悪魔の父(脚本)
〇中規模マンション
姉・みか
「今から彼氏が家に来るから家から出てってくれる?」
父・さとる
「いや・・・家から出てって言われても・・・」
姉・みか
「いーから早く、22時まで絶対帰ってこないでね」
父・さとる
「・・・」
母・るえ
「こーら、みか」
姉・みか
「だってあんな奴彼氏に会わせたくないんだもん」
〇魔界
悪魔界──
悪魔見習い・レッド「おい聞いたか?キエル様の事」
悪魔見習い・イエロー「ん?キエル様がどうしたんだ?」
悪魔見習い・レッド「今大天界で捕らわれているだろ」
悪魔見習い・イエロー「ああ、そりゃ知ってるぜ」
悪魔見習い・レッド「今度戻ってくるらしいぞ」
悪魔見習い・イエロー「え、まじかよ」
悪魔見習い・レッド「噂だけどな。しかも何でだか戻る前に人間界に行くらしい」
悪魔見習い・イエロー「ひー人間界も可愛そうに。 あの最強最悪のキエル様が人間界に」
悪魔見習い・レッド「なー可愛そうに。人間界は悪魔界と善悪が逆だからな。どうなることやら」
〇白
大天界──
〇白
キエル「おい小僧!!」
神の使い「お呼びでしょうか?」
キエル「お呼びってお前が呼んだんだろうが!」
神の使い「はい。左様でございます」
キエル「てめぇふざけてんのか? もう禁固500年たったのかよ」
神の使い「いえ、まだ255年と8の月しかたっておりません」
キエル「ちっ、早く俺様を呼んだ理由を話せ!」
神の使い「はい、大天神ガブリル様より伝言です」
キエル「ガブリルからだと・・・」
神の使い「先ほど人間界より大天界に昇ってこられた男性」
〇市街地の交差点
渡辺さとる。52才
雨の日に傘も指さずに外出中。
突然曲がってきた車に衝突。
〇白
大天界に昇ってこられたのはいいものの
後悔の念が強すぎて今にも悪魔化する勢い
〇白
神の使い「とのこと」
キエル「あぁん?だから何だよ」
神の使い「この者の後悔の念を取り除いてほしい とのこと」
キエル「は?お前らがやれよ」
神の使い「悪魔化が進んだこの者に私たちは何もできません」
キエル「知らねぇよ!」
神の使い「人間界に行きこの者に憑依し念を晴らしていただきたい」
キエル「人間界だと!?」
神の使い「もし、念を祓う事ができれば刑を減らしてもいいとのこと」
キエル「刑が減るだと!?」
神の使い「左様でございます」
キエル「くくく。そりゃいい 大体何なんだよその後悔の念とやらは」
神の使い「『親として何もしてやれなかった』」
キエル「は?」
神の使い「『父として信頼を得たかった』」
キエル「何だそれ」
神の使い「人間の親とはそういうものです」
キエル「よくわからねぇが、何をどうすりゃいんだよ」
神の使い「ガブリル様より神の目。 『ゴッド・アイ』を授けるとのこと」
キエル「ゴッド・アイ!?」
神の使い「『ゴッド・アイ』を使えば子供達からの信頼度を見れます」
キエル「自分への信頼度か?」
神の使い「その信頼度が100に到達するたび 1年刑を減らすとのこと」
キエル「信頼度が100に到達するたび? 100って難しいのかよそれ」
神の使い「例えば、おもちゃを買って欲しい子供におもちゃを買ってあげれば 信頼度30は上がるでしょう」
キエル「くくく 100なんて楽勝じゃねぇかよ」
神の使い「今のままでは難しいかと 人にもよりますし」
キエル「100に到達するたびって 100からまた下がったりするのか」
神の使い「もちろん 人間とはそういうものです」
キエル「ちっ、めんどくせぇな」
