超電撃!月球乙女

延田すぐる

【読切】リイザ参上! 競馬で地球征服の巻(脚本)

超電撃!月球乙女

延田すぐる

今すぐ読む

超電撃!月球乙女
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇地球
  中秋の満月──
  
  成層圏。
  
  落ちてくる宇宙船。
シルエット「こちらアストロ! 目標座標とのズレを確認! こちらアストロ!! 教官応答せよ!!」
「”機械音” ツーツーツー」
シルエット「無視かよ! もう試験は始まってるって訳ね・・・」
シルエット「あーーーーー! コリオリ力の計算ミスったーーーー!!!!!!」

〇団地
  横浜市栄区──
  K団地。
  
  尾仲家。
尾仲 チズ「麗子さんの14回忌だってのに、 あの子は遅いねえ・・・」
尾仲 豆太「父ちゃん 飲み出したら長いから」
尾仲 チズ「先に仏さんに挨拶しな」
  線香を灯す豆太。
  
  浮かび上がる綺麗な遺影。
尾仲 豆太(・・・母ちゃん)

〇雲の上
  高度10km。
シルエット「奈良は無理だな。 だから自由落下って奴は・・・」
  高度5km。
シルエット「竹も無いのかよ!まったく!」
「”機械音” 強制プロトコル発動。      卒業検定カグヤ開始──」
  みるみる小さくなる
  宇宙船アストロ号。
シルエット「痛たたたぁぁぁぁぁーー!!」

〇団地
  蓋された食事、誰もいない部屋。
  窓から飛び込む小さな光。
  
  仏壇に飾られたススキにとまる。
「”機械音” 不時着完了。      スキャニング開始──」
  豆太の母・麗子の遺影をスキャンする
  1cm程になった宇宙船。
尾仲 正敏「たぁだいまぁ〜 婆ちゃん、み、み、みず、水・・・」
  一升瓶を供える正敏。
  
  と、すすきが光る。
尾仲 正敏「なんだ麗子。 蛍まだいたのか・・・ お前は、粋だなぁ〜」
尾仲 正敏「蛍・・・?? なんだこれ?」
  眩い光から、
  現れる裸の乙女──
リイザ「・・・」
尾仲 正敏「れっ、麗子!?」
  寝ぼけながらやって来る豆太とチズ。
尾仲 チズ「あら、たまげた」
尾仲 豆太「・・・かっ、母ちゃん??」
リイザ「・・・」
  リイザに自分のジャケットを
  あてがう正敏。
尾仲 正敏「とりあえずガキは寝ろ! 婆ちゃんは風呂の準備!!」
尾仲 正敏「そして麗子! ウチらは久しぶりに夫婦の時間・・・」
尾仲 正敏「痛ててってぇ!!」
  キスを迫る正敏に
  電撃を食らわすリイザ。
リイザ「気安く触るな! 私はお前らが言う麗子ではない! 私の名は、月球乙女リイザ。 地球を征服しにきた──」
リイザ「──────」
尾仲 正敏(?)
リイザ「──────」
  突然、倒れ込むリイザ。
  リイザの手元、
  電池マークが空になっている。

〇団地
  翌朝──
  朝食を食べる一同。
  
  リイザはコンセントを使い
  充電している
尾仲 豆太「いやぁ、月の裏側に生命体がいたなんて・・・」
リイザ「とにかく!地球侵略して、 レポート出さなきゃ卒業できないんだから。 お前たち捕虜にも手伝ってもらう! いいな??」
尾仲 豆太「いいけど、僕。 今日バイトだから・・・」
リイザ「なにぃ!! おい!お前は?」
尾仲 チズ「私は、年金暮らしの老いぼれだよ」
リイザ「(しかたない)おい!お前! 変態オヤジ!!」
尾仲 正敏「誰が変態だ、馬鹿野郎!」
尾仲 チズ「暇なのは、あんただけなんだから。 あんたがこの子の面倒みなさいよ」
尾仲 正敏「暇じゃねえよ! 今日は大事なレース! 軍資金だってほらっ!」
  クシャクシャの千円札数枚を
  取り出す正敏。
リイザ「(・・・軍資金!?)気になる。 私もそのレースとやらに連れてけ!」

〇たこ焼き屋の店内
  競馬場──
  
  場内の売店で働く豆太。
尾仲 豆太(父ちゃん大丈夫かなぁ?)

