エピソード1(脚本)
〇占いの館
相談者「あの先生、どうでしょうか?」
相談者「私、不安で不安で」
絶対 アタル「ムムム」
絶対 アタル「ゥゥウウウ来てます来てます」
絶対 アタル「あっ、モウチョイッッツ!ムム」
相談者「先生っ、、、!」
絶対 アタル「アアッ!!!!」
絶対 アタル「ハァハァ、、、」
相談者「、、、どうでした?」
絶対 アタル「ズバリ!」
絶対 アタル「『big love』大きな愛となる事でしょう!」
相談者「えっ!えっ!」
絶対 アタル「きっと良縁になります。安心なさい」
絶対 アタル「この『絶対アタル』が保証します!」
相談者「嬉しい、、、」
相談者「夢みたいです!先生!」
絶対 アタル「いえいえ、お役に立てて良かった」
相談者「はい!さっそくお返事して参ります!」
絶対 アタル「お行きなさい、恋に迷える子羊よ」
──バタン
女性は嬉々として部屋を後にした
部屋には男1人になった
絶対 アタル「ふう。以上ですかね」
男の名前は『絶対アタル』占い師。彼の占いは絶対当たると評判で、相談に来るものが後を絶たない
今日も狭くて薄暗いこの部屋に、ひっきりなしに相談者が来た。
絶対 アタル「あっ、、、この感じは」
絶対 アタル「ヒイッ来た!」
絶対 アテヨ「来たとはなんじゃ来たとは!」
絶対 アテヨ「人をなんじゃと思っとる!!」
絶対 アタル「、、、偉大なる大おば様です」
絶対 アテヨ「分かっとるなら敬え!お主の霊力はワシの遺伝のおかげじゃろ?」
絶対 アテヨ「誰のせいでこんなに繁盛しとると思っとるんじゃ~~~?」
絶対 アタル「はいはい、大おば様には感謝してますよ」
絶対 アタル「本当にすごい力を」
母「アタルー!ご飯出来たわよ!」
絶対 アタル「げっ!母さん!」
ゾクゾクゾク
母「いつまで占いやってんの!?早く降りて来なさい!」
絶対 アタル「か、母さん!そういうのは辞めてくれって言ってるじゃないか!」
ゾクゾクゾク
ブワァアアア!!!
アタルの全身に蕁麻疹が現れる
絶対 アタル「あっー!あーーー!痒い!んぐぅ!」
絶対 アタル「痒い痒い痒い痒い!」
絶対 アテヨ「、、、まだ治ってなかったんじゃな」
絶対 アテヨ「家族らしい事をされると全身に蕁麻疹が出る奇病、通称「家族アレルギー」」
絶対 アテヨ「巨大すぎる霊力ゆえに、肉親から見放されたワシの孤独が、よもやそんな形になって遺伝するとは」
絶対 アタル「カカカ痒い、痒い!痒すぎてダメだ!占いをして気をまぎらわせないと」
絶対 アテヨ「、、、すまんな」
チリンチリンと入店の鈴が鳴る
春川 コハル「あっあの!」
絶対 アタル「、、、お客さん?」
絶対 アタル「ごめんなさい、今日はもう店仕舞いでして。悪いんですがまた改めてもらって」
春川 コハル「ち、違うんです!その、、、相談に」
絶対 アタル「ですので、ご相談は改めて」
絶対 アテヨ「アタル!」
突如アテヨが叫ぶ。
その瞬間、目の前の女性が呻き始めた
春川 コハル「ウウゥウゥッ」
絶対 アタル「だ、大丈夫ですか?」
春川 コハル「ガアアアッ!」
うら若き女性がおぞましい化け物に変化した!