神の使い「あ、それと 『ゴッド・アイ』の『アイ』は 『愛』の『アイ』でもあるとのこと」
キエル「・・・」
神の使い「それではピース!とのこと」
キエル「いつかしばくガブリルのやろう」
神の使い「では、どういたしますか?」
キエル「まぁこんな何もねーとこいてもしょうがねぇ」
キエル「やってやるよ」
〇市街地の交差点
加害者「お、おじさん・・・ い、生きてる・・・か?」
父・さとる「ああ?貴様ぁ 誰に言ってんだこらぁ!」
加害者「ひ、ひ、ひぃーーー」
キエル「か、体がいてぇ」
キエル「体とか力はこいつのままなのか? いててて・・・」
キエル「とりあえずこいつの家に行ってさっさとガキ共の信頼を100にして」
キエル「悪魔界に帰ろう」
〇中規模マンション
〇家の廊下
母・るえ「おかえりな・・・」
父・さとる「・・・」
母・るえ「ど、どうしたのあなた!?」
父・さとる「何がだ?」
母・るえ「何がだってずぶ濡れで服ボロボロ 怪我もしてるし!」
父・さとる「あ、ああ・・・」
母・るえ「ああ・・・て」
父・さとる「そんな事よりガキはどこだ?」
母・るえ「ガキ?」
キエル「あ、いけね」
父・さとる「子供はどこにいる?」
母・るえ「子供って・・・ みかなら部屋で泣いてるわ」
父・さとる「泣いてる?良いことでもあったのか?」
母・るえ「・・・。 彼氏とケンカしたみたい」
父・さとる「おお、俺もやりてぇなぁケンカ」
母・るえ「あなた・・・頭でも打った?」
父・さとる「ああ、事故ったからな」
母・るえ「ええ!事故!?」
父・さとる「それでみかの部屋はどれだ?」
母・るえ「・・・。 ここだけど・・・ あなた本当に大丈夫?」
〇可愛い部屋
姉・みか「ぐすんっぐす・・・」
父・さとる「よぉ、みかか?」
姉・みか「・・・あぁん?」
父・さとる「よし」
キエル「ゴッド・アイ!!」
信頼度・・・
-5300
キエル「ん?」
キエル「ゴッド・アイ!!」
信頼度・・・
-5300
キエル「-5300・・・だと」
〇可愛い部屋
姉・みか「ちょっと!」
父・さとる「・・・」
姉・みか「何かってに部屋に入ってきてんのよ!」
父・さとる「-5300・・・」
姉・みか「ふざけてんの!?」
父・さとる「いやあの・・・ あ、ケンカは楽しかったか?」
姉・みか「出てけ!!」
〇家の廊下
母・るえ「ちょっとあなた!」
父・さとる「ん?」
母・るえ「本当に病院に行った方がいいんじゃない?」
父・さとる「んー」
弟・まさる「うるさいな」
母・るえ「まさる!」
父・さとる「誰だお前は!」
弟・まさる「は?お前のせいで産まれた子供だよ」
母・るえ「ちょっとあなた」
キエル「ゴッド・アイ!!」
信頼度・・・
0
キエル「ぜ、ぜろ・・・」
キエル「まぁでも信頼されてるように感じるな・・・」
〇家の廊下
母・るえ「ま、まさる 明日学校は?」
弟・まさる「ああ いかないよ 大体明日は日曜日だろ」
母・るえ「・・・」
母・るえ「ちょっとあなた まさるにも何か・・・」
父・さとる「んー ちょっと出掛けてくる」
「あなた・・・」
〇高級住宅街
父・さとる「んー」
キエル「だいぶ信頼されてねぇなこいつは」
〇白
神の使い「あ、それから1週間1度も100に到達できなければ強制帰郷、ついでに1000年の禁固刑がプラスされますので」
キエル「1000年だと!?」
神の使い「それと人間界で罪を犯すごとに禁固刑プラス1万年ですのでお気をつけくださいとのこと」
〇高級住宅街
キエル「ちっ」
キエル「やるしかねぇ」
〇中規模マンション
キャンプ!?
