ツクモ戦記

竜谷 晟

エピソード4(説明回)(脚本)

ツクモ戦記

竜谷 晟

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〇電車の座席
?(病院の手術室に入ったら まさか電車の中とは)
?(しかもこの電車、動いてる 一体どこまでツギハギなんだ)
ハコ「この電車の一号車の先頭まで移動しようか」
ハコ「ちなみに今は四号車ね」
ハコ「そして説明の方だけど──そうだね」
ハコ「Q&A方式でしようか」
ハコ「聞きたいことがあったらなんでも聞いて」
?(ならまずは── 前提的なことから聞いていこう)
?「この世界は、何?」
?(自分でももっと言いようがあったと思うが、正直”何?”としか聞きようがない)
ハコ「この世界はね”ゴミ箱”だよ」
ハコ「それも特大の」
  このタイミングで、ぼく達は
  三号車に移動した

〇電車の座席
  今度もまた電車の中であったが、外は雨が降っているし、いつのまにか日が落ちて夜になっている
?「ゴミ・・・・・・箱?」
ハコ「そう、ここには捨てられたものしかやってこないだからゴミ箱」
ハコ「あなたは────うーん」
ハコ「名前がないのは不便ね 思い出すまでは『ナナシ』くん って呼んでもいい」
ナナシ「う、うん 別にいいけど」
ナナシ(本当は良くはないんだけど ──今は話を進めることが先決だしね)
ハコ「うん じゃあナナシくん」
ハコ「ナナシ君は”ツクモ神”って知ってる」
ナナシ「ツクモ神────それって確か、 物に宿る妖怪みたいなものだっけ」
ハコ「そう、付喪神 あるいは九十九神」
ハコ「捨てられたものが 100年の時を経て怪異に至る という民間伝承」
ハコ「正確には少し違っていて、ツクモ神は ”人間に忘れられて100年経ったもの” がほんの僅かな確率でなるものなの」
ハコ「うーん、体感的には 5%ぐらいの確率で発生するのかな」
ナナシ「5%──」
ハコ「別に 正確なデータがあるわけじゃないけどね」
ハコ「昔は、ツクモ神はいくつもある妖怪の一種類でしかなかったの」
ハコ「けど、人類は発展しすぎてしまったの」
ハコ「人に忘れられて100年経ったもの」
ハコ「そんなもの、 ”世界には溢れるほどに大量にある” と思わない?」
ハコ「必然的にツクモ神の数も増えていった」
ハコ「だからね」
ハコ「世界は多すぎるツクモ神を ”捨てる” ゴミ箱を作ったんだ」
ハコ「そうしないと、地球という星が、 やがて」
ハコ「”ツクモ神に埋め尽くされていた” かもしれないから」
ナナシ「ちょっと待って、それって──」
ハコ「だからここはゴミ箱」
ハコ「私たちは、『世界のゴミ箱』 と呼んでいる」
ハコ「捨てられた者たちが最後に行き着く 掃き溜めだよー」
  ぼく達は三号車から二号車に移動した

〇電車の座席
ナナシ「ま、待ってほしい」
ナナシ「おかしいじゃないか」
ナナシ「何でそんな所に、ボクや君みたいな、 人間が、いるんだ?」
ハコ「────あなた 自分のこと『人間』だと 思ってるの?」
ナナシ「──え?」
ハコ「私は一度も、”自分が人間だ” なんて言ってないわ」
ハコ「あなたもそう、 ここに来れる時点で、人間のはずはない」
ハコ「私も、そしてあなたも」
ハコ「ツクモ神────だよ」
ナナシ「ぼくが、人間じゃ──」
ハコ「ない」
ハコ「絶対に」
  ピキリ
  ピキッピキッピキ
ナナシ(──落ち着け)
ナナシ(冷静に、質問を続けるんだ)
ナナシ「じゃあ、この電車やさっきまでの病院は一体何なの?」
ナナシ「何でここまで、 チグハグのツギハギなんだ?」
ハコ「・・・・・・この電車や さっきまでの病院はね」
ハコ「ある種のツクモ神なの」
ナナシ「この電車が──ツクモ神?」
ハコ「そう、何年も稼働し続け、故障し、 スクラップになって 人々に忘れられたツクモ神」
ナナシ(実物が壊れていても、 ツクモ神にはなれるのか)
ナナシ「──でもそれだと年代が合わないんじゃないか?」
ナナシ「この電車は明らかに、 百年以上前のものじゃない」
ハコ「うーん、そこのところは私にもよくわからないんだけど」
ハコ「こうゆう恒常的に使われていたツクモ神はその後も使われようとする能力があるらしいの」
ハコ「だから100年前の病院も医療器具は清潔だし、この電車の座席も埃ひとつかぶってないの」
ナナシ「使われようとする”能力”・・・・・・」
ハコ「そう、私達と違う、『人型ではない』ツクモ神はね、今でも人間のことが忘れられないツクモ神なの」
ハコ「だからつかってほしくて、いろんなところに現れる」
  そういうと少女は立ち止まって座席の椅子を撫でた
ハコ「本当に可哀想な子たち」
  次は一号車だ

〇電車の座席
ハコ「さて、時間的にそろそろ最後の質問かしら」
ナナシ「──あの怪物はなんだったの?」
ハコ「あぁ、あれねー」
ハコ「あれもツクモ神 なんだけど、私達とは少し違うみたい」
ナナシ「みたい、ていうのは?」
ハコ「うん、 あいつらは最近になって突然現れたんだ」
ナナシ「突然現れた?」
ハコ「そう、本当に突然現れてほかのツクモ神を殺し始めたんだ」
ハコ「言葉も通じず、ただ襲い掛かってくるあいつらを」
ハコ「私たちは『ツクモ獣』(ツクモジュウ) と呼ぶ」
ハコ「神でもなく、人間でもない 忌々しき、獣」
ハコ「私とお兄ちゃんはね、この辺りのツクモ獣をやっつける事を仕事にしているの」
ハコ「と、いったところで、そろそろ先頭だね」
ナナシ「────ありがとう」
ハコ「へ?」
ナナシ「まだ全然飲み込めてないけど、 君がいなかったら、多分ぼくは何も知らずに死んでいたのかもしれない」
ナナシ「だから、ありがとう」
ハコ「うん!」
ハコ「どういたしまして」
ナナシ「それと、最後にもう一つだけ、 質問してもいいかな?」
ナナシ「君の名前は?」
ハコ「あれ、まだ教えてないんだっけ?」
ハコ「ごめんごめん、私はハコ」
ハコ「カタカナでハコだよー ハコちゃんって呼んでね」
ナナシ「うん、これからよろしく ハコちゃん」
ナナシ「ところで──」
  ハコちゃんは電車の扉をムリやりこじ開けていた
ナナシ「何してんの?」
ハコ「ここを飛び降りれば近道なんだよー」
ナナシ「あの、この電車、動いてるんだけど」
ハコ「大丈夫! 私たちツクモ神は頑強にできてるから!」
ナナシ「あの、外が真っ暗で何も見えないんだけど」
ハコ「大丈夫! 見えなければ何も無いのと一緒だよ!」
ナナシ「それそっちの方が怖くない!?」
ハコ「大丈夫! これ降りたら本当すぐそこだから!」
ナナシ「そんなこと心配してな────」
  けりおとされた
「うわぁぁぁーー!!」

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