日菜と地獄の大公爵

椰子草 奈那史

地獄大公爵の憂鬱(脚本)

日菜と地獄の大公爵

椰子草 奈那史

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日菜と地獄の大公爵
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〇黒背景
  ♪鬼に会ったらグーを出し
  ♪狐に会ったらパーを出し
  ♪悪魔にあったらチョキを出し
「おじいちゃん、これってなんのお歌?」
真中 雲斎(まなか うんさい)「ん? まだ日菜には早いかの」
真中 雲斎(まなか うんさい)「ただし、決して忘れぬようにな よいな?」
「はーい」

〇黒

〇散らかった居間
「う、ん・・・」
真中 日菜(まなか ひな)「お腹空いた」
真中 日菜(まなか ひな)「ママー」
真中 日菜(まなか ひな)「なにか食べるもの」

〇安アパートの台所
真中 日菜(まなか ひな)「ない・・・」

〇黒背景
真中 ひかリ(まなか ひかリ)「日菜 押入れの箱は絶対触っちゃダメだからね!」

〇散らかった居間
真中 日菜(まなか ひな)「もしかして何かあるかも」
真中 日菜(まなか ひな)「ない」
真中 日菜(まなか ひな)「ん?」
真中 日菜(まなか ひな)「これ、なにかな」
真中 日菜(まなか ひな)「カメが3つ? 中になにかあるかなぁ このシールみたいなのはがせば──」
アシュタウルス(クマちゃん)「フハハハハ!」
アシュタウルス(クマちゃん)「我輩帰還せり」
真中 日菜(まなか ひな)「きゃっ!?」
アシュタウルス(クマちゃん)「む? 貴様か小娘、我輩を解き放ったのは」
真中 日菜(まなか ひな)「う、うん」
アシュタウルス(クマちゃん)「でかした! では早速憎き退魔師へ復讐するとしよう」
アシュタウルス(クマちゃん)「真中雲斎を知っておるか?」
真中 日菜(まなか ひな)「おじいちゃんなら、4年前に死んじゃった」
アシュタウルス(クマちゃん)「何!? 死んだのであるか フハハ、いい気味である」
アシュタウルス(クマちゃん)「然るに小娘、 雲斎と同じ血を感じる貴様を、代わりに血祭に上げるのである!」
真中 日菜(まなか ひな)「きゃあっ」

〇黒背景
  ♪悪魔にあったらチョキを出し
  決して忘れるでないぞ
真中 日菜(まなか ひな)(おじいちゃん!)

〇散らかった居間
アシュタウルス(クマちゃん)「さて、どんな酷い目にあわせてやろうか」
アシュタウルス(クマちゃん)「まずはその耳から──」
真中 日菜(まなか ひな)「せーのっ」
真中 日菜(まなか ひな)「チョキ!」
アシュタウルス(クマちゃん)「ぎ──」
アシュタウルス(クマちゃん)「ギャアアア 先っちょ恐い、恐いのであるぅぅ」
アシュタウルス(クマちゃん)「やめるのである! 我輩に尖ったものを向けてはならぬ」
真中 日菜(まなか ひな)「チョキ・・・」
アシュタウルス(クマちゃん)「グアアッ」
アシュタウルス(クマちゃん)「ハッ!? しまったのである 動揺のあまりつい膝をついて──」
  契約完了
アシュタウルス(クマちゃん)「・・・」
アシュタウルス(クマちゃん)「・・・」
真中 日菜(まなか ひな)「どうしたの?」
アシュタウルス(クマちゃん)「我輩が敗北を認めると、勝者に対して従属する契約が発動するのである」
真中 日菜(まなか ひな)「えーと、よくわかんない」
アシュタウルス(クマちゃん)「つまり、我輩は小娘の家来になったのである!」
真中 日菜(まなか ひな)「ほんと!? すごーい」
真中 日菜(まなか ひな)「悪魔さん、お名前は?」
アシュタウルス(クマちゃん)「我輩は一万の悪魔を従える地獄大公爵、アシュタウルスである」
真中 日菜(まなか ひな)「私、日菜っていうの よろしくね」
真中 日菜(まなか ひな)「アクマだから・・・クマちゃんでいい?」
アシュタウルス(クマちゃん)「なんでであるか!!」
アシュタウルス(クマちゃん)「とにかく、早く命令するのである」
真中 日菜(まなか ひな)「命令?」
アシュタウルス(クマちゃん)「フハハハハ この地獄大公爵の力を手にしたのだぞ さあ、憎い奴を八つ裂きにするか? それとも大戦争でも起こしてやろうか?」
真中 日菜(まなか ひな)「それならねー」
真中 日菜(まなか ひな)「ご飯食べたい」
アシュタウルス(クマちゃん)「ご飯?」
真中 日菜(まなか ひな)「うん、ご飯」
アシュタウルス(クマちゃん)「フハハハハ この地獄大公爵の力を持ってすればいかなるものでも強奪可能である!」
アシュタウルス(クマちゃん)「さあ、何がよい? フォアグラか、キャビアか?」
真中 日菜(まなか ひな)「悪い事はしちゃダメ!」
真中 日菜(まなか ひな)「でも今うちにはお金も材料もないんだ・・・」
真中 日菜(まなか ひな)「誰か来た!」
アシュタウルス(クマちゃん)「フハハハハ 丁度よい、ではこの者から調達するとしよう」
真中 日菜(まなか ひな)「取っちゃダメだよ!」
アシュタウルス(クマちゃん)「「正当に」調達すればよいのであろう?」