〇競馬場の座席
  観戦しているリイザと正敏。
  正敏、馬券を破り捨てる。
尾仲 正敏「チクショウ! 出来レースだろ!こんなもん!」
野宮 半蔵「お客さん。 ハズレたからって良くないですよ」
尾仲 正敏「なにぃ!!うるうせえ! そういうテメエは当たったのかよ!」
野宮 半蔵「はい。 本日、全レース的中しております」
  分厚い財布を見せつける野宮。
尾仲 正敏「くそぉ!偉そうにするな!!」
野宮 半蔵「なにも殴ることないでしょう」
尾仲 正敏「うるせぇ!」
リイザ「全く、地球人ってバカよね〜 それ貸して」
  競馬新聞を取り上げるリイザ。
リイザ「データー解析開始!」
リイザ「──────」
リイザ「────」
リイザ「──」
リイザ「10-5-7・・・ 間違いない!」
尾仲 正敏「いや、それ大本命すぎるだろ」
リイザ「勝ちたいの?勝ちたくないの?」
尾仲 正敏「そりゃ勝ちたいよ!」
尾仲 正敏「おい!返せ俺の全財産だぞ!」
リイザ「倍にして返すから! 黙って待ってな!」

〇競馬場の座席
場内アナウンス「三連単。 845万1210円でした」
客「すげー大穴的中、万馬券だ!!」
リイザ「・・・なぜだ」
リイザ「なぜ? なぜ、私が・・・」
リイザ「負けたんだぁあああ!!!!」
リイザ「ちゃんと◎がついている 馬から選んだのにぃーーー」
野宮 半蔵「いやぁ、 儲かりすぎてこまりますなぁ〜」
リイザ「お前!また当たったのか?」
野宮 半蔵「もちろん! 戦術ってものがあるんですよ」
リイザ「何!?戦術だと? 今すぐ教えろ!!!」
野宮 半蔵「だから、殴らなくても〜」
リイザ「うるさい! さっさと教えろ!」
野宮 半蔵「特別ですよ・・・ その代わり2千円ください。 流石にタダでは教えられません」
リイザ「くっ。 ・・・しかたない」
野宮 半蔵(へっへっへ)

〇競馬場の座席
場内アナウンス「以上。 払戻金のアナウンスをお送りしました」
リイザ「くそおおおお!!! カスリもしなかったじゃねぇか! オッサン金!!」
尾仲 正敏「もう無いぞ! まさか、ぜんぶ賭けたのか?」
リイザ「当たり前だろ! 必勝戦術まで聞いたんだぞ」
尾仲 正敏「そんな、ホラ話あるかー! う〜俺の全財産〜〜〜」
リイザ(あの野郎〜 許せねえ!どこいった)

〇競馬場の払い戻し機
野宮 半蔵(今日は、これぐらいにしとくか)
野宮 半蔵「あっ、やばい」
リイザ「いたー!この野郎!! 待てーーーー」
野宮 半蔵「ここは、逃げ馬が勝ち」
リイザ「待てコラっ!」
野宮 半蔵「ひいいいっ!」
リイザ「よくも騙してくれたな」
野宮 半蔵「勘弁して下さい〜」
リイザ「なら、とっとと金返せ!」
リイザ「何だこれ? ただの紙切れ・・・」
野宮 半蔵「財布をパンパンにした方が、 説得力が増すかと・・・」
リイザ「貴様よくもーーー!!!」
野宮 半蔵「堪忍してくだせぇーーー!!」
リイザ(!?)
客達「きゃーー! 助けてーーーー!!!」

〇たこ焼き屋の店内
尾仲 豆太「すっすいません!!!」
  豆太の目の前に、
  モツ煮を被ったチンピラ。
南久世 ツケル「おいっ豆太! なにしやがんだ!熱いじゃねぇか!!」
鏡勝 ユスル「そうだ! 兄貴は、ただでさえ猫舌なんだぞ!!」
南久世 ツケル「タダで済むと思ってんのかコラ!」
尾仲 豆太「ひいいいぃ」

〇競馬場の払い戻し機
リイザ「・・・」
尾仲 正敏「あいつら、またかー!」
リイザ「おい、オッサン! 待てよ!」
野宮 半蔵(今のうちに・・・サヨウナラと)