絶対 アタル「こ、これは怨霊!」
絶対 アテヨ「すごい力じゃ、、、さっきの娘に取り憑いとったか」
絶対 アタル「大おば様!ここは私に任せて下さい!」
絶対 アテヨ「アタル!油断するなよ!」
幽霊「ヴッヴッ、、」
絶対 アタル「授かりしこの霊力、世の為、人の為!悪しき者を滅しましょう!」
アタルが霊力を溜める。その光は渦を描きながら輝きを増して行く
絶対 アテヨ「こやつ、、、また成長したな」
アタルの霊力は絶大だった。力の根源たるアテヨも驚く程に。
幽霊「マッ」
絶対 アタル「くらえっ!」
光の輝きが最高潮になったかと思うと、光球となしたそれを怨霊に向ける。すさまじいパワーだ。
幽霊「マッテ!」
絶対 アタル「!?」
予想外の声にアタルは驚き、集中が途切れたか光は四散していく
絶対 アタル「、、、え?」
幽霊「あっあの、違うんです!私です!私なんです!」
絶対 アタル「、、、さっきの人ですか?」
幽霊「は、はい!そうです!こんな見た目ではありますが、、、」
絶対 アテヨ「こりゃ驚いた。怨霊が取り憑いておりながら意識はあの娘なのか」
絶対 アタル「しかし、一体どうして?」
アタルとアテヨが怨霊に近付く、その瞬間
母「ご飯だって言ってんでしょ!」
絶対 アタル「かっ!母さん!」
ゾクゾクゾク
絶対 アタル「ギャッ!ギャッ!分かったから家族らしい事やめて!すぐ降りるから!」
母「今夜はあんたの好きなコロッケよ!」
絶対 アタル「ギャアアアアアアア」
猛烈な痒みがアタルを襲う
〇占いの館
〇占いの館
絶対 アタル「なるほど」
春川 コハル「はい、、、」
翌日、改めて集まった3人(?)
絶対 アテヨ「しかし分からんな」
絶対 アテヨ「ある日突然、身体が怨霊になってしまったとな」
絶対 アテヨ「じゃが、悪意もなければ心当たりもない。どうしたもんかの?」
絶対 アタル「うーん」
絶対 アタル「理由もなしにって事は無いと思いますが、何よりヒントが少ないですね」
絶対 アテヨ「いっそ本人に聞いてみるかの!せっかく怨霊に変化できるんじゃから」
絶対 アタル「オススメはしません!悪意がないとは言え、どうなるか、、」
絶対 アテヨ「ケチ!」
絶対 アタル「ケチとかそういう問題ではない!」
春川 コハル「あっ!あの!」
春川 コハル「あの!」
絶対 アタル「どうしました?」
絶対 アテヨ「なんじゃ?」
春川 コハル「その、思い過ごしかもしれないんですが」
春川 コハル「初めて怨霊になったのは、父の命日なんです」
絶対 アタル「お父様の?」
春川 コハル「はい。その日、母と一緒にお墓参りに行ったんです」
春川 コハル「父は私が小さい頃に亡くなっていたので、これといった思い出はないんですが、、、」
春川 コハル「少ない思い出の中に、父に肩車された記憶があって。その温もりや雰囲気が、怨霊さんに憑依された時に似てて、」
春川 コハル「、、、悪い気はしないんです」
絶対 アテヨ「なるほどな」
絶対 アテヨ「幼き子を遺して去ったお父上が、今は怨霊となり娘を守っとるのかもしれのぉ」
絶対 アテヨ「泣かしてくれるじゃないか」
ゾクゾクゾク
絶対 アタル「そ、そうですか、、、?(ポリポリ」
絶対 アテヨ「そうじゃ!きっと正体はお父上じゃ!積年の思いが悲しき怨霊となって娘に取り憑いておるんじゃ!」
絶対 アタル「それなら祓うよりは説得した方が良さそうですね(ポリ」
絶対 アタル「、、、ですが、説得するにはご本人に出て来て頂かないといけませんね」
絶対 アタル「オススメはしませんが」
絶対 アテヨ「じゃの、、、」
春川 コハル「あの、私大丈夫です!」
絶対 アタル「っ!春川さん」
春川 コハル「本音を言うと、少し怖いですが」
春川 コハル「占い師さんなら安心して任せられます」
春川 コハル「それに、何より父と話してみたい!」
絶対 アタル「春川さん」
絶対 アテヨ「決まりじゃな」
絶対 アタル「分かりました」
絶対 アタル「何かあったら必ずお助けします」
絶対 アタル「僕を信じて下さい!」
絶対 アタル「ハアアア」
絶対 アタル「ウウゥウ来てます来てます」
絶対 アタル「ハアアアア!」
幽霊「ヴッ」
絶対 アテヨ「成功じゃな」
絶対 アタル「怨霊に問う!そなたは春川コハル殿のお父上で間違いないか!」
幽霊「ヴッヴッ、ワ,ワタシは」
絶対 アタル「答えよ!」
幽霊「違います」
絶対 アタル「は?」
絶対 アテヨ「はい?」
幽霊「ヴッヴッヴアァァァァァ!」
幽霊「ワタシハ、ワタシハこのワカクテピチピチコムスメに取り憑き!生着替えやお風呂をノゾキタイ!」
絶対 アタル「、、、」
絶対 アテヨ「、、、」
幽霊「ヤットだ!ヤットコムスメの抵抗もヨワクなってきた!私をウケイレハジメテル!」
幽霊「コノママこの体をノットリ、ピチピチなギャルライフを送るゾ!」
絶対 アタル「ハアア!!!!」
刹那、アタルが霊力の限りを怨霊に向け放つ!
