明日なんて来なければいいのに(脚本)
〇時計
Take 2
2021/12/10
15:11
ユリ(──遠足も学園祭も マンガや新曲の発売日も)
ユリ(前日のほうが楽しみだったりしない?)
〇教室の教壇
「・・・ユリ」
「ユリってば!」
ヒナ「聞いてる? どしたん、ボーっとして」
ユリ「・・・え~っと、なんだっけ」
ヒナ「大学生の従兄弟(イトコ)が いるんだけどさ~」
ヒナ「このあと遊びに誘われてて 良かったら友達も一緒にどう? って」
ユリ「ごめん、今日は早く帰りたいんだ」
ヒナ「あ、明日だっけ ハルキくんとの初デート」
ヒナ「じゃ、私も明日は空けとくよ 反省会でも残念会でも付き合ったげるし」
ユリ「なんで失敗する前提かなぁ!」
〇ポップ2
──中学の時から片想いしていたハルキ
高校は別々になっちゃったけど・・・
思いきって電話して、映画に誘ってみた
〇綺麗な一戸建て
ユリ「その約束の日が、明日の土曜日──」
〇女の子の部屋
今日は12月10日・・・
ユリ「今年のクリスマスは 彼女としてハルキと過ごしたい・・・」
〇綺麗なキッチン
ユリの母「ユリ、冷蔵庫にあなたの好きな モンブランがあるわよ」
ユリ(お腹まわりがちょっと気になるし、 好物のケーキも今日はガマン・・・)
〇白いバスルーム
お風呂であれやこれやと
ボディケアして──
〇女の子の部屋
ユリ「明日の服は、 これでイイよね♪」
ユリ「駅前広場で10時に待ち合わせだから、 えーっと・・・」
ユリ「6時には起きて、軽くメイクして、 それから髪をセットして── 朝食はヨーグルトとかでいいや」
ユリ「お肌のためにも、早めに寝よう おやすみなさーい」
〇女の子の部屋
〇時計
Take 3
2021/12/10
15:11
〇教室の教壇
ユリ「──えっ」
ユリ「学校? え、なんで!?」
ヒナ「でね~、イトコがこのあと一緒に レイブリッジに夜景見に行こうって──」
ヒナ「ユリ、聞いてる?」
ユリ「あ、う、うん ・・・今日って、金曜日・・・?」
ヒナ「そだよ~ だから放課後、遊びに行かないかって」
ヒナ「あ、明日ハルキくんとの初デートか ゴメンゴメン」
?????
〇女の子の部屋
ユリ「これは── デジャヴってやつ?」
ユリ「明日のデートが楽しみすぎて 変な夢でも見たのかな」
ユリ「準備もしたし、今度こそ早く寝なきゃ」
〇女の子の部屋
〇時計
Take 4
2021/12/10
15:11
〇教室の教壇
ユリ「ふええぇぇぇっ!?」
ヒナ「ねぇユリ、私のイトコが──」
〇綺麗なキッチン
ユリの母「ユリ、冷蔵庫にモンブランが・・・」
〇女の子の部屋
ユリ「同じ金曜日、同じような会話・・・」
ユリ「これって、 時間がループしてるってやつ!?」
ユリ「ふざけんなっつーの! こっちは明日デートなのに!」
ユリ「・・・!」
ユリ「眠るとまた、 今日の放課後に戻っちゃうのなら いっそのこと──」
〇コンビニ
ユリ「あそこのコンビニで 日付が変わるまで時間つぶして──」
〇オープンカー
────!!!?
〇オープンカー
〇オープンカー
〇教室の教壇
Take 5
〇教室の教壇
ユリ(ウソでしょ なんなのあのクルマ)
ユリ「飲酒? 居眠り? あのクソ運転手め!!」
ヒナ「いや、居眠りはアンタっしょ ところで──」
ユリ「明日デートだから ゴメンねっ」
〇綺麗なキッチン
ユリの母「ユリ、冷蔵庫に・・・」
ユリの母「って、もう食べてる!?」
ユリ(もういいや どうせまた戻っちゃうんだし)
ユリ(それにしても、運命の神様か悪魔か なんだか知らないけど)
ユリ(事故に遭わせてでも あたしをデートに行かせたくないワケ?)