〇たこ焼き屋の店内
尾仲 豆太「すみません。 クリーニングしますので」
南久世 ツケル「クリーニング!? 俺のマルマーニがそんなんで済むか!」
鏡勝 ユスル「そうだ! ちゃんと手洗いしろ!!」
尾仲 正敏「おい!お前ら!! またウチのセガレに、 ちょっかいかけやがって!!」
鏡勝 ユスル「ひっいい!!兄貴! マサがいるなんて聞いてねえよ」
南久世 ツケル「焦るな、任しとけ」
尾仲 正敏「何ごちゃごちゃ言ってんだよ! さっさと帰らねえと、 痛い目あわせるぞ!」
南久世 ツケル「マサさん。いいんですかね〜。 ウチのオヤジに借りた3万。 今すぐ、ここで返してもらえますか?」
尾仲 正敏「!!」
鏡勝 ユスル「そうだ!早く返せ!」
尾仲 正敏「・・・そんな勘弁してください。 軽い冗談ですよ! あんな奴の事、 息子と思った事は、一度もありません」
尾仲 正敏「煮るなり焼くなり、 どうぞお好きにして下さい」
尾仲 豆太(情けない・・・)
南久世 ツケル「おい!豆太。聞こえたな! さっさと面貸せ!」
尾仲 豆太「ひぃいいい!!」
  ツケルが殴ろうとした、
  その瞬間———
???「やめろぉおおお!!!」
  現れたのは──
  身体中に電気を纏ったリイザだ!!
リイザ「豆太はウチの捕虜だ!!今すぐ離せ」
鏡勝 ユスル「なんだお前!兄貴に向かってぇ!!」
  リイザに襲いかかるユスル──
  リイザから、
  放出される閃光弾!
鏡勝 ユスル「あっ!ぱっとさいでりあ・・・」
リイザ「次は、お前だ!」
南久世 ツケル「いや、これには訳があって・・・ 俺ら、お友達だよね。 豆太クン! そう、なかなかステディな関係で————」
リイザ「今日は、 競馬に負けてイライラしてるんだ! あんまり怒らせるなよーーー!!!」
南久世 ツケル「やっや、やめてくれーーー」
リイザ「これでもーくらえぇええ!!!」
「覚えとけよ————」
  星になるツケル。
  兄貴待って〜〜
リイザ「これにて、 地球征服、一件落着──」
尾仲 豆太「リイザさん!!」
  リイザの手元。
  電池マークが空になっている。
尾仲 豆太(リイザさん・・・)

〇住宅地の坂道
  帰り道──
  
  リイザを背負う正敏。
  脇を歩く豆太。
尾仲 正敏「にしても、 宇宙人ってほんと強いんだなぁ」
尾仲 豆太「・・・ねえ」
尾仲 正敏「ん?」
尾仲 豆太「母ちゃんも強かったのかな・・・」
尾仲 正敏「・・・」
尾仲 豆太「・・・そんな訳ないか」
尾仲 正敏「・・・強かったよ」
尾仲 豆太「えっ」
尾仲 正敏「だって・・・ お前を産んだんだからな」
尾仲 豆太「・・・」
  ぐうぅ。
  正敏のお腹が鳴る。
尾仲 正敏「にしても、コイツのせいで、 またスッカラケッチンだよ」
尾仲 豆太「あっ、廃棄の磯部焼きあるよ」
尾仲 正敏「あるなら、早く出せ!」
尾仲 正敏「あいててて、固えなこれ」
尾仲 豆太「古くなってんだから、当たり前だろっ!」
  笑い合う二人。
リイザ「・・・」
  背中で揺れるリイザの瞼が、
  薄ら開いている様に見えて———

コメント

  • リイザ最高に可愛い宇宙人ですね! 地球征服というだいそれた課題を電池切れと戦いながらこなそうとする姿がとっても魅力的でした。

  • 宇宙から地球征服に来たのに電池が切れるリイザ。競馬でボロ負けするリイザ。放電してまた電池が切れるリイザ。なんだか憎めないリイザと捕虜一家との関係がとっても微笑ましくて読了後もニマニマしてしまいました。

成分キーワード

ページTOPへ