読切(脚本)
〇豪華な部屋
バイラ「殿下、わたくしたちは婚約者同士、 もっと歩み寄りが必要なのではありませんか?」
マークス「歩み寄りだと?」
マークス「それは、お前の傀儡になれということか?」
バイラ「そのようなことは・・・! わたくしはただ、高位貴族として、 取るべき態度を・・・!」
マークス「高位貴族がなんだ、 私を何だと思っている! お飾りの貴様が、王族の私に指図するか!」
バイラ「マークス殿下・・・!」
マークス「やはり、 私のことを理解している女性は、 お前だけのようだ。ヴィーラ」
マークス「行こうヴィーラ、 ここは空気が悪い」
ヴィーラ「ふふふ・・・ ごきげんよう、バイラ様」
バイラ「っ・・・・・・!」
〇城の廊下
バイラ「あんのアホ王子・・・! 平民女に踊らされて・・・!」
バイラ「品性下劣なあんな王子、 こっちから願い下げです」
バイラ「とはいえ、ただ婚約破棄してしまえば、 父はわたくしを許さないでしょう」
バイラ「そうなれば、 出家してシスターになるか、 ゲテモノ貴族の妾にされる未来しか・・・」
バイラ「わたくしは、 わたくしだけの世界が欲しい」
バイラ「自分がほんの少し自由にできる、 そんな些細な世界が」
バイラ「父が宰相であっても、 自分に何か力がある訳ではない・・・」
バイラ「手っ取り早く、 抵抗できるだけの実績と、 私が動かせるお金が必要ですわね」
バイラが決意を固め、
廊下を歩いていると、学園の廊下先で
男子生徒が騒いでいるのが目に入った
令息A「じゃーん! これ見ろよ」
令息B「うぉ、お前これ、 ギルドカードじゃん。 なるの、冒険者」
令息A「誰があんな底辺職。 本題はこれよ」
バイラ「ん・・・?」
〇西洋風の部屋
レシィ「はろはろー! 冒険者ギルド王都本部、 受付嬢のレシィでーす!」
レシィ「今日の急ぎの依頼について、 生配信していくよ! まずは──」
〇城の廊下
令息B「これが?」
令息A「可愛いだろー? おひねりすれば、 コメント読んでくれんだよ!」
令息B「マジ? やってみてくれよ」
〇西洋風の部屋
レシィ「おっと、おひねり! 『お仕事、お疲れ様』」
レシィ「令息Aさん、労いとおひねりありがとー!」
レシィ「続きまして、 今日の自動馬車運転状況は~」
〇城の廊下
令息B「マジだ!!」
令息A「俺は、レシィちゃんと喋っている この瞬間が、生を実感するんだ・・・!」
令息B「いや、喋ってはねーだろ。 もっとまともな実感もてよ」
バイラ「・・・配信。そういえば、 そんなものがあると聞きました」
バイラ「これですわ。 これなら、私にもできる・・・ やりようによっては、顔を出す必要もない」
バイラ「ネットで仮想配信・・・・・・ これで、わたくしは世界を買うわ!」
〇洋館の廊下
ケサック王「このようなことに、 国民の血税を使うことはできん」
チャールズ「ですが・・・!」
ケサック王「くどい。忙しいのだ。 これ以上、余の時間を無駄にするな」
チャールズ「王よ!」
チャールズ「あんのアホ王めが・・・!」
チャールズ「教育せねば、 次代の官僚が育たんではないか! それが、税の無駄だと!」
メイドA「ほら! これ! 映像なんかも映るの。すごいでしょ?」
メイドB「へ~! 便利~! 冒険者の身分証かと思ってたのに!」
チャールズ「何をしている?」
メイドA「宰相閣下!」
メイドA「新人メイドに少しばかり教育していた所で」
チャールズ「・・・そうか。 ここは人の目がある。 あまり長居は無用だ」
メイドA「はい! 失礼いたします」
メイド2人が慌てて去っていくと、
地面には何かのカードが落ちていた。
チャールズ「むっ、これは・・・ あとで届けてやるか」
ギルドカードからは、映像魔法によって
何かの配信が行われいるようだった
チャールズ「なるほど、 最近ではギルドカードで 映像まで配信できる、と・・・」
チャールズ「ふん、便利になったものだな。 誰しもが情報を発信できるということか・・・」
