世界で一番スゴくて大嫌いな家族(脚本)
〇空
〇国立競技場
〇競技場の通用口
ジュンヤ「やべ、始まってる!」
〇野球場の座席
ジュンヤ「前、失礼します!」
もの凄いスピードだァ!
〇競技場のトラック
第98回ファミリンピック!
第1種目”知育”に挑むは
先陣を担うスーパーママ!
驚異の技で玉葱を八つ裂きにーッ!
〇野球場の座席
ジュンヤ「玉葱?」
ジュンヤ「前回は“うどん”だったよな」
解説ジョニー「うどんは喉ゴシがよく量も稼げる」
解説ジョニー「だが反面」
解説ジョニー「ギネス記録も尋常ではない」
「ファミリンピックはギネス基準の加点式」
有識者ロバートソン「種目毎に記録は採点され」
有識者ロバートソン「それは”世界”に近いほどより高くなる!」
解説ジョニー「錦織家のネックは”徳育”だ」
有識者ロバートソン「カレーが最後どう影響するか」
「この勝負」
「見ものだな・・・!」
ジュンヤ「楽しそうっすね」
〇競技場のトラック
「『ファミリンピック☆ワールドレコーズ』」
解説ジョニー「少子化に伴う 『家庭教育の強化』という理念から」
有識者ロバートソン「新たに誕生した”世界一への挑戦”」
「競うのは」
「”家族の絆”」
有識者ロバートソン「最初はTV番組の企画だった」
有識者ロバートソン「教育における5つの柱」
有識者ロバートソン「知育・体育・才育・食育・徳育」
有識者ロバートソン「これらを得点化して 繋げる事で競技とした」
解説ジョニー「そして”ある家族”の登場により」
解説ジョニー「ギネス記録とリンクし」
解説ジョニー「その熱狂は世界へと伝播した」
「そう」
解説ジョニー「かつて錦織家は5種目中──」
有識者ロバートソン「4種目でギネス記録を塗り替えた!」
解説ジョニー「競技人口の激増により その記録はすぐ破られたが」
有識者ロバートソン「未だ1つだけ」
「”不動の記録”を防衛し続けている」
有識者ロバートソン「人参!?」
解説ジョニー「まさか今回の料理は──」
『カレーライス』だァーッ!
〇野球場の座席
ジュンヤ「あれアイツどこだ?」
ジュンヤ「せっかく応援に──」
有識者ロバートソン「カレーは粘度があり冷めにくい」
解説ジョニー「記録を狙うには温度が問題か」
ジュンヤ「あ、いた」
「”キーマン”の登場だ!」
〇競技場のトラック
ワタル選手ッ!
どうやら今回も”大トリ”だ!
解説ジョニー「その性質上 ”徳育”の選手はアンカーとなり」
有識者ロバートソン「全種目をサポートしなくてはならず」
「最も過酷で重要なポジションだ」
さぁ完成していく大量のカレー!
ギネス記録にどこまで迫れるか!
一方のワタル選手は──
ご飯を“何か”によそっている?
あれは・・・ま、まさか──
便器だァ──ッ!!
カレーを!!
便器に入れている──ッ!!
〇野球場の座席
「・・・」
ジュンヤ「帰ろうかな」
解説ジョニー「待て」
解説ジョニー「よく見ろ・・・あの便器」
有識者ロバートソン「タイヤがある!?」
ジュンヤ「タイヤ?」
「”才育”であの競技をやる気か・・・!」
〇競技場のトラック
ワタル「よしッ!」
ワタル「満タンだ!!」
ワタル「頼むぞ兄貴ッ!」
ケンタロウ「ォォオオオッ!!」
ケンタロウ「先に行ってろォ!」
「任せた!」
ケンタロウ「シャァアアアッ!!」
上げたァーッ!!
解説ジョニー「第2種目は“体育”」
有識者ロバートソン「運動系のギネス競技に挑戦し」
有識者ロバートソン「その記録に応じた得点が加算される」
解説ジョニー「便器を担いで100m走か」
解説ジョニー「だがタイヤがあるということは おそらく原動機も搭載しているはず」
有識者ロバートソン「相当な重量だろう」
「導き出される次の”才育”は──」
「『モーター付きトイレ最速記録』」
※実在する競技です
なんて戦略だーッ!
次の才育で使う車両を担ぐ事で
体育の競技と並行する荒業ーッ!
