DWBH家族

りるか

第一話 落ちすぎ家族(脚本)

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〇玄関内
宗弥「ただいまー」
宗弥「あれ、靴がある」
宗弥「──ってことはまさか」

〇狭い畳部屋
宗弥「父さん!?」
晶「あぁ、ソーくん。お帰り」
宗弥「た、ただいま!てかこの時間にいるってことは・・・」
晶「あぁ、今日も落ちたぞ。69回目だ。ロックだな。ハハハッ」
宗弥「いやどこにも笑える要素ないんだけど!?何その爽やかな笑み!どこから出てくるの!?」
宗弥「69回も就職の面接落ちるの何か原因があると思うんだけど・・・」
宗弥「ご時世柄大変だろうし、息子の立場で言い難いけど、もうちょっと危機感持った方良いよ」
晶「世間も息子も手厳しいな、こりゃ」
宗弥「だから何でちょっとコメントと態度に余裕があるの!?」

〇雷
「・・・る・・・せー・・・」

〇狭い畳部屋
聖凪「ぅうぅううるっせーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「!?」
聖凪「さっきからベラベラギャーギャーうるせーんだよ、あぁ?」
宗弥「す、すみません」
聖凪「私は今、猛烈に腹が立って誰それ構わず当たり散らしたいんだよ」
宗弥(私情がすごい!!)
宗弥「てか、あの、この荒れ具合を見ますと、まさか姉ちゃん・・・」
聖凪「あぁそうだよ!!また小説のコンテストに落ちたんだよ!!!」
宗弥(やっぱりか〜)
晶「まぁまぁ落ち着いて、聖凪ちゃん」
晶「お父さんも、今落ちてきた所なんだ」
宗弥「どんな慰め方!?」
聖凪「うるせーな。私をしがないニートと一緒にすんじゃねーよ」
晶「ゔっ!しがないダメ親でごめんねっ!!」
宗弥「メンタル弱過ぎるだろ!?」
聖凪「運営と入賞者は絶対に裏で繋がってる。大賞作読んだけど1ミリも面白くなかったんだが?」
聖凪「許せない。私の作品が絶対に1番面白かった。あんな薄寒い御涙頂戴が勝つなんて」
聖凪「てか審査員は本当に全部見てんのか?あぁ?絶対に見てないだろ」
聖凪「審査室の様子、生放送でもして流せよ。それが命懸けで作品産んだ作者への誠意だろ」
宗弥(さっきからめちゃくちゃ過ぎるだろ!?)
宗弥(──って思っても、万が一にでもこれをその場で言ったら)

〇狭い畳部屋
聖凪「テメーに必死で生んだ作品が片っ端から予選すら通過しない気持ちわかんのか!?」
宗弥「危ねっ!!ってかどっから丸太!?」
聖凪「なぁ、おい。自信作が擦りもしない、名前が毎回見当たらない気持ち、わかんのか?」
聖凪「人の苦労も知らねーくせに、ふざけた事いってんじゃねーぞ」
宗弥(次は石!?最早超能力だよっ!!何はともあれ)
宗弥「す、すみませんでしたーっ!!」

〇狭い畳部屋
宗弥(──ってなるから、黙っとこ)
晶「わかる、わかるよ。聖凪ちゃんの気持ち」
晶「お父さんもね、毎回、何度も書き損じて書き上げた履歴書や」
晶「わざわざ高い交通費をかけて面接に行っても」
  残念ながら、貴殿の期待に添えない結果となりました。
  末筆ながら、落谷様の益々のご活躍をお祈り申し上げます。
晶「なんてのをメールや紙一枚で済まされるとね」
晶「腑が煮え繰り返りそうになるんだ」
宗弥「何大人気ない事を爽やかに言ってんだ!?」
宗弥「姉ちゃん間違いなくあんたの血を引いてるよ!!」
聖凪「わかるわー!お前もこっちに出向いて来いって思うよねー」
晶「それそれ!何様?って感じ」
宗弥「どんな意気投合の仕方!?なんか嫌だなこの合い方!!」

〇玄関内
「だだいま〜帰ったわよ〜」

〇狭い畳部屋
宗弥「あっ!母さんだ!!やっと帰ってきた!」
聖凪「てか選ぶ側だからって胡座をかきすぎじゃない?応募者いなかったら苦労するのそっちなのに」
晶「わかるわ〜!俺を落としたこと一生後悔すればいいのにって毎回思う」
聖凪「わかりみ深すぎ〜」
宗弥「いやいつまでやってんだっ!?」
純連「あら、随分と楽しそうにしてるわね。何の話?」
聖凪「世の中はクソって話」
宗弥「ざっくりまとめすぎだろ!?世の中への恨みつらみが強すぎる」
純連「うふふっ、そうだったの」
宗弥「それだけで流すのもどうかと思うけど・・・まぁいいや。おかえり、母さん」
宗弥「それで・・・今日はどうだったの?」
純連「それがねー。困ったことに、今回もだめだったのよ〜」
宗弥「ありゃ、マジか」
晶「残念だったね。やっぱり車の免許を取るのって難しいんだ」
聖凪「今回で56回目だもんねー」
純連「そうなのよ。いい加減に合格したいのだけど」
純連「何で免許の問題ってあんなに意地悪なのかしら?」

