読切(脚本)
〇古いアパート
俺が住んでいるのは、築40年程のボロアパートの2階左奥の角部屋だった。
仕事も不定期で、昼間の時間帯から夜間帯まで、その時の仕事場所によってかなり変わっていた。
そんな不定期な仕事が、朝から夕方までで終わることが続いた。そんな時の事だった。
時々、他の住人たちと挨拶を交わすこともあった。
階下の奥さん「あら。こんにちは。最近は帰りが早いのねぇ」
誠人「こんちわっす。ここんところ昼間の仕事が多くて。ちょっと落ち着きましたね」
階下の奥さん「そうなの?でも、無理しないようにねぇ」
誠人「はい、ありがとうございます」
階下の奥さんとその旦那さんとは、軽く話をしたり、趣味の海釣りで釣った魚を分けたりしていた。
〇古いアパートの部屋
その後もしばらくは夜勤がなく、夜は家にいることが多かった。
誠人(ん?なんか声がするな)
「何なのよっ・・・・・・!!!!あ・・・いったで・・・・・・!!!!」
「ふ・・・・な!!!・・・・・こしは!」
ボロアパートだけあって、住人の喧嘩の声や、若いのが集まって騒いでいる声が響くことが多い。
誠人(あ~ぁ。また誰か喧嘩でもしてんのかね)
時々、聞こえてくる騒がしいが、珍しくもない声にあまり気にもとめずに過ごす。
TVを見ていて、気付けば騒がしい声もやんでいた。
誠人(知らんうちに、やんでたな。 まぁ~いーか。早く寝よ)
俺はさして気にもせず、そのまま寝付いた。
〇古いアパートの部屋
次の日は仕事終わりにダチが泊まりに来ることになっていた。酒なんかを色々持ってきた。
和也「ちーっす。ビール買ってきたぞー」
誠人「おぉ。サンキュー。外、雨ヤベーな」
和也「土砂降りだぞ。つーか。つまみは?」
誠人「あぁ。適当に作っといた」
和也「お前そーゆーとこまめだよなぁ」
誠人「うっせーな」
しばらくは何事もなく、お互いの近況や彼女についてなど、他愛も無いことを話ながら酒を飲んでいた。
誠人「うわッ!っくりした」
和也「んぁ?どうかしたか?」
誠人「今なんか、ドンッて音しなかったか?」
和也「なんも聞こえなかったぞ? 気のせいじゃねーか?」
誠人「そう・・・・・だな。 もう少し飲むか」
飲んでる間。時々『ドンッ』『バタバタ』と音がすることがあったが、あまり気にしないようにしていた。
〇古いアパート
誠人「おはようございます」
階下の旦那「おう。おはよう。今日は早いな」
誠人「これからダチと海釣り行くんすよ」
階下の旦那「そうかー。じゃぁまた大漁だといーな? こないだの魚美味かったからな」
誠人「とれたらまた持っていきますよ。 あ!そういえば、昨日ドンッとかって音うるさくなかったですか?」
階下の旦那「昨日騒いでたのか?笑い声は聞こえたけど、物音は知らないなぁ」
誠人「あ!声うるさかったすか?すいません。 物音は他から聞こえた気がして」
階下の旦那「毎日じゃねーから大丈夫だよ。 まぁ、気を付けて行けよ?」
誠人「はい!」
和也「おい。誠人まだかー?」
誠人「おう。今行く じゃぁ。行ってきます」
階下の旦那「おう」
そうして、海釣りにでかけた。
物音のことは、もう頭の中から消えていた
〇古いアパート
海釣りを終えて、途中和也を自宅に送ってから帰宅した俺は、大量に釣り上げた魚のお裾分けに来ていた。
誠人「こんばんわ~。2階の誠人です。魚持ってきたんすけどー」
誠人(あれ?留守かな?いつもならこの時間奥さんはいるのに)
誠人「なんだ?今の音?」
階下の旦那「おう。誠人帰ってきたのか?どうした?」
誠人「こんばんは。魚大漁だったんで、持ってきたんすよ。 奥さん今日出掛けてるんすか?何回かノックしたんだけど出て来なくて」
階下の旦那「あぁ。昨日から友達と旅行行くって出掛けちまってんだよ」
誠人「そうなんすね。じゃぁこの魚、内蔵とかは出してあるんで、冷凍していてください。奥さん戻ってから調理できると思うんで」
階下の旦那「あぁ。わかったありがとな」
奥さんが、旦那さんをおいて泊まりに行くのは珍しい。
『料理もできないから』と友達の家に泊まりに行けないと苦笑いしている奥さんの顔が思い浮かんだ。
〇古いアパートの部屋
その日の夜、寝ていると音がする。
誠人(ん?うるさいなぁ。こんな時間に)
誠人(どっから聞こえてくるんだ?)
「なっ・・・・・・!あぁ・・・・・・」
女性のような声が、微かに聞こえてくる
俺は眠いながら、音の在り処を突き止めようと、玄関を開けて確認をする。
誠人(なんの音もしねーな)
誠人(気の所為だったか?)
気にせずに寝ることにするが、その後も断続的に物音がしていた。
誠人(明日も朝はえ~から勘弁しろって)
〇古いアパートの部屋
誠人「つーわけで、ここずっと夜中に物音やら声がうるせーんだわ」
和也「だから最近眠そーなのか。 それっていつからだ?」
誠人「あー。あれだな。お前と釣り行く前後ぐらいだわ」
和也「それってもう1週間以上前じゃねーかよ」
誠人「そうなんだよなぁ」
和也「誰か騒いでりりとかじゃなくてか?」
誠人「それとなく会うと聞いてみるんだけとさ、そんな音してないみたいなんだよな」
和也「部屋の中でしか聞こえねーんだもんな?」
誠人「あぁ」
和也「じゃぁ。今日もするんじゃねーか?」
誠人「どうだろうな?」
和也「外騒がしいな」
誠人「壁薄いから物音響くんだよなここ」
良くは聞こえないが、誰かが話している声が聞こえる。少し言い争いをしているようだ。
和也「うわっ 今スゲー音しなかったか?」
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今回のお話も怖くて面白かったです。壁やドアを叩く音が妙にリアルでビクッとなりました。他のジャンルと比べてやはりホラーは音によって臨場感が高まる効果がより一層強いんですね。誠人と和也の仲の良さが少しホッとするポイントでした。
私自身、階下の深夜の騒音に悩まされているため、このお話には生々しい怖さを感じてしまいました。心霊現象の恐ろしさもですが、階下の旦那という”人”の怖さが際立っていますね。。
ゾクゾクしました…!!SEが加わると更にドキドキですね(◎-◎;)!!