馬飼さんちのおとうさん

都麻(とま)

魔王、降臨する(脚本)

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〇荒野
  魔界

〇闇の要塞
魔王「──時は来た」
ケルベロス「いよいよですな、魔王様」
魔王「ああケルベロス」
魔王「私はこれより 人間界へ降り立つ」
魔王「かの世界をわが闇に染め── 人間どもをしもべとしてくれよう!!!!」

〇黒背景
  すでに人間界には
  わが血族を潜ませている
  10年の歳月をかけて人間界にとけこみ
  じわじわと人間どもを蝕んできた
  我が妻──王妃レヴィ
  我が娘──狂炎のリリ
  我が息子──幻惑のアモン
ケルベロス「お三方にかかれば人間どもなど ひとたまりもないでしょうな」
魔王「フフ・・・私の楽しみも残しておいてくれるといいのだがな」
魔王「ククク・・・ ハーッハッハッハ」
ケルベロス「ゲーッゲッゲッゲッゲ」
魔王「ハーッハッハッハ」

〇黒背景
  1週間後
「ピピピピ・・・ピピピピ・・・」
「ピッ」

〇一戸建て
  馬飼(まかい)家

〇綺麗なダイニング
魔王「・・・」
レヴィ「あら、あなた」
リリ「あ~親父やっと起きたか」
魔王「父上と呼べ」
リリ「親父、その服洗濯するから」
リリ「着替えちゃって」
魔王「・・・」
レヴィ「片付かないからちゃっちゃと 食べてくださいね」
魔王「・・・モグモグ・・・」
「キャ~~」
リリ「あ~ ホームシアターさいっこ~だね」
レヴィ「ですわねですわね~ 推し活はかどりますわ~」
魔王「・・・ベルゼブブに会ってくる」
ケルベロス「おともいたします、我が王」
魔王「ケルベロス・・・」
ケルベロス「クゥン」
「・・・」

〇通学路
  ザッザッザッ
魔王「すまないなケルベロス・・・ そのような姿に身をやつしてもらって・・・」
ケルベロス「クゥン (あ、いえ・・・)」
ケルベロス「(あのままだと・・・家が燃えちゃうんで・・・)」

〇タクシーの後部座席
ベルゼブブ「あ~なかなかいいですよね奴の曲」
ベルゼブブ「私もたまに聴きますよ」
ベルゼブブ「これとか結構いいですよ」
魔王「・・・それより」
魔王「人間どもの洗脳は進んでいるのだろうな?」
ベルゼブブ「え?」
ベルゼブブ「あ~、え~、ハイ」
魔王「このタクシーとかいう乗り物の運転手になりすまし、乗りこんでくる人間どもを洗脳する・・・か」
魔王「良く考えたものだ」
魔王「人間の習性をうまく利用している」
ベルゼブブ「お、恐れ入ります」
魔王「で、奴らにはどのような洗脳を?」
ベルゼブブ「・・・」
ベルゼブブ「そうですね、まあ・・・ よくある催眠パターンとしては」
ベルゼブブ「ちょっと遠めの行先にするよう 仕向けたり・・・」
魔王「・・・」
ベルゼブブ「釣りはいらないと言わせたりして・・・」
「・・・」
ケルベロス(せこっ・・・)

〇街中の道路
魔王「ダメだ全然うまくいっとらん」
魔王「なんか・・・ぜんぜんダメじゃないか?」
魔王「王妃も娘も部下も」
魔王「めちゃめちゃ人間界満喫してるじゃないか」
魔王「滅ぼす気ないよね」
魔王「世界、闇に染めるどころか 人間社会にガッツリ染められてるよね」
ケルベロス「クゥン!!」
ケルベロス「(やっと気づかれましたか我が王!!!!)」
魔王「・・・落ち着け私・・・」
魔王「まだ・・・まだ息子のアモンがいる」
「アモンは幼い頃から魔力が強く、 なにより私に似てまじめだ」
「他の者たちとは違って 真面目にまともに任務遂行につとめているはずだ・・・!!」
魔王「ククク・・・様子を見に行ってやるか」