〇教室の教壇
Take 6
ひとつ、思い付いた
このまま家に帰らなければ・・・?
〇教室の教壇
誰もいなくなるまで
ロッカーに隠れてやり過ごしてみた
ユリ「意外と何とかなるもんだね 夜のトイレはちょっと怖かったけど・・・」
ユリ(ぜったい、明日 デートに行くんだ・・・!)
〇教室の教壇
ユリ「・・・」
2021/12/11
09:24
朝練か練習試合か、運動部の生徒の声で
あたしは目を覚ました
ユリ「やった、ちゃんと土曜日の朝だ!」
〇駅前広場
制服だし、すっぴんだけど、
この際ゼイタクは言えない
ユリ「ハルキ、どこだろ・・・ 電話してみよっと」
女性の声「・・・もしもし・・・」
ユリ「えっ、 あ、あの、ハルキくんは・・・」
女性の声「ハルキの、お友達・・・? ハルキの母ですが・・・」
ハルキの母「ハルキはゆうべコンビニに行く途中 飲酒運転の車にはねられて・・・」
ハルキの母「明け方に、息を・・・ う、うぅっ・・・」
〇駅前広場
ユリ「そんな、ウソでしょ・・・」
ユリ(・・・)
神様や悪魔じゃない、あたしだ
きっと、最初にあたしが願ったんだ
昨日に戻りたいって
なのにその記憶も理由も忘れちゃったまま
何度も無駄に繰り返して・・・
ユリ「・・・」
ユリ「『次』は、ちゃんと覚えとかなくちゃ」
〇時計
ユリ「あたしが、ハルキを助けるんだ・・・!」
Take 7
〇教室の教壇
〇女の子の部屋
ユリ「ハルキ? 今夜、ぜったい外に出ないで、ね?」
ハルキ「えっ でも、ヘアワックス切らしちゃってさ」
ハルキ「大丈夫、 ちょっとコンビニ行くだけだし」
ユリ「・・・」
ユリ「もうっ」
ユリ(でも、今日を繰り返してる限り ハルキは死なない・・・)
ユリ(あたしが先に轢かれて そのまま戻らなければ── ハルキは死なずにすむ?)
──『じゃ、土曜の10時に駅前広場で』
ユリ「ううん、好きな人との約束ぐらい 守れなくってどーする!」
〇教室の教壇
Take 8
ユリ(そう言えば・・・)
ユリ(どうしていつも 戻るのがこの時間なんだろ?)
ヒナ「ねぇ、ユリ あたしのイトコがさ~」
ユリ「ひょっとして・・・」
ユリ「そのイトコって 赤いオープンカーに乗ってない?」
ヒナ「えっ、うん」
ヒナ「新車買ったから ドライブ行こうって・・・」
ユリ「連れてって!」
〇オープンカー
ヒナのイトコ「やあ キミがヒナの友達──」
ユリ「お前かーっ!!!」
ヒナのイトコ「ぐふっ!?」
ユリ「飲酒運転ダメ、ぜったい!」
〇駅前広場
こうしてあたしは
無事に初デートの日を迎えた
ハルキ「よっ、ユリ」
ユリ「おはよ、ハルキ♪」
ハルキ「あはは、ユリ 頭の後ろの寝グセすごいな!」
ユリ「ふえぇっ!?」
ユリ(しまった ループ脱出で頭いっぱいで・・・!)
〇時計
ユリ「あーもうっ もう一度やり直したい・・・!」
Take ...?
E N D
タイムリープとその理由、ユリの思いやその行動の変化など、緻密に計算されて描かれているので、ラストまで楽しく読ませてもらいました。
時間のループから抜け出すには、車がポイントだったとは。
でも、彼女も何度も繰り返して、やっと正解に辿り着けてよかったです。
彼も無事でよかった!
確かに何でも当日よりも前日の方がワクワクや楽しみが大きい気がします!筆者さんの着眼点が素敵だなと思いました!そしてオチまで可愛くてほっこりしました!