真夜中専門探偵*又旅

キリ

オリジナル(脚本)

真夜中専門探偵*又旅

キリ

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〇一戸建て
  2日前、一匹の猫が自宅から姿を消した
  久しぶりの晴天に、広い窓を開けて
  換気していたという
  その隙に、窓から脱走したそうだが
  すぐに外へ出て辺りを見回したものの
  猫はどこにもいなかった━━━

〇シックなリビング
旦那さん「はあぁ...」
旦那さん「今日も帰ってきてないのか?大福」
奥さん「そうなのよ...はぁ」
奥さん「手がかりが何もなくて」
奥さん「おやつで帰ってくるかなって 思ってるけど」
旦那さん「まあ、そもそもお前が家にいるのに 部屋の窓なんか開けるからだろ?」
奥さん「なっ!わたしは部屋の空気を 入れ替えようとしただけよ!」
旦那さん「余計なことだったんだろうが!」
奥さん「なんですってえ! ! ! ?」
旦那さん「なんだよ! ! !」
旦那さん「いまの鳴き声って...」
奥さん「大福! ? ?」

〇黒
  急いで庭の大窓を開けると、
  そこにいたのは━━

〇シックなリビング
  首輪もしていない野良猫だった
奥さん「なんだ、野良猫か...」
旦那さん「こんなときに、期待させるなよ...」
トラ「・・・」
「こーんばんは」
「っ! !」
又旅「お約束の時間でしたのでぇ訪ねましたが... 取り込み中というか、まっ少々喧嘩処で」
又旅「でも時間厳守でやらせてもらってんで、 ねえ~その、これぞまさしくお邪魔します」
「・・・」
又旅「・・・」
又旅「はい」
又旅「・・・」
又旅「・・・・・・なにか?」
旦那さん「どちらさんですか? !そんな変な格好で 警察呼びますよ? !」
又旅「・・・ふぅむ」
又旅「私は、決して怪しい者では ございませんよ?」
又旅「ほらこの通り、ただの探偵でございます」
旦那さん「へえ~」
旦那さん「ただの探偵...」
旦那さん「には似つかわしいな」
又旅「あれまぁ」
奥さん「探偵...」
奥さん「あの、もしかして"又旅"さん?」
又旅「おほほ♪ご名答です奥さん」
又旅「ご依頼、本日承りましたので こうして尋ねた次第ですぅはい」
又旅「さてと」
又旅「おしゃべりが過ぎましたね、こりゃ失敬」
又旅「ところで大福ちゃんは、 いつ頃お出になられたんで?」
奥さん「はい、2日前のお昼ごろだったかしら? その時に窓から脱走したみたいで...」
「ほえー」
奥さん「急いでわたしも外に出たんですが 大福はどこにもいなくて...」
又旅「んー」
旦那さん「おい、家のなかぐるぐる見て回るなよ」
「これも立派な聴取ですよ」
「おっと!こりゃ失礼、 キャットタワーにぶつかってしまった」
「おや?」
又旅「やけに一番上のベッド部分が 沈んでいますねえ」
又旅「大福ちゃんの定位置はもしや...?」
旦那さん「ああ、いつもキャットタワーの一番上だ」
又旅「ほおー」
奥さん「又旅さん、うちの中をくまなく探してる ようですが、大福はうちにはいませんよ?」
又旅「存じてますよ」
又旅「本人がいないなら、生活に聞く」
又旅「これも立派な、大福ちゃんの事情聴取です」
又旅「だいたい把握できました」
又旅「次は...」
又旅「紙とペン、お借りしてよろしいですか?」

〇シックなリビング
又旅「えーっと、ここには神社で、 ここ釣り堀になってるんですねぇ」
旦那さん「ああ、漁師の人もいるから いらない魚があれば大福に 分け与えてくれるんだ」
旦那さん「まあ、大福は警戒心が強いから 僕と妻が連れていったときしか そこでの魚は食べないが」
又旅「ふぅむ」
又旅「こちらの神社には、宮司さんとか いらっしゃるんで?」
奥さん「いいえ、誰もいない神社です」
奥さん「なので野良猫のたまり場だそうですよ?」
又旅「ほおー」
又旅「ちなみに、このお宅の裏にある公園は?」
旦那さん「そこには大福のお気に入りスポットに なってる木の枝がある」
又旅「なるほど」
又旅「ん?なんだ」
トラ「・・・」
又旅「・・・そうか」
又旅「では、外に探しに行きます」
旦那さん「え?急に探しに行くって」
奥さん「じゃあ私たちも一緒に...」
又旅「いえ、あまり人数が多いと、 大福ちゃんが警戒してしまいます」
又旅「私一人でここは、お任せいただきたい」
又旅「うまくいけば、今夜中にでも 大福ちゃんを連れて参ります」
又旅「では」
「・・・」
「うわっ!」
「こらトラ!マントにさ・わ・る・な!」
「はああああもう!」
「ああーーーー!ほら!引っ掻き傷ぅぅ!」
「弁償しろ弁償!さもなくば...」
「こちょこちょこちょお~~」
旦那さん「・・・」
旦那さん「あの人、まともな探偵なのか?」
奥さん「え、ええ」
奥さん「行方不明の猫を、過去に16件見つけた そうで、どれも捜索手がかり無しが多くて」
奥さん「又旅さんに依頼したら、数日とか 早ければ本当にその日のうちに 見つけてくれるって口コミがあったわ」
旦那さん「へえー」
旦那さん「それなら、帰りを気長に待ってみるか」
奥さん「そうね」