〇家の廊下
父・さとる「ああ、家族みんなでキャンプに行こう」
母・るえ「ほんとあなた昨日から何か変よ」
父・さとる「どこがだよ」
母・るえ「何て言うか・・・ だいたい帰ってきたばっかだし・・・ しかもキャンプって」
〇インターネットカフェ
キエル「くくくっ 親として、父としての信頼を得るには キャンプが1番だと」
キエル「こいつの行きつけで調べに調べた」
定員「お客様、ずぶ濡れたままの服では・・・」
父・さとる「うるせぇ!」
〇家の廊下
姉・みか「はぁ?行くわけないじゃん!」
父・さとる「行こ、頼むよ」
母・るえ「お父さんがここまでいうの珍しいじゃない ていうか初めてでしょ」
父・さとる「頼む!行こう」
姉・みか「大学生になって1人暮らししてもいーんだったら考えてあげる」
キエル「まぁ俺には関係ねーし」
父・さとる「よーし、いいぞ」
母・るえ「ちょっと!」
姉・みか「え?ほんとに?言ったわね!」
父・さとる「ああ」
父・さとる「行こう!キャンプ!」
〇森の中
父・さとる「よーし着いたな」
姉・みか「いやなんでスーツなのよ」
父・さとる「ん?おかしいのか? 父としてのだな・・・」
母・るえ「まぁいいじゃないの」
姉・みか「おかしいよ て言うかまさるは?」
〇家の廊下
弟・まさる「お腹痛いから行かない」
〇森の中
母・るえ「だって」
父・さとる「まぁいいじゃないか」
キエル「1人ずつのほうが集中しやすいし」
父・さとる「よーしお父さんとして頑張るぞー」
姉・みか「どうしちゃったの ほんとに・・・」
〇森の中
元彼「あれー?みかじゃん」
姉・みか「あきと!?」
元彼「何してんの?こんなとこで」
姉・みか「何って・・・」
元彼の彼女「あきと!誰この子」
元彼「ああ、ただの知り合いだよ」
姉・みか「ただの、知り合い・・・」
父・さとる「みか!火を起こすから一緒にやろう」
元彼「誰?おじさん、みかのお父さん?」
父・さとる「お、友達かみか?」
元彼「てかスーツておじさん ちょうど肌寒かったから上着かしてくれる? ははは」
姉・みか「・・・」
父・さとる「みか!どうした?なんで泣いてる」
元彼「ごめんよ、家族団欒の中 なんか邪魔なようだね ははは」
元彼「ほな、さいなら」
父・さとる「みか!俺が火を起こすとこをだな・・・」
姉・みか「帰る!!」
父・さとる「ええ!?」
姉・みか「もう、やだ・・・」
〇黒
キエル「おい!!」
〇森の中
元彼「ああ?」
〇黒
父・さとる「貴様ぁ」
〇森の中
元彼「な、なんだよ」
〇黒
キエル「ふざけんなよこらぁ」
〇森の中
元彼「ひぃ・・・」
父・さとる「せっかくここまできたのにテメェ」
〇壁
〇森の中
父・さとる「・・・はぁ」
キエル「やっちまった」
キエル「人間界で罪を犯したら刑が1万年プラスされんだっけか」
姉・みか「あ、ありがとう」
父・さとる「え?」
姉・みか「なんかスッキリしたわ」
母・るえ「父親らしかったわ!」
父・さとる「父親・・・らしかった・・・?」
母・るえ「ええ、とっても」
キエル「・・・」
キエル「ゴッド・アイ!!」
〇黒
信頼度・・・
100
キエル「ひ、ひ、100!!?」
〇森の中
キエル「や、やったぞ やったぞぉぉぉお!」
どうしたの!?
父・さとる「くーくっくっく」
姉・みか「いや、笑い方きもいんだけど」
母・るえ「こーら、みか」
〇山中の坂道
父・さとる
「ケンカするだけで100なんだもんなぁ」
母・るえ
「娘を守るとはいえ人を殴ってはいけないわ」
父・さとる
「ん?だってみかの信頼度100だぞ?」
姉・みか
「信頼度100?何言ってんの?」
父・さとる
「なに惚けてんだよ、ゴッド・アイ!」
父・さとる
「あれ?3?」
母・るえ
「あなたやっぱり1度病院に・・・」
父・さとる
「よーし、明日もキャンプだキャンプ!」
姉・みか
「はぁ?もういーよ!」
お父さん最後は逆転サヨナラホームランの様でしたねえ。天使でも悪魔でも、やっぱり信頼度ってかなり重要なものだと、この家族がいいモデルですね!
悪魔なのにお茶目なキャラのキエルを応援する気持ちで見てしまいますね。悪魔界になんか戻らないでずっとお父さんのまま人間界でわちゃわちゃしててほしい。