P3・名前をつけましょう!(脚本)
〇城の会議室
レイヴィダス「先生、こちらはいかがですか!」
レイヴィダス「先生、こちらは 魔界の旬の食材でございます!」
レイヴィダス「そしてこちらは──」
ストラスール「レイヴィダス様・・・ おとなしく座っていてくださいませんか」
リディア「先生も困っていらっしゃいますわよ」
レイヴィダス「申し訳ございません!」
まつ江「いいんですよ。 ただ、あまりたくさんは食べられません」
アルフォル「食わなきゃ大きくなれねーぞ」
まつ江「きちんとしたお食事なんて 久し振りで・・・」
「──えっ?」
まつ江「恥ずかしながら、寝たきりになってからずっと流動食や点滴でしたから・・・」
アルフォル「唐突にババア発動!!」
レイヴィダス「そういうことでしたか」
レイヴィダス「てっきり虐待でもされていたのではと、 一瞬ヒヤリといたしました」
まつ江「虐待だなんてそんな!」
まつ江「郁子さんには 本当によくしてもらって・・・」
まつ江「あ、郁子さんというのは長男の嫁で、 これがまたよくできた人でしてね──」
アルフォル「えーと、まつ江ちゃん?」
まつ江「はい、何でしょう?」
アルフォル「婆臭さが滲み出すぎ・・・」
アルフォル「ていうか全開なんだよ、ババアが!!」
レイヴィダス「失礼なことを言うな、アルフォル!!」
アルフォル「仕方ねーだろ!?」
アルフォル「外見と中身のギャップが激しくて 話してると混乱してくんだよ!!」
ストラスール「たしかに・・・」
リディア「お父様!」
リディア「・・・まぁ、違和感はありますね」
リディア「せっかく転生なさったんですもの! 中身もしっかり若返りましょう!」
まつ江「でも、私は紛うことなきお婆さんですよ?」
リディア「いいえ、今は違います!」
リディア「そのホムンクルスの身体は 人間換算で15歳くらいですの」
まつ江「あらまぁ。 曾孫と同じくらいの年齢なのね」
アルフォル「魔族で言うと150歳くらいか? 俺より年下じゃん」
アルフォル「ためしにアルお兄ちゃんって呼んでみ?」
まつ江「え・・・っと、 アルお兄ちゃん・・・?」
アルフォル「・・・ッ!!」
アルフォル「・・・やばい、いいかも」
レイヴィダス「ずるいぞアルフォル!! 私も、私も呼んでくださ──」
ストラスール「レイヴィダス様」
ストラスール「盛り上がっているところ 申し訳ございませんが」
ストラスール「私はまだこの方を 認めたわけではございません」
レイヴィダス「お前はまだそんなことを・・・」
ストラスール「こちらの勝手で転生させてしまった以上、 生活の面倒は見ましょう」
ストラスール「しかし、ホムンクルスをいつまでも客人扱いしていては、他の者に示しがつきません」
アルフォル「だったら、 宮廷画家って名目で出仕してもらえば?」
レイヴィダス「それはいいな!」
ストラスール「アルフォルのくせに考えましたね・・・」
ストラスール「はぁ、仕方ありません」
ストラスール「私は宰相のストラスール・ レンサイト・シルヴィスです」
ストラスール「こちらは娘のリディア」
ストラスール「何かお困り事がございましたら 私どもにご相談ください」
まつ江「ありがとうございます」
ストラスール「あなたのことは何とお呼びすれば?」
まつ江「黒滝まつ江と申します。 苗字でも名前でも──」
ストラスール「それは転生前の名でしょう」
ストラスール「今のあなたはあくまで 150歳のホムンクルスなのですよ」
アルフォル「まつ江って顔じゃねーしな」
ストラスール「アルフォル・・・」
まつ江(そうね)
まつ江(いくら記憶が残っているといっても、 私は生まれ変わったのだわ・・・)
まつ江「・・・クロエ」
まつ江「そう名乗ることを お許しいただけますかしら」
レイヴィダス「クロエ・・・」
レイヴィダス「先生にお似合いの素晴らしい名前です」
クロエ(黒江はペンネームで 使っていた名前だけれど・・・)
クロエ(それが今日から私の本名になるのね)
クロエ「みなさま、どうぞクロエとお呼びください」
〇城の客室
クロエ「寝間着まで用意していただいて ごめんなさいね」
リディア「とんでもありません。 当たり前のことですわ」
リディア「他にも御入り用の物がありましたら、 何でもお申し付けくださいませね」
クロエ「ありがとう、リディアさん」
リディア「・・・リア、と」
クロエ「えっ?」
リディア「よろしかったら、リアと呼んでください」
クロエ「リア・・・?」
リディア「はいっ!」
リディア「こう申しては失礼かもしれませんが・・・ 私、年の近い友人が少ないものですから」
リディア「クロエ様が来てくださって とっても嬉しいんです」
クロエ「まぁ・・・」
クロエ「でしたら、私のことも どうぞクロエと呼んでくださいな」
リディア「よろしいのですか?」
クロエ「もちろん」
クロエ「中身はお婆さんですけど、 仲良くしてくださいね」
リディア「クロエ・・・!」
クロエ「わっ・・・ 急に抱きついたら危ないですよ」
リディア「えへへ・・・ごめんなさい」
