#4 その日の君はライトブルーだった(脚本)
〇黒
返事遅くなってごめんね、みーちゃん
──iroha
「誰にもバレずに女装がしたいです」
そうirohaにDMを送ったのは、
初めて渋谷に行ったあの日だった。
・・・まさか返事が来るなんて。
それから、今でもやり取りが続いている。
SNSでの僕の名前は『み』1文字。
だから僕は『みーちゃん』と呼ばれている。
プライドパレードの日は、みんなカラフルなファッションで渋谷の街を歩くんだ!
みーちゃんも、好きな服でお洒落してきて!
行進には参加できなくても、
そっちの方がテンション上がるから♡
み(水瀬)「服装のことで少し困ってます」
み(水瀬)「これから薄着の季節になっていくので・・・」
コートの代わりなら・・・オーバーサイズの薄手のシャツがおすすめかな
体形も自然に隠せるし!
み(水瀬)「なるほど・・・ちょっと考えてみます」
また、困ったことがあったら相談して。
それじゃあ、今週末のパレードで
〇男の子の一人部屋
水瀬真一(ファン全員とDMしてるのかな? 大変だなぁ、芸能人って・・・)
好きな服でお洒落してきて!
水瀬真一(パレードの日、 暑くないといいな・・・)
〇大きな木のある校舎
〇教室
村上「はい、これ」
村上「とりあえず、5個くらいしか 描いてきてないけど──」
水瀬真一「──村上さんって美術部?」
村上「え? 違うけど・・・」
水瀬真一「通りで・・・」
村上「・・・なに?」
水瀬真一「絵が上手いから、 応援旗に気合入ってたんだなって」
村上「・・・別に」
村上「私のことはどうでもいいでしょ」
村上「それより、水瀬くんのも見せて!」
水瀬真一「・・・いや、いいよ、僕のはもう」
村上「描いてこなかったの?」
水瀬真一「・・・描いたけど」
村上「じゃあ、見せて」
村上「見せるまで、今日の話し合い終わらせないから」
水瀬真一「・・・はぁ」
水瀬真一「・・・はい」
村上「・・・なにこれ」
村上「ちゃんと考えてきてって言ったじゃない!」
水瀬真一「仕方ないじゃん、 絵なんてわかんないんだから」
村上「わからない? やる気の問題じゃないの?」
水瀬真一「ていうか、もう見せたんだから帰っていい?」
水瀬真一「応援旗のデザインは、 村上さんが描きたいやつでいいからさ」
村上「そんな適当に決められるわけないでしょ!」
村上「どれがいいか、考えてよ」
水瀬真一「えぇ・・・」
水瀬真一「よくわかんないし、正直どれでも・・・」
村上「・・・水瀬くん」
村上「教科書以外でちゃんとした絵画 見たことある?」
水瀬真一「多分、ない」
水瀬真一「教科書のもちゃんと見てない」
村上「だから、わからないんだよ。 水瀬くんは絵を見る経験が足りないの」
村上「・・・よかった。 まだやってる」
村上「行こう」
水瀬真一「は? どこに?」
村上「いいから、来て!」
村上「来ないなら、先生にサボってるって言うからね!」
〇Bunkamura
水瀬真一「なに? ここ・・・」
村上「無料で展示が見れる場所」
村上「期間によって内容は変わるけど」
村上「今はpilsenerっていう 画家さんの個展をやってるの」
水瀬真一(pilsenerって・・・ 聞いたことあるような・・・?)
村上「若い画家さんだから、とっつきやすいと思う」
村上「お客さんも若い人が多いし」
水瀬真一「渋谷にこんな場所あったんだ・・・」
水瀬真一「どこに行くかくらい、 教えてくれてもよかったのに」
村上「絵を見に行くって言ったら、 逃げそうだったから」
水瀬真一「逃げないよ・・・」
水瀬真一「・・・多分」
村上「さぁ、早く入ろう」
水瀬真一「僕も見なきゃだめ?」
村上「なに言ってるの? そのために来たんでしょ」
村上「これ、リーフレットね」
水瀬真一「・・・はぁ」
〇レンタルギャラリー
村上「この人の絵、有名な場所を描いたものが多いんだよ」
村上「知ってる場所が描かれてる作品なら、 興味持てるでしょ?」
水瀬真一「・・・どうだろう」
村上「ほら、あの紫色の絵とかどう?」
村上「『パリ』ってタイトルが付いてる作品」
水瀬真一「・・・さぁ」
村上「・・・ねぇ」
村上「ちょっとは、感想とかないの?」
水瀬真一「なんか、すごいカラフルだね」
村上「見たままを言っただけじゃない!」
水瀬真一「そんなこと言われても・・・」
村上「じゃあ、少しでもいいなって 思う絵はある?」
水瀬真一「えー、そんなの・・・──」
水瀬真一「・・・あれとか」
村上「そのピンクの絵? 素敵だよね」
水瀬真一「・・・綺麗だと思う」
村上「その絵と同じ年に描かれた作品って、どれも温かみがあるものが多くて、」
村上「サロン・ドートンヌに展示された作品も同じような──」
水瀬真一「・・・?」
水瀬真一「・・・??」
〇渋谷の雑踏
〇レンタルギャラリー
村上「この絵で最後だね」
水瀬真一「・・・やっとか」
村上「・・・なにか言った?」
水瀬真一「いや、なにも・・・」
水瀬真一「──これって」
水瀬真一「スクランブル交差点?」
『渋谷』というタイトルの大きな絵には
色とりどりの手形が押されていた。
今日見た中でも、一際色鮮やかな
その『渋谷』は
僕がいつも見ている交差点とは、
全く別の景色に見えた。
展示スタッフ「こちらは、来場者参加型のアートになっております」
展示スタッフ「ぜひお好きな色で、ご自身の手形を押してください!」
村上「水瀬くん、一緒にやろう」
水瀬真一「え、いいよ、手汚れるし・・・」
村上「・・・いいからやって」
村上「やるまで帰らないからね」
水瀬真一「わかったよ・・・」
展示スタッフ「では、お好きな色をお選びください」
水瀬真一「・・・はぁ」
水瀬真一「えっと、じゃあ・・・」
ピンクの絵の具が目に入った。
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イロハや村上さんのおかげで、水瀬の日常も徐々に色づいていっているのが分かって嬉しくなります。
吉岡耕二さん、気になったので調べてみました。色使いが鮮やかで目を惹かれる作品が多かったです。
素敵な画家さんを教えていただき、ありがとうございます。
わー!まさかイロハのことを彼女も好きだったとは!✨😊わからないものですよね✨(*´꒳`*)
案外、普段喧嘩とかしている仲の方が心の奥ではシンパシー感じているものなのかもしれませんね・・・
少しずつ真一の日常がカラフルになってきていますね✨最初はピンク(今も手に取るのを躊躇してしまいますが)、そして次に水色✨(o^^o)
真一がもっと日常を楽しめるようになりますように✨今後の展開楽しみです✨