〇安アパートの台所
アシュタウルス(クマちゃん)「何用であるか?」
胡散臭い男(うわ、何このコスプレオヤジ!?)
胡散臭い男「こんにちは 「消防署の方から」来ましたー お宅、消火器おいてあります?」
アシュタウルス(クマちゃん)「知らん」
胡散臭い男「あー それまずいですよ、 今は置いてないと50万円の罰金なんです」
アシュタウルス(クマちゃん)「ほう」
胡散臭い男「そこで今なら、この超高性能消火器をたった2万5千円でお売りしますよ!」
アシュタウルス(クマちゃん)「よし、もらおう」
胡散臭い男(チョレぇ)
アシュタウルス(クマちゃん)「良き物を勧めてくれた礼に、こちらからも特別な逸品を紹介しよう」
アシュタウルス(クマちゃん)「見よ この食い終わってカピカピになったカップ焼きそばのカップと1センチほど残った茶のペットボトル」
アシュタウルス(クマちゃん)「合わせて3万円で提供しよう」
胡散臭い男「な、そんなもん──」
アシュタウルス(クマちゃん)「よいものであろう?」
胡散臭い男「ハ、ハイ コレ、消火器ト差額ノ5千円デス」
アシュタウルス(クマちゃん)「ご苦労 帰ってよいぞ」
「アリガトウゴザイマシタ」

〇散らかった居間
アシュタウルス(クマちゃん)「見よ 「正当に」取引きの上獲得したものである」
アシュタウルス(クマちゃん)「何でも好きなものを買って食うがよい──」
真中 日菜(まなか ひな)「私・・・」
真中 日菜(まなか ひな)「玉子焼きが食べたい」
アシュタウルス(クマちゃん)「玉子焼き、であるか?」
真中 日菜(まなか ひな)「うん!」

〇黒

〇安アパートの台所
アシュタウルス(クマちゃん)「・・・」
真中 日菜(まなか ひな)「クマちゃん 玉子焼き、まぁだ?」
アシュタウルス(クマちゃん)「クマちゃんではない! えーい 大人しく待っているのである!」
真中 日菜(まなか ひな)「はーい」

〇散らかった居間
真中 日菜(まなか ひな)「いただきまーす」
真中 日菜(まなか ひな)(んぐ、んぐ)
真中 日菜(まなか ひな)「おいしー!」
アシュタウルス(クマちゃん)「フハハハハ 地獄大公爵の力を持ってすれば 玉子焼き如き児戯に等しいのである!」
アシュタウルス(クマちゃん)「・・・ご飯とオカズは交互に食べるのが地獄の掟である」
真中 日菜(まなか ひな)「はーい」
真中 日菜(まなか ひな)「ごちそうさまー」
アシュタウルス(クマちゃん)「うむ 食器を片付けないものは地獄の業火に焼かれるであろう」
真中 日菜(まなか ひな)「はーい」
アシュタウルス(クマちゃん)「それにしても・・・」
アシュタウルス(クマちゃん)「この部屋は地獄の混沌に馴れ親しんだ我輩ですら引くほどの汚さである」
アシュタウルス(クマちゃん)「コレは・・・」
アシュタウルス(クマちゃん)「クサ! 牛乳であるか!? 牛乳が腐っておるのである!」
アシュタウルス(クマちゃん)「地獄名物の毒ヘドロ沼と同じ臭いがするのである!」
アシュタウルス(クマちゃん)「ウヌヌ 地獄大公爵の名にかけてこの罪、許しがたし!」
アシュタウルス(クマちゃん)「滅するのみである!」

