読切(脚本)
〇シックなリビング
平良リョウ15歳はある日突然、とんでもないパニックに陥っていた。
リョウ(いや、絶対おかしいだろ!)
リョウ(なんだこれ、え、どういうこと? は?)
パパ「よーし、急ぎの依頼もないし、今日はみんなでどこか遊びに行こう!」
リョウ(なんで今まで俺なんにも思わなかったんだ?)
レイ「わーーい、やったー!! レイ、遊園地がいい!」
リョウ(これを普通に受け入れてたとか、俺どうかしてたんじゃない!?)
ママ「ママは深草で商店街巡りがしたいな~♪」
リョウ(無理無理無理・・・・・・意味わかんないから!)
パパ「パパは美味しいもの食べにいきたいな~」
ママ「深草の商店街って、小さい遊園地あったよね?」
パパ「あ、そうだったな!」
パパ「じゃ、商店街めぐりして美味しいもの食べて、遊園地で遊ぶ。これだな」
レイ「わーい!」
ママ「カンペキね!」
リョウ(カオスだ・・・・・・カオスすぎる)
パパ「リョウくんも──」
レイ「お兄ちゃんも──」
ママ「それでいい~?」
リョウ「いやいやいや・・・・・・ダメだろ!」
パパ「ん? 他に行きたいところがあるのか?」
ママ「どこ? 言ってみて?」
レイ「レイ、お兄ちゃんのすきなとこでいーよ!」
リョウ「いや、そうじゃなくて・・・・・・」
リョウ「なにもかもおかしいだろーー!!!」
〇シックなリビング
パパ「どうしたんだ!? なにか悩み事でもあるのか?」
リョウ「いやいやいやいや・・・・・・」
ママ「パパとママに話してごらん?」
リョウ「ママが幼児でパパが幼女っておかしいだろ!?」
レイ「お兄ちゃん? なに言ってるの?」
リョウ「逆に妹が俺よりデカいギラギライケイケの男なのもおかしいだろ!!」
パパ「リョウくん──」
パパ「人を見た目でどうこう言うなんてよくないぞ」
ママ「そうよ~」
ママ「パパとママが小さくて可愛いのも──」
ママ「レイちゃんが大きくてカッコいいのも──」
ママ「み~んな、個性でしょ?」
リョウ「いや、個性ってレベルの話じゃないって・・・・・・ありえないだろ」
レイ「お兄ちゃん・・・・・・レイのこと、嫌なの?」
リョウ「うっ・・・・・・」
レイ「レイのこと、嫌い?」
リョウ「き・・・・・・らいじゃない」
レイ「よかった──」
――ピンポーン
パパ「あれ、お客さんだ」
〇シックな玄関
???「あの! お願いします!」
パパ「石田さんじゃないですか。どうしたんですか?」
石田「うちの・・・・・・うちのミケちゃんがいなくなっちゃったんです!!」
〇公園のベンチ
リョウ「なんで休みの日に一家揃って迷い猫探しなんだよ・・・・・・」
パパ「うちの探偵社は家族で協力するのが方針だからな。頼むよ」
ママ「みんなでやると不思議と上手く解決できるのよね~」
レイ「いっしょにがんばろーね!」
リョウ「まぁいっか。まだ近くにいるかもしれないし、木の上とか茂みとか探してみるか」
パパ「猫ちゃんはそんなところにいかないよ。危ないしね」
ママ「カフェとファストフードとショッピングモールを探してみようか」
リョウ「は? そんなとこに猫がいるわけなくないか??」
〇テラス席
???「にゃーーん」
レイ「いたーー! 石田さんのおうちのミケちゃんだ!!」
パパ「ママの読み、バッチリだったな!」
リョウ「いやいや・・・・・・どこの世界にカフェでカフェラテ飲んでる猫がいるんだよ・・・・・・」
ミケ「・・・・・・?」
リョウ「っていうか、猫じゃなくて猫耳の子供じゃないか!」
パパ「リョウくん──」
パパ「さっきも言っただろ? 何事も見た目で判断しちゃダメだぞ」