〇大教室
  教習所
純連(さて、今日こそ受かるわよ!)
純連(えーっと・・・『夜間は気をつけて走らないといけない。○か×か』)
純連(これは『○』ね。夜は昼間より危ないもの、気をつけないと)
純連(ふふっ。なんだか簡単だし、今回こそいけるかも)

〇狭い畳部屋
純連「──あれがまさか『✖️』だったなんて」
聖凪「えっ、何で?気をつけなきゃダメでしょ」
純連「問題はそこじゃないのよ。ポイントは「夜」という所」
聖凪「まさか・・・」
純連「そう。『昼でも気をつけなければいけないので✖️』が正解なの」
聖凪「確かにそうだけど納得いかねーっ!!」
晶「ママはとっても素直だからこういうのにすぐに引っかかってしまうんだよね」
純連「考えすぎると逆に単純だったりするし負のループだわ」
純連「落ちるのは貴方との恋だけでいいのに」
晶「ママァ・・・」
宗弥「いや何うまいこと言ったみたいになってんの!?」
宗弥「てか、こんだけ家族が何かに落ちまくるのって最早おもしろ家族だよ」
聖凪「てかさー、あんた何1人「自分は違います!」みたいな顔してんの。同類のくせに」
宗弥「ゔっ」
聖凪「言ってみなよ。どうせダメだったんでしょ。今日で何回目?」
宗弥「な、74回目・・・です」
聖凪「こっっわ!!逆によく通報されないね!?」
晶「ソーくん。お父さん、職なし甲斐性なしだけど、息子を犯罪者にするわけには・・・」
宗弥「違うよ!!そんな犯罪になるような感じじゃないって!!」
宗弥「今回はちょっとアプローチの方法を変えて──」

〇カフェのレジ
  とあるカフェ
深雪「お待たせいたしました〜。次のお客様どうぞ」
宗弥「ふわふわカプチ・・・いや、エスプレッソ1つください!」
深雪「エスプレッソおひとつですね。かしこまりました」
宗弥(はぁあ今日も可愛いなぁ・・・。仲良くなりたくて何度かアプローチしたけど)
宗弥(全く相手にされないんだよな・・・。せめて連絡先だけでも伝えたい)
宗弥(──あっ)
深雪「こちら、レシートのお返しになります」
宗弥「あっ、ありがとうございます!」
宗弥(これに連絡先を書いて渡したら良いのでは!?そんな不自然じゃないし、俺天才!!)
宗弥(よし、後はこれをスマートに渡せば)
深雪「お待たせいたしました。エスプレッソです」
宗弥「あっ、あのコレっ!!ここここここのレシート」
深雪「不要なレシートはレジ横に専用の入れ物があるのでそちらをご利用くださーい」
深雪「次のお客様、お決まりでしたらどうぞ〜」
宗弥(た、ただのレシート捨てたい客だと思われた〜〜!!!!!!)

〇狭い畳部屋
聖凪「ないわ〜」
純連「ないわね」
晶「ないな」
宗弥「四面楚歌!!!」
聖凪「あぁいうのは、元からそれなりに好感度があるか、イケメンに限るやつだから」
聖凪「あんたはただの痛い客なの。良い?あんたはただの、痛い客」
宗弥「なんで2回言った!?大事なことだから!?」
晶「恋に落ちても、人間性は堕とすんじゃないぞ」
宗弥「さっきから何も上手くないんだよっ!!」
純連「ママはパパとの恋には落ちまくってるけどね」
宗弥「あんたは同じくらい仮免にも落ちまくってるよ!!てか仲良いなチクショー」
聖凪「はーあ。やめやめ。これからまた次のコンテスト出さないとだしそろそろご飯食べよー」
晶「そうだな。じゃあ準備するから、箸や茶碗とか出してくれ」
聖凪「はーい」
宗弥「はーあ・・・。俺もさっさとご飯食べて明日に備えて寝よ」
宗弥「てか就活に落ち、仮免に落ち、賞に落ち、恋にも落ち」
宗弥「ほんと、何だこの家族」
純連「あっ、実はママ、もう一つ得意な落ちがあるの」
宗弥「得意な落ちってなに?その表情あってる??聞くの怖いんだけど」
純連「物語にオチを付けること」
宗弥「何その急なメタ発言?てかどういこ──」

〇幻想
  こうして、落合家はそれぞれの合格へとまた歩み始めるのだった
  第二話へ、続く
宗弥「いや力技がすごいなっ!?キャラクター性じゃ俺が1番弱いよ母さんの一人勝ちだよ!!」
宗弥「あーっもう!」
宗弥「これじゃあオチオチ寝てらんねーっ!!!!!!」
  完

コメント

  • 宗弥くんフルボッコww
    私自身も宗弥くん以外にはある程度理解と共感ができるのですけど、彼の恋模様はちょっと……。
    聖凪さんの小説コンテスト側への怒りと文句の内容に生々しさを感じて笑ってしまいました!

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