長女は家族を養いたい~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ

事故紹介、安易に首は外しちゃいけません(脚本)

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〇森の中
エキドナ・アルカーノ「うっく・・・・・・ひっく・・・・・・うえぇぇ・・・・・・」
  ボロボロとこぼれる雫がエキドナの胸元を|濡らしていく・・・・・・
  感情のコントロールに定評がある(自称)エキドナが大号泣だった。
  だって無理だった。
エキドナ・アルカーノ「ひどいよう・・・・・・お父さんとお母さんが亡くなって? 親戚は保険金で豪遊《ごうゆう》?」
エキドナ・アルカーノ「弥生たちには一銭も無く豪雪地帯でボロアパート暮らし、しまいにはよくわかんないうちに殺されたとか・・・・・・」
エキドナ・アルカーノ「僕らよりひどい状況じゃないかな!?」
日下部 文香(くさかべ ふみか)「はい、エキドナおねーちゃん」
  文香が体育着のポケットからハンカチをエキドナに手渡す。
  そのハンカチには弥生が手縫いで補修した跡があり・・・・・・エキドナが感極まってさらに号泣する。
  文香ですらなんかしちゃった!? と困り顔で兄と姉に振りかえる。
日下部 弥生(くさかべ やよい)「今が転生だとしたら前世がエキドナさん言ったとおりだったりするんですよね~」
エキドナ・アルカーノ「弥生!! 君の感覚麻痺してるんじゃないのかな!? なんでそんなにポジティブなのさ!!」
日下部 真司(くさかべ しんじ)「姉ちゃん明るいほうの腐女子だから」
エキドナ・アルカーノ「真司!! 君も大概だからね!? それは僕の父親もそうだけど枯れてるって言われる類の落ち着きっぷりだよ!?」
  突っ込み役はよ、と。エキドナが泣いたり憤《いきどお》ったりで忙しい。
  特に弥生は真司と文香の無事を確認したとたん雰囲気が劇的に緩くなり・・・・・・
  先ほどの身の上をへらへらと説明しているのだからエキドナの反応のほうが今は当たり前だったりする。
日下部 文香(くさかべ ふみか)「おねーちゃんとおにーちゃん普段いっぱい頑張ってるからたまにこうなるのー」
エキドナ・アルカーノ「社会復帰にリハビリが必要なんじゃないかと僕は思うよ? とにかく君らの事情は分かった。よろしくね文香、僕ら迷子仲間だ」
日下部 文香(くさかべ ふみか)「わーい! エキドナおねーちゃんも迷子だー」
  無邪気に笑う文香とは|裏腹《うらはら》に『あははー』と|腑抜《ふぬ》けまくっていた真司と弥生の表情が一変する。
「迷子仲間!?」
エキドナ・アルカーノ「実は僕も家族とばらばらになっちゃって・・・・・・僕はバラバラになれるんだけどね」
  ――ごとん、ころころ!!
エキドナ・アルカーノ「こんな風に」
  外れた頭部が3人の前に転がってくる、エキドナが爽やかな笑顔で三人に笑いかけていたりするのがもう何かの冗談かという位怖い。
  弥生、真司、文香の表情が消え、瞳孔がきゅっ! とすぼまって・・・・・・目の前で起きたリアルホラーのせいで仲良く気絶した。
エキドナ・アルカーノ「え? 嘘・・・・・・たったこれだけで・・・・・・」
エキドナ・アルカーノ「うわぁぁぁ!? ごめん! 僕半分機械だから鉄板のギャグネタぐらいにしか思ってなくてね!? うえっ! 完全に白目むいてるぅ」
  慌てて自分の頭部を拾い上げてエキドナが卒倒した3人を何とか起こそうとする。
  しかし・・・・・・そんな奮闘もむなしく起き上がっては|首無し女《エキドナ》を目撃して再び意識を旅立たせること数回
  そして首をはめてからなら! と彼女が思いつくまでしばらく時間を有したのは言うまでもない。

〇森の中
日下部 弥生(くさかべ やよい)「もういきなり腕とか足とか外さないでくださいね?」
エキドナ・アルカーノ「本当にごめんなさい。僕の配慮《はいりょ》が足りなかったねぇ」
  ぺたん、と両手を合わせて平謝りのエキドナへ『じとぉ・・・・・・』と言うのにふさわしいジト目で射貫く3人。
  さっきまでは頼れる先輩ポジションだったのがあっという間に問題児レベルに株が暴落《ぼうらく》していた。
エキドナ・アルカーノ「さて、と・・・・・・今度は僕の境遇《きょうぐう》だねぇ」
日下部 真司(くさかべ しんじ)「ごまかした」
日下部 文香(くさかべ ふみか)「えきどなおねーちゃんごまかした」
日下部 弥生(くさかべ やよい)「次は両足外して偉い人にはわからんのですとかやりそう」
  ・・・・・・ほんの少しだけエキドナの目尻に光るものが浮かぶ。
エキドナ・アルカーノ「なんで反応が僕の妹と同じなのかな!? 僕の何が悪いのさっ!!」
  両膝《りょうひざ》を崩してよよよ・・・・・・とポーズをとるエキドナに、3きょうだいが投げる視線は変わらない、だって
「口元が超にやけてるから」
  目元以外のエキドナが纏う雰囲気は『さあ、次はどうやって驚かせてやろうか!? 伝家の宝刀、五体バラバラかっ!?』なのだ
  目は口程に物を言う。しかしだ、口が終始邪悪な感じに嗤《わら》っていてはいくら素直な弥生達でも信用しない。
エキドナ・アルカーノ「くっ・・・・・・手強いねぇ」
日下部 弥生(くさかべ やよい)「話が進まないのでエキドナさんの事教えてください4文字で」
エキドナ・アルカーノ「まよった」
日下部 弥生(くさかべ やよい)「即答か!?」
エキドナ・アルカーノ「大喜利の一つもできなくて何が半機械《アンドロイド》だ!!」
  大平原の真っただ中でそれはそれは楽しそうな4人であった。
日下部 真司(くさかべ しんじ)「姉ちゃん、エキドナ姉・・・・・・そろそろ真面目に」
「うい!!」
  さすがに放置できなくて真司が嘆息《たんそく》交じりに注意する。
  どこ吹く風の弥生とエキドナが左右対称に敬礼もどきを実行、随分と仲が深まった(?)様子の2人
  文香は分かってるのか分かってないのか。そんな二人に、にこにことじゃれついていた。

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