孫とお腹いっぱいカップ麺を食ってみた(脚本)
〇綺麗な部屋
扇人「おばんでがす〜!!ジージーアイチャンネルじゃ!」
扇人「第3回目のチャレンジは〜!?」
扇人「『お腹いっぱいカップ麺を食ってみた!』じゃ」
扇人「ワシの余命は残り1年なので、死ぬまでにやりたいことが多いのは勿論」
扇人「食べておきたいものも沢山ある」
扇人「さて、それじゃあ今回も助手と言う名の孫を呼ぶぞ」
扇人「おーい、孫タロー〜!」
孫タロー「ま、孫たろー・・・です」
扇人「今回この孫タローには、わしと一緒にカップ麺を食べてもらいます」
扇人「孫と一緒にカップ麺を食べる!これもワシのやりたいことリストの1つ」
孫タロー(そんなのいつでも出来るし、わざわざ動画にしなくても良いと思うんだけど)
扇人「よし!それじゃあ早速、レッツトライじゃ!!」
孫タロー「お、おー・・・?」
〇綺麗な部屋
扇人「よし。入りのシーンはこれでOKじゃな」
扇人「ありがとな、沙里人!さぁ今からカップ麺を作るぞ!」
沙里人「まぁ、お湯入れるだけだけどね」
扇人「そんな寂しいことを言うな!いっぱい買ってきたんじゃから」
沙里人「あ、じゃあ俺がお湯沸かしてくるよ」
扇人「良い良い。ワシがやりたいと言った動画じゃ、それくらいはする」
沙里人「わかった。じゃあこっちの準備してるから、よろしくね」
扇人「おう!任せろ!」
〇L字キッチン
南人「あれージーちゃんカップ麺でも食べんのー?」
扇人「おぉ南人か!そうじゃ!次の動画用じゃ」
南人「へー、良いじゃん。あとジーちゃんのその服もいい感じ」
扇人「そうじゃろ、プリティじゃろ」
南人「って、あれ?次の動画は『辛いカップ麺を食べてみた!』とかなの?」
扇人「『お腹いっぱいカップ麺を食ってみた!』じゃ!」
南人「えー!めっちゃ良いじゃーん!」
南人「動画あがったら爆速で観るわ」
扇人「うむ!すぐに言うぞ!!」
扇人「南人も今度一緒に、腹一杯カップ麺食べような」
南人「絶対食べる!」
南人「・・・ねぇジーちゃん。あとどれくらい、動画作るの?」
扇人「ワシが死ぬその時まで」
南人「──そうだよね」
南人「マジ応援してっから!拡散とかは任せて!」
扇人「おう!頼んだぞ!南人のおかげで再生数が増えてきてるんじゃ!」
扇人「一番バズるのはワシが死んだ時じゃろうがな」
南人「縁起でもないこと言わないで」
扇人「冗談じゃ。じゃが、ジジイのやりたいことリストに『万バズする』もあるからの」
扇人「これからも沢山の人に見てもらえる様に頑張るわ」
扇人「じゃあお湯も沸いたし戻るとするか。またな」
南人「うん」
〇綺麗な部屋
扇人「よし、お湯が沸いたぞ」
沙里人「あっ、ありがとう」
沙里人「って、ジイちゃんキムチとか大丈夫!?身体に触るんじゃ・・・」
扇人「問題ない。医者にも確認しておる。心配はありがたいが、ちゃんと完食するぞい」
沙里人「いや、全然残して良いんだけどさ・・・」
扇人「馬鹿者!!」
扇人「残すのの何が良いんじゃ。何も良くないじゃろ」
扇人「確かに体調を壊す程食べるのは良くない。自分の体と相談することも大切じゃ」
扇人「じゃが、「残す」ことを最初から選択肢に入れてたら」
扇人「いつしか残すことに対する「罪悪感」がなくなってしまう」
沙里人「た、確かに・・・」
扇人「それに、最近は作ってくれた人を前に平気でご飯を捨てる動画も見た」
扇人「ワシは、その動画を面白いと笑うことは一ミリもできん」
扇人「楽しく、美味しく、残さず完食する。それが今回ワシの撮りたい動画じゃ」
沙里人「──わかった。でも、万が一体調が悪くなったら言って。残りは俺が食べるから」
沙里人「それに、俺もジイちゃんの考えに賛成だよ」
扇人「あぁ、ありがとうな」
扇人「さすが孫タローじゃ!」
沙里人「い、今はそれ辞めて」
〇綺麗な部屋
扇人「さて!準備もできたことだし」
「いただきます!」
扇人「辛っ!!」
扇人「予想より辛くてビックリじゃ」
孫タロー「じ、ジイちゃん取り敢えず水!!」
扇人「あ、ありがとう」
扇人「ふーっ、ビックリした。この刺激のお陰で寿命が1年くらい伸びそうじゃ」
扇人「じゃが、辛い中にも後を引く美味さがある。汁を一滴も残さず食べられそうじゃ」
扇人「さぁ孫タロー!!そっちはどうじゃ!?」
孫タロー「こ、こっちも美味しいよ。こっちのはね・・・」
〇綺麗な部屋
沙里人「じゃあ、ジイちゃん。俺は部屋に戻るから後はよろしくね」
扇人「おう!任せされたぞ!今日もありがとな」
扇人「ふーっ。後は字幕を付けるだけじゃな」
扇人「・・・貴子。今回の動画でやっと3つ目になったぞ」
扇人「体力仕事ばかりしてきたワシが、パソコンでここまで来たのすごいと思わんか?」
扇人「まぁ、「まだ3つ目でしょ」と笑われとるかも知れんが」
扇人「それに、今日もまた一つ『死ぬまでにやりたいことリスト』を達成できたんじゃよ」
〇古めかしい和室
10年前
「頂きます」
扇人「おぉっ!今日も美味いのう!世界一じゃ!」
貴子「大袈裟ですよ。世の中にはもっと美味しいものが溢れてますから」
扇人「ワシはお前のご飯以上に美味いものを知らんな」
貴子「あらそうですか」
貴子「たまにはカップ麺でも食べたらどうです?これ以上胃が弱る前にお食べになっては?」
扇人「何気に嫌味を含めたじゃろ!?」
扇人「あぁいうのは、これからいつだって食べるチャンスはある。お前のご飯は今しか食えん」
扇人「いつか孫と一緒にカップ麺を食べるのも面白そうじゃな!超辛いやつとか」
貴子「あなたどうせ辛すぎて涙目になるでしょう。孫にみっともない姿見せるんじゃありませんよ」
扇人「ワシはみっともない姿なんて見せんわい!」
扇人「笑顔で完食してみせるわ!いつでも自慢のジジイでいたいからのぅ」
貴子「・・・そうですね」
〇綺麗な部屋
扇人「・・・」
扇人「さて、次はどんな動画にしようかな」
扇人「やりたいことは、まだまだあるのう」
〇綺麗な部屋
扇人「それじゃあ、今回の動画はこれまでじゃ!」
扇人「次の動画でまた会おう!」
扇人「バイバイGじゃ!!」
〇黒背景
孫とお腹いっぱいカップ麺を食ってみた 完
粗製濫造・インパクト重視の動画配信に一石を投じながらも、優しい物語を作り上げられていて、深く心に響きました。
扇人さんのように、やりたいことを楽しそうに行い、それを理解してくれる人達に伝え喜んでもらう、動画のみならずクリエイトの世界の原点なのかもしれませんね。とても気持ちのいい読後感です!