解説ジョニー「力に定評のある ケンタロウだからこそ可能な構成だ」
その先で待つは──
有識者ロバートソン「アツヒロは乗り物のエキスパートだ」
有識者ロバートソン「今まで芝刈り機やコタツなど」
有識者ロバートソン「出力のある改造車だった」
有識者ロバートソン「今回はなぜトイレを・・・?」
解説ジョニー「錦織家の一番の強みは」
解説ジョニー「”食育”だ」
解説ジョニー「収納力のある車体に液状の料理を入れ」
解説ジョニー「大食いに備えて冷ましながら走る!」
有識者ロバートソン「より最適化した競技構成で」
有識者ロバートソン「食育での制限時間に余裕が生まれる!」
解説ジョニー「リレーの”バトン渡し”を極めたんだ」
「完璧なプラン・・・!!」
ジュンヤ「嬉しそうっすね」
ワタル「父さん!」
アツヒロ「今のうちに“考える”んだ!」
ワタル「あ、あぁ!」
ジュンヤ「ワタルー!頑張れよー!」
ワタル「ジュンヤ」
アツヒロ「負けられんな!」
ワタル「当然さ!」
もう
ウンザリなんだ
ケンタロウ「オラァ!!」
150キロは優に超える
『カレー入りトイレカー』を担ぎ
100メートルを走り切りました!
なんとギネス記録2位のタイムだァー!!
アツヒロ「死ぬ気で掴れ!」
ワタル「フタは大丈夫なんだろうな!?」
「わからん!!」
〇国立競技場
〇大型ホール
「・・・」
アツヒロ「後悔はないか」
ワタル「・・・うん」
──もう嫌だ!
〇ファミリーレストランの店内
ケンタロウ「何故だ!このままでいいのか!?」
ワタル「俺達は」
ワタル「兄貴と違うんだ!」
ケンタロウ「同じ家族じゃないか!」
サツキ「家族なら」
サツキ「少しは私の気持ち考えてよ!」
ケンタロウ「サツキ」
サツキ「大食いだって言われて」
サツキ「喜ぶ女子いる!?」
サツキ「私だって好きな人くらい・・・いるの」
サツキ「世界一なんて!」
サツキ「思われたくないッ!」
ケンタロウ「お前にしかない”魅力”だ」
ケンタロウ「きっと理解してくれる人が」
ワタル「一緒にすんな」
ワタル「”恵まれた”人間とは違うんだ」
ケンタロウ「ワタル」
〇競技場のトラック
ワタル「俺には何もない」
ワタル「料理も出来ない、運転も出来ない 力もなければ、大食いでもない」
ワタル「”何もない”から」
ワタル「アンカーで」
ワタル「いつも俺のせいで失敗」
ワタル「俺のせいで」
ワタル「”新記録”」
〇雷
ギネス記録
『失敗回数』世界一の家族
〇ファミリーレストランの店内
ワタル「俺の気持ちが分かるか」
ワタル「ダメなヤツ世界一だと後ろ指を指され」
ワタル「頑張って頑張って」
ワタル「それでも何も成し遂げられず」
ワタル「顔も名前も知らない どっかの誰かにバカにされて」
ワタル「アンタに分かるのかよ」
ワタル「笑われる人間の気持ちが分かるのかよッ!!」
ケンタロウ「・・・」
〇学校の屋上
ジュンヤ「本当に辞めんの」
ワタル「・・・どうせ」
ワタル「笑われるだけ」
ジュンヤ「コレ見てみ」
〇競技場のトラック
記録更新ならずッ!
ついに錦織家と並びました!
『失敗回数』世界一!
ニューヒロイン!
エリカ・グローリーッ!!
〇学校の屋上
ワタル「・・・」
ジュンヤ「めちゃめちゃ可愛いのにな」
ジュンヤ「次はこの娘が笑い者か・・・」
ワタル「いやそれは」
ジュンヤ「逃げて押し付けるのは違うんじゃね?」
ジュンヤ「意識してっかなぁ」
ジュンヤ「会場で会うかもなー」
ジュンヤ「同じ目標に向かって」
ジュンヤ「頑張るうちに」
ジュンヤ「ライバルから恋が芽生えたり」
「しちゃったりな~・・・」
〇女の子の部屋
「姉ちゃん!」
ワタル「”勝って”終わろう」
サツキ「何よ急に」
ワタル「きっとその方が」
ワタル「好きな人も振り向いてくれる」
ワタル「なろう!一緒に!」
ワタル「”世界一”に──」
〇巨大ドーム
〇競技場のトラック
現れました錦織家ーッ!
第一会場から第二会場までの直線距離!
そのタイムは──
ワタル「おぇ」
アツヒロ「本番はこれからだぞ!」
ワタル「誰だ最初に 便器に原動機積んだバカは」
ギネス記録4位タイーッ!
汚名返上となるか錦織家ッ!
アツヒロ「父さんは”おかわり”に戻る!」
アツヒロ「『世界一』は」
アツヒロ「お前にかかっている!」
アツヒロ「頼んだぞ!」
もうウンザリだ
”世界一ダメな奴”は・・・!
第4種目“食育”
挑むは錦織家のアイドル!