〇黒

〇広い畳部屋
真中 日菜(まなか ひな)「わー クマちゃんすごーい!」
アシュタウルス(クマちゃん)「フハハハハ 地獄大公爵の力を持ってすれば整理整頓など造作ない事である!」
真中 日菜(まなか ひな)「・・・ねー、クマちゃん」
アシュタウルス(クマちゃん)「クマちゃんではない!」
アシュタウルス(クマちゃん)「何であるか」
真中 日菜(まなか ひな)「外に遊びに行きたい」
アシュタウルス(クマちゃん)「遊びに行くだと!? この地獄大公爵を愚弄するか!」
真中 日菜(まなか ひな)「ダメ?」
アシュタウルス(クマちゃん)「小娘! 帽子を被り水筒を持たぬ限りお前は決して家から出ること叶わぬ!」
真中 日菜(まなか ひな)「うん、それじゃ用意するね」
アシュタウルス(クマちゃん)「・・・」

〇黒

〇空

〇広い公園
真中 日菜(まなか ひな)「わー ブランコ乗ろ?」
アシュタウルス(クマちゃん)「小娘! 勝手に走るものは地獄の小石で膝を擦りむくであろう!」
「クマちゃーん 早く!」
アシュタウルス(クマちゃん)「フハハハハ 覚悟せよ! 地獄大公爵の力を持ってすればブランコは絶叫遊具と化すのは必定!」
「あははっ もっと押してー」

〇見晴らしのいい公園
真中 日菜(まなか ひな)「楽しかったねー クマちゃん」
アシュタウルス(クマちゃん)「クマちゃんではない」
真中 日菜(まなか ひな)「前はパパとよく遊びにきたんだけど」
アシュタウルス(クマちゃん)「・・・父親はどうした?」
真中 日菜(まなか ひな)「いなくなっちゃった どうしてかはママが教えてくれないから知らない」
アシュタウルス(クマちゃん)「フム 小娘には預かり知らぬ人間の世の地獄というものもあるのである」
真中 日菜(まなか ひな)「・・・」
アシュタウルス(クマちゃん)「小娘?」
真中 日菜(まなか ひな)「(すう、すう)」
アシュタウルス(クマちゃん)「寝ておるか!?」
アシュタウルス(クマちゃん)「・・・」
アシュタウルス(クマちゃん)「地獄大公爵の力を持ってすれば、小娘を背負いて帰る事など造作もない事である」

〇安アパートの台所
アシュタウルス(クマちゃん)「我輩、帰還せり」
真中 ひかリ(まなか ひかリ)「日菜!? どこ行ってたの──きゃあ!?」
真中 ひかリ(まなか ひかリ)「誰!? 日菜はどこ!?」
アシュタウルス(クマちゃん)「小娘ならば我輩の背でヨダレを垂らして眠っておるのである」
アシュタウルス(クマちゃん)「って、本当に垂らすヤツがあるのかである!」
真中 蓮(まなか れん)「どうしたの母さん──うわ!?」
真中 蓮(まなか れん)「た、大変だ 日菜が化け物の背に!?」
アシュタウルス(クマちゃん)「たわけ 格調高く地獄大公爵と呼べ」
真中 蓮(まなか れん)「えと、 あ、そうだ、こんな時は! 巴、助けてくれ!」
巴 (ともえ)「蓮、呼んだ〜?」
アシュタウルス(クマちゃん)「むっ 貴様は三尾の女狐!?」
巴 (ともえ)「あら 陰気な大公爵じゃない」
アシュタウルス(クマちゃん)「貴様なぜここに」
巴 (ともえ)「こっちの台詞だけど〜 私、今は蓮のお供になってるの」
真中 蓮(まなか れん)「巴 妹を助けてくれ」
巴 (ともえ)「はいはい〜 じゃあ久々に勝負しちゃう?」
アシュタウルス(クマちゃん)「ふっ 望むところである!」

〇安アパートの台所
「いざ!」
真中 日菜(まなか ひな)「うーん あっ お兄ちゃん!ママ!」
「おかえりなさーい」
「・・・」

〇黒

〇広い畳部屋
真中 日菜(まなか ひな)「でね このクマちゃんがご飯作ってくれたり公園で一緒に遊んでくれたの!」
アシュタウルス(クマちゃん)「クマちゃんではない」
巴 (ともえ)「クマちゃんだって♥」
アシュタウルス(クマちゃん)「五月蝿い 貴様こそなぜここにいる!」
真中 蓮(まなか れん)「それは 学校の寮に入ってて週末しか帰れない僕が家に入ったら──」

