エピソード1(脚本)
〇明るいリビング
これが井上家の家族、父はファストフードの店長、母はキャスター、兄貴はコメディアン、私は大学野球の応援でチアリーダー。
〇ファストフード店
「いらっしゃいませ。ようこそワンダフルへ。かしこまりました。ハンバーグとジュースですね。少々お待ちください」
〇テーブル席
「お待たせしました。ごゆっくりお過ごしくださいませ」
〇テーブル席
〇お台場
井上よしみ「それでは、番組の最後に今日の1位、水がめ座の運勢。何より笑顔が一番。 他の星座の方も今日一日は笑ってすごしましょうね」
〇大劇場の舞台
「全ては笑いが解決してくれる。ドカンと一発、笑顔1000発、今日もご清聴ありがとうございました」
〇中世の野球場
井上千里「それゆけ、ウインナファイターズ。笑顔いっぱい夢いっぱい。勝利を目指して前を向く。♪」
〇明るいリビング
外は雨だ。井上家は夜の雨空よりも暗い。
一言もしゃべらない一緒の夕食。井上家には笑顔のエの字もない。
〇女の子の部屋
井上千里「朝、テレビをオンにすれば、笑顔の母がいる。うちにいるのは誰? お兄ちゃんもお父さんも、誰なの?」
〇一人部屋
井上千里「ねえ、うちの家族変だよね」
井上俊太「ごめん、疲れてるんだ」
井上千里「なんでこんなに家族に気を使わないといけないの? 家に帰っても気がやすまらないよ」
井上俊太「皆稼ぐのに必死なんだ。こうやって普通の生活できてんだからいいだろ」
井上千里「お兄ちゃんも冷たいよね」
井上俊太「ぐずぐず言ってないで、早く出てって。ネタかかないとならないんだから」
井上千里「わかったわよ」
〇女の子の部屋
「何さ、人の気も知らないで。だから兄貴のギャグはうけないんだっちゅうの」
井上千里「それゆけウインナファイターズ♪ 笑顔笑顔・・・」
井上千里「練習しなきゃ」
〇マンション前の大通り
畑中めぐみ「あのーすいません。ここのマンションにコメディアンの井上って人住んでるって聞いたんですけど」
井上千里「え!あっ!ファンの人か何か?」
畑中めぐみ「ファンといえばファンだし」
井上千里「何か用かしら」
畑中めぐみ「ということはご存じなんですね。 めぐみが会いに来たって言ってもらえるかな」
井上千里「まさか、知り合い?」
畑中めぐみ「知り合いっていうか、一応彼女っていうか」
井上千里「兄貴に彼女?」
畑中めぐみ「あら偶然、あなた、妹さんですね。お話は聞いてます。えっと、ソーセージファイターズのチア」
井上千里「ソーセージ!」
畑中めぐみ「冗談ですよ。ウインナファイターズです。 知ってますよ。フフフ」
井上千里「案内するわ。あなた名前は?」
畑中めぐみ「田舎にある畑、田んぼの田で畑中。ひらがなでめぐみと言います」
井上千里「いきましょ。案内するわ」
畑中めぐみ「かたじけない。お姉さま殿」
〇マンションの共用廊下
〇明るいリビング
井上千里「誰も帰ってないわね」
畑中めぐみ「約束20時ですから」
畑中めぐみ「皆さま忙しいそうですね」
井上千里「うん。 そうだ今から夕食作るから食べていってね」
畑中めぐみ「一緒に手伝いますね」
〇システムキッチン
井上千里「今日はシチュー作るわね」
〇システムキッチン
畑中めぐみ「シチューって材料カレーと似てますよね」
井上千里「ルーが違うだけ。味噌いれれば豚汁になるわよ」
畑中めぐみ「確かに。でも豚汁にブロッコリー入れませんよ」
井上千里「いやさ、基本の材料は一緒じゃん」
畑中めぐみ「確かに。こりゃまたその通り!」
なんだか楽しかった。
畑中めぐみ「おいしそう」
井上千里「先、食べちゃおうか」
畑中めぐみ「せっかくだから待ってます」
井上千里「でも遅くなるし」
畑中めぐみ「うち、すぐそこなんです。お兄さんとも、 私が急いでいて、転んで助けてもらって、きっかけはそれだったんです」
井上千里「そうだったんだ」
畑中めぐみ「転んでるとこ起こしてもらって、怖い顔してたんですけど、こりゃまた失礼しましたといったら笑ってくれて。笑顔素敵だったんです」
井上千里「こりゃまたおのろけ~」
畑中めぐみ「ユニークな家族なんですね」
井上千里「まさか、その逆よ。うちでは皆能面のような顔で過ごしてるわよ」
〇マンションの共用廊下
「ただいま」
〇明るいリビング
井上千里「かえってきた」
〇明るいリビング
井上俊太「なんで2人でうちとけてんだよ」
井上千里「ねえ、仲良くなっちゃった」
畑中めぐみ「楽しい妹さんですね」
井上俊太「酒でも飲むか」
井上千里「いいね。持ってくるわ」
井上俊太「大学生の分際で」
井上千里「ふふふ。少しだけね」
〇明るいリビング
なんだか思いきり酔っぱらった
〇明るいリビング
井上よしみ「よっぱらってる」
井上昭雄「そのようだな。俺たちも飲むか」
井上よしみ「どうしたのよ」
井上昭雄「いやね、店の売り上げが東京店舗の中で、 一位になってね」
井上よしみ「で、その恰好のまま帰ってきたの?」
井上昭雄「ユニフォーム誇らしくなっちゃってさ」
井上よしみ「前にも一度あったよね。そうそう。店長になったときだっけ」
井上昭雄「恥ずかしいな。酒持ってこよ」
井上昭雄「俺たちはウイスキーで乾杯といくか」
井上よしみ「いいわね。明日は久々の休みだし」
井上千里「あれ、二人とも帰ってたんだ」
井上昭雄「ああ」
井上よしみ「その女性だれ。さっきから気になってたんだけど」
井上千里「お兄ちゃんの彼女」
井上昭雄「なんだって」
井上よしみ「へえ、かわいいわ」
井上千里「彼女と話してたら楽しくなっちゃって。ほら。二人の笑顔も久々にみたよ」
井上昭雄「ずっと気が休まらなくてな。やっと肩の荷が下りたって感じかな」
井上よしみ「私も、でも今日で朝の番組は終了。夕方六時のニュース番組に抜擢。だから朝3時におきなくていい」
井上千里「なんかお兄ちゃんの彼女って井上家の救世主だね」
井上昭雄「ああ。そうかもな」
井上よしみ「これでギャグにも磨きがかかるといいけどね」
井上千里「お母さん。それは本人が一番よくわかってるよ」
〇明るいリビング
井上俊太「〇×■・・・・・・」
畑中めぐみ「〇×■!?・・・・・・」
〇明るいリビング
井上千里「寝てるし」
井上昭雄「いいじゃないか」
井上よしみ「さて、ほら、今日はとことん飲む~~~」
井上家にも笑いが戻ってきた。
笑顔が一番。家族はこうでなくちゃね。
親しい人ほど大切にしなきゃいけないのに甘えてしまったら恥ずかしかったりで笑顔まで忘れてしまうんですよね。分かります。でももともと家族が持ってた明るさを彼女が思い出させてくれたんですね!
家族のために一生懸命に働いて家族の笑顔が失われたら本末転倒ですもんね。お兄さんの彼女のような明るいムードメーカーが救世主になってくれてよかった。心がほっとするような物語でした。