リディア「今日はゆっくり休んでくださいね。 また明日、たくさんお話しいたしましょう」
リディア「おやすみなさいませ!」
クロエ「ふふっ」
クロエ「しっかりしたお嬢さんだと思っていたけれど、子供っぽいところもあったのね」
クロエ「さて、休むといっても・・・」
クロエ「昼間たくさん寝てしまったから あまり眠たくないのよね」
クロエ「お屋敷の中を歩いてみようかしら」
〇洋館の廊下
クロエ「・・・広いわねぇ」
クロエ「このまま迷子になってしまったら 徘徊老人だと思われてしまうわ」
クロエ「たいへん。 迷う前にお部屋に戻りましょう」
クロエ「・・・・・・・・・」
クロエ「どちらから来たのだったかしら・・・」
クロエ「困ったわねぇ」
???「おねーサン、どうカしたの?」
クロエ「ちょっとお部屋の場所が・・・」
スライム「分からナクなっちゃっタの?」
クロエ「実はそう・・・」
クロエ「──え?」
クロエ「きゃぁあああーっ!!」
クロエ「水羊羹のおばけ!!」
スライム「ミズヨウカンってなァに?」
クロエ「違うの!? それじゃあ寒天!? ところてん!? わらび餅かしら!?」
スライム「・・・何ソレぇ」
クロエ「あ、あなたはいったい・・・」
スライム「おねーサン、スライム知らなイの?」
クロエ「スライム!?」
クロエ「光佑の遊んでいたゲームじゃ、小さい おにぎりみたいな形だったけれど・・・」
スライム「コースケ?」
クロエ「ああ、光佑っていうのは 長男のところの子供でね」
クロエ「孫の1人なんだけど、これがまた可愛くて」
スライム「コースケはカワイイ・・・」
クロエ「そうなのよ~」
クロエ「それでね、光佑はもう少しで30歳になるんだけど、急に漫画家になりたいって言い出して・・・」
スライム「コースケはさんじゅッさい・・・」
クロエ「そうそう。それで──」
???「こんなところで何をしているのです?」
クロエ「あら、ええと・・・」
クロエ「ストライク・レインウェア・ シルバーウィークさん!」
ストラスール「わざとですか?」
ストラスール「ストラスール・ レンサイト・シルヴィスです」
ストラスール「スライム相手に何を話し込んでいるのです」
スライム「コースケはかわイくてサンじゅっさい!」
ストラスール「は?」
クロエ「こちらのスライムさんに 孫自慢を聞いていただいておりましたの」
ストラスール「はぁ、左様で」
クロエ「この時間までお仕事ですか?」
ストラスール「ええ」
ストラスール「どこかの馬鹿が魔力をスカスカにしたので、警護を強化しなくてはなりませんからね」
クロエ「私のせいで、ごめんなさいね」
ストラスール「・・・・・・」
ストラスール「ハァ・・・」
ストラスール「八つ当たりのようなことを言って 申し訳ございません」
ストラスール「あなたのせいではない、むしろあなたは被害者だと理解はしているのですが」
クロエ「被害者だなんて、そんな・・・」
クロエ「たしかに驚きはしましたけど、新たな生を得るという貴重な体験をさせていただきました」
クロエ「クロエとして何ができるのか分かりませんけれど、精一杯頑張りますね」
クロエ「どうぞよろしくお願いいたします」
ストラスール「・・・・・・」
ストラスール「いえ・・・」
ストラスール「あなたは想像以上に たくましい方のようですね」
クロエ「たくましい・・・」
ストラスール「それに精神的に自立している」
クロエ「まぁ、年の功と言いましょうか・・・」
ストラスール「これまでの非礼、どうかお許しください」
クロエ「頭を上げてくださいな」
クロエ「あなた様の言動は、すべて レイさんを心配してのものでしょう?」
クロエ「謝っていただく必要なんてありません」
ストラスール「クロエ殿・・・」
クロエ「殿・・・」
クロエ「ふふっ」
クロエ「できればクロエと呼んでください」
クロエ「外見年齢はそちらの方が上ですからね」
ストラスール「フッ・・・そうですね」
ストラスール「では、クロエと呼ばせていただきましょう」
スライム「ボクもクロエって呼んデいーい?」
クロエ「いいですよ」
クロエ「あなたのお名前は何ていうの?」
ストラスール「スライムに個体名はありません」
クロエ「まぁ、そうなの?」
スライム「そうナノー」
クロエ「でしたら、私がこの子に 名前をつけさせていただいても?」
ストラスール「構いませんが・・・」
ストラスール「魔界での命名行為は、 即ち契約行為となります」
クロエ「契約・・・ 保証人か何かですか?」
ストラスール「主従関係です」
クロエ「主従関係・・・?」
まつ江って顔してないって…若い頃もババアになってもまつ江はまつ江だろって突っ込んで笑いました。
でも確かに名前に相応しい年齢ってありますよね。
クロエさんの会話のババ臭さがたまりません!
会話の最中に唐突に親類の名前を出して、延々とその親類の説明を繰り広げる、、、典型的高齢者トークですよね
ストライク・レインウェア・シルバーウィークはセンス爆発しすぎでは?(腹筋)危うく持ってかれるところでした🤣