「・・・」
サツキ「想像を超えてくる完成度・・・」
ワタル「やるっきゃない姉ちゃん」
サツキ「カレーならイケるとか」
サツキ「言わなきゃ良かった」
ワタル「これで終わらせよう」
ワタル「姉ちゃん」
サツキ「ワタル・・・?」
〇競技場のトラック
〇競技場のトラック
あの娘の“目標”になるんだ
ワタル「いくよ!姉ちゃんッ!」
サツキ「う、うん!」
さぁワタル選手!
おもむろに取り皿を構え──
唸る姉弟の
コンビネェーショ──ンッ!!
椀子蕎麦のように
カレーライスが消えていくーッ!
ワタル「終わらせるんだ!」
サツキ「任せ──」
「頑張れワタルーッ!」
ワタル「え?」
サツキ「ジュンヤ君」
バカな
ワタル「ちょ、ウソでしょ!?」
サツキ「なんの事かしら」
ワタル「ギネス級のしらばっくれ方だなッ!」
ワタル「ジュンヤァァアア!!」
ジュンヤ「おぉ!ワタ──」
ワタル「帰れェ──ッ!」
ジュンヤ「はぁ!?ふざっけんな!」
ワタル「うるせぇー!」
ワタル「受け入れ難いモノが渋滞してんだよォ!」
ワタル「一人っ子のお前には分からないッ!!」
ジュンヤ「意味わかんねぇわッ!」
一体どうしたーッ!
サツキ選手が完全に固まってしまったァ!!
ワタル「くっ、このままでは」
諦めるのか?
諦めないで──ッ!!
〇野球場の座席
〇競技場のトラック
ジュンヤ「来てたんだ」
ワタル「世界一に」
ワタル「なるんだァァアアッ!!」
ジュンヤ「いけー!ワタルーッ!」
ワタル「おぅ」
サツキ「無理よ!アンタの胃じゃ」
ワタル「俺がやるんだッ!」
サツキ「ワタル」
ジュンヤ「ワタル」
サツキ「もうやめて」
サツキ「お願い!もう──」
ジュンヤ「サツキさんッ!!」
サツキ「えっ!?」
ジュンヤ「お願いします!」
ジュンヤ「ワタルを、ワタルを──」
ジュンヤ「助けてくださいッッ!!」
サツキ「交代よ」
ワタル「え」
サツキ「私に」
サツキ「“便器”を渡しなさぁ~~いッ!!」
”直”でいったァ──ッ!!
ワタル「姉ちゃん!!」
ワタル「JKが便器ダイレクトはヤバいよ!!」
ジュンヤ「いけーッ!サツキさーんッ!」
ワタル「煽るなバカーッ!」
ワタル「やめてくれ姉ちゃ──んッ!」
このままでは
姉の“女”が終わる
ワタル「見るな──ッ!!」
〇野球場の座席
解説ジョニー「身を呈して」
有識者ロバートソン「姉の尊厳を守った」
「なんて美しい姉弟愛」
なんか逆に背徳感がァ──ッ!!
〇競技場のトラック
アツヒロ「2人共!おかわりだ!」
ワタル「父さんありがとう絶対許さねぇからな!!」
アツヒロ「どういう感情!?」
最後まで諦めるな錦織家───ッ!!
〇巨大ドーム
タイムア──ップ!
〇コンサート会場
アナウンサー神宮寺「第98回ファミリンピック!」
アナウンサー神宮寺「いよいよ最終種目」
アナウンサー神宮寺「”徳育”ですッ!」
挑むは錦織家次男!
ワタル選手ッ!
徳育は
これまでの4種目を振り返り
家族への”愛”を言葉にして
芸術点を加算します!
さぁ出るか!?
”世界一”!!
嫌々だった
だから余計に
何も言えなかった
家族が
嫌いだった
でも
家族のおかげで
世界一に
ワタル「みんな!」
ワタル「俺は──」
「ままー」
ユリア「おなかすいたー」
エリカ「もう少しで終わるから」
エリカ「我慢しなさい」
すごく
お若く見えますね
〇空
新記録!
”更新”だァ──ッ!!
こんばんは!
ええー!カレーと?便器を?なんかよくネタ画像とかで見かけるけどこれをお話となって目撃する日が来るとは...
衝撃のネタに動揺しました!
流れるようなアニメ演出、勢いが凄かったです👍
一目惚れの相手が子持ち、、、残念😂
アノベ作品、ようやく3作目、拝見しましたが…なんてものを見てしまったんだぁ………。まず、表紙しか見てなかった者にとって、その2人解説と有識者なんかいっ!でまず暴れましたが、JK✕カレー✕便器なんて『混ぜるなキケン!』…なことをぉ(他の方のコメントでも散々言ってますが)。
笑って、悲鳴上げて、切なくなって…途中からもう感情がバグりました…。
すっごく新しい競技を見させていただきました!!!!!!!!!!!!!(≧∀≦)
あぁ、、、お姉ちゃんの恋が上手くいきますように!!!!!!!(恋愛ネタ大好き人間です)