隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして

内村一樹

第4話 今回のお願い(脚本)

隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして

内村一樹

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〇教室
大心池須美「それで? 手伝ってほしいことって何?」
黒光花楓「話が早くて助かるよ~ 具体的には須美ちゃんの予想通り 亜美ちゃんの事なんだけど」
黒光花楓「彼女、このまま放っておくと危ないんだ」
大心池須美「危ない? それは、またクラスに襲撃をするかもしれないってこと?」
黒光花楓「半分正解かな。 確かに、彼女はまた同じことをすると思う」
黒光花楓「だけど、それよりも前に、彼女自身の身に危険が迫ってるんだよ」
大心池須美「佐藤の身に?」
大心池須美(てっきり、佐藤が加害者になるような話を想像してたけど、違うってこと?)
大心池須美(・・・花楓がそう思うってことは、それなりの理由があるってことよね?)
黒光花楓「そそ、というワケで、続きは歩きながらしようよ」
  そう言った彼女は、躊躇うことなく廊下に踏み出して行った。
大心池須美「っていうか、自然に思考と会話してるし・・・ はぁ。まぁ良っか」

〇まっすぐの廊下
黒光花楓「そういえばさぁ、スーミィって呼んでも良い? 良いよね?」
大心池須美「え? 嫌なんだけど」
黒光花楓「またまたぁ~。 そう言わずに。 内心、跳んで喜んでるじゃん」
大心池須美「喜んでないから!!」
黒光花楓「素直じゃないなぁ・・・」
黒光花楓「で、話は戻るんだけど、スーミィにはこの後、写真を撮って欲しいんだ」
大心池須美(普通にスーミィって呼んでるし・・・ そんな気軽にあだ名をつけないで欲しい)
大心池須美(そういうのは、ちゃんとした友達の間柄になってから使うものでしょ?)
黒光花楓「多分今頃、ある場所にある人物がいるはずなんだよねぇ~」
大心池須美「完全に無視する気じゃん・・・ で、何? 写真?」
黒光花楓「そう。それが今回のお願いだよ!」
大心池須美「ちょっと待って、今回の・・・?」
大心池須美(聞き捨てならないことをサラッと言わないで欲しいんだけど・・・)
黒光花楓「ワ、ワタシとスーミィはこれからも長い付き合いになるはずだからね。 腹を割って話した仲だし!!」
大心池須美「腹を割った覚えが無いんだけど?」
黒光花楓「そりゃそうでしょ。 ワタシが勝手に切開したようなモノなんだからね」
大心池須美「勝手すぎる・・・」
黒光花楓「でしょ? ワタシもそう思うよ。 でも、スーミィは色々と文句を言いながら着いて来てくれるよね」
黒光花楓「そんなスーミィだから、私は仲良くなれるかなって思ったんだよ?」
大心池須美「本音を言えば、帰りたいけど・・・」
黒光花楓「けど・・・ねぇ やっぱりスーミィって、物好きだよね」
大心池須美「うるさいなぁ」
黒光花楓「ふふふ」
大心池須美「で? わざわざ図書室にやって来たのはどうして?」
  廊下の突き当りに見える扉を目にしながら、私はそう問いかけた。
黒光花楓「まぁまぁ、話は中に入ってからだよ~」
  そう言った花楓は、どこか楽しそうに図書室の中へと駆け込んでいく。
大心池須美(図書室で写真ねぇ・・・ まぁ、騒がしくしなければ大丈夫か)

〇図書館
黒光花楓「ほらほら、スーミィ!! どこかに目当ての人がいるから、探してね!!」
大心池須美「ちょ、うるさいって 目立つじゃん」
黒光花楓「大丈夫大丈夫! って、目当ての人を言わないとだね。 祇園寺君が、どこかにいるはずだよ」
大心池須美(花楓に大人しさを求めるのが間違ってたかな・・・)
大心池須美(まぁ、誰も私達の方を見てきたりはしてないし、早く用事を済ませて帰った方が良さそうだね)
  そう思って辺りを見渡してみるけど、祇園寺の姿はない。
大心池須美「どこにも居なさそうだけど・・・? ちょっと、花楓? 何やってるの?」
  いつの間にか私のすぐ後ろに回り込んでいた花楓が、ひそひそと声を発する。
黒光花楓「ほら、もっと右奥の、窓際の席だよ。 一人用の椅子に腰かけて、ノートに何かを書いてるはずだから」
大心池須美「・・・自分で見つけてるじゃん」
黒光花楓「てへっ」
大心池須美「いちいちイラつかせないでくれる?」
  舌を出して悪戯っぽい笑みを浮かべた花楓は、私の睨みから逃げるように、奥へと駆けて行った。
  そんな彼女の後ろ姿を見て、私は違和感を覚えた。
大心池須美(あれ? どうして誰も花楓に反応しないワケ?)
大心池須美「まぁ、考えても分からないか」
大心池須美「誰も私達に興味が無いってことだよね たぶん」
  そう考えて自分を納得させた私は、本棚の影に身を隠してる花楓の傍に向かった。
黒光花楓「ほら、居たよ」

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