〇名門の学校
「アモン様~!!」

〇白い校舎
アモン「ハァッ!!」
「ゴォォォル!!延長戦を制したのは 馬飼アモン君のスーパーシュートォォォ」
「アモンさまカッコいい~!!」
チームメイト「はあ~今回もアモンがMVPだな」
アモン「田中くんのアシストあってこそだよ」
チームメイト「嬉しいこと言ってくれやがって~」
剣崎ヒカリ「アモン君、おつかれさま」
剣崎ヒカリ「かっこよかったよ」
アモン「剣崎さん・・・見てくれてたんだ」
剣崎ヒカリ「これ、タオル・・・よかったら使って」
魔王「・・・」
ケルベロス「クゥン」
ケルベロス「(めちゃめちゃ青春してますね)」

〇綺麗なダイニング
魔王「アレはほらアレだ」
魔王「アレだから」
魔王「人間どもを掌握するための演技だから」
魔王「魔王の息子はあんな爽やかな青春送ったりしないから」
魔王「息子にはなにか考えがあっての・・・ アレだから!!」
魔王「・・・噂をすれば」
剣崎ヒカリ「お邪魔しま~す」
アモン「ち、散らかってるけど気にしないで」
アモン「って父さん」
アモン「なんて格好してるんだよ」
アモン「僕たちこれから部屋で勉強するから──」
魔王「クハハハハハ!!」
魔王「息子よ、演技はもうよい」
魔王「その娘を襲うならここでやればよかろう」
アモン「襲っ・・・ そんなことするわけないだろ!?」
魔王「うまそうな血の匂いがする娘だ」
アモン「や、やめてよ父さん!! 何言い出すんだよ!!」
魔王「何をためらう 血をすすり闇の力でお前のしもべとして はべらせ・・・」
アモン「やめろってんだよクソオヤジ!!!!」
剣崎ヒカリ「キャアアア」
アモン「し、しまった」
アモン「ごめん剣崎さん 大丈夫!?」
剣崎ヒカリ「うう・・・」
魔王「クソオヤジ・・・ だと・・・?」
アモン「血とか闇とかしもべとか聞いてて恥ずかしいんだよ中二病かよ!!!!」
魔王「なっ・・・」
アモン「ていうか10年間も家族のことほっといたくせに今さら父親ヅラするなよ!!」
アモン「僕は人間界征服なんて絶対協力しないからな!!」
魔王「・・・しつけなおす必要があるようだな」
アモン「くっ・・・」
アモン「姉さん・・・!!」
リリ「いまどき家父長制なんて はやらないよ、親父!!!!」
魔王「父上と呼べと言っておるだろうがァァ」
リリ「アモン、あんたその子連れて逃げな」
アモン「・・・わ、わかった」
アモン「死なないでね、姉さん!!」
魔王「どこへ行く!!」
リリ「アンタの相手はあたしだよ!!」
魔王「アンタとはなんだアンタとは──!!!!」

〇通学路
レヴィ「ふんふんふ~ん」
近所の人「ちょっと馬飼さん!!」
レヴィ「あら村山のおばあちゃま ごきげんよう」
近所の人「アンタの家からもんのすごい音と光がするんだけど大丈夫なのかい!?」
レヴィ「え?」

