エピソード1(脚本)
〇男の子の一人部屋
加納章文(今夜はラップノベル大賞の〆切前夜だ)
ラップノベルは、登場人物がみんなラップでしゃべる新感覚の小説ジャンル
大賞を獲れば、ラップミュージカル化が約束される
ブロードウェイでの上演も夢じゃない
・・なんて、真に受けていいかどうかは微妙だけど
とにかく大賞獲得を目指した俺の小説は、佳境に近づきつつあった・・
だが気になるのはアイツだ!
〇大教室
俺の手強いライバル、天野才介!
高校時代から、様々な文学賞のコンテストで競いあってきた
しかも、進学先は同じ大学の文学部という偶然!
ばかりか、同学年の柊玲香をめぐって恋の三角関係の真っ最中!
アイツにだけはゼッテー負けられない!
〇男の子の一人部屋
と、SNSでメッセージが届いた!
加納章文(玲香ちゃん!)
柊玲香「もうすぐ大賞の〆切ね? 頑張ってる?」
加納章文「うん。今回はかなりの自信作さ」
柊玲香「ホントに? スゴ~い」
加納章文「ありがとう!」
柊玲香「・・こないだのデートのお誘いだけど」
柊玲香「・・行ってもいいよ。 章文くんが大賞獲れたら」
加納章文「ホ、ホントに!?」
こ、これは勝つしかない!
どんな手段を使っても
加納章文(とは言え、敵は天才の才介だ!)
加納章文(作品には絶対の自信があるけど、才介が上回ってたら勝てない)
加納章文「なんとか才介の足を引っ張る方法はないか?」
加納章文「あまり時間はない。 夜明けの〆切りまであと7時間」
五里霧中のまま、ネットで検索を始めた
奴を蹴落とすネットサービスは?
むちゃな願望を叶えるヒントを探した・・
加納章文「なにコレ!」
「カマゾン」で「らんぷの魔神」というサービスを見つけた
魔神はタスクを3件まで実行します。
制限時間は6時間。
さあ、いますぐ願いを叶えましょう
加納章文「スゲー怪しい! 販売元は中華系?」
加納章文「どうする? 払えない額じゃない。でも」
まさかと思いつつ注文した。
すぐ「いそいそ便」で商品が届いた
加納章文「て、牛肉じゃん!?」
らんぷの魔神「らんぷ・・牛のお尻のあたりの肉ですけど・・の魔神でござる。 何なりとお申し付けくだされ」
加納章文「そっちの?」
らんぷの魔神「さよう。 他にリブロースの魔神、サーロインの魔神もおりまする」
加納章文「・・ま、いいか」
加納章文「じゃ、ラップノベル大賞を獲らせてくれ!」
らんぷの魔神「実行できるのはタスクであって、ミッションではござらぬ」
らんぷの魔神「賞獲得には作品完成、選考委員ひとりひとりの意思変更など、複数タスクの達成が必要でござる」
らんぷの魔神「実行可能な3つのタスクだけでは、達成できませぬ」
加納章文「じゃ、じゃあ。 才介の執筆を遅らせてくれ」
〇一人部屋(車いす無し)
ふいに才介の部屋の映像が浮かび上がった
才介はパソコンに向かっていたが・・急に動きが遅くなった
らんぷの魔神「スローモード化を実行しました!」
天野才介「か、身体が、はや、く、うご、かせ、ない・・」
加納章文「やったあ! これで才介を阻止できる」
〇男の子の一人部屋
と、異変が起こった!
加納章文「お、重い! 手が動かせない」
気がつくと、右手の上に人形サイズのおじいちゃんが載っていた!
らんぷの魔神「こ、子泣き爺!」
〇一人部屋(車いす無し)
天野才介「ふっ、ふっ、ふ」
加納章文「まさか!」
天野才介「ホ、コ、天・・」
まだるっこしいので要約すると、才介もホコ天市場で、妖怪サービスを使っていたのだった
加納章文「汚いぞ! 姑息な手段で邪魔するなんて、恥を知れ!」
〇男の子の一人部屋
加納章文「魔神、子泣き爺をやっつけろ!」
らんぷの魔神「妖怪への攻撃には、能力レベル10以上が必要でござる」
らんぷの魔神「サーロインの魔神なら可能でござる。 料金は150万円からとたいへんお安くなっておりまする」
加納章文「全然、お安くな~い!」
加納章文「くっそお。・・まてよ」
加納章文「魔神、ホコ天市場のユーザーサポートにクレームだ」
加納章文「御社の商品で、迷惑行為を受けています。 即刻、中止させてください って」
ホコ天市場が即反応した。
「このたびはご迷惑をおかけしてたいへん申し訳ありませんでした・・
いただいたご意見をもとに、今後とも当社は・・」
子泣き爺は姿を消した
〇一人部屋(車いす無し)
天野才介「汚、い、ぞ・・」
加納章文「卑怯者でノロマな間抜けめ! もう俺の勝利は確定だ」
天野才介「・・な、ん、て、ね。 甘、い、ぞ、章、文」
デ○○○ロ「おまえの時間を飛ばした。 〆切まで残り時間はあと数分だ」
加納章文「その能力! 「○○○○の△△な□□」のまるパクリじゃ?」
才介が召喚していたキャラは、完全に著作権アウトな名前とビジュアルだった!
(だから見せられない!)
加納章文「こんな著作権違反は許されない」
だが才介は
「○木○○彦先生とはライセンス契約済なので問題なし!」
と、超ゆっくり言い放った
天野才介「実、は、も、う・・」
既に才介は作品を書き上げていた。
すべては俺を油断させる罠だった
〇男の子の一人部屋
加納章文「なんとかできないのか?」
らんぷの魔神「時間切れでサービス終了でござる」
加納章文「万事休すか・・」
らんぷの魔神「キャンペーン特典を忘れていたでござる」
らんぷの魔神「飲むと百倍早く動けるようになる加速剤でござる。いまなら年間契約がナント・・」
魔神が言い終わる前に、俺は薬瓶をひったくって飲んだ!
百倍になった時間を使って、俺は作品を書き上げ、〆切前に投稿できた!
〇川沿いの公園
そして結果発表の日がやってきた!
加納章文「結果は・・」
落選だった・・
講評は・・
そもそも文体にリズム感がない!
感性が昭和!
おやぢくさい、古臭い!
才介の作品も異口同音に酷評!
玲香は・・
大賞を受賞した有名ラッパーと婚約して、アメリカへ旅立った
あの前夜のメッセージは、どうやら俺たちを潰し合わせるための罠だったらしい
加納章文「ざけんなよ、クソ女! 次回はもっと上の賞を獲ってやる!」
俺の新しい戦いの日々が始まった!
~ おわり ~
テンポが良くておもしろかったです!
お互い足を引っ張り合っていますが、肝心のネタはどうなってるんでしょうか。笑
ランプに笑いました!それ?みたいな!
大賞を取るために、必死に頼った結果がこれ…。
可哀想というよりは、自力で頑張れって応援したくなりました!
ラップ…韻を踏むことはあまり無いですが、〆切間に合わずハラキリ〜みたいな感じでしょうか笑
大切な日の前夜だからこそ、藁にもすがる思い、、、(笑)主人公の素直な思いがとても楽しかったです。話しの展開もよくて、最後まで楽しかったです。