チャールズ「・・・・・・んん!? これであれば、教育するのに、 態々学園のようなものを作る必要もない」
チャールズ「ふ、ふふ。くくく・・・ 予算が割けない? いいだろう。 低予算でやってやろうではないか」
チャールズ「王よ、見ておるがいい」
チャールズ「ネットで仮想配信・・・ これで、私は世界を変えるぞ!」
〇貴族の応接間
チャールズ「娘よ、学園はどうだ? 婚約者の王子とは仲よくやっているかね」
バイラ「ええ、滞りなく。 お父様の方こそ、 宰相としてのお仕事は大変でしょう?」
チャールズ「何、問題はない。 このところ頭を悩ませていた問題も、 妙案を思いついた所だ」
バイラ「まぁ、そうですの? わたくしも学園での生活を良くするために、少々妙案を思いつきまして」
チャールズ「そうか。ふふふ・・・・・・」
バイラ「ええ。おほほほ・・・・・・」
チャールズ(娘には苦労させたくはない。 多少厳しくしてでも、守ってやらねば・・・)
バイラ(父の人形で終わるなど、真っ平です。 わたくしはわたくしだけの世界を手にします)
〇ファンタジーの教室
──翌日
バイラ「ちょうどいい空き教室があって 助かりました」
バイラ「さて、配信の準備はいいかしら? あとは用意した衣装に着替えを・・・」
バイラ「あら? これはどうやって着ればいいのかしら・・・?」
リード「先生も人使いが荒いよな・・・ 明日の授業の準備物を取ってこいだな・・・ん・・・て!?」
バイラ「・・・・・・・・・・・・」
リード「えっと・・・」
バイラ「今ここで社会的に死に、 物理的に首が飛ぶのと」
バイラ「わたくしのお願いを聞き届けるのと・・・ どちらがよろしくて?」
リード「誠ッ心ッ誠ッ意ッ! お願いを聞かせていただきます!」
バイラ「よい心がけです。 わたくし、ライバーと言うものに興味がありまして」
バイラ「どう言ったものが平民受けするのか、 意見が欲しいのです」
リード「配信者ですか? 配信の内容をお伺いしても?」
バイラ「とりあえずは・・・ 宮廷でのマナーなどを」
リード「・・・方向性は問題ないかと思います。 できれば、もっと平民が興味を引く話題はどうかと愚行いたします」
バイラ「言葉遣い、あまり遜る必要はありません。 それで、平民が興味を引くこととは?」
リード「そう? じゃあ、遠慮なく・・・」
リード「例えば、 「求む!貴族に絡まれた際の完璧なマナー!」だったり」
リード「平民がマナーを必要とする状況とか その状況に興味がもてそうなもの、とか」
バイラ「なるほど。 平民はそもそもマナーを披露する場が無いか、あっても酷く限定的なのですね?」
リード「うん。学園くらいだろうね。 貴族に絡まれるなんて」
リード「僕も知りたいな。 高貴そうなご令嬢に絡まれたところを 華麗に回避するマナーとか」
バイラ「諦めて、嵐が通り過ぎるのを平身低頭待つべきでしょうね」
バイラ「よい意見でしたわ。よろしい。 あなたをわたくしのライバー活動の参謀としましょう」
リード「ガッデム! 回避方法は!?」
バイラ「言ったでしょう? 平身低頭して、待つべきであったと」
リード「過去形! 罠じゃねーか!」
バイラ「あなた、名は?」
リード「リードと申します! お嬢様!」
バイラ「わたくしはバイラよ。 この格好の時は、 バイラと呼んでもよくってよ?」
バイラ「では始めましょうか。 わたくしの世界を買うための配信を」
リード「今からですか!?」
バイラが持ち得る進取の精神がとても魅力的で、そのルックスに輪をかけていますね! これから繰り広げられる彼女の配信で彼女自らも大きく飛躍できることを願います。
スマホがギルドカードと呼ばれるオシャレな世界で令嬢がライバーになるという設定、面白かったです。これからネット上で高貴な父と娘がいろいろやらかすだろうな〜、見ものだな〜と思ったら読み切りなんですね。続きが読みたくなりました。