プロローグ(脚本)
〇時計
─昔々・・・・・・というほどでもない。
さかのぼること15年前。
〇空
大天使「天使レヴエル・・・貴様の数々の悪行、もはや見過ごすことはできぬ」
レヴエル(神城蓮)「へぇ?」
レヴエル(神城蓮)「だったらなんだってんだよ」
大天使はそっと目を伏せ、数秒の後にゆっくりと目を開けた
大天使「貴様を下界に落とす」
レヴエルは顔いっぱいに嘲笑を浮かべた
レヴエル(神城蓮)「そりゃあいい!ここよりはずっとマシだろうさ!」
大天使「・・・」
大天使「下界にて悔い改めることだ」
〇大樹の下
地面に腰掛けて絵を描いている千春の目の前に、何かが落ちてきた
神城千春(旧姓浅間)「!?」
神城千春(旧姓浅間)「なに・・・?」
レヴエル(神城蓮)「いってえ・・・」
首に手を当てながら上体を起こすレヴエルと、千春の視線がかちあう
レヴエル(神城蓮)「!?」
レヴエル(神城蓮)「君、は・・・」
突然の出来事に思考停止していた千春だったが、レヴエルに話しかけられてハッとした
神城千春(旧姓浅間)「だ、大丈夫ですか!?急に、上から・・・」
レヴエル(神城蓮)「・・・」
レヴエル(神城蓮)「俺は下界に落ちたはずなのに・・・・・・目の前に、君が・・・・・・」
レヴエル(神城蓮)「天使が見える・・・」
神城千春(旧姓浅間)「は、はい?」
千春の目を見つめたまま、レヴエルはそっと千春の手を取る
神城千春(旧姓浅間)「え、え!?」
レヴエル(神城蓮)「君を側で愛し続ける権利を、俺にくれないか」
神城千春(旧姓浅間)「は、はあ!?」
〇時計
素っ頓狂な告白をきっかけに二人の交流は始まった。
そしてなんやかんや紆余曲折を経た二人は──
〇古風な和室(小物無し)
神城千春(旧姓浅間)「パパ。夕飯希望ある?」
レヴエル(神城蓮)「ビーフカレー!」
神城千春(旧姓浅間)「好きね。ほんとに」
レヴエル(神城蓮)「俺が好きなのはママだよ・・・」
神城千春(旧姓浅間)「今そういうのいらない」
レヴエル(神城蓮)「はーい」
質素ながらもあたたかい家庭を築いていた
神城仁「ちょっと!父さん!」
レヴエル(神城蓮)「仁。どうした?」
神城仁「いやどうしたじゃないよ!これ・・・なんとかしてよ!」
仁の視線の先では、二本足で直立した猫と犬がにらみ合っている
天の使い「仁さまは天界にこそ必要なお方!散りなさい悪魔め!」
魔の使い「馬鹿も休み休み言いなさいな!仁さまは魔界に在られてこそ真価を発揮するお方よ!」
天の使い「仁さまは半分天使の血を引いている!天におわすのが自然なのです!」
魔の使い「はー!馬鹿はこれだから!」
魔の使い「仁さまが引いていらっしゃるのは堕天使の血!魔と共にあることこそ自然なの!」
神城仁「喧嘩するな!俺んちで俺置いて盛り上がるのやめろ!」
天の使い「クソ犬!」
魔の使い「アホ猫!」
神城仁「話を聞け!」
レヴエル(神城蓮)「愛されてるねえ」
神城仁「今そういうのいらない!!」
レヴエル(神城蓮)「はは。さすが親子」
神城仁「いやちょ、とめてくれよ!」
レヴエル(神城蓮)「勝手にさせとけよ」
神城仁「はあー!?」
神城仁「小さき命が互いに傷つけあうのを見過ごせるわけないだろ!」
レヴエル(神城蓮)「善良すぎて引く」
神城仁「小さき命は大きな力に振り回されてこそ愛しいんだから!」
レヴエル(神城蓮)「うーん、悪辣」
神城千春(旧姓浅間)「あらあら」
”半天使/半堕天使は強大な力を持って生まれてくる。必ずや同胞として迎えよ”
天界にも魔界にもその言い伝えはある。──当然である。
その二つは同一の存在なのだから
神城千春(旧姓浅間)「仁は夕飯希望ある?」
神城仁「ビーフカレー!」
レヴエル(神城蓮)「おっ、満場一致」
愛妻家の夫と心優しい妻。そして生まれた一人の息子。
加えてたえない訪問客
天の使い「おっぺけぺー犬!!」
魔の使い「すっとこどっこい猫!!」
本人そっちのけで行われるのは天使と悪魔のスカウト合戦
神城仁「やめろってば!!!!」
神城家は、いつもにぎやかだ
レヴエルの下界への順応能力がすごい。まさか結婚して一男をもうけているとは!笑
天界にいる時よりも穏やかになったように感じて、奥さんとの出会いがそうさせたのかな等と想像させられました。
堕天使レヴエルなのに、15年後には畳と襖の日本家屋で温かい家庭を築いててずっこけました。仁を取り合う「天の使いの猫」と「魔の使いの犬」のスカウト合戦が可愛すぎます。仁が生まれながらにして善と悪の両方の視点を備えていることを示す発言も興味深いですね。