無欲なキミに貪欲なカレ

鳥飼

【第1話】人生最大のとんでもない1日。(脚本)

無欲なキミに貪欲なカレ

鳥飼

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〇黒
  あなたはね
  自分の願いごとを
  叶えちゃダメなの。
  ──その代わりに、
  まわりの人のお願いごとを
  たくさん叶えてあげて。
  それがあなたにとって
  一番幸せになる方法なのよ。
  ──約束ね。ナナオ。

〇ファンシーな部屋
ナナオ「うーん!よく寝た〜!」
ナナオ(おばあちゃんの夢、 久しぶりに見たなあ・・・)
  数年前に亡くなった私の祖母が
  口癖のように言っていた言葉を思い出す。
ナナオ(私はまわりの人の願いごとを叶えると 幸せになれる・・・か)
ナナオ(最初はよく意味がわからなかった けど・・・)
ナナオ(今はまわりの人に感謝されることが 嬉しくて、これが自分の願いごと なんじゃないかなって思うんだよね)

〇ダイニング(食事なし)
ムツミ「ナナオ。今日はサークルの校外活動よね?」
ナナオ「うん。今回は小児病棟に行く番なんだ」
ムツミ「だったら、帰りにこっちにも顔出してよ」
ムツミ「ヨシエさんがこの間のお礼に お菓子くれるっていってたから!」
ナナオ「別にお礼なんかいいのにー!」
ムツミ「あのお守りね、お孫さんからもらった 大切な物だったんだって」
ムツミ「ナナオが見つけてくれてヨシエさん 本当に嬉しかったみたいなのよ」
ナナオ「そっか。それならよかった」
ムツミ「良いことしたんだから、 遠慮なくいただいておきなさい」
ナナオ「うん。じゃあ、行ってきます!」
ムツミ「はい、行ってらっしゃい!」

〇ゆるやかな坂道
ナナオ(お人好しとかお節介とか言われるけど ありがとうって言われたら やっぱり嬉しくなっちゃうよね)
ナナオ(カラスが騒いでるけど、 どうしたんだろう──?)
ナナオ「やだ!小鳥が襲われてる!!」
ナナオ「こらっ!弱い者いじめはやめなさーい!!」
  私はバッグの中に入っていた折り畳み傘を
  振り回してカラスを追い払った。
ナナオ「今度会ったら何か食べる物あげるから 恨まないでねー!」
ナナオ「わあ!キレイな鳥!!」
  私は足下に横たわる小鳥をハンカチに包み
  優しく拾い上げた。
ナナオ(逃げたペットかもしれないよね・・・ 動物病院とかに連れていった方が いいのかな?)
ナナオ(それともまずは交番に届けて── SNSで拡散もした方がいいんだっけ?)
ナナオ「わっ!ちょっと・・・!!」
  今まで大人しかった小鳥が
  突然手の中で暴れ始める。
ナナオ「あっ!!」
ナナオ「行っちゃった・・・」
ナナオ「・・・元気ならそれでいいんだけど。 急なんだもんびっくりしたなあ」
ナナオ「やだっ!もうこんな時間っ! 電車に遅れちゃう~!!」
  私は電車の時間を思い出して
  慌てて駅へ走り出した。

〇ビルの屋上
???「はあ、助かった──・・・」
???「それにしても、何なんだよアイツ──」

〇病室のベッド
女の子「ナナオちゃん!この本みて〜!」
ナナオ「わぁー!かわいい折り紙が たくさん載ってるねー!」
女の子「うん!ママにかってもらったの! ここのおりがみ!パパのたんじょうびに プレゼントしたいんだ〜」
ナナオ(子供向けだけど、手順がたくさんあって ひとりで折るのは難しいかもね)
ナナオ「よし!お姉ちゃんも頑張るから、 一緒に折ってみよう!」
女の子「うん!がんばる!」