〇黒
又旅「ここなんだな?」
トラ「にゃー」
又旅「さすが猫同士、タイミングを見計らうのが お手のものだことぉ」
又旅「どれどれ~」
又旅「・・・」
又旅「・・・・・・」
又旅「・・・お!」

〇住宅街の公園
大福「みゃ~」
又旅「いたいたいたいたいた!」
又旅「よし!これを使う時だ」
又旅「さん」
又旅「にい、」
又旅「いちっ...!」
  又旅が発砲した大砲からは、拳銃の弾
  ではなく、網だった
  あまりの衝撃音に、大福と
  巻き添えをくらったトラは
  目を丸くしていた
  しかし、大福をきちんと網の中に
  身柄をとらえることに成功した
又旅「これにてニャン事件、解決!」
又旅「さて、依頼主の元に帰ろうな? 大福ちゃん」
大福「・・・」

〇シックなリビング
  無事に飼い主の元へ帰ってくることが
  できた大福に、二人は大いに喜んだ
旦那さん「大福ぅぅぅぅぅぅう!」
旦那さん「よかった!ほんっっとうに無事で!」
奥さん「大福、怖かったよね~~ ママも寂しかったわよ~」
大福「みゃあ♪」
トラ「・・・」
又旅「うんうん、感動の再会」
又旅「邪魔しちゃ悪い、ここは 静かに去るとしよう──」
トラ「にゃ」
旦那さん「ちょっと待て!」
又旅「おやっ?もう再会はご満足で?」
旦那さん「いや...再会はまだ余韻があるが」
旦那さん「なんで大福をこんなに早く 見つけられたのか、気になるだろ」
又旅「真相解明をご希望ですね、 かしこまりました」

〇シックなリビング
又旅「それではお話させていただきます」
又旅「私は、このお宅に訪ねて キャットタワーを拝借しました」
旦那さん「ああ...ぶつかったってホラ吹いたってか」
又旅「そこで、キャットタワーの上だけが 凹んでいることを確認した」
又旅「猫が高いところに登るのには訳があります」
又旅「まさに、旦那さんがおっしゃってましたよ」

〇シックなリビング
旦那さん「まあ、大福は警戒心が強いから 僕と妻が連れていったときしか そこでの魚は食べないが」

〇シックなリビング
又旅「そう、警戒心が強い子は高い場所から周りを見て、安全かどうかを見定めるのです」
又旅「だから一目が多いところは、 まず無い、と確信したのです」
奥さん「これで市場の線は消えた、と」
奥さん「それだと公園と神社はどちらも 行きそうですけど、どうして公園だと?」
又旅「警戒心が強い子に、神社なんて不気味な 場所、一人で行けませんよ」
又旅「それに少しでも物音がすれば 驚いてしまうでしょ」
又旅「公園は、やはり私の見立てたとおり 木の上にいましたよ」
又旅「公園は人通りが激しいが、普段から 大福ちゃんの通り道だとおっしゃってた」
又旅「だから知ってたんだ、 木の上は誰もこないことを」
又旅「声がしても怖がらずに居られる場所 安心できる場所でもあったんですよ」
「・・・」
又旅「私、思うんです」
又旅「私が凄腕なんじゃない、」
又旅「飼い主さんが、飼い猫の性格やしぐさなどを知っているからこそ、早期発見できる」
又旅「あなた方のおかげで、私が簡単に 探しだせるのです」
又旅「感謝します」
旦那さん「いやそんな、当たり前のことなんで」
奥さん「こちらこそ、大福を見つけてくださって 本当にありがとうございました」
奥さん「あ!そうだ依頼料」
奥さん「えっと、2000円とまぐろの缶詰め であってますか?」
又旅「はぁい♪では、ありがたくいただきます」
又旅「では、私はこれにて」

〇一戸建て
又旅「ふう、任務完了」
又旅「あ、もう陽がのぼってる」
又旅「早く帰って仮眠しないとだ...」
又旅「昼間はサラリーマンやってるし、 両立大変だな~」
又旅「んで、トラ、君はまだ私に着いてくるのか」
トラ「・・・」
又旅「はあ、まったく」
又旅「野良猫のくせに、なんで私なんかに 懐いてるんだか」
又旅「...まあ、君がいて ニャン事件解決できてるし」
又旅「私の家に帰ってから、まぐろの缶詰め 差し上げますよ」
又旅「報酬金として、ね?」
トラ「にゃあ♪」
  めでたし めでたし

コメント

  • 又旅さん、推理力がすごいですね!
    無事に大福ちゃんが戻って来てくれてホッとしました。
    でもなんか旦那さんが終始イヤな感じでした😂笑

  • 探偵助手のトラが可愛いなあ〜。華麗にニャン事件を解決したのはさすがだけど、夜中にあの格好で公園ウロウロしてたら職質か通報されちゃうニャン。

  • 昼間はサラリーマンをされているんですね!びっくりでした。困っている猫、その飼主の気持ちに寄り添って問題解決にいどむ主人公に猫好きとしても感謝したいですね。

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