 家族が欲しいだけなんだから」
ダイチ(そう 俺みたいに・・・)
〇明るいリビング
ダイチ(幼少期)(嘘だろ・・・)
ダイチ(幼少期)「お母さーん、お父さーん」
〇葬儀場
「あの子、一人だけ生き残って 引き取り手がないんですって」
「遠縁の親戚しかいないなら 仕方ないわね」
「施設かしら・・・」
〇二人部屋
同じ施設の子「俺な、今度 新しいお母さんとお父さんが 迎えに来るんだ!」
ダイチ(幼少期)「そう・・・」
〇黒背景
俺は
ずっと独りぼっちで──
だから
家族が欲しくて──
ここに入居した。
だから、ここに来た彼女にも──
「ダイチ〜」
〇綺麗なダイニング
りく「ダイチ〜 食べ終わったからゲームしよーぜ!」
ダイチ「おうっ!」
さち「あっ、さっちゃんも!」
マナミ「私またダイチくんに甘えてる」
ミドリ「いいじゃない あの子たちにとって彼は 歳の離れたお兄さんみたいな存在だもの」
ミドリ「一緒に住んでるから分かるけど 育児を独りで全部頑張ろうなんて 骨が折れちゃうわ」
ミドリ「私は子供を産んだことはないし 偉そうなことは言えないけれど──」
ミドリ「産んだだけで大仕事なんだから ここでは甘えて 助け合って生きていけばいいじゃない」
マナミ「・・・」
りく「りっくん 今日ダイチと一緒に寝る〜」
ダイチ「おういいぞ! じゃあ風呂も一緒に入っか!」
さち「じゃあサチはねぇ・・・」
さち「ミドリと一緒に寝る〜」
ミドリ「え!? またぁ?」
さち「いいじゃんっ! さっちゃんね ミドリの 絵本読んでくれる声優しくて好きなんだぁ」
ミドリ「まあ、いいけど・・・」
さち「わーい!」
マナミ(”離婚” ──家族を自ら捨てたようなもの)
マナミ(そんな私が やっぱり家族が欲しいなんて おこがましいよね・・・)
〇田舎の公園
ユリ「はぁはぁ」
ユリ「くっそーッ!」
ユリ「なんだよ家族って! 大人が家族ごっこかよ!」
ユリ「『自分の価値観でしか物事を計らない』 なんて・・・ そんなの自分が一番分かってるっつーの!」
シンジ「ユリ!」
ユリ「なによこんな所まで 追いかけてきて!」
シンジ「そりゃ追いかけるだろ 年頃の娘がこんな時間に 家飛び出していったら!」
ユリ「私はアンタの娘じゃない!」
ユリ「何よ 家族家族って ただの家族ごっこじゃない!」
ユリ「私は普通の家族が欲しかったの でもこんなの・・・こんなの・・・」
シンジ「俺たちは普通じゃない 血は繋がっていないし 戸籍上も何もないただの同居人だ」
シンジ「でも家族になりたいと 望むから家族になる 皆何か事情を抱えてるんだ」
シンジ「キミを親御さんから預かった身としては こんなこと言うのも何だが 嫌なら帰ってもらって構わないよ」
ユリ「嫌・・・ あの家には帰らない」
ユリ「パパのせいで堅苦しい ママのせいで息苦しい」
ユリ「皆の憧れ『金持ちのお嬢様』 でもそれでいるのは楽じゃない」
シンジ「ああ・・・だからキミは ”普通の”家族を求めてうちに来た」
シンジ「思ってたのと違ったか?」
ユリ「・・・ううん」
ユリ「──違くないよ、全然 普通になれてないのは私の方」
ユリ「普通に料理もできない 普通の家庭では許されることも許せない 普通が欲しいのに普通じゃいられない」
ユリ「そんな自分がすごく嫌で ・・・ついカッとなっちゃった」
シンジ「ミドリさんの言葉が図星だったか 彼女はしっかり見てるからなー」
ユリ「令嬢教育なんてクソ喰らえだった 私は常にお上品なお嬢様でなきゃ いけなかったから──」