〇病室のベッド
女の子「できたー!!」
ナナオ「やったね!じゃあ、私からはこれあげる。プレゼントの箱にしてね」
  私は別に作っておいたケース型の折り紙を
  女の子に手渡した。
女の子「ありがとう!ナナオちゃん!」
ナナオ「パパも喜んでくれるといいね!」
女の子「うん!」
ナナオ(──みんなのこの笑顔が見たいから 私、頑張れちゃうんだよね)

〇大きい病院の廊下
リサ「ナナオ〜これからどっか寄ってくー?」
ナナオ「ごめん。この後、お母さんのところに 行くから今日はまっすぐ帰るねー」
リサ「そっか。じゃあ、また明日ね!」
ナナオ「うん。じゃあね〜!」
???「ああ、やっぱりナナオちゃんだ」
ナナオ「あっ!ハルキさん!」
ナナオ「今日はお仕事早く終わったんですね!」
ハルキ「早くっていうか、徹夜明けの夕方帰りって 感じなんだよね〜」
  建築関係のデザイン事務所で働く
  ハルキさんは、昔から知っている
  ご近所さんだ。
ナナオ「・・・大丈夫ですか?それで明日は普通に 出社だったりしませんよね?」
ハルキ「あはは!そんなに心配した顔しないで! さすがにお休みもらいました」
ナナオ「よかったぁ〜!!」
ハルキ「俺、いつもボロボロでごめんね。 情けない社会人像見せつけるみたいで 申し訳ない・・・」
ナナオ「そんなこと言わないでください!」
ナナオ「母の夜勤明けの姿だって見てますから、 どうしても詰めなきゃいけない仕事が あるのは理解してます!」
ハルキ「ナナオちゃん・・・」
ナナオ「でも、無理して倒れたりしないで くださいね!」
ハルキ「うん、ありがとう」
ハルキ「──じゃあ、行ってくるね」
ナナオ「・・・はい。それじゃあ、また」
  ハルキさんの手には小さな花束。
  今日も彼は大切な「家族」のお見舞いに
  行くんだ──

〇オフィスビル前の道
ナナオ(これじゃ「エビで鯛を釣った」って おばあちゃんに言われそうだな・・・)
  お礼にもらった高級スイーツの包みの
  重さに、私は正直驚いてしまった。
ナナオ(たいしたことはしてないんだけど・・・ これって多分お高いんだろうな~)
ナナオ「えっ・・・っ!何の音!?」

〇ビルの裏
ナナオ「ええっ・・・!今度は猫のケンカ!?」
  路地裏に目を向けると、猫達が盛大に
  バトルを繰り広げていた。
ナナオ「ちょっとみんな!落ち着いて──!?」
ナナオ「顔に何かついたっ!む、虫っ!? やだやだやだーーーーーっ!!」
ナナオ(この子・・・まさか、朝の小鳥?)
  顔から剥がしたそれは、今朝出会ったのと
  同じ赤い小鳥だった──。
ナナオ「同じ日に、こんなことってあるわけ~~!?」
???「──うるせえ。いちいち騒ぐんじゃねえ」
ナナオ「きゃあっ!鳥が喋った!!!!」
???「どいつもこいつも大騒ぎしやがって! いい加減!どっかにいきやがれ!」
ナナオ「な、何これ──やだ、嘘でしょ・・・?」
  光の中から、まるでさっきの小鳥のような
  赤い髪の男の子が現れた──
???「だから、ギャンギャン喚くなって・・・ 言ってんだろ・・・」
ナナオ「ねえ・・・君?顔色悪いけど── ケガとかしてるの・・・?」
???「・・・・・・」
ナナオ「ちょっと!大丈夫なの!? ──返事して!」
???「・・・腹、へった・・・」
ナナオ「ええええ〜!!!!!!」
  そう言って眠ってしまった男の子を
  私は呆然と見つめるのだった──。

次のエピソード:【第2話】腹ペコ少年を保護しました。

コメント

  • ここまで徹底して愛他主義、無欲無私、忘己利他のヒロインは珍しいですね。これからしばらく赤い髪の男の子に振り回されるのかな。どうかナナオちゃんが不幸になりませんように。

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