幽霊「ギイヤアアアア!」
正面からモロに着弾した怨霊は、悲鳴こそ上げたが、瞬にチリと化した。皮肉だが苦しむ間もなかったであろう。
絶対 アテヨ「アタル、、、」
絶対 アタル「大おば様」
春川 コハル「う、う~ん」
絶対 アタル「春川さん!」
春川 コハル「私はいったい、、、はっ、お父さんは!?」
春川 コハル「アタルさん、父は。父は何か言っていましたか!?」
絶対 アタル「立派でした」
春川 コハル「へ?」
絶対 アタル「『この世の理に逆らってでも愛する我が子を守りたかった』」
絶対 アタル「『だが、もう安心だ。我が子はまっとうに、素晴らしい大人となった。私の出番は無いようだな』」
絶対 アタル「そう言い、お父上はお空に」
春川 コハル「っ、、お父さん、、」
春川さんの瞳から大粒の涙が溢れた
絶対 アテヨ「(お前、、、)」
大おば様が何か言いたげだが無視する
春川 コハル「お父さん、、、見守ってくれてたんだね、、ありがとう」
絶対 アタル「、、、落ち着きましたか?」
春川 コハル「はい、おかげさまで」
春川さんは衣服を正し、
春川 コハル「占い師さん、本当にありがとうございました!」
春川 コハル「フフッ。たまにはお父さんの好物でもお供えしようかな?」
絶対 アタル「それが良いと思います。きっとお空の上でも温かく見守ってくれている事でしょう」
絶対 アテヨ「ジー」
絶対 アタル「ゴホン」
絶対 アタル「では、これにて一件落着という事で」
春川 コハル「はい、、、」
少し、名残惜しそうにコハルが呟く
春川 コハル「あの!」
絶対 アタル「何か?」
春川 コハル「また、来てもいいですか?」
絶対 アタル「もちろんです。依頼ならいつでも大歓迎ですよ」
春川 コハル「依頼じゃなくて」
絶対 アタル「はい?」
ゾクゾクゾク
絶対 アタル「かっっかっっ!!?痒い!?!?なぜ!?!?」
春川 コハル「約束ですよ!」
そう言うと、嬉々として部屋を後にした
絶対 アタル「治まった?」
絶対 アタル「なんで痒くなったんだろ、、、?」
絶対 アテヨ「家族アレルギー、、、好意を向けられるのも対象かの?」
絶対 アタル「何か言いました?大おば様」
絶対 アテヨ「なーんも言っとらんわい」
絶対 アタル「そうですか。では開店準備でも進めますかね」
絶対 アタル「有難い事に、本日も予約でいっぱいです」
絶対 アテヨ「そうじゃな!でもそろそろ、、」
母「アタルーー!お昼よー!!!」
絶対 アタル「ギャアアアアアアア痒いいいい!」
おわり
アタルが霊能力だけでなく「家族アレルギー」も大おば様から遺伝したところが、人間らしくて良いと思います。
体に憑依したのが亡父だと信じる春川さんに、アタルが亡父の最後の言葉だと嘘を伝えたのは、優しさからだけではないと感じます。
最後に春川さんがまた来たいと言った後アタルの家族アレルギーが出現して、将来家族になる可能性がある人と巡り逢うたび彼の痒みがさらに続くというのが分かって少し可哀想でした。
占い師は真実を言うよりも相手の望むことを告げるセラピストのような存在だと思っていましたが、アタルの仕事ぶりもまさにそんな感じで丸く収まって良かった。それにしても相手の好意を感じると出てしまう蕁麻疹、気の毒なやら面白いやらで・・・。
幽霊が実はお父さんかもしれないと言う場面では、感動してウルっと来そうになっていたのですが、ただの変態野郎だったので、なんでやねん!って思いました😂
でも、それを言わずにお父さんだったことにしてあげたアタルは心優しいなあと思いました😌
嘘も方便ですね☺️