ユリ「みんな普通に生きてきたんだろうなって 思ったら 悔しくて・・・」
ユリ「『普通』が欲しかったのに それを目の当たりにして──」
ユリ「怒りに任せて言い過ぎて 結局逃げてきちゃったよ・・・」
シンジ「大丈夫 あの家のみんななら許してくれるさ」
ユリ「でも・・・」
シンジ「俺たちは”家族”なんだ」
シンジ「家族を決して見捨てたりはしない」
シンジ「キミのお父さんが キミの想いを組んで キミを俺に託したようにね」
ユリ「どうやって・・・」
ユリ「どうやって帰ればいい? どんな顔して帰ればいい?」
ユリ「あたし・・・怖いよ」
シンジ「んなん・・・ 頭下げて『ごめんなさい』 それだけでいいんだよ!」
シンジ「できるか?」
ユリ「・・・頑張る」
〇綺麗なダイニング
マナミ「そろそろ寝ないとね」
「はーい」
ガチャリ
ユリ「あの・・・えっと・・・」
シンジ「ほら・・・」
ユリ「さっきはごめんなさい!」
ユリ「私、自分の物差しで 言いたいこと言って逃げただけだった」
ユリ「でも・・・ 本当は普通の家族に なれたらいいなぁって──」
ダイチ「何言ってんだよ 俺たちもう家族だろ?」
ミドリ「そうね だいぶ生意気な妹だけど」
りく「明日はユリも 一緒にゲームしよ!」
ユリ「は? 何ちょっと勝手に・・・」
りく「ヘヘッ! おやすみー♪」
さち「おねーちゃん、あのね・・・」
さち「コショコショ──」
さち「怒ってばかりだとシワができるって だから怒ってばかりはダメだって ママがよく言ってるよ」
マナミ「さちっ!」
さち「てへへ! おやすみなさーい♪」
シンジ「おーう みんなおやすみー」
シンジ「さて、俺は食いそびれた飯食ってくるか」
ユリ「・・・ねえ」
ユリ「さっきはごめん 結婚とか離婚とか色々あるよね」
マナミ「ううん事実だし 私は離婚してもやっぱり一人って寂しくて 家族が欲しいなぁって思ったの」
マナミ「ここにいるのも私のワガママだから・・・ ユリちゃんに怒られて当然だよ」
ユリ「うん、そーだね きっとここにいるのはワガママな人たち」
ユリ「私も含めてね 家族ごっこなんて馬鹿馬鹿しいって 思ってたけど──」
ユリ「今はいいかなって思ってるよ」
ユリ「お・・・、おねーちゃん」
〇空
私たちは
血は繋がっていないけれど──
きっと
本当の家族みたいに・・・
りく「あ、流れ星!」
〇男の子の一人部屋
りく「明日ユリとゲームできますよーに」
ダイチ「りくの願い事、それ?」
りく「うん! ゲームしたらみんな仲良しでしょ?」
ダイチ「ははっ! ユリ、めちゃくそ強かったらどーする?」
りく「えー・・・」
ダイチ(その願い事、きっと叶うよ)
ダイチ(俺の願い事は──)
〇空
ダイチ(家族みんなが ずっと笑い合っていられますように・・・)
みんな訳ありだけどいい人ですね。個人的に家族に大事なのは血の繋がりよりも心の繋がりだと思っているので、彼らはきっといい家族になれるんじゃないかなーと思います!
全員優しい人々。朝永さんストーリーに癒されます。冒頭の文章、「家族が欲しい人々が集まっているシェアハウス」で真っ先に想像したのは、路上生活者のおじさんが集まる公園でした。全然違いました。
それぞれ別れた理由となった歪んだ嗜好や性格がありそうなもんですが、あんまりなくてほのぼの楽しめました。
素敵なお話でした!
血の繋がった家族でも、家族でいる努力がないとうまくいかないことはあると思うので、彼らにはより家族らしい『家族』がつくれたらいいなと思います😊