〇綺麗なダイニング
リリ「ハァッ・・・ハァッ・・・」
魔王「強くなったな、娘よ」
魔王「だがここまでだ」
ケルベロス「キャン!! (や、やりすぎでは・・・)」
魔王「ハァッ」
「人が必死に育てあげた娘を・・・ 息子を・・・」
レヴィ「こんな目にあわせるとは・・・」
レヴィ「どういう了見なのかしら? あなた」
魔王「お、王妃」
魔王「これは・・・その 魔王として・・・威厳をだな・・・」
レヴィ「あなたいつもそう」
レヴィ「魔王だから忙しい 魔王だから偉そうにしなきゃ 魔王だからこどもの誕生日忘れても仕方ない」
レヴィ「知ったこっちゃねーんですわ」
リリ(壁が・・・)
魔王「しかし・・・」
魔王「私は魔王で・・・」
レヴィ「魔王のまえに・・・ ひとりの父親なのではなくて?」
レヴィ「そう頭ごなしでは」
レヴィ「子どもたちが反発するのも当然ですわ」
魔王「ち、父親には従うものだ」
レヴィ「またそれですの?」
レヴィ「そんなことばかり言ってたら 離婚しますわよ!!」
魔王「そんな」
魔王「し、しかしだな・・・ 私も仕事をせんと・・・征服の・・・」
魔王「魔界の民におもいっきり タンカきって出てきたから・・・」
レヴィ「それなら大丈夫」

〇闇の要塞
「有給休暇届・・・?」

〇綺麗なダイニング
リリ「通るんだ、有給申請」
魔王「ゆ、ゆうきゅう・・・!?」
レヴィ「あなた、魔王として500年働きづめだったじゃない」
レヴィ「500年分の有休、とっちゃいましょうよ」
レヴィ「家族水入らずでたのしく過ごして」
レヴィ「気が済んだあたりで 人間界征服しましょ!!」
リリ「あ、征服はするのね」
魔王「・・・」
魔王「たしかに、お前たち家族には 苦労をかけてきた」
魔王「共にすごすのも悪くはないな・・・」
魔王「だが!!」
魔王「お前たちのように 人間に迎合はせぬぞ」
魔王「人間どもと交わるなど・・・」
リリ「ハイハイ」
レヴィ「今度いっしょにライブ行きたいですわ!!」
リリ(布教する気だ・・・)
レヴィ「あらアモン」
レヴィ「お友達は大丈夫?」
アモン「うん・・・記憶操作して 家に送ってきた」
アモン「・・・」
魔王「・・・」
アモン「フン・・・」
魔王「なんだその態度は」
レヴィ「あなた」
魔王「・・・!!」
魔王「チッ・・・」
レヴィ「もう・・・」
レヴィ「まあいいわ」
レヴィ「さあご飯にしましょ」
レヴィ「今日は鍋よ~!!」
リリ「え~また~?」
魔王「・・・」
魔王「着替えてくる」

〇一戸建て

〇屋根の上
魔王「良い夜だな ケルベロスよ」
魔王「家族と囲むナベなる食べ物・・・ なかなか美味であった」
魔王「・・・」
魔王「ククク・・・」
魔王「人間どもよ・・・」
魔王「しばしのあいだ生きながらえさせてやろう」
魔王「束の間の繁栄をせいぜい味わうがよい」
魔王「ハーッハッハッハ」
ケルベロス「キャンキャンキャンキャン」
「うるせえぞーーー!!!!」
魔王「さて・・・ 明日は何をしようか」

コメント

  • 休日の家で邪魔がられ、年ごろの息子に恥ずかしがられ、犬にしか相手して貰えない魔王様かわいそう🤣🤣🤣
    でも王妃様は将来一緒に人間界を征服してくれるのだから、見放されてはいない様で良かったですね!

    ……え、人間界、征服されちゃう((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

  • 魔王様VS家族の構図になるのかと思いきや、有給取って人間界を楽しむようになるとは(笑)
    魔王様の考え方に、こういう男いるよなー、と思わず頷いてしまいました。王妃様が強くて、さすが母親って感じで好きです!
    今どき家族が魔界の人達に変わるだけでこんなに面白くなるとは!馬飼家の皆様にはぜひ人間界を楽しんでいただき、そして征服は辞めていただく方向でお願いしたいです(笑)

  • 面白かったです!!(*^ω^*)

    王妃から魔王への言葉がヘドバン級でうなづけますね!!✨

    どんなに忙しくても父親は父親ですよねっ!!✨👍

    全然束の間じゃないのがまた面白いところです✨500年有給最高ですね✨

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