リョウ「えええ・・・・・・」
ママ「はは、リョウくんは頭が硬いなぁ~」
リョウ「まぁ・・・・・・いっか。こういう見た目の猫もいるかもしれな──」
リョウ「いや、いるか??」
ミケ「あのぅ・・・・・・見つけてくれてありがとにゃん」
リョウ「ふ・・・・・・普通にしゃべった」
ミケ「ミケ、迷子になっちゃったのにゃん」
リョウ「しゃべったらいよいよ人間じゃないのか?」
ミケ「ちがうにゃん! 猫だって言葉くらいしゃべるにゃん」
リョウ「えーっと、だったら警察に行って保護してもらえばよかったんじゃないのか?」
ミケ「ふぇぇぇ・・・・・・そんなことしたら、保健所に送られるかもしれないにゃん。うぅぅ・・・・・・」
リョウ「えええ!! そこはまじで猫扱いなのかよ!?」
パパ「まさか、そんなわけないよ。そんなのデマだって」
レイ「ミケちゃん、もう大丈夫だよ。一緒におうち帰ろうね」
ミケ「にゃん!」
〇一軒家の玄関扉
石田「あああ・・・・・・ミケちゃん、ミケちゃん!! よかった、無事で良かったー!」
ミケ「うわぁぁん! 勝手にお家でてごめんなさいにゃ・・・・・・もうしないにゃ」
パパ「いやー、ほんとによかったな」
〇大きいショッピングモール
パパ「さて依頼も無事こなしたことだし、ご褒美にみんなの欲しい物を買って帰ろうか!」
レイ「わーーい、やったー!」
〇アパレルショップ
ママ「ママ、このカーディガンに決めた~。渋くて素敵♪」
リョウ(か、辛子色・・・・・・なんでその顔で好みがおじいちゃんなんだ)
パパ「パパは、この子に決めた!」
リョウ(うさぎのぬいぐるみ・・・・・・)
リョウ(いや、こっちは見た目的には逆にピッタリだな)
レイ「レイ、このTシャツにする!」
レイ「キラキラで虹色に光るんだよ!? かっこい~♪」
リョウ「うわぁ・・・・・・」
レイ「え・・・・・・これ、かっこよくない? ダメ?」
リョウ「そ、それは・・・・・・」
リョウ(いや、人の好みにケチつけるのはな・・・・・・)
リョウ「いや、いいと思うよ」
レイ「わーい、よかった♪」
リョウ「まぁ、レイが喜んでるならそれでいっか」
レイ「お兄ちゃん、今度一緒に遊びに行こうね!」
リョウ「ああ、いいよ」
レイ「レイ、このTシャツ着ていくんだ~♪」
リョウ「え、あ・・・・・・おう・・・・・・」
パパ「それで、リョウくんは何を買ってほしいんだ?」
リョウ「いや、俺は別に──」
リョウ「あ、そうだ」
〇シックなリビング
「いっただっきま~~す!」
ママ「リョウくんの買う物、これで本当によかったの~?」
リョウ「まあ特に欲しい物とかなかったし、みんなで食べれるからいいだろ」
「やっぱりリョウくん(お兄ちゃん)って優しい~!」
リョウ(はぁ・・・・・・なんかいろいろカオスだけど──)
リョウ(とりあえず平和だし・・・・・・まぁいっか)
リョウ「・・・・・・」
リョウ(いや、っていうかミケちゃんって──)
リョウ(せめて三毛猫っぽい感じじゃないのか!?)
-END-
家族の姿がこれほど一般的な外見から遠ざかっていると、なんだか喧嘩にすらならないんだろうなあと想像させられますね。こんなに小さくて可愛い両親に口答えなんて無理です!読んでてこちらは楽しかったです。
ネット上ではアバターやVtuberなど本人の年齢性別が不明だし、現実社会でもLGBTやコンプライアンスで人を見た目で判断してはいけない時代です。そんな現代社会を逆手にとって巧みに表現したお話でした。結論としてはリョウの家族のように互いを尊重して仲が良ければ全てよし、ということなんですかね。