〇広い畳部屋
真中 蓮(まなか れん)「日菜がいない 一体どこへって・・・イテ!」
真中 蓮(まなか れん)「何これ?」
真中 蓮(まなか れん)「何で封なんか?」
真中 蓮(まなか れん)「わっ!?」
巴 (ともえ)「封印、解けた」
巴 (ともえ)「お前が術者か?」
真中 蓮(まなか れん)「ひっ!」
  ♪狐に会ったらパーを出し
真中 蓮(まなか れん)「不意に爺ちゃんの歌を思い出した僕は咄嗟に手を伸ばした」
巴 (ともえ)「ポフ、ポフ」
巴 (ともえ)「・・・」
巴 (ともえ)「コーーーン♥」
  契約完了

〇広い畳部屋
巴 (ともえ)「ン十年振りの頭ポフポフに一瞬で落ちちゃった」
アシュタウルス(クマちゃん)(犬コロめが)
アシュタウルス(クマちゃん)「然り、 小僧はともかく、女、貴様わが子を置き去りにするとは何事か!?」
真中 ひかリ(まなか ひかリ)「それは、朝までオールになっちゃって・・・そのまま昼の仕事に行かなきゃならなくて」
真中 ひかリ(まなか ひかリ)「ご飯はちゃんと置いていったでしょ?どうしたの?」
真中 日菜(まなか ひな)「昨日食べちゃった」
真中 ひかリ(まなか ひかリ)「ええ!?」
アシュタウルス(クマちゃん)「たわけ!」
アシュタウルス(クマちゃん)「(地獄農場において) 仔は日々成長するのは常識! それに気づかぬとは何事か」
アシュタウルス(クマちゃん)「(肉質を良くするには) 十分な栄養とストレスを与えない事、必定なぁり!」
真中 ひかリ(まなか ひかリ)「うう、ごめんね 日菜、ごめんなさい!」
真中 日菜(まなか ひな)「ママー」
アシュタウルス(クマちゃん)「然らば! 地獄大公爵の力を持ってすれば、小娘如きに窮する思いをさせぬ事など余技!」
真中 ひかリ(まなか ひかリ)「え?」
真中 日菜(まなか ひな)「それって」
アシュタウルス(クマちゃん)「女、貴様には一つだけ厳命する!」
真中 ひかリ(まなか ひかリ)「は、はい!?」
アシュタウルス(クマちゃん)「牛乳は腐らすな!」

〇黒

〇安アパートの台所
真中 蓮(まなか れん)「あの、こんな事頼むの変ですが、日菜の事お願いします」
真中 蓮(まなか れん)「母さんもいくつもの仕事掛け持ちしてて」
アシュタウルス(クマちゃん)「地獄大公爵の力を持ってすれば杞憂である」
真中 蓮(まなか れん)「すみません・・・ じゃあ、寮に帰ります」
巴 (ともえ)「またね~」
アシュタウルス(クマちゃん)「貴様は二度と来るな」

〇黒

〇広い畳部屋
アシュタウルス(クマちゃん)「何とも難儀な次第となったのである」
アシュタウルス(クマちゃん)「この小娘、この地獄大公爵を何と心得ておるのか」
真中 日菜(まなか ひな)「(ムニャムニャ) クマちゃん、日菜カレーが食べたい」
アシュタウルス(クマちゃん)「・・・」
アシュタウルス(クマちゃん)「・・・」

〇大きな一軒家
「明日は地獄カレーの日とする!!」

〇黒

コメント

  • 悪魔な家政婦兼友達のクマちゃん、見た目と口調は悪いですが、中身は意外と優しい。悪意のない日奈ちゃんに影響を受け、彼も良い悪魔になっていきそうですね!
    実はお爺ちゃんが子供や孫が困った時のために、封印物を残していたのか…と妄想をしてしまいました^^

  • 素敵なお話でした!✨😊
    クマちゃんが可愛いです✨決めゼリフもほんわかしますね✨あと蓮と狐の組み合わせもどうなっていくのか気になりますし、グーの子はどんな子だろう!?と想像すると楽しくなりますね✨↓のコメントで書いてありましたね!どっちの場合でも良いですねー✨😊

  • クマちゃんの可愛さが際立ってました。この地獄大公爵の力を持ってすれば…って決め台詞が良かったです。あとに来るワードがたいてい可愛いですね。帽子と水筒とか。これは幼稚園くらいの子供いないと出ない発想だなあと頷いてました。
    尺の問題だと思いますが、グーの子も出てきて欲しかったです。

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