Cherry blossom memories チェリーブロッサム・メモリーズ

貴島璃世@りせチャンネル

第二章 僕の小さな世界の中で(脚本)

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〇男の子の一人部屋
  今日も外は晴れていた
  でも僕には関係ない
  家の中ですら移動には車椅子が必要で・・・
  だから外へ行くには誰かに助けてもらわらないといけない
  そんなのめんどくさいし、他人の目が気になって仕方がない。それに・・・
Sachino Tagami「ユキヤ、朝食を持ってきたわよ」
Yukiya Tagami「そこに置いておいて」
Sachino Tagami「ねえ・・・一緒に食べない?」
Yukiya Tagami「僕はここでいいよ。母さん」
Sachino Tagami「そう・・・ じゃあ、ドアの外に置いておくから・・・」
Yukiya Tagami「・・・・・・」
Yukiya Tagami(今日は・・・またあの子に会えるかな)
  VRへ・・・僕の世界へログインしようとしたら、またドアがノックされた
Toshio Tagami「ユキヤ、父さんと少し話さないか?」
Yukiya Tagami「あっちに行ってよ! 僕は忙しいんだ!」
Toshio Tagami「・・・そうか じゃあ仕事から帰ったら、また話そう」
Yukiya Tagami(・・・これでもう邪魔は入らない)
Yukiya Tagami(VRゴーグルを装着してと)

〇電脳空間
  僕の世界へ・・・
  『チェリーブロッサム・メモリーズ』へ・・・

〇美しい草原
  VR チェリーブロッサム・メモリーズver2.0 マスター・ユキヤがログインしました
  その瞬間、風を感じた
  その風に乗ってやって来る、優しい花の匂いも・・・

〇美しい草原
Yuri「こんにちは!」
Yukiya Tagami「こ、こんにちは」
Yuri「また会えたね!」
Yukiya Tagami「それはまあ・・・毎日来ているからね」
Yuri「あ、そっか。ユキヤはマスターさんだものね」
Yukiya Tagami「うん」
Yuri「学校へ行っていないの?」
Yukiya Tagami「・・・・・・」
Yuri「ごめんなさい! 変なこと聞いて・・・」
Yukiya Tagami「いや、いいんだ 構わないよ」
Yukiya Tagami「この前も言ったけれど、僕は歩けない 車椅子を使えば、外出できるけど・・・」
Yuri「うん・・・」
Yukiya Tagami「高校はしばらく行っていない」
Yuri「そうなんだね・・・」
Yuri「わたしも・・・今は学校を休んでる 病気で・・・療養中なんだ」
Yukiya Tagami「えっ! そうなのか!?」
Yukiya Tagami(また・・・あの悲しそうな顔だ あまり状態が良くないのかな?)
Yuri「ねえ、お散歩しない? あの丘まで」
Yukiya Tagami「あ・・・うん いいよ」

〇木の上
Yuri「気持ちいいね!」
Yukiya Tagami「そうだね」
Yuri「早く咲かないかな・・・」
Yukiya Tagami「えっ、と。桜だったら、この前、君に話したとおり、まだ・・・」
Yuri「わかってる わかってるよ・・・」
Yukiya Tagami「・・・・・・」
Yuri「ねえ、ユキヤの将来の夢ってなに?」
Yukiya Tagami「将来の夢?」
Yuri「そう。わたしは看護師になりたかったの 病気の人を助けたくて」
Yukiya Tagami「そうなんだ」
Yuri「うん」
Yukiya Tagami「僕は・・・将来なんてあまり考えたことなかったけど・・・」
Yukiya Tagami「コンピューター関係のエンジニアかな 人に夢を与えたい」
Yuri「夢を与える・・・すてきだね!」
Yukiya Tagami「あ、そ、そのう・・・ありがとう」
Yuri「今日はこれで帰る また来るね!」
Yukiya Tagami「ああ、うん またね」
Yukiya Tagami(なんだろう。この違和感は・・・ ユリは、何かを隠してるような・・・)

〇男の子の一人部屋
  その日の夜・・・
Toshio Tagami「ユキヤ。父さんだ 入ってもいいか?」
Yukiya Tagami「うん・・・」
Yukiya Tagami「なに?」
Toshio Tagami「ユキヤ。そろそろ復学しないとな 高校に戻るんだ」
Yukiya Tagami「・・・・・・」
Toshio Tagami「リハビリも再開しよう きっと歩けるようになる」
Yukiya Tagami「出たくない 外が・・・怖いんだ」
Toshio Tagami「リハビリも通学も父さんが手伝うから 車で送り迎えを・・・」
Yukiya Tagami「車が怖いんだよ 今でも夢を見るんだ」
Toshio Tagami「・・・夢? どんな夢だ?」
Yukiya Tagami「父さんが運転している車の助手席に僕が乗っている」
Yukiya Tagami「交差点で右折していると、大きなトラックが突っ込んでくるんだ」
Toshio Tagami「・・・・・・うん」
Yukiya Tagami「あの日と同じさ」
Toshio Tagami「すまなかった 父さんが悪い」
Toshio Tagami「私は軽い怪我で済んだのに、おまえがこんなことになるなんて・・・」
Yukiya Tagami「父さんは悪くない! 悪いのはよそ見をしていたトラックの運転手だよ!」
Toshio Tagami「ああ・・・そうだな」
Yukiya Tagami「もういいかな ちょっと疲れた」
Toshio Tagami「あ、ああ。わかった また話そう 母さんも心配している」
Yukiya Tagami「うん・・・」
  父さんは悪くない
  もちろん母さんも
  心配をかけている僕が・・・悪いんだ

〇電脳空間
  ユリは週に2回ほどのペースで、僕の小さな世界へやって来るようになった
  VRは8月に入り、暑い日は桜の大樹の木陰で涼んだ
  9月になると暑さも和らいでくる。僕たちは仲良く草原を散策し、丘に登り、景色を眺めた
  ユリ以外には誰も来なかった
  そんなある日・・・

〇美しい草原
Yuri「ねえ、ユキヤ」
Yukiya Tagami「なんだい?」
Yuri「ここはあなたの思い出の場所だって聞いたけど、どんな思い出があるの?」
Yukiya Tagami「まだ幼い頃に住んでいた家の近くにあった場所なんだ。よく父さんが連れてきてくれたんだよ」
Yuri「そうなんだ」
  僕の記憶の中で・・・

〇美しい草原
  僕は父さんに肩車をしてもらっていた
  まだ小学生の頃だ

〇花模様
  頭の上には満開の桜の花・・・
  手を伸ばしたら届きそうだったけど、危ないって怒られたっけ
Yukiya Tagami(その思い出が、僕の宝物なんだ)

次のエピソード:第三